

赤字でも最低7万円の税金が会社にはかかります。
法人税とは、株式会社や合同会社などの法人が1年間の事業活動で得た「所得」に対して課せられる国税です。個人事業主が所得税を払うのと同じように、法人には法人税がかかる、という対応関係だと覚えておくと整理しやすいです。
ここでいう「所得」は「売上」とは異なります。売上(収益)から仕入れや人件費などの費用(損金)を引いた残りが「所得」であり、この所得金額に税率を乗じることで法人税額が決まります。計算式で表すと、以下のようにシンプルです。
ただし、会計上の「収益」「費用」と、税務上の「益金」「損金」は必ずしも一致しません。これが原因
で実務上は「税務調整」という作業が必要になります。たとえば、会計上は費用として計上した交際費でも、税務上は損金に算入できない部分があります。つまり「経費として処理しても税務上は認められない」ケースが存在するということです。
法人税は国に納める国税であり、申告・納付先は管轄の税務署です。これとは別に、都道府県に納める「法人道府県民税」や市区町村に納める「法人市町村民税」(合わせて法人住民税)、「法人事業税」なども課せられます。普段ニュースなどで聞く「法人税等」とは、これらの税金を一括りにした表現です。
実効税率が原則です。法人税単体の税率だけを見て判断すると、実際の負担を過小評価することになります。
参考:法人税の基本的な仕組みについては財務省の公式ページが詳しい。益金・損金の概念や課税の考え方を確認できる。
法人税の税率は、法人の種類と規模によって異なります。金融に興味がある人なら「法人税=23.2%」と覚えている方が多いと思いますが、それは大企業向けの数字です。中小企業については軽減税率が適用されます。
| 法人の区分 | 所得の範囲 | 法人税率 |
|---|---|---|
| 資本金1億円以下の中小法人 | 年800万円以下の部分 | 15% |
| 資本金1億円以下の中小法人 | 年800万円超の部分 | 23.2% |
| 上記以外の普通法人(大企業) | 全所得 | 23.2% |
| 協同組合等 | 年800万円以下の部分 | 15% |
| 協同組合等 | 年800万円超の部分 | 19% |
注目すべき点は、「実効税率」という概念です。法人税率だけで見ると23.2%ですが、地方法人税・法人住民税・法人事業税などを合算すると、実際の負担率は約30〜34%になります。東京ドーム5つ分の広さのような話で「全体像を見ないと話にならない」ということですね。
中小法人の実効税率は所得別に整理すると、以下の通りです。
所得が800万円を超えた途端に実効税率が跳ね上がります。これが原則です。この「800万円の壁」を意識した経営判断が、中小企業の節税において非常に重要なポイントになります。
所得税は5〜45%の累進課税なのに対し、法人税は最大でも23.2%で頭打ちになります。個人の所得が年間900万円を超えると所得税率は33%になりますが、法人税は23.2%のままです。この差が「法人化を検討するタイミング」の判断基準になります。
参考:法人税率の詳細と軽減税率の要件は国税庁の公式ページで確認できる。
「法人なら必ず法人税を払う」というのは思い込みです。法人税には課税対象になる法人とならない法人が明確に区分されています。
法人税が課せられる主な法人は次のとおりです。
一方、法人税が原則かからない法人は以下です。
ただし、これらは例外だけではありません。公益法人等と人格のない社団等(例:マンション管理組合やPTA)が「収益事業」を行った場合は、その所得に対して法人税が課せられます。学校法人が制服・制帽を販売した場合などが典型例です。これは意外ですね。
意外に知られていないのが、NPO法人の扱いです。NPO法人は原則として法人税が免除されますが、物品販売や飲食業など34種類の「収益事業」を行った場合は課税対象になります。また、赤字であれば法人税は発生しませんが、後述の「均等割」は赤字でも支払い義務があります。
参考:どの事業が「収益事業」に該当するかは国税庁の分類一覧で確認できる。
「赤字なら税金はゼロ」と思っていると、思わぬ出費に驚くことになります。これが金融を学ぶ上で多くの人が見落とす盲点です。
法人税(国税)の本体は確かに赤字であれば発生しません。しかし、法人住民税の「均等割」という部分は、赤字・黒字に関わらず必ず課せられます。均等割は法人の「資本金の規模」と「従業員数」を基準に計算されるため、利益が出ていなくても請求が来ます。
資本金1,000万円以下・従業員50人以下の最も小規模な法人の場合でも、均等割は年間で最低約7万円(法人道府県民税2万円+法人市町村民税5万円)かかります。これは固定コストとして忘れてはいけない数字です。
さらに、資本金が1億円を超える大企業は赤字でも「外形標準課税」として法人事業税の一部が課せられます。つまり規模が大きくなるほど赤字でも払う税金が増える仕組みになっています。
赤字が続く法人でも最低限のランニングコストとして税負担が発生する、ということが基本です。起業・投資を考えている方にとって、この知識は会社の存続コストを正確に見積もるうえで欠かせません。
参考:法人住民税の均等割の税率や計算方法は総務省のページで詳しく確認できる。
法人税の申告期限は、事業年度終了日の翌日から原則2ヶ月以内です。たとえば3月31日が決算日なら、5月31日が申告・納付の期限になります。この期限を過ぎると、無申告加算税(納税額の15〜20%)と延滞税(年2.4〜8.7%程度)の両方が課せられます。自主的に1ヶ月以内に期限後申告すれば5%に軽減される特例があるため、遅れに気づいたらすぐ対応することが条件です。
節税の観点では、3つの手法が特に実効性が高いです。
まず、欠損金(赤字)の繰越控除です。青色申告を選択していれば、赤字となった事業年度の欠損金を最大10年間にわたって翌期以降の黒字と相殺できます。これは使えそうです。たとえば設立初年度に100万円の赤字が出た場合、翌年以降10年以内に黒字が出た年に、その100万円を所得から差し引いて法人税を計算できます。ただし、青色申告法人であることが条件です。
次に、交際費の正しい処理です。法人の交際費は原則として全額が損金不算入(=経費にできない)とされています。これは意外ですね。ただし、中小法人(資本金1億円以下)に限り、年間800万円までの交際費は全額損金に算入できる特例があります。また、1人あたり1万円以下の飲食費は交際費に該当せず「会議費」として全額損金算入できるため、金額と目的の管理が節税のカギになります(飲食費の1万円基準は2024年度税制改正で5,000円から引き上げられています)。
最後に、役員報酬の最適化です。役員報酬は一定の要件(定期同額給与など)を満たせば損金に算入できます。役員報酬を増やすことで法人の課税所得を減らせますが、役員個人の所得税や社会保険料も増加するため、法人税と個人税のバランスを見極める必要があります。節税の落とし穴に注意すれば大丈夫です。
節税を検討するうえで、青色申告の適用は必須です。青色申告は法人設立後3ヶ月以内(設立1期目)に税務署へ届出が必要なため、設立と同時に手続きを完了させることが重要です。届出が遅れると適用は翌事業年度からになり、欠損金の繰越などの恩恵が受けられなくなります。確定申告書の作成や節税戦略の立案には、税理士への相談が最も確実な手段です。顧問税理士を持つことで、毎年の法人税申告を適正に行いながら節税の機会を逃さない体制が整います。
参考:欠損金の繰越控除制度の詳細・適用条件と手続きは財務省の資料で確認できる。