税抜経理と税込経理の変更が法人税に与える意外な影響

税抜経理と税込経理の変更が法人税に与える意外な影響

税抜経理と税込経理の変更で知っておくべき全知識

税抜経理に変更するだけで、交際費の損金算入枠が実質的に広がり法人税が下がることがあります。


この記事でわかること
📌
税抜経理・税込経理の基本と違い

2つの経理方式の仕訳・決算書への影響を具体例で解説します。

💡
変更するメリット・デメリット

交際費・固定資産・特別控除など、経理方式の選択が税負担に与える具体的な影響を紹介します。

⚠️
変更時の手続きと注意点

届出不要で変更できる一方、固定資産の繰越残高や会計方針の注記など、見落としがちな落とし穴を整理します。


税抜経理・税込経理の基本的な違いと仕訳の比較


消費税の会計処理には「税込経理方式」と「税抜経理方式」の2種類があります。どちらを選んでも最終的に納める消費税額は変わりません。ただし、日々の仕訳の形や、決算書に表示される数字の意味は大きく異なります。


税込経理方式は、売上や仕入を計上するとき消費税を本体価格に含めたままの金額で記帳する方法です。仕訳の手間が少なく、会計ソフトを使っていない小規模な事業者や、設立間もない免税事業者にも扱いやすい特長があります。期末の決算時に消費税の納税額を「租税公課」として費用計上することで処理が完結します。


税抜経理方式は、売上や仕入の都度、消費税部分を「仮受消費税」「仮払消費税」という勘定科目で分けて記帳する方法です。期中から消費税を除いた純粋な損益が把握できるため、法人税の納税予測を立てやすいというメリットがあります。決算時には仮受消費税と仮払消費税を相殺し、差額を「未払消費税」として計上します。


例として、税抜2,000円の商品を仕入れ、税抜3,000円で販売した場合(消費税率10%)の仕訳を比べると、次のようになります。
























タイミング 税込経理 税抜経理
仕入時 仕入2,200 / 現金2,200 仕入2,000・仮払消費税200 / 現金2,200
販売時 現金3,300 / 売上3,300 現金3,300 / 売上3,000・仮受消費税300
決算時 租税公課100 / 未払消費税100 仮受消費税300 / 仮払消費税200・未払消費税100


この例では最終的な営業利益は両方とも1,000円で一致します。それが基本です。ただし、固定資産の取得が絡む場合や交際費が多い事業では、利益の数字が食い違うケースが出てきます。


なお、免税事業者は選択の余地がなく、税込経理方式しか使えません。また、上場会社等では「収益認識に関する会計基準」が適用されるため、取引価格に消費税を含めることができず、実質的に税抜経理方式しか認められていません。上場会社グループへの影響は大きな制約です。


参考として、国税庁が公開する経理方式の詳細ルールは以下のページで確認できます。


No.6375 税抜経理方式または税込経理方式による経理処理|国税庁


税抜経理への変更で交際費の損金算入枠が広がる仕組み

税込経理と税抜経理の違いが最も顕著に表れる場面の一つが、交際費の扱いです。意外に見落とされがちな論点ですが、経理方式の違いが法人税の計算に直結します。


資本金1億円以下の中小法人では、交際費について年間800万円までを損金に算入できる特例があります。この800万円という枠は税込経理でも税抜経理でも変わりません。しかし、1円も変わらないから影響がないとはなりません。


問題は、交際費として使った金額の「評価額」が経理方式によって変わる点です。税込経理では、支出した交際費が税込価格でカウントされます。たとえば税抜740万円の交際費は、消費税10%を加えると814万円となり、800万円の枠を14万円オーバーします。その超過分は損金不算入となり、法人税の課税所得が増えます。


一方、税抜経理では740万円が交際費として計上されます。800万円の枠内に収まるため、全額を損金算入できます。この差が法人税に影響するということですね。


また、1人あたり5,000円以下の飲食費を交際費から除外できる特例も同様です。税込経理では、5,500円の飲食費は5,000円を超えるため特例が使えず、交際費として処理されます。税抜経理であれば5,000円ちょうどとなり、特例の適用が可能です。たった500円の違いに見えますが、接待の機会が多い業種では積み重なって大きな差になります。


交際費を積極的に活用する企業では、税抜経理への変更が税負担の軽減につながる可能性があります。具体的にどのくらいの節税効果があるかは、自社の交際費の規模と法人税率を掛け合わせて試算することが第一歩です。試算には税理士に相談するのが確実で、顧問契約がなければ単発での相談も可能です。


参考:交際費の損金算入制度の詳細は国税庁のタックスアンサーで確認できます。


No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁


税抜経理への変更で固定資産の即時経費化が有利になるケース

経理方式の選択が大きく関わってくるもう一つの場面が、固定資産の取得価額判定です。これは知らないと数十万円単位で損をする可能性があります。


法人税法では、取得価額が10万円未満の資産は購入した年度に全額即時経費化できます。10万円以上20万円未満であれば一括償却資産として3年均等償却、そして青色申告を行う中小企業であれば30万円未満の少額減価償却資産を購入年度に全額経費計上できる特例があります。


この判定基準の「金額」は税込経理か税抜経理かによって決まります。税込経理なら税込価格で判定し、税抜経理なら税抜価格で判定します。これが条件です。


具体例を挙げると、税抜価格9万2,727円のパソコンを購入した場合を考えます。税込価格は10万200円程度です。税抜経理なら10万円未満と判定され、購入年度に全額即時経費化できます。しかし税込経理では10万円以上となり、一括償却資産として3年かけて償却することになります。初年度の経費に算入できる額が大きく変わります。


さらに少額減価償却資産の特例では、税抜28万円の備品を購入したとします。税込だと約30万8,000円となり30万円超えとなるため特例が使えません。税抜経理なら28万円で判定するため30万円未満に収まり、全額をその年の経費にできます。


設備投資を積極的に行う製造業や、パソコン・機器を頻繁に買い替えるIT関連事業者にとって、この判定基準の違いは年間で相当な金額差になり得ます。固定資産の取得が多い場合は税抜経理が有利です。


詳細は弥生などの会計ソフトの解説ページも参考になります。


消費税の税込経理方式と税抜経理方式の違いは?仕訳例と共に解説|弥生


税込経理が有利になる特別償却・特別控除の盲点

「税抜経理のほうが常に税務上有利」と思い込んでいる方がいますが、それは正確ではありません。特別償却や特別控除といった政策的な特例においては、税込経理のほうが有利になる局面があります。これは意外なポイントです。


中小企業が機械設備を取得した場合に適用できる「中小企業投資促進税制」などの特別控除・特別償却制度では、取得価額が一定金額以上であることが適用条件になっているものがあります。たとえば機械装置では取得価額160万円以上が要件とされているケースがあります。


税込経理であれば取得価額は税込金額で計算されるため、税抜価格が160万円を下回っていても消費税分が加算されて要件を満たすことがあります。逆に税抜経理では税抜価格で判定するため、160万円の条件を満たせず特例を使えない場合があります。


同様に、特別控除の計算においても取得価額が控除額の計算基礎となる制度では、税込経理のほうが控除額の計算基礎が大きくなり有利です。これは使えそうです。


また、研究開発を促進する税額控除など、投資額に一定率を掛けて控除額を計算する制度でも同様の逆転現象が起きます。控除額そのものが消費税相当分だけ大きくなるためです。


整理すると、下記のように使い分けが必要です。



  • 税抜経理が有利なケース:交際費が多い、少額固定資産を頻繁に購入する企業

  • 税込経理が有利なケース:特別控除・特別償却の適用を検討している企業、設備投資額が大きく税額控除を活用したい企業

  • ⚠️ どちらか一方が常に有利とは言えない:自社の状況に応じた試算が必須


自社の設備投資計画と税制上の特例活用状況を踏まえ、税理士に有利不利の試算を依頼することを強くお勧めします。筒井会計事務所のような専門家への相談が、具体的な比較検討に役立ちます。


参考情報は以下でも確認できます。


消費税の会計処理で差がつく!法人の税抜・税込経理による有利不利|筒井会計事務所


税抜経理・税込経理を変更するときの手続きと注意事項

経理方式の変更を検討する際に「税務署への届出が必要では?」と考える方は多いです。結論から言うと、税務署への届出は不要です。任意で変更できます。ただし、変更するタイミングや変更後の処理には無視できない注意点があります。


まず変更のタイミングについてです。経理方式の変更は原則として事業年度の開始日から適用します。期の途中で変更することは原則として認められていません。インボイス制度の導入(2023年10月)を機に方式を変更した法人については、国税庁Q&Aで「法人税法上は特に問題とはなりません」とされており、事実上の特例的な扱いが認められました。それだけ例外なのです。


次に、税込経理から税抜経理に変更した場合の固定資産の繰越残高の問題があります。変更前に税込価格で計上・減価償却が行われてきた固定資産については、変更後も引き続き税込価格で計上されたままになります。これが実務上かなり厄介な問題です。


これを厳密に解釈すると、税抜経理変更後に取得する固定資産は税抜価格で計上しますが、変更前の固定資産は税込価格のままという混在状態になります。この点について国税庁は明確な指針を出しておらず、実務的には変更後に取得した固定資産から順次税抜経理に移行するという整理が許容されると多くの専門家が解説しています。


さらに、決算書の個別注記表には「重要な会計方針」として経理方式を記載する欄があります。経理方式を変更した場合は「会計方針の変更」として注記への記載が必要になります。この注記を忘れると、決算書の正確性に影響を与えることになるため注意が必要です。


最後に、棚卸資産の計上金額にも注意が必要です。税込経理から税抜経理に変更した際は、棚卸高の計上方法も税込額から税抜額への変更が必要になります。変更初年度の期首棚卸を正しく修正しないと、売上原価の計算が狂い、損益が正確に出なくなります。事前に会計ソフトの設定変更と残高確認を必ず行うことが求められます。


変更手続きの全体像は以下のサイトでも参照できます。


税込経理と税抜経理はどちらを選ぶべきか、変更する方法は?|三宅税理士事務所




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