法人税の計算を簡単に理解する税率と節税の全手順

法人税の計算を簡単に理解する税率と節税の全手順

法人税の計算を簡単に理解する基本から節税まで

赤字なのに毎年7万円の税金が自動で引き落とされている会社は珍しくありません。


📋 この記事の3つのポイント
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法人税の計算式はシンプルだが"罠"がある

「課税所得×税率」が基本だが、会計上の利益≠課税所得。税務調整を知らないと計算が大幅にズレる。

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実効税率は法人税率(15%/23.2%)より大きく高い

住民税・事業税を合わせると中小企業でも実質30〜34%の負担。「表面税率だけ見ていた」は危険。

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赤字でも税金はゼロにならない+節税の切り札もある

均等割(最低7万円)は赤字でも発生。一方で繰越欠損金を最大10年活用すれば将来の税負担を大幅に圧縮できる。


法人税の計算の基本:課税所得と税率のしくみ


法人税の計算で最初に覚えるべき式は、シンプルに見えます。


$$\text{法人税額} = \text{課税所得} \times \text{税率} - \text{税額控除}$$


ただし、この「課税所得」が一筋縄ではいかない部分です。会計上の「税引前当期利益」と税務上の「課税所得」は、同じ金額になるとは限りません。会計と税務では、費用や収益の扱いルールが異なるためです。


具体的な計算の流れは次の4ステップで構成されています。


まず「①税引前当期利益を確定させる」こと。売上から原材料費・人件費・販管費などを引いた数字を確定させます。次に「②税務調整を行い課税所得を確定させる」。これが最も見落とされがちな工程です。そして「③課税所得に税率をかけて年税額を出す」。最後に「④税額控除を差し引いて法人税額を確定する」という流れです。


税率については法人の種類や規模によって異なります。資本金1億円以下の中小法人であれば、所得のうち年800万円以下の部分に15%、800万円を超える部分に23.2%が適用されます。これが原則です。なお、この15%の軽減税率は2027年3月31日までに開始する事業年度まで適用される特例措置です。


法人の区分 所得区分 法人税率
資本金1億円以下の普通法人 年800万円以下 15%(軽減税率)
資本金1億円以下の普通法人 年800万円超 23.2%
資本金1億円超の普通法人 全所得 23.2%


たとえば資本金500万円・年間所得1,000万円の法人の場合、法人税の計算はこのようになります。


$$\text{800万円} \times 15\% = \text{120万円}$$
$$\text{200万円} \times 23.2\% = \text{46.4万円}$$
$$\text{法人税額合計} = \text{166.4万円}$$


これが基本です。ただし、「法人税だけ払えばOK」ではないという重要な落とし穴があります。それは次のセクションで詳しく解説します。


参考:法人税の税率に関する公式情報はこちらで確認できます。


国税庁「No.5759 法人税の税率」


法人税の計算で見落とされがちな「実効税率」と税負担の全体像

法人税率が15%だからといって、利益の15%だけを払えばいいと思ったら大きな誤算です。


法人が実際に支払う税金は、法人税のほかに「地方法人税」「法人住民税」「法人事業税」「特別法人事業税」が上乗せされます。これらをすべて合計した実質的な税負担割合を「法人実効税率」と呼びます。


現在の日本において、中小法人の法人実効税率は約30〜34%が目安です。表面上の法人税率は15%や23.2%ですが、実際に手元からなくなるお金はその約2倍と考えた方が実態に近いです。


下記に主な構成要素をまとめます。


| 税目 | 概要 |
|------|------|
| 法人税 | 国税。所得に対して課税(15%または23.2%) |
| 地方法人税 | 国税。法人税額の10.3%相当 |
| 法人住民税 | 地方税。法人税割+均等割 |
| 法人事業税 | 地方税。所得または事業規模で課税 |
| 特別法人事業税 | 国税。法人事業税額に付加 |


利益1,000万円の中小法人の場合、法人税単体では166万円ですが、これに地方法人税(約17万円)や住民税・事業税が加算されると、総支払税額は230〜300万円程度になることも珍しくありません。これは使えそうな知識です。


意外な視点ですが、法人事業税は「損金算入できる」という特徴があります。つまり、事業税の支払いが翌年の課税所得を下げる効果を持つため、実効税率は表面税率の単純合計より低くなる仕組みになっています。この効果を計算式に組み込んでいるのが「法定実効税率」です。


法人の実効税率を計算ツールで素早く確認したい場合、国税庁の公式サービスや税理士法人が提供するシミュレーターを活用すると便利です。自社の課税所得額を入力するだけで実効税率の目安が把握できます。


マネーフォワード「法人税の税率は何パーセント?最高税率や中小企業の特例、実効税率」


法人税の計算で必須の「税務調整」:損金不算入の具体例

法人税の計算において、実務で最も混乱しやすいのが「税務調整」の工程です。


税務調整とは、会計上の利益を課税所得に変換するための加算・減算作業のことを指します。会計と税務は目的が異なるため、同じ費用でも「経費になるが損金にはならない」ものが多数存在します。損金不算入の典型例を理解しておくだけで、計算ミスを大幅に減らせます。


代表的な損金不算入の項目は以下のとおりです。


- 交際費(一部):中小法人は年間800万円を超えた交際費は損金不算入。資本金100億円超の大法人は交際費の全額が損金算入不可
- 役員報酬(不規則な変動分):定期同額給与事前確定届出給与・利益連動給与の3種類以外の支払い方法は損金不算入になる
- 過大な役員報酬:市場相場から見て不相当に高額と判断された報酬は損金不算入となるリスクがある
- 罰金・科料:法令違反による支出は一切損金に算入できない
- 寄附金(一定額超):国・地方公共団体への寄附等を除き、限度額を超えた分は損金不算入


一方で、損金算入できる(会計上は費用にならないが税務上は有利)ものもあります。繰越欠損金の損金算入や、一定の引当金の繰入れなどが該当します。


役員報酬に関しては特に注意が必要です。期中に自由に金額を変更すると、その変動分が「損金不算入」として課税所得に加算されてしまいます。期が始まる前に定時主総会で金額を決定し、年間を通じて同額を支給するのが大原則です。


交際費については、2024年度税制改正以降、「1人あたり1万円以下の飲食費」は交際費の計算対象外として全額損金算入できるルールが整備されています。接待の単価を意識するだけで、計算上の損金不算入額を抑えられます。


損金不算入の詳細な範囲は国税庁の情報で確認できます。


国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」


赤字でも法人税がゼロにならない理由と均等割の計算

「赤字なら税金はゼロ」。この考え方は半分正しく、半分は間違いです。


法人税・法人事業税については、課税所得がゼロ(赤字)なら確かに課税されません。しかし、法人住民税の「均等割」だけは赤字でも必ず発生します。均等割は所得ではなく「会社の存在」に対して課される税金だからです。


均等割の金額は資本金の規模によって段階的に決まります。最もよくある「資本金1,000万円以下かつ従業員50人以下」の法人の場合、都道府県民税2万円+市町村民税5万円=最低7万円が毎年発生します。


資本金等の区分 従業員数 市町村民税(均等割)の目安
1,000万円以下 50人以下 年5万円
1,000万円以下 50人超 年12万円
1,000万円超〜1億円以下 50人以下 年13万円
1,000万円超〜1億円以下 50人超 年15万円


厳しいところですね。創業したばかりで赤字の状態でも、会社として登記している以上、この均等割は毎年確実に徴収されます。


さらに意外なのが、赤字でも確定申告は義務であるという点です。「どうせ法人税はゼロだから申告しなくていい」と放置すると、無申告加算税(最大20%)や、青色申告の承認取り消しというリスクが生じます。


青色申告が取り消されると「繰越欠損金の控除」ができなくなります。これが大きな損失につながります。赤字の年こそ、きちんと申告することが将来の節税に直結するということですね。


赤字でも税金は7万円|法人住民税「均等割」の仕組みと対策(専門家解説)


法人税の計算と節税の切り札:繰越欠損金の10年活用術

法人税の計算で金融リテラシーが問われるのが、「繰越欠損金」の活用です。


繰越欠損金とは、赤字(欠損金)を最長10年間にわたって翌期以降に繰り越し、将来の黒字と相殺できる制度のことです。たとえば前期に1,000万円の赤字が出て、当期に800万円の黒字が出た場合、繰越欠損金を活用すれば課税所得はゼロになります。法人税は均等割のみで済む計算です。


$$\text{課税所得} = \text{当期黒字} - \text{繰越欠損金} = 800万円 - 1,000万円 = \text{ゼロ(=法人税なし)}$$


残りの200万円の欠損金はさらに翌期以降に繰り越せます。これが条件です。中小法人の場合、所得の100%まで相殺できます。大法人の場合は所得の50%が上限になるため注意が必要です。


繰越欠損金の適用には必ず「青色申告の継続」が求められます。つまり、赤字の年に申告を怠ると、この制度そのものが使えなくなってしまいます。赤字こそ申告すべきという理由がここにあります。


さらに知られていない活用法が「欠損金の繰戻し還付」です。前期が黒字で当期が赤字になった場合、前期に支払った法人税の一部を還付請求できる制度です。資金繰りが苦しいタイミングに活用できる制度として知っておく価値があります。これは必須です。


具体的に繰越欠損金の金額を把握・管理するには、会計ソフト(freee、マネーフォワードクラウド会計など)や税理士に依頼するのが現実的です。計算そのものより「記録と申告を継続すること」が節税の土台になります。


小谷野税理士法人「繰越欠損金の繰越期間は10年!控除限度額や適用条件について」






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