予定納税基準額の計算方法と対象者・減額申請の全手順

予定納税基準額の計算方法と対象者・減額申請の全手順

予定納税基準額の計算から減額申請・延滞リスクまで徹底解説

減額申請をしないほうが、あなたの手元に多くお金が戻ることもあります。


この記事のポイント3選
📊
予定納税基準額の計算ルール

前年の申告納税額が原則そのまま基準額になる。ただし譲渡所得・雑所得・一時所得などは除外されるため、株式売却益や副業収入がある人は計算方法が異なる。

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減額申請は7月15日が絶対期限

第1期・第2期両方の減額を申請したい場合、提出できるのは7月1日〜7月15日のたった15日間。この期間を逃すと当年の第1期分は減額できない。

💡
あえて減額申請しないと「還付加算金」がもらえる

所得が減った年でも資金に余裕があれば、減額申請せずに予定納税し、確定申告で還付加算金(年約0.9〜2.4%)を受け取るという合法的な活用法がある。


予定納税基準額の計算の仕組みと15万円の意味

予定納税とは、前年の確定申告の結果をもとに、その年の所得税の一部をあらかじめ国に前払いする制度です。「なぜ確定していないのに払うの?」と感じる人も多いですが、これは国の歳入を平準化し、納税者の一度払いの負担感を分散する目的で設けられた仕組みです。


予定納税が必要になる基準は、予定納税基準額が15万円以上かどうかです。この15万円という数字、一見ランダムに見えますが、国税庁が法令で定めた基準値です。課税所得が195万円を超えると所得税率が10%になることから、所得税が15万円を超えてくる水準の人が対象になるイメージです。


基準額の計算式はシンプルに見えて、実は落とし穴があります。
















パターン 計算方法
原則(シンプルケース) 前年分の申告納税額 = 予定納税基準額
例外(除外所得あり) 前年の課税総所得 × 税率 − 源泉徴収税額 = 予定納税基準額


原則パターンが使えるのは「前年に譲渡所得山林所得・退職所得・一時所得・雑所得がなく、外国税額控除や災害減免法の適用もない人」に限られます。意外と対象が狭いというのが実情です。


たとえば、前年にフリマアプリで不要品を売って数万円の利益(雑所得)が出た場合や、株の売却益(譲渡所得)があった場合は、それらを「なかったもの」として計算し直す必要があります。つまり前年の確定申告書の申告納税額の数字をそのまま使えないケースは想定より多いのです。


予定納税基準額の計算は、前年の確定申告書を見ながら確認するのが基本です。税務署から毎年6月15日までに送付される「予定納税額の通知書」に金額が記載されているため、自分で計算しなくても確認することは可能ですが、計算の根拠を知っておくと減額申請の判断にも役立ちます。


参考:予定納税の仕組みと基準額の計算方法(国税庁公式)
No.2040 予定納税|国税庁


予定納税基準額の計算から求める納付額の具体例

実際の計算の流れを数字で見てみましょう。つまり計算式を抽象的に覚えるより、具体例で確認するほうが定着しやすいです。


【ケース1:シンプルなフリーランスの場合】


前年の確定申告で申告納税額が30万円だったフリーランスのAさんの場合を見てみます。
























項目 金額
予定納税基準額 30万円
第1期分(7月) 30万円 × 1/3 = 10万円
第2期分(11月) 30万円 × 1/3 = 10万円
翌年3月確定申告で精算 残り1/3(約10万円)を支払いまたは還付


1回あたり10万円を7月末と11月末に納める計算です。決して小さい金額ではなく、現金を手元に残しておかなければ突然のキャッシュフロー悪化につながります。


【ケース2:株式売却益があった場合】


前年に上場株式の売却益(譲渡所得)が50万円あり、申告分離課税を選んでいたBさんのケースです。申告納税額の合計には譲渡所得分も含まれているかもしれませんが、予定納税基準額の計算では「分離課税の上場株式等の配当所得等は含めるが、株式等の譲渡所得は除外する」というルールが適用されます。


注意が必要なのはここです。上場株式の配当所得(申告分離課税を選択したもの)は基準額に含まれますが、株式等の売却益(譲渡所得)は除外対象になります。両者を混同すると計算を誤る可能性があります。


実際の基準額計算は通知書に記載されており、税務署が計算した数字が届きます。ただし、「なぜこの金額なのか」を把握しておくことで、不意の納税額増加に慌てずに済みます。


参考:予定納税基準額の具体的な計算例(freee)
予定納税とは?対象者・納付時期・納付方法および減額申請できるケース|freee


予定納税の対象者と「副業サラリーマン」が見落としやすい落とし穴

予定納税の対象者は「前年分の予定納税基準額が15万円以上の人」です。これが原則です。


一般的なサラリーマンは勤務先で年末調整が完結するため、確定申告も予定納税も関係ないと思いがちです。ところが、副業収入がある場合は話が変わります。


副業などにより給与・退職所得以外の所得が年間20万円を超える場合、確定申告義務が生じます。そして、その確定申告によって計算される申告納税額が15万円以上になると、翌年から予定納税の対象になるのです。


これが意外な盲点です。具体的には以下のようなケースが該当します。



  • 💼 副業(業務委託・フリーランス案件)での事業所得が年100万円を超えるくらいある人

  • 📦 ハンドメイド販売・YouTubeなどで雑所得が100万円超になった人

  • 🏠 不動産賃貸収入があり、不動産所得が一定額に達した人

  • 📈 年収2,000万円超の給与所得者(年末調整が完結せず確定申告が必要)


「去年初めて確定申告して納税したのに、今年さらに予定納税まで来た」という経験をする人が増えています。副業が軌道に乗ってきた頃にこの通知が届き、驚くパターンが典型的です。


通知が届く前に対処するコツは、前年の確定申告後すぐに翌年の予定納税額を計算し、7月・11月分として資金を分けて管理しておくことです。資金の管理が見えやすくなり、キャッシュショートのリスクを大幅に減らせます。こうした資金分けには、納税準備預金口座(税務署管轄の制度)が有効で、利息への課税が免除されるという税制上のメリットもあります。


参考:副業サラリーマンの予定納税対象ケースと注意点(MUFG)
所得税の予定納税とは?対象者や納付時期、納付方法を解説|mycard


予定納税基準額の計算をもとにした減額申請の手順と期限

予定納税は「前年の所得を基に計算した前払い額」である以上、今年の収入が前年より大きく落ち込んだ場合、過剰な前払いになります。そこで設けられているのが「減額申請」制度です。


減額申請が認められる主な条件は次のとおりです。



  • 📉 今年の業況が悪化し、申告納税見積額が予定納税基準額を下回ることが見込まれる場合

  • 🏥 病気・災害・盗難などにより所得が大幅に下がる場合

  • 👨‍👩‍👧 扶養家族が増えるなど、控除額が大きく変わる場合

  • 🌍 外国税額控除の適用を受ける予定がある場合


減額申請の期限は非常に厳格です。ここを見落とすと取り返しがつきません。



















申請の種類 提出期間 基準日
第1期・第2期 両方の減額 7月1日〜7月15日 6月30日時点の見積額
第2期分のみの減額 11月1日〜11月15日 10月31日時点の見積額


第1期・第2期の両方を減額したい場合、申請できる期間はたった15日間しかありません。7月16日を1日でも過ぎると、第1期分の減額はもはやできないと考えてください。


申請書は「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」を国税庁サイトからダウンロードして記入します。e-Taxでのオンライン提出にも対応しており、郵送・窓口持参より手軽です。


記入の際は、6月30日時点の「申告納税見積額」を計算して記入します。具体的には、その年の1月1日から6月30日までの収入・経費などをもとに年間の所得税を仮計算し、前年の予定納税基準額より低いことを示す必要があります。


実際に計算が難しいと感じる場合、税理士に相談するか、確定申告会場でもアドバイスを受けられます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」も補助的に使えます。


参考:減額申請書の書き方と提出手続き(国税庁)
A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁


予定納税基準額をあえて活用する「還付加算金」という逆発想

これはあまり語られない視点です。


多くの人は「所得が減ったら即・減額申請」と考えます。しかし、資金に余裕があれば、あえて減額申請をせずに予定納税を行い、翌年の確定申告で還付加算金ごと受け取るという方法があります。


還付加算金とは、払い過ぎた税金が戻る際に加算される利息のようなものです。適用される利率は次のうち低いほうです。



  • 年7.3%

  • 年「還付加算金特例基準割合 + 1%」(令和7年は約2.4%)


これは銀行の定期預金金利(メガバンクの1年定期で0.025〜0.3%程度)と比べると、はるかに高い利回りです。


たとえば、予定納税で15万円を前払いし、年末の確定申告で全額還付+還付加算金が戻ってくるケースを考えます。利率2.4%で半年間(7月末〜翌年3月)の場合、加算金はおよそ1,500〜1,800円程度になります。金額は小さく見えますが、リスクゼロで税務署を「預け先」として活用できるとも言えます。


これは節税でも脱税でもなく、制度の範囲内での合法的な活用法です。特に確定申告で必ず還付が見込まれる状況(医療費控除が多い年など)では意識しておく価値があります。


ただし注意点もあります。資金を長期間動かせないため、キャッシュが必要な場面では逆に困ります。あくまで「余裕資金がある場合の選択肢のひとつ」として覚えておく程度が適切です。


参考:還付加算金の仕組みと活用ケース(弥生)
予定納税とは?計算や納付の方法、減額申請などを解説|弥生


予定納税の滞納リスクと延滞税の計算を把握しておく重要性

予定納税は「自分が気づいていなくても義務が発生している」制度です。「通知書が来なかった」「読み忘れた」という言い訳は税務上通りません。


納付期限を過ぎると、自動的に延滞税が課されます。延滞税の仕組みは以下のとおりです。
















延滞期間 税率(令和7年)
期限翌日〜2か月以内 年2.4%(特例基準割合+1%)
2か月を超えた日以降 年8.7%(特例基準割合+7.3%)


2か月を超えると税率が一気に約3.6倍に跳ね上がります。これが痛いところです。具体例で見てみましょう。


例:第1期分(7月31日期限)に10万円の納税を忘れ、3か月後の10月31日に気づいて納付した場合


- 最初の2か月(8月1日〜9月30日):10万円 × 2.4% × 61日 ÷ 365日 = 約401円
- 残り1か月(10月1日〜10月31日):10万円 × 8.7% × 31日 ÷ 365日 = 約739円
- 合計延滞税:約1,140円


1,000円未満は切り捨てなので、このケースでは実際の延滞税は1,000円です。金額自体は小さく見えますが、年8.7%という税率は、不動産投資や株式で期待できる利回りと肩を並べるほどの高さです。元本が大きくなれば当然ダメージも膨らみます。


延滞税はそれ自体が経費にもなりません(租税公課として計上不可)。二重の意味で損になる支出です。


納付を確実にする手段として最も効果的なのは振替納税(口座引落)の事前設定です。一度e-Taxまたは書面で届出をすると、毎年自動的に引き落としが行われます。第1期分は7月31日、第2期分は11月30日が口座引落日の目安です。残高不足だけ注意すれば、忘れるリスクをほぼゼロにできます。


参考:延滞税の割合と計算方法(国税庁)
No.9205 延滞税について|国税庁