脱税の時効を個人が知っておくべき全知識

脱税の時効を個人が知っておくべき全知識

脱税の時効を個人が正しく知り損しないための完全ガイド

7年待っても、督促状1通で時効はゼロにリセットされます。


📋 この記事の3ポイント
時効は「5年・7年」の二段構え

個人の脱税における税務調査の時効は、申告漏れなら5年、悪質な不正行為(脱税)と認定されると7年に延長されます(国税通則法第70条)。さらに刑事罰の公訴時効は別途7年間です。

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「時効の更新」でリセットされる

督促状が届いたり、一部でも納税した瞬間、時効期間はゼロに戻ります。税務署は定期的に督促状を送る義務があるため、個人が時効成立を待ち続けることは事実上不可能です。

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発覚後は最大で本税+40%の重加算税

悪質な脱税が税務調査で発覚した場合、本来の納税額に加えて重加算税(無申告の場合40%)、さらに延滞税も加算されます。自主申告なら加算税が大幅に軽減できる制度があります。


脱税の時効とは何か―個人に関わる「5年・7年」の基本ルール


「脱税には時効がある」という話を耳にしたことがある方は多いでしょう。確かに法律上、個人の税金には時効に類する制度が存在します。ただし、その仕組みは多くの人がイメージするものとは大きく異なっています。


まず、税務調査における課税の期限を定めた制度を「除斥期間」と呼びます。一般的な申告漏れや過少申告の場合、この期間は申告期限翌日から5年間です(国税通則法第70条第2項)。5年を超えると、税務署はその年度について更正・決定などの課税処分を行うことができなくなります。


一方、故意に所得を隠したり帳簿を改ざんしたりするような悪質な脱税と認定された場合、この期間は7年間に延長されます。つまり、過去7年分にさかのぼって本税・重加算税延滞税をまとめて請求される可能性があるということです。


| 状況 | 税務調査の遡及年数 |
|------|-------------------|
| 通常の申告(問題なし) | 原則3年 |
| 申告漏れ・無申告 | 5年 |
| 悪質な脱税・不正行為 | 7年 |


ここで一点、見落とされやすい重要な区分があります。


税務上の時効(除斥期間・徴収権の消滅時効)と、刑事罰の公訴時効はまったく別物です。たとえ税務調査上の5年・7年を過ぎたとしても、刑事的な追及は別途7年(重大な脱税事件では最大10年)の公訴時効の範囲内で可能です(刑事訴訟法第250条)。つまり、二重の時効が存在している構造になっています。これは重要な点です。


個人が「5年逃げればセーフ」と思っていた場合、刑事的な追及だけは引き続き受ける可能性がある点を必ず覚えておきましょう。


税務上の時効と刑事罰の時効は別々、が基本です。


国税庁が定める国税通則法の詳細はこちらで確認できます。


国税通則法(第70条)|e-GOV法令検索(課税の除斥期間に関する規定)


脱税の時効は個人でも「ほぼ成立しない」その理由

「とりあえず5年か7年待てば逃げ切れる」。そう考える方がいるとすれば、それは大きな誤解です。


税金の時効には「時効の更新(旧:時効の中断)」という仕組みが適用されます。これは一定の事由が発生した瞬間に、それまで積み重なっていた時効期間がゼロにリセットされるルールです。イメージとしては、ゲームのHPゲージが一瞬で満タンに戻るような感覚に近いでしょう。


時効の更新が起こる主な事由は以下の通りです。


- 税務署から督促状が届いた
- 本税や附帯税を一部でも納付した
- 納期限の延長を申請した


ここで重要なのは、税務署は法律上、定められた頻度で督促状を送ることが義務付けられているという点です。督促状が届いた瞬間に時効はリセットされ、また最初からカウントが始まります。


つまり、個人が「督促状を無視し続ける」という方法でしか時効の成立を目指せないことになります。しかし現実には、督促状を無視し続けることで延滞税が雪だるま式に膨らみ、さらには給与や預貯金・不動産などの財産が差し押さえられるリスクが高まります。


督促状を無視するのは危険です。


税理士法人の調査によれば、確定申告をしていないことで時効が実際に成立した例はほとんどないとされています。時効を期待して放置するより、一刻も早く自主申告するほうがあらゆる面でペナルティを抑えられます。


「逃げ切れる」という選択肢は、現実にはほぼ存在しないと理解しておく必要があります。


国税の徴収権の消滅時効(第72条)に関する国税庁の通達(時効の更新事由を確認できます)


脱税が発覚した個人に科されるペナルティの全体像

仮に脱税が税務調査で発覚した場合、個人に対して課されるペナルティは単純な「追加納税」では済みません。本税・加算税・延滞税という三層構造で請求が来ます。


まず本税は、本来納めるべきだった税額の全額です。これは最低限の支払い義務です。


次に加算税が加わります。脱税の悪質度に応じて以下の4種類があります。


| 加算税の種類 | 発生条件 | 税率 |
|-------------|----------|------|
| 過少申告加算税 | 過少申告を税務調査で指摘された場合 | 10〜15% |
| 無申告加算税 | 無申告が税務調査で発覚した場合 | 15〜30% |
| 不納付加算税 | 源泉徴収の不納が発覚した場合 | 5〜10% |
| 重加算税 | 仮装・隠蔽があった場合(最も重い) | 35〜40% |


特に注意が必要なのが重加算税です。売上の隠蔽や帳簿の改ざんなど、意図的な不正行為と認定された場合に課されます。無申告での隠蔽が発覚した場合は40%という非常に重い税率です。


具体例で見てみましょう。


仮に本来の納税額が100万円だったとします。これを意図的に無申告にしていて、税務調査で発覚した場合の実際の支払額はこうなります。


- 本税:100万円
- 重加算税(40%):40万円
- 延滞税(2年分、年率14.6%換算):約29万円
- 合計:約169万円


当初の倍近い金額になるケースも珍しくありません。


さらに悪質なケースでは刑事罰も加わります。所得税法第238条では、脱税に対して「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」が規定されており、両方が同時に科されることもあります。脱税額が1,000万円を超える場合、罰金額も脱税額と同額まで引き上げられる可能性があります。


痛いですね。


一方、自主申告した場合は無申告加算税が5%まで軽減されます。自主申告か調査発覚かの違いだけで、支払総額に数十万円以上の差が生まれます。


財務省「加算税の概要」PDF(各加算税の税率・適用条件を一覧確認できます)


脱税が個人に「バレる」主な経路と税務署の調査手法

「少額だからばれないだろう」「現金取引だから追えないはず」。こうした考えが落とし穴になります。


税務署が個人の脱税を把握するルートは、大きく分けて以下のようなものがあります。


① 支払調書・法定調書による把握
企業が従業員や外注先に報酬を支払う際、一定額以上であれば「支払調書」を税務署に提出する義務があります。つまり、企業に仕事をしている個人の収入はほぼ自動的に税務署に把握されています。申告内容と支払調書の金額が一致しない場合は、即座に精査の対象となります。


② 取引先への税務調査の連鎖
自分に税務調査が来なくても、取引先に調査が入った場合にその相手先として自分も調査対象に含まれることがあります。これを「反面調査」と呼びます。現金取引であっても、取引先の帳簿に自分への支払いが記録されていれば追跡は可能です。


③ 内部告発・通報
国税庁の公式サイトには「課税・徴収漏れに関する情報提供フォーム」が設置されています。元従業員や取引先が脱税の事実を通報するケースは実際に少なくありません。通報者の情報は厳重に保護されるため、「誰も知らないはず」という状況でも安全ではありません。


④ SNS・クレジットカード・銀行情報との突合
近年、税務署はSNSでの豊かな生活の様子や、高額商品の購入履歴などと申告所得額との乖離を把握する手法も活用しています。申告所得は300万円なのに、高級外車を現金購入しているような場合は調査対象になりやすいというのが現実です。


内部告発は意外なほど多いです。


令和4事務年度における国税庁の調査結果によれば、所得税の申告漏れや追徴税額はすべての項目で前年度より増加しており、調査は今後さらに厳格化される方向で進んでいます。


国税庁「課税・徴収漏れに関する情報の提供フォーム」(第三者通報の受付窓口)


令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況|国税庁(調査件数・追徴税額の最新データ)


脱税の時効を「待つ」より得になる個人の正しい対処法

ここまで読んで、過去の申告に不安を感じた方もいるかもしれません。そのような場合、最も重要なのは「時効を待つ」ではなく「いまから動く」という選択です。


自主申告(期限後申告修正申告)のメリットは明確です。税務調査で発覚する前に自主的に申告した場合、無申告加算税は納税額の5%で済みます。これが税務調査後の発覚になると15〜30%、悪質な場合は重加算税40%になります。自主申告と調査発覚の差は、最大で35%もの開きになります。


たとえば本税100万円に対して比較すると、自主申告なら105万円で済むところが、調査後の発覚では140万円以上になりえます。その差額は35万円以上。これはかなり大きな差です。


🔸 自主申告のポイント


- 申告期限を過ぎていても「期限後申告」として手続きできます
- 過去の申告に誤りがある場合は「修正申告」が使えます
- 過去にさかのぼって計算できる年数は原則5年(過去5年分を申告することも可能)


なお、申告内容が複雑だったり、過去の資料が揃っていない場合は、税理士に相談するのが現実的です。特に複数年にわたる無申告や、副業投資収入が絡む場合は、専門家に依頼することで申告額の計算ミスを防ぎ、余計な加算税を避けられます。


結論は「早期の自主申告」です。


ペナルティを抑えたい場合の行動は一つ——税務署に申し出る前に税理士に相談し、状況を整理した上で自主申告を進めることです。国税庁のウェブサイトには無申告・修正申告の案内もあります。


国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」(期限後申告の手続き方法を解説)


「申告漏れ」と「脱税」を個人が混同すると起こること―境界線の正しい理解

金融に関心がある方の中には「厳密には申告漏れであって脱税ではない」と主張したいケースもあるかと思います。しかし、この境界線は意外と薄く、どちらに判定されるかは最終的に税務署が決めます。


申告漏れは、計算ミス・知識不足・入力誤りなど「意図しない」過少申告です。この場合は刑事罰には至らず、過少申告加算税(10〜15%)と延滞税のみで済むことが多いです。


脱税は、「意図的に」所得を隠したり、事実と異なる申告を行った場合です。同じ結果(過少申告)であっても、意図があるかどうかで適用される罰則が大幅に変わります。


問題は「意図があったかどうか」を判断するのが税務署側だという点です。たとえば次のような行動は、意図的な隠蔽とみなされるリスクがあります。


- 現金売上だけを意図的に帳簿に記録しない
- プライベートの旅費を全額経費に計上し続ける
- 副業収入を長年にわたって一切申告しない


一方で次のような状況は、申告漏れと判断されやすいです。


- 税法の改正に気づかず古いルールで計算していた
- 副業収入が20万円以下と誤解して無申告だった(実際は申告不要の条件を満たしていないケース)


ただし、「知らなかった」という主張が毎回通じるわけではありません。何年も繰り返していた場合や、金額が大きい場合は意図的と判断されるリスクが高まります。「申告漏れなら問題ない」とは言い切れません。


これが判断の分かれ目です。


不安な点がある場合は、税理士などの専門家に現状の申告内容を一度確認してもらうことが、最も確実なリスク回避になります。国税庁の「e-Tax」を利用すれば、過去の申告内容のオンライン確認も可能です。


国税庁「こんな収入の申告漏れにご注意」(副業・フリマ収入など申告漏れになりやすい収入一覧)




脱税の世界史 (宝島社新書)