

年収が上がるほど、手取りがどんどん減ると思っていませんか?
所得税の税率は、課税される所得金額に応じて5%から45%まで7段階に設定されています。これを「超過累進税率」と呼びます。
重要なのは、「超えた部分にだけ高い税率が適用される」という点です。課税所得が400万円だからといって、400万円すべてに20%がかかるわけではありません。195万円以下の部分には5%、195万円〜330万円の部分には10%、残りの330万円〜400万円の部分にだけ20%が適用されます。
これが原則です。
以下は国税庁が公表している速算表(令和7年4月1日現在)です。「控除額」は、各段階の税率を一括計算できるように調整された金額です。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜194万9,000円 | 5% | 0円 |
| 195万円〜329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円〜694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円〜899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
速算表の使い方はシンプルで、「課税所得 × 税率 ー 控除額 = 所得税額」という計算式に当てはめるだけです。たとえば課税所得が700万円の場合、700万円 × 23% ー 63万6,000円 = 97万4,000円が所得税額になります。
この「控除額」は計算を簡単にするための調整値であり、税が免除される枠ではありません。税率の区切りごとに生じる差額をあらかじめ引いているだけです。つまり「控除額が大きい=税負担が少ない」という意味ではないので注意してください。
なお、令和7年分からは、基準所得金額が3億3,000万円を超える場合、超える部分の22.5%相当額が通常の所得税を上回るときに追加徴収される新ルールも加わっています。
参考リンク(国税庁 No.2260):所得税の税率一覧と速算表の公式情報
No.2260 所得税の税率|国税庁
所得税は年収に直接かかるものではありません。計算は段階を踏んで行われます。
まず、1年間の給与収入から「給与所得控除」を引いて「給与所得」を出します。給与所得控除は会社員に認められた概算経費で、年収に応じて55万円〜195万円が控除されます。たとえば年収600万円なら給与所得控除は164万円、給与所得は436万円となります。
次に、給与所得からさらに「所得控除」を差し引きます。所得控除は基礎控除(48万円)、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除など全16種類があり、個人の事情に応じた税負担の調整機能を果たしています。
これが条件です。
控除を差し引いた残りが「課税所得」であり、ここに速算表の税率を適用して初めて所得税額が決まります。年収600万円の独身会社員(基礎控除+社会保険料控除のみ適用)の課税所得はおよそ300万円台になるケースが一般的です。
年収と課税所得は別物です。この認識がないと「自分に何%の税率が適用されているのか」を正確に把握できないため、節税の効果も計算しにくくなります。
課税所得が基本です。
参考リンク(三菱UFJ銀行):所得税の計算方法と控除の種類を一覧でわかりやすく解説
控除とは?所得控除と税額控除の違いや手続きをわかりやすく解説|三菱UFJ銀行
毎月の給与明細や確定申告書に「復興特別所得税」という項目が記載されているのに気づいている人は少なくありません。しかし、これが正確にいくら上乗せされているかを把握している人は意外と少ないのが実情です。
復興特別所得税は2013年(平成25年)から2037年(令和19年)末まで、東日本大震災の復興財源として所得税に一律2.1%が上乗せされる制度です。25年という長期にわたる課税ということですね。
計算方法は「所得税額 × 2.1%」です。たとえば所得税額が10万円であれば、復興特別所得税は2,100円追加で納付します。源泉徴収では実質的に税率が102.1%で計算されるため、たとえば源泉徴収税率10.21%という数字はこの復興特別所得税込みの数値です。
なお、令和8年度税制改正の大綱では、この税率が2.1%から1.1%へ引き下げられ、期間が令和29年(2047年)まで延長される方向で調整されています。
つまり2037年以降も課税は続きます。
復興特別所得税は節税の対象外ですが、実際の手取り計算や確定申告の際に金額がずれる原因になります。年末調整の計算や投資の税金計算でも使われる数字なので、必ず把握しておきましょう。
参考リンク(国税庁):復興特別所得税の計算方法と対象期間の公式情報
個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁
参考リンク(財務省):令和8年度税制改正大綱(復興特別所得税の税率変更)
令和8年度税制改正の大綱(6/9)|財務省
累進課税なのに、年収が1億円を超えると所得税の実効税率が「下がる」現象があります。意外ですね。
これが「1億円の壁」と呼ばれる問題で、金融に興味がある人なら特に知っておくべき内容です。なぜ下がるのかというと、株式の配当や譲渡益などの「金融所得」には累進税率ではなく、一律20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の分離課税が適用されているためです。
給与所得者であれば課税所得が1,800万円を超えると税率40%、4,000万円超で45%という高い税率に直面します。一方で、収入のほとんどが配当や株式譲渡益である超高所得者は一律20%台で収まるため、所得が1億円を超えたあたりから相対的な実効税率が低下するという逆転現象が起きます。
痛いですね。
財務省のデータによると、所得が1億円前後をピークに実効税率は逆転します。この課題への対応として、令和7年(2025年)からは年間所得30億円超の超富裕層に対して最低22.5%の「ミニマムタックス」が導入されました。さらに令和8年度税制改正では、この対象を年間所得6億円超に拡大する方向で調整が進んでいます。
投資で大きな利益を得ている人にとっては、申告分離課税か総合課税かの選択が節税上の大きな判断ポイントになります。課税所得が比較的低い年(例:330万円以下の場合、所得税率10%)は、配当所得を総合課税で申告することで20%より低い税率が適用されてお得になる場合があります。これは使えそうです。
参考リンク(FP総研):1億円の壁とミニマムタックス導入の解説
【No496】金融所得課税について~「1億円の壁」への対応策が開始|FP総研
税率の一覧を覚えただけでは意味がありません。大事なのは「自分の課税所得がどのブラケットにいるか」を把握して、節税手段の効果を金額で計算することです。
たとえば、年収500万円の独身会社員(課税所得が約300万円〜330万円程度)は、適用税率が10%の区間にいるケースが多いです。この場合、iDeCoで月2万円(年24万円)を拠出すると、所得控除が24万円増え、所得税の節税効果は24万円×10%=2万4,000円になります。住民税(10%)との合算では年間約4万8,000円の節税効果が生まれます(ソイコ調べ)。
節税効果は「控除額 × 適用税率」で決まります。つまり、適用税率が高い人ほどiDeCoの節税効果も大きくなるということですね。課税所得が900万円超(税率33%)の場合、同じ月2万円のiDeCo拠出で所得税だけで年7万9,200円の節税になります。
ふるさと納税も同様です。年収500万円の独身者であれば、上限約6万1,000円の寄付が実質2,000円の自己負担で済みます。これは所得控除ではなく住民税の控除がメインの仕組みですが、課税所得を減らすiDeCoと組み合わせることで、上限額が変動する点には注意が必要です。
iDeCoとふるさと納税の併用が条件です。
節税の行動として最初にやるべきことは、自分の課税所得を計算し、適用される税率のブラケットを確認すること。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やマネーフォワードなどのシミュレーションツールで簡単に確認できます。現状把握が最初の一歩です。
参考リンク(マネーフォワード):iDeCoの節税効果と計算方法の詳細解説
参考リンク(国税庁):確定申告書等作成コーナー(税額のシミュレーションに活用)
確定申告書等作成コーナー|国税庁