
気象庁検潮所で確認された津波の高さは、福島県相馬で9.3m以上、宮城県石巻市鮎川で8.6m以上、岩手県宮古で8.5m以上、岩手県大船渡で8.0m以上、茨城県大洗で4.0mを記録しています 。これらの観測値には「以上」と表記されているものが多く、観測施設が津波により被害を受けたため、後続の波でさらに高くなった可能性があります 。宮城県女川漁港では14.8mの津波痕跡が確認されており、港湾空港技術研究所による調査で明らかになりました 。
参考)特集 東日本大震災 : 防災情報のページ - 内閣府
東日本大震災の津波は、2011年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)により引き起こされ、震源域から放出されたエネルギーは阪神大震災の約1,400倍に相当する規模でした 。この巨大地震により、海底のプレート境界で岩盤が崩壊し、震源域は南北約450km、東西約200kmに及ぶ広範囲にわたりました 。
参考)2011.3.11 牙をむいた海:日本経済新聞
陸地の斜面をさかのぼって到達した高さ(遡上高)については、国内観測史上最大となる40.5mが全国津波合同調査グループによって観測されました 。岩手県沿岸では最大40m程度の遡上高が確認され、これは1896年の明治三陸地震や1933年の昭和三陸地震で津波が高かった地域と良く一致しています 。東京大学地震研究所の都司嘉宣准教授らの現地調査では、岩手県宮古市から久慈市にかけての沿岸12kmにわたって30mを超える遡上高が観測され、調査した5か所全てで30mを超えていることが確認されています 。
参考)東日本大震災から10年 ─ 「最大クラスを想定しなければなら…
国土地理院の発表によると、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の6県62市町村における浸水範囲面積の合計は561km²に達し、これは山手線の内側の面積の約9倍に相当します 。仙台平野等では海岸線から約5km内陸まで浸水していることが浸水範囲概況図から確認できます 。遡上高の定義は平均的な海面の高さから陸上で到達した高さまでを指し、陸上は崖などに残された倒木や漂着物の高さなどで計測されています 。
東日本大震災は金融市場にも深刻な影響をもたらし、日本銀行は被災地への現金供給など金融・決済機能の維持に向けた取組に加え、金融市場の安定確保のための大量の資金供給オペレーションを実施しました 。さらに景気下振れリスクへの対応として、コマーシャルペーパー(CP)や社債等のリスク性資産を中心とした資産購入等基金の増額による一段の金融緩和を行いました 。
参考)https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je11/pdf/p01023_1.pdf
証券市場の流動性に関する研究によると、大震災が市場流動性を悪化させる効果は60日間続き、市場流動性に与える効果は時間とともに減少するものの、小規模企業のほうがより大きな影響を受けることが確認されています 。無担保コールレート(オーバーナイト物)は東日本大震災直後から0.1%を下回る水準に低下し、誘導目標は震災前から0~0.1%程度と変更はないものの、金融緩和の一段の強化を受けて市場レートがさらに低下しました 。
参考)https://www.yu-cho-f.jp/wp-content/uploads/watanabe29.pdf
津波の観測には複数の手法が用いられており、GPS波浪計による沖合での観測データと沿岸の検潮所での観測値を組み合わせることで、より正確な津波の実態把握が可能となっています 。GPS波浪計は岸から10~20km沖合、水深約100~300mの海域で津波を観測し、最大で20~30cmの津波高を記録しましたが、一般的に津波高は水深が浅くなるに伴い大きくなる性質があるため、沿岸の検潮所ではより大きな値が観測されました 。
参考)https://www.pari.go.jp/unit/kaisy/PDF/347060972.pdf
今回の津波は2004年のスマトラ沖地震に並ぶ史上最大規模であり、明治三陸地震(M8.2-8.5)を大きく上回る規模となりました 。明治三陸地震では200kmにわたる調査エリアの中で遡上高30mを超えた地点はわずか2か所だったのに対し、東日本大震災では12kmの範囲で5か所すべてが30mを超えるという記録的な高さを示しました 。これらの観測データは、将来の津波予測や防災計画の策定において極めて重要な基礎資料となっています。
参考)津波の遡上高、30メートル超えが沿岸12キロで 東大地震研が…
東日本大震災の津波は、過去の歴史的津波と比較して格段に大きな規模を記録しており、1896年の明治三陸沖地震による津波の岩手県大船渡市三陸町での38.2m(遡上高)を上回る40m以上を記録し、観測史上最大となりました 。明治三陸地震の津波は遡上高38.2mでしたが、津波自身の波高は10~15m程度だったと推定されており、遡上高が津波の高さの約4倍に達する場合があることを示しています 。
参考)津波の痕跡高と遡上高の違い 東日本大震災は遡上高が40メート…
岩手県の被害状況を見ると、県内の人的被害は死者4,672人、行方不明者1,122人、合計5,794人にも及び、家屋被害は全壊・半壊を併せて26,077棟にのぼり、そのほとんどが津波による被害となっています 。この津波は1896年(明治29年)、1933年(昭和8年)の三陸地震津波、1960年(昭和35年)のチリ地震津波を凌ぐ大きなもので、特に沿岸地域における人的、物的被害は甚大なものとなりました 。太平洋の対岸まで到達し、地球の裏側となるアメリカ大陸と南アメリカ大陸の西岸でも2mを超す津波が観測されるなど、その影響は地球規模に及びました 。
参考)岩手県の被害状況 | いわて震災津波アーカイブ~希望~