県民税(都道府県民税)計算と所得割の税率や均等割の仕組み

県民税(都道府県民税)計算と所得割の税率や均等割の仕組み

県民税(都道府県民税)計算の基本と仕組み

県民税(都道府県民税)の基本
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構成要素

県民税は「均等割」と「所得割」の2つから構成されています

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納税先

1月1日時点で住所がある都道府県に納める地方税です

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徴収方法

給与所得者は特別徴収、それ以外は普通徴収が基本です

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県民税(都道府県民税)は、私たちが住んでいる都道府県に納める地方税の一つです。この税金は、地方自治体が提供する上下水道、消防・救急サービス、福祉、学校教育などの行政サービスを支えるための重要な財源となっています。

 

県民税は、毎年1月1日現在で都道府県内に住所がある個人に課税されます。また、都道府県内に事務所や事業所、家屋敷があり、その所在する市町村内に住所がない個人にも均等割が課税されます。

 

県民税と市町村民税を合わせて「住民税」と呼ぶことが一般的ですが、実際には別々の税金であり、それぞれ計算方法や税率が定められています。ただし、納税者の利便性を考慮して、市町村が県民税と市町村民税をまとめて徴収する仕組みになっています。

 

県民税の均等割と所得割の計算方法

県民税は「均等割」と「所得割」の2つの要素から構成されています。

 

均等割は、所得の多少にかかわらず一律に課される税金です。標準的な金額は1,000円ですが、東日本大震災の復興財源確保のため、平成26年度から令和5年度までの10年間は、均等割額に500円が上乗せされ、1,500円となっていました。令和6年度からは通常の1,000円に戻っています。ただし、地域によっては独自の超過課税を実施している場合もあります。例えば、神奈川県では水源環境の保全・再生のために超過課税を実施しており、均等割は1,300円となっています。
所得割は、前年の所得に応じて課税される税金です。所得割の計算式は以下の通りです。

所得割 = (所得金額 - 所得控除額) × 税率 - 税額控除額

所得割の標準税率は4%ですが、政令指定都市に住んでいる場合は2%となります。これは、政令指定都市では県から市へ事務権限が移譲されるため、税率の配分も変わるためです。

 

県民税の課税所得金額の算出と所得控除

県民税の課税所得金額を算出するには、まず総所得金額から所得控除額を差し引きます。

 

総所得金額とは、給与所得、事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、一時所得、雑所得などを合計した金額です。これらの所得は、所得税と同じ計算方法で算出されます。

 

所得控除には、以下のようなものがあります。

  • 基礎控除(48万円)
  • 配偶者控除(38万円。ただし、所得制限あり)
  • 配偶者特別控除(最大38万円。ただし、配偶者の所得に応じて控除額が変動)
  • 扶養控除(扶養親族1人につき33万円。ただし、16歳未満の扶養親族は対象外)
  • 障害者控除(26万円。特別障害者は30万円)
  • 寡婦控除(26万円)
  • 勤労学生控除(26万円)
  • 医療費控除(実際に支払った医療費から保険金などで補填される金額と10万円を差し引いた金額。ただし、所得の合計額の5%を超える部分)
  • 社会保険料控除(支払った社会保険料の全額)
  • 生命保険料控除(最大7万円)
  • 地震保険料控除(最大2.5万円)
  • 小規模企業共済等掛金控除(支払った掛金の全額)

これらの所得控除を総所得金額から差し引いて、課税所得金額を算出します。

 

県民税の税額控除と特別徴収の仕組み

県民税の所得割額から差し引かれる税額控除には、以下のようなものがあります。

  1. 調整控除:所得税と住民税の人的控除額の差額を調整するための控除です。
  2. 住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除):所得税の住宅ローン控除から控除しきれなかった金額を住民税から控除する制度です。
  3. 寄附金税額控除:ふるさと納税などの寄附金に対する控除です。
  4. 配当割額控除:上場株式等の配当所得に対して既に特別徴収された県民税相当額を控除します。
  5. 株式等譲渡所得割額控除:上場株式等の譲渡所得に対して既に特別徴収された県民税相当額を控除します。

県民税の納付方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。

 

特別徴収は、給与所得者や年金受給者に適用される納付方法で、給与や年金から天引きされます。給与所得者の場合は6月から翌年5月までの12回に分けて徴収され、年金受給者の場合は年6回の年金支給時に徴収されます。
普通徴収は、給与所得者や年金受給者以外の所得者(自営業者など)に適用される納付方法で、納税通知書によって自分で納付します。通常、6月、8月、10月、翌年1月の4回に分けて納付します。

県民税の計算例と具体的な税額シミュレーション

ここでは、県民税の計算例を示します。以下の条件で計算してみましょう。

  • 総所得金額:500万円
  • 所得控除額:150万円
  • 税額控除額:0円
  • 所得割の税率:4%(政令指定都市以外に居住)
  • 均等割の額:1,000円

まず、課税所得金額を計算します。

課税所得金額 = 総所得金額 - 所得控除額

課税所得金額 = 500万円 - 150万円 = 350万円

次に、所得割額を計算します。

所得割額 = 課税所得金額 × 税率 - 税額控除額

所得割額 = 350万円 × 4% - 0円 = 14万円

最後に、県民税の総額を計算します。

県民税総額 = 所得割額 + 均等割額

県民税総額 = 14万円 + 1,000円 = 14万1,000円

これが、この条件での県民税の額です。実際には、市町村民税も合わせて計算し、合計額が住民税として徴収されます。

 

もう一つ、政令指定都市に居住している場合の例も見てみましょう。

  • 総所得金額:500万円
  • 所得控除額:150万円
  • 税額控除額:0円
  • 所得割の税率:2%(政令指定都市に居住)
  • 均等割の額:1,000円

課税所得金額は同じく350万円です。所得割額は。

所得割額 = 350万円 × 2% - 0円 = 7万円

県民税総額は。

県民税総額 = 7万円 + 1,000円 = 7万1,000円

政令指定都市に居住している場合、県民税の所得割率が低くなる代わりに、市民税の所得割率が高くなります(標準6%→8%)。これは、県から市へ事務権限が移譲されるためです。

 

県民税における令和6年度の定額減税と最新制度

令和6年度(2024年度)の税制改正により、個人住民税(県民税と市町村民税)において定額減税が実施されています。この減税措置は、物価高騰による家計負担の軽減を目的としています。

 

具体的には、納税者本人および配偶者を含めた扶養家族一人につき、1万円の減税が行われます。ただし、この減税措置は、納税者の合計所得金額が1,805万円(給与収入のみの場合は給与収入2,000万円)以下の場合に限られます。

 

例えば、夫婦と子ども2人の4人家族の場合、最大で4万円の減税となります。この減税額は、県民税と市町村民税の所得割額から按分して控除されます。

 

また、令和5年度(2023年度)で終了した東日本大震災の復興財源確保のための均等割の上乗せ(県民税と市町村民税それぞれ500円ずつ、合計1,000円)が廃止され、均等割額が元に戻っています。

 

これらの税制改正は、確定申告や住民税の申告において特別な手続きは不要で、自動的に適用されます。ただし、所得制限を超える高所得者には適用されませんので注意が必要です。

 

県民税の確定申告書記載時の注意点と税理士のアドバイス

確定申告書の第二表には「住民税に関する事項」という欄があり、ここに必要事項を正確に記入することが重要です。記載漏れがあると、税額控除などが適用されない場合があります。

 

特に注意すべき点は以下の通りです。

  1. 扶養親族に関する情報:16歳未満の扶養親族や別居の扶養親族についても、氏名・個人番号・続柄・生年月日などを正確に記入する必要があります。
  2. 配当に関する特例:所得税で確定申告不要制度を選択した非上場株式の少額配当等がある場合、住民税では申告が必要です。
  3. 寄附金税額控除:ふるさと納税などの寄附金について、寄附先と金額を正確に記入します。
  4. 徴収方法の選択:給与からの天引き(特別徴収)を希望するか、自分で納付(普通徴収)するかを選択します。
  5. 配当割額控除・株式等譲渡所得割額控除:上場株式等の配当所得や譲渡所得について申告する場合、特別徴収された住民税額を記入します。

税理士として、クライアントにアドバイスする際には、以下の点に注意しましょう。

  • 所得控除の最適化:医療費控除や寄附金控除など、適用可能な所得控除を漏れなく申告するようアドバイスします。
  • ふるさと納税の活用:ふるさと納税は、2,000円の自己負担で寄附金相当額が住民税から控除される仕組みです。控除限度額(住民税所得割額の20%)を考慮した上で、効果的な活用方法を提案します。
  • 住宅ローン控除の確認:所得税の住宅ローン控除から控除しきれなかった金額が住民税から控除される制度について、適用条件や控除額を確認します。
  • 政令指定都市と一般市町村の違い:政令指定都市に住んでいる場合と一般市町村に住んでいる場合で、県民税と市町村民税の税率配分が異なることを説明します。
  • 超過課税の確認:地域によっては、標準税率を超える超過課税を実施している場合があります。クライアントの居住地の税率を確認することが重要です。

県民税の計算は複雑ですが、正確に理解し適切に申告することで、クライアントの税負担を適正化することができます。特に、所得控除や税額控除を最大限活用することで、納税額を合法的に抑えることが可能です。

 

税理士として、常に最新の税制改正情報を把握し、クライアントに最適なアドバイスを提供することが重要です。また、確定申告書の記載ミスによる不利益が生じないよう、細心の注意を払って申告書を作成・確認することが求められます。