所得税 計算 方法と税率 控除 確定申告

所得税 計算 方法と税率 控除 確定申告

所得税 計算 方法と税率

所得税計算の基本
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計算の流れ

所得税は「収入 → 所得 → 課税所得 → 税額計算」の流れで算出します

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累進課税制度

所得が多いほど税率が上がる7段階の税率構造(5%~45%)

🧮
復興特別所得税

2037年まで所得税額の2.1%が加算されます

所得税は個人の所得に対してかかる国税です。会社員やアルバイト、個人事業主など、一定額以上の所得がある人は納税の義務があります。所得税の計算は複雑に見えますが、基本的な仕組みを理解すれば正確に計算することができます。

 

所得税の基本的な計算式は「課税所得金額 × 税率 - 控除額」です。この計算式を理解するためには、所得の種類や控除の仕組みについても知っておく必要があります。

 

所得税 計算の基本的な流れと手順

所得税の計算は以下の手順で行います。

  1. 収入金額の把握:1月1日から12月31日までの年間収入を集計します
  2. 所得金額の計算:収入から必要経費や給与所得控除などを差し引きます
  3. 所得控除の適用基礎控除配偶者控除社会保険料控除などを差し引きます
  4. 課税所得金額の算出:所得金額から所得控除を差し引いた金額が課税所得金額です
  5. 税額の計算:課税所得金額に税率をかけ、控除額を差し引きます
  6. 復興特別所得税の加算:所得税額の2.1%を加算します(2037年まで)

この一連の流れを正確に行うことで、適切な所得税額を算出することができます。特に税理士の方は、クライアントの状況に応じた正確な計算が求められます。

 

所得税 計算における所得の種類と区分

所得税法では、所得を10種類に区分しています。所得の種類によって計算方法が異なるため、正確な区分が重要です。

 

主な所得の種類は以下の通りです。

  • 給与所得:会社員やアルバイトの給与、賞与など
  • 事業所得:個人事業主の事業による所得
  • 不動産所得:不動産の貸付けによる所得
  • 利子所得:預金や公社債の利子など
  • 配当所得:株式の配当金など
  • 退職所得:退職金や退職手当など
  • 譲渡所得:土地や建物、株式などの譲渡による所得
  • 山林所得:山林の伐採や譲渡による所得
  • 一時所得:懸賞や福引の賞金、生命保険の満期返戻金など
  • 雑所得:公的年金、原稿料、講演料など上記に当てはまらない所得

これらの所得は「総合課税」と「分離課税」に分けられます。総合課税は所得を合算して累進税率を適用する方式で、分離課税は他の所得と区分して計算する方式です。

 

所得税 計算で適用される税率と控除額の一覧表

所得税は「超過累進課税制度」を採用しており、課税所得金額に応じて税率が段階的に上がります。2024年現在の所得税率と控除額は以下の通りです。

課税所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

この表を使って所得税額を計算する際は、「課税所得金額 × 税率 - 控除額」の式を使います。例えば、課税所得金額が300万円の場合。
300万円 × 10% - 9万7,500円 = 20万2,500円
さらに、2037年までは東日本大震災の復興財源として、所得税額に2.1%の復興特別所得税が加算されます。
20万2,500円 × 2.1% = 4,252円
20万2,500円 + 4,252円 = 20万6,752円
これが最終的な所得税額となります。

 

所得税 計算における給与所得者の具体的な計算例

給与所得者の所得税計算を具体例で説明します。年収700万円(通勤手当18万円/年を含む)の会社員の場合。
1. 給与所得の計算

  • 年間収入:700万円
  • 非課税所得(通勤手当):18万円
  • 給与所得控除:700万円 × 10% + 110万円 = 180万円
  • 給与所得:700万円 - 18万円 - 180万円 = 502万円

2. 所得控除の適用(例として以下を仮定)

  • 基礎控除:48万円
  • 社会保険料控除:100万円
  • 生命保険料控除:4万円
  • 地震保険料控除:1万5千円
  • 配偶者控除:38万円
  • 所得控除合計:191万5千円

3. 課税所得金額の計算

  • 課税所得金額:502万円 - 191万5千円 = 310万5千円
  • 1,000円未満切り捨て:310万円

4. 所得税額の計算

  • 税率:20%(330万円以下なので)
  • 控除額:42万7,500円
  • 所得税額:310万円 × 20% - 42万7,500円 = 19万2,500円

5. 復興特別所得税の加算

  • 復興特別所得税:19万2,500円 × 2.1% = 4,042円
  • 所得税額合計:19万2,500円 + 4,042円 = 19万6,542円

このように、給与所得者の所得税は段階的に計算していきます。実際には、会社が年末調整で所得税を精算するため、多くの給与所得者は確定申告をする必要がありません。

 

所得税 計算における個人事業主の節税戦略

個人事業主の場合、所得税の計算は給与所得者と異なり、事業所得として計算します。個人事業主が効果的に節税するためのポイントをいくつか紹介します。

 

1. 経費の適切な計上
個人事業主は事業に関連する支出を経費として計上できます。以下のような経費を見落とさないようにしましょう。

  • 事務所家賃や光熱費(自宅兼事務所の場合は按分)
  • 通信費(インターネット、電話料金)
  • 交通費、出張費
  • 接待交際費
  • 消耗品費、備品費
  • 専門書籍や参考資料費
  • 研修費、セミナー参加費
  • 保険料(事業関連のもの)

2. 青色申告特別控除の活用
青色申告を選択し、複式簿記で記帳して期限内に申告すると、最大65万円の特別控除が受けられます。e-Taxによる電子申告と電子帳簿保存を行うことで、控除額が最大化されます。

 

3. 小規模企業共済や個人型確定拠出年金(iDeCo)の活用
小規模企業共済の掛金は全額所得控除の対象となります。また、iDeCoも所得控除の対象となるため、将来の資産形成と節税を同時に行うことができます。

 

4. 家族従業員の給与支払い
家族を従業員として雇用し、適正な給与を支払うことで、所得分散による節税効果が期待できます。ただし、実際に業務に従事していることや給与の金額が適正であることが条件です。

 

5. 消費税の免税事業者制度の活用
課税売上高が1,000万円以下の場合、消費税の納税が免除される「免税事業者」となります。ただし、将来的に課税事業者になる可能性がある場合は、計画的な対応が必要です。

 

これらの戦略を適切に組み合わせることで、個人事業主は合法的に税負担を軽減することができます。ただし、過度な節税策は税務調査の対象となる可能性があるため、適切なバランスを保つことが重要です。

 

税理士に相談することで、自分の事業形態に最適な節税戦略を立てることができます。

 

所得税 計算と確定申告

確定申告のポイント
📅
申告期間

毎年2月16日~3月15日までに申告・納付が必要です

📝
必要書類

源泉徴収票、領収書、控除証明書などの準備が重要

💻
e-Tax活用

電子申告で手続きが簡素化され、還付も早くなります

所得税の計算は確定申告と密接に関連しています。確定申告は、1年間の所得と税額を自分で計算して申告する制度です。ここでは、確定申告の基本と所得税計算の関係について解説します。

 

所得税 計算と確定申告が必要なケース

確定申告が必要なケースは以下の通りです。

  1. 給与所得者で以下に該当する場合
    • 年収2,000万円を超える
    • 2か所以上から給与を受けている
    • 給与以外の所得が20万円を超える
    • 年末調整を受けていない
  2. 事業所得がある場合
    • 個人事業主
    • フリーランス
    • 副業収入がある会社員
  3. 不動産所得がある場合
    • アパートやマンションのオーナー
    • 駐車場経営者
  4. 譲渡所得がある場合
    • 土地や建物を売却した
    • 株式等の譲渡益がある(特定口座(源泉徴収あり)以外)
  5. 医療費控除や寄附金控除などを受ける場合
    • 年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた
    • ふるさと納税をした(ワンストップ特例を利用していない場合)

確定申告は毎年2月16日から3月15日までの期間に行います。期限を過ぎると無申告加算税などのペナルティが課される可能性があるため、期限内の申告が重要です。

 

所得税 計算における所得控除の種類と適用条件

所得控除は課税所得金額を減らすことで税負担を軽減する制度です。主な所得控除の種類と適用条件は以下の通りです。
1. 基礎控除

  • 金額:48万円
  • 条件:所得が2,500万円以下の全ての納税者に適用(所得が高くなると控除額が逓減)

2. 配偶者控除

  • 金額:最大38万円(納税者の所得により変動)
  • 条件:納税者の配偶者の年間所得が48万円以下

3. 配偶者特別控除

  • 金額:最大38万円(配偶者の所得により変動)
  • 条件:納税者の配偶者の年間所得が48万円超133万円以下

4. 扶養控除

  • 金額:一般扶養親族は38万円、特定扶養親族(19~22歳)は63万円
  • 条件:納税者が扶養する親族の年間所得が48万円以下

5. 社会保険料控除

  • 金額:支払った社会保険料の全額
  • 条件:健康保険、厚生年金、国民年金、雇用保険などの保険料を支払っている

6. 生命保険料控除

  • 金額:最大12万円(一般・介護医療・個人年金の各保険で最大4万円)
  • 条件:生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払っている

7. 地震保険料控除

  • 金額:最大5万円
  • 条件:地震保険料を支払っている

8. 医療費控除

  • 金額:(支払った医療費 - 保険金等で補填される金額)- 10万円(または所得の5%のいずれか少ない方)
  • 上限額:200万円
  • 条件:年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えている

9. 寄附金控除

  • 金額:(寄附金額 - 2,000円)× 所得税率
  • 条件:認定NPO法人や公益法人、自治体などへの寄附

これらの所得控除を適切に活用することで、課税所得金額を減らし、所得税の負担を軽減することができます。

 

所得税 計算と年末調整の関係性

年末調整は、給与所得者の所得税を精算するための制度です。会社が従業員に代わって所得税の過不足を調整し、確定申告の手間を省くことができます。

 

年末調整の仕組み

  1. 会社は毎月の給与から「源泉徴収税額表」に基づいて所得税を天引きします
  2. 年末に従業員から各種控除証明書や申告書を集めます
  3. 1年間の所得税額を再計算し、過不足を12月の給与で調整します

年末調整で対応できる控除