地方法人税 計算の仕方と税率の変遷

地方法人税 計算の仕方と税率の変遷

地方法人税の計算方法と税率

地方法人税の基本情報
📊
計算方法

法人税額 × 税率(10.3%)

📅
創設年

平成26年(2014年)

🏢
納税先

国(地方交付税の財源)

地方法人税の計算式と具体例

地方法人税の計算は、一見シンプルに見えますが、その基礎となる法人税額の算出には注意が必要です。基本的な計算式は以下の通りです。
地方法人税額 = 法人税額 × 10.3%
ここで重要なのは、法人税額の正確な算出です。法人税額は企業の規模や所得によって異なる税率が適用されるため、まずはこの部分を正確に把握する必要があります。

 

具体例を見てみましょう。

  1. 中小企業(資本金1億円以下)の場合。
    • 課税所得800万円以下:15%
    • 課税所得800万円超:23.2%
  2. 大企業(資本金1億円超)の場合。
    • 一律23.2%

例えば、課税所得が1,000万円の中小企業の場合。

  • 800万円 × 15% = 120万円
  • 200万円 × 23.2% = 46.4万円
  • 法人税額 = 120万円 + 46.4万円 = 166.4万円

この法人税額に基づいて地方法人税を計算すると。
地方法人税額 = 166.4万円 × 10.3% = 17.1392万円
最終的に、100円未満を切り捨てて、17.1300万円が地方法人税額となります。

 

地方法人税の税率の変遷と背景

地方法人税の税率は、創設時から現在まで変更を経ています。その変遷を理解することは、税制の動向を把握する上で重要です。

 

  1. 創設時(平成26年10月1日):4.4%
  2. 平成31年(令和元年)10月1日以降:10.3%

この税率の引き上げには、地方税の再分配機能を強化するという目的がありました。同時に、法人住民税の法人税割の税率が引き下げられ、全体としての税負担は変わらないよう調整されています。

 

この変更の背景には、地方自治体間の税収格差を是正する狙いがあります。東京都などの大都市に税収が集中する傾向があり、地方との格差が問題視されていました。地方法人税の税率引き上げにより、より多くの財源を国が徴収し、地方交付税として再分配することが可能になりました。

 

国税庁:地方法人税の概要と計算方法の詳細
上記リンクでは、地方法人税の詳細な計算方法や申告手続きについて、国税庁の公式見解を確認することができます。

 

地方法人税の計算における注意点と特例

地方法人税の計算には、いくつかの注意点や特例があります。これらを正確に理解し適用することで、適切な税額計算が可能になります。

 

  1. 中小法人の軽減税率

    中小法人(資本金1億円以下)に適用される軽減税率は、一定の条件を満たす必要があります。例えば、大企業の子会社である場合や、複数の大企業に支配されている場合は、軽減税率が適用されないことがあります。

     

  2. 税額控除の影響

    研究開発税制や賃上げ税制などの各種税額控除は、法人税額を減少させるため、結果的に地方法人税額も減少します。これらの控除を適切に活用することで、総合的な税負担を軽減できる可能性があります。

     

  3. 連結納税制度との関係

    連結納税を採用している企業グループの場合、地方法人税の計算基礎となる法人税額は連結グループ全体の法人税額となります。各社の個別帰属額ではなく、グループ全体の税額に基づいて計算されることに注意が必要です。

     

  4. 外国税額控除の影響

    外国税額控除を適用している場合、控除後の法人税額が地方法人税の計算基礎となります。国際取引を行う企業にとっては、この点を考慮した税務戦略が重要になります。

     

  5. 復興特別法人税との関係

    復興特別法人税は平成26年3月31日で廃止されましたが、その後の地方法人税創設と税率変更には関連性があります。復興特別法人税の廃止による税収減を補填する意味合いも、地方法人税には含まれています。

     

これらの注意点や特例を適切に考慮することで、より正確な地方法人税の計算が可能になります。特に、中小企業の税務を担当する税理士にとっては、軽減税率の適用条件を正確に把握することが重要です。

 

財務省:法人課税の概要と最新の税制改正情報
上記リンクでは、法人課税全般に関する最新の情報や税制改正の動向を確認することができます。地方法人税に関連する改正情報も含まれているため、定期的なチェックが推奨されます。

 

地方法人税の申告・納付方法と期限

地方法人税の申告・納付は、法人税と同時に行う必要があります。その手続きと期限について、詳細を見ていきましょう。

 

  1. 申告書の提出

    地方法人税の申告は、法人税の確定申告書と同時に行います。具体的には、法人税申告書別表一の「地方法人税の額の計算」欄に記入します。

     

  2. 申告・納付期限

    原則として、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。例えば、3月決算の会社であれば、5月末日が期限となります。

     

  3. 納付方法

    納付には以下の方法があります。

    • 電子納税(e-Tax)
    • 金融機関や税務署の窓口での納付
    • 振替納税
  4. 中間申告

    事業年度が6ヶ月を超える法人で、前事業年度の税額が一定以上の場合、中間申告が必要です。

     

  5. 修正申告・更正の請求

    法人税の修正申告や更正の請求を行う場合、地方法人税についても同様の手続きが必要となります。

     

  6. 延納制度

    地方法人税にも法人税と同様の延納制度があります。ただし、要件や手続きが異なる場合があるので注意が必要です。

     

申告・納付の遅延は、加算税や延滞税の対象となるため、期限の厳守が重要です。特に、決算期が集中する3月決算の企業を多く抱える税理士事務所では、申告期限の管理を徹底する必要があります。

 

国税庁:法人税等の申告手続きに関する総合案内
上記リンクでは、法人税および地方法人税の申告手続きに関する詳細な情報や各種様式をダウンロードすることができます。申告実務の際に参考になります。

 

地方法人税の計算ミスを防ぐためのチェックポイント

地方法人税の計算ミスは、単に税額の誤りだけでなく、法人の財務状況の誤認にもつながる可能性があります。以下に、計算ミスを防ぐためのチェックポイントをまとめます。

 

  1. 法人税額の正確な把握
    • 各種税額控除の適用漏れがないか
    • 軽減税率の適用条件を満たしているか
    • 連結納税の場合、グループ全体の税額を使用しているか
  2. 税率の確認
    • 現行の税率(10.3%)を使用しているか
    • 事業年度によって適用税率が異なる場合、正しい税率を使用しているか
  3. 計算過程のチェック
    • 端数処理(100円未満の切り捨て)は正しく行われているか
    • 電卓の打ち間違いはないか
  4. 申告書との整合性
    • 法人税申告書別表一の金額と一致しているか
    • 地方法人税申告書の各項目が正しく転記されているか
  5. 過年度との比較
    • 前年度と比較して著しい変動がある場合、その理由は明確か
  6. システムの更新
    • 税務ソフトウェアが最新の税制に対応しているか
    • 自動計算機能を使用している場合、結果の妥当性を確認しているか
  7. 特殊な状況への対応
    • 事業年度の変更がある場合、月割計算は正しく行われているか
    • 合併や分割などの組織再編がある場合、その影響は正しく反映されているか
  8. ダブルチェック体制
    • 計算者以外の第三者によるチェックを行っているか
    • チェックリストを使用し、系統的な確認を行っているか

これらのチェックポイントを踏まえ、定期的な研修や社内マニュアルの整備を行うことで、計算ミスのリスクを大幅に低減することができます。特に、税制改正の度に、これらのチェックポイントを見直し、更新することが重要です。

 

また、地方法人税の計算は法人税額を基礎としているため、法人税の計算が正確であることが前提となります。したがって、法人税の計算プロセス全体を通じた品質管理が不可欠です。

 

日本公認会計士協会:税務業務に関する実務指針
上記リンクでは、税務業務全般に関する実務指針や品質管理のガイドラインを確認することができます。地方法人税を含む税務計算の精度向上に役立つ情報が含まれています。

 

以上、地方法人税の計算方法と税率について、その歴史的背景や注意点、申告・納付方法、そして計算ミスを防ぐためのチェックポイントまで、幅広く解説しました。税理士として、これらの知識を適切に活用し、クライアントに最適なアドバイスを提供することが求められます。税制は常に変化するものであり、継続的な学習と情報収集が不可欠です。地方法人税は比較的新しい税金ですが、法人税制の重要な一部として、今後も注目していく必要があるでしょう。