

NISAで米国株の配当を受け取っても、外国の税金10%は戻ってきません。
米国株や中国株など外国株を保有していると、配当金を受け取るたびに「現地の税金」と「日本の税金」の2種類が同時に差し引かれます。これが「二重課税」と呼ばれる状態です。
たとえば米国株の配当の場合、日米租税条約によって米国側で10%が源泉徴収されます。さらにその残額(税引き後)に対して、日本でも約20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課税されます。同じ配当所得に対して2つの国が税を課している状態です。
外国税額控除とは、この二重課税を調整するために設けられた制度です。外国に支払った税金の一定額を、日本の所得税から直接差し引けます。つまり「税額控除」であるため、所得金額から差し引く「所得控除」よりも節税効果が非常に高い制度です。
結論は「外国税額控除=二重払いを取り戻す制度」です。
具体的な数字で見てみましょう。米国株の配当が20万円あった場合、まず米国で10%(2万円)が引かれ、残り18万円に日本の20.315%(約3,657円)がかかります。放置すると2万円+3,657円の合計で約23,657円が税として引かれた状態になります。外国税額控除を正しく申請すれば、このうち米国で引かれた2万円分の一部または全額を日本の税額から差し引いて取り戻せるわけです。
この制度の根拠は所得税法第95条に規定されており、国税庁のタックスアンサーNo.1240でも詳しく解説されています。
国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」:控除の条件・計算式・繰越ルールの公式解説ページ
外国に支払った税金の全額が戻るわけではありません。これは重要なポイントです。
控除できる金額には「控除限度額」という上限があり、次の式で計算します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所得税の控除限度額 | その年の所得税額 × (調整国外所得金額 ÷ 所得総額) |
| 「その年の所得税額」の注意点 | 配当控除・住宅ローン控除など各種税額控除を差し引いた後の金額 |
| 「所得総額」の注意点 | 繰越控除適用前の総所得金額(株譲渡所得・退職所得等も含む) |
具体的なシミュレーションで確認しましょう。
- その年の所得税額(各種控除後):30万円
- 所得総額:600万円
- 調整国外所得金額(米国株配当等):60万円
この場合、控除限度額は「30万円×(60万円÷600万円)=3万円」です。仮に米国で引かれた税金が5万円でも、日本の所得税から控除できるのは3万円まで、ということになります。ちょうど東京ドームの入場料を3回分取り戻せるくらいのイメージです。
控除しきれなかった分はどうなるでしょうか?実は、当年に使い切れなかった分(または控除余裕額がある場合)は、前後3年間の繰越控除が認められています。翌年度以降に余裕額があれば、そこに当てて控除できる仕組みになっています。
繰越の仕組みが条件です。毎年継続して外国株の配当を受け取っている方は、過去3年分の繰越状況も確認しておくとよいでしょう。
なお、所得税で控除しきれなかった分は、住民税でも別途一定の範囲で控除できます(地方税の控除限度額は所得税の控除限度額の30%が目安)。住民税の控除についても、同時に確定申告で申請することが必要です。
特定口座(源泉徴収あり)に入れているから確定申告は不要、と思っている方は要注意です。
外国税額控除を受けるためには、課税方法として「総合課税」または「申告分離課税」のいずれかを選択して、確定申告を行う必要があります。特定口座の源泉徴収だけでは、外国で引かれた税金は調整されません。
確定申告の手順は次の通りです。
外貨金額の円換算レートは、「外貨を受け取った日の為替レート(TTM)」を使うのが原則です。証券会社が発行する書面に申告用のレートが記載されている場合はそちらを使います。これが実務でつまずきやすいポイントです。
申告はe-Taxが便利です。添付書類のイメージ提出が可能なため、書類を郵送する手間を省けます。
楽天証券「外国税額控除」:明細書の記入例と証券会社からの書類の見方が画像付きで確認できるページ
外国税額控除が使えない代表的なケースを知らないと、期待して申告しても無駄骨に終わります。
① NISA口座で受け取った配当は対象外
NISA口座で保有する外国株の配当は、日本の所得税・住民税が非課税です。外国税額控除は「日本と外国の二重課税」を調整する制度ですが、NISA口座では日本側の税金がかからないため、二重課税にならず制度の対象外となります。
これが大きな落とし穴です。
米国株配当の場合、NISA口座でも米国側の10%は徴収されます。しかし日本側の課税がないため「二重課税」とは認定されず、外国税額控除で取り戻すことができません。つまりNISA口座で米国株の配当を受け取ると、米国側の10%は丸々コストとして残るということです。年間配当が100万円あれば、10万円が戻らない計算です。
② 申告不要制度を選んでいる場合は対象外
配当所得について「申告不要制度」を選択していると、そもそも確定申告を行わないため、外国税額控除の申請ができません。外国税額控除を受けるためには、必ず総合課税か申告分離課税のいずれかで確定申告する必要があります。
NISA口座で米国株の配当を受け取ると、日本の税金(約20%)は非課税になる一方で、米国側の10%は残ります。特定口座なら外国税額控除で米国の10%を取り戻せるため、実質的な税負担が下がります。利用する口座の種類によって、実際の手取り額が変わる点は見落としがちです。
税理士事務所による「新NISAと外国税額控除の落とし穴」解説:NISA口座で外国株投資する際の注意点がまとめられたページ
「税金が戻るならとにかく申告すればいい」と考えている方は、この点を見落としています。
外国税額控除を受けるためには確定申告が必要で、そのとき「総合課税」または「申告分離課税」を選択します。ここで重要なのが、2023年分の所得税(住民税は2024年度)からルールが変わった点です。
2023年分から「所得税と住民税で別々の課税方式を選べなくなった」
以前は、所得税で総合課税を選びながら、住民税では「申告不要」を選んで所得として算入しないことが可能でした。この方法により、住民税の計算に使う所得を低く抑え、国民健康保険料(国保料)の負担を抑えるテクニックがありました。
しかし2023年分以降は、所得税と住民税で必ず同じ課税方式を選ばなければなりません。つまり、外国税額控除のために確定申告(総合課税・申告分離課税)を選ぶと、住民税でも同様に申告扱いになります。
その結果、住民税の計算のベースとなる所得金額が上がり、国民健康保険料が大幅に増加するケースがあります。配当所得の金額によっては、国保料が数十万円単位で跳ね上がることも報告されています。
痛いですね。
例えば、自営業者や個人事業主が外国株配当を年間50万円受け取り、外国税額控除で5万円を取り戻せたとしても、国保料が7万円増えていれば差し引きでマイナスになります。
外国税額控除を申請する前に確認するべきことは1つです——「外国税の還付額」と「国保料の増加額」を必ずシミュレーションすることです。
この判断は自分のケースに合わせてシミュレーションすることが必須です。国保料の計算ベースは各市区町村のウェブサイトで確認できます。心配な方は税理士に相談するのが最も確実です。
マネーイズム「外国の配当金を受けた人は要注意!外国税額控除について詳しく解説」:国保料への影響を含むデメリットまで踏み込んだ解説ページ
似た言葉に「配当控除」がありますが、これは別の制度で、しかも外国株には適用できません。この違いを知らないと、控除の計算を誤ることがあります。
配当控除とは何か
配当控除は、国内法人から受け取った配当に適用できる制度です。日本企業の利益に対して法人税がかかった後、さらに個人が配当として受け取る際にも所得税がかかるという二重課税を緩和するために設けられています。総合課税を選択して確定申告した場合に、所得税額の一定割合(課税所得によって異なる)を控除できます。
外国株の配当には配当控除が使えない
外国法人が支払う配当については、国内の法人税を経由していないため、配当控除の適用はありません。これは大和証券などの証券会社も公式に案内している事実です。外国株の配当では「配当控除」ではなく「外国税額控除」を使うのが基本です。
外国株なら外国税額控除が条件です。
| 比較項目 | 外国税額控除 | 配当控除 |
|---|---|---|
| 適用対象 | 外国株・外国ETFの配当など | 国内法人(日本株)の配当 |
| 調整する二重課税 | 現地税と日本の所得税の二重課税 | 法人税と所得税の二重課税 |
| 課税方式の条件 | 総合課税または申告分離課税 | 総合課税のみ |
| NISA口座 | 使えない |
外国株投資家にとって覚えておくべきもう一点が、申告分離課税を選んでも外国税額控除は使えるという点です。以前は「総合課税でないと外国税額控除が使えない」と勘違いされることがありましたが、申告分離課税でも適用可能です(所得税・住民税が同一方式となったため現在は選択肢が整理されています)。
特に株式の譲渡損失がある年は、申告分離課税で配当と通算したうえで外国税額控除も申請するという方法が節税効果を高めます。これは使えそうです。
大和証券「外国上場株式:株式の税金」:配当控除が外国株に適用されない点・外国税の課税率一覧が確認できる公式ページ