予定納税とは個人が知るべき仕組みと対策

予定納税とは個人が知るべき仕組みと対策

予定納税とは個人が押さえるべき仕組みと賢い対策

減額申請しないほうが、逆にお金が増える場合があります。


📋 この記事の3ポイントまとめ
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予定納税の対象は「前年の申告納税額15万円以上」の人

個人事業主だけでなく、副業収入がある会社員も対象になるケースがあります。6月中旬に税務署から通知書が届きます。

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納付は年2回・7月末と11月末が期限

前年の申告納税額の3分の1ずつを第1期(7月)・第2期(11月)に分けて納めます。期限を過ぎると延滞税が発生します。

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収入が減った年は「減額申請」で納税額を下げられる

7月1日〜15日(第1期・第2期分)または11月1日〜15日(第2期分のみ)の期間に申請すれば、予定納税額を減らすことが可能です。


予定納税とは何か:所得税の前払い制度の基本

予定納税とは、その年の所得税および復興特別所得税の一部を、確定申告の前にあらかじめ納付する制度です。国が歳入を平準化し、納税者の一度の大きな負担を和らげるために設けられています。簡単にいうと「今年の税金を先払いする仕組み」です。


前年分の確定申告で確定した申告納税額をもとに、税務署が予定納税基準額を計算し、対象者に通知します。この基準額が15万円以上になった場合に予定納税の義務が発生します。


納付は年2回に分かれており、それぞれ「第1期分」と「第2期分」と呼ばれています。


| 区分 | 納付期間 | 金額 |
|------|----------|------|
| 第1期分 | 7月1日〜7月31日 | 予定納税基準額 × 1/3 |
| 第2期分 | 11月1日〜11月30日 | 予定納税基準額 × 1/3 |


前払い合計は基準額の3分の2にあたります。残りの調整は翌年の確定申告で行います。前払いが多ければ還付、少なければ追加納付です。これが基本です。


翌年の確定申告では「申告書で計算した税額 − 予定納税額 = 差額(追加納付または還付)」という形で精算します。予定納税はあくまで年間税額の一部を先払いするものであり、それ自体で完結するものではありません。


参考リンク(国税庁による予定納税の公式解説)。
No.2040 予定納税|国税庁


予定納税の対象者・個人事業主と副業会社員はどうなる?

「予定納税は個人事業主だけの話では?」と思っている方は多いですが、それは誤りです。副業収入があり確定申告で15万円以上の申告納税額が生じた会社員も、翌年に予定納税の対象となります。意外ですね。


対象者の判断基準は以下のとおりです。


- 前年分の申告納税額(予定納税基準額)が 15万円以上であること
- その年の5月15日時点で確定している前年分の税額が基準になること


では、どのくらいの収入規模から15万円を超えるのでしょうか?所得税率が10%になるのは課税所得195万円超からです。単純計算では課税所得が150万円程度でも各種控除の状況によって納税額は変わります。副業の所得が年間100万円を超えるようなケースでは要注意です。


ただし、給与所得については年末調整で精算されるため、予定納税の計算には通常含まれません。予定納税が発生するのは「給与所得以外の所得」に対して追加納税が発生しているケースです。この点は覚えておけばOKです。


なお、以下のいずれかに該当する場合は、予定納税基準額の計算方法が変わります。


- 前年分に山林所得・退職所得・譲渡所得・一時所得・雑所得などが含まれる
- 前年分に外国税額控除の適用を受けている
- 前年分に災害減免法の適用を受けている


このような特殊な所得があった年の翌年は、通常の計算式ではなく、課税総所得金額から源泉徴収税額を引いた金額を基準として計算します。前年に不動産の売却や退職金を受け取った方は特に注意が必要です。


参考リンク(副業会社員が予定納税対象になるケースをわかりやすく解説)。
会社員なのに予定納税の通知が来たのはなぜ?副業・不動産収入がある人の確認ポイント|HS会計事務所


予定納税の計算方法・個人が自分で基準額を確認する手順

予定納税基準額は、税務署から送付される通知書に記載されているため、自分で計算する機会は少ないかもしれません。ただし、大まかな金額を事前に把握しておくことで、資金繰りの計画が立てやすくなります。


通常の計算方法は次のとおりです。


$$\text{予定納税基準額} = \text{前年分の申告納税額(100円未満切り捨て)}$$


$$\text{第1期・第2期の予定納税額} = \text{予定納税基準額} \div 3$$


たとえば前年の申告納税額が60万円だった場合、予定納税基準額はそのまま60万円です。第1期分・第2期分それぞれ 20万円ずつ、合計40万円を7月末と11月末に納めます。残り20万円分の調整は翌年の確定申告で行います。


この金額は「コーヒー1杯500円×4万杯分」に相当する大きさですが、2回に分かれることで1回あたりの負担は軽くなります。それが条件です。


実際の確認方法としては、前年の確定申告書の「申告納税額」欄(第1表の右下あたり)を参照するのが最も確実です。前年の申告書が手元にない場合は、e-Taxにログインして申告データを確認するか、税務署に問い合わせる方法があります。


なお、源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄の金額が15万円以上であっても、それは予定納税とは別物です。給与所得の源泉徴収税額は年末調整で精算されるため、予定納税の判断には使えません。「源泉徴収票で判断できる」と思い込んでいると、確認を怠るリスクがあります。


参考リンク(予定納税基準額の計算方法と申告書での確認方法を解説)。
所得税の予定納税とは?個人事業主は計算方法や納付方法、タイミングを知っておこう|マネーフォワード クラウド


予定納税の減額申請:個人が資金繰りを守るための手続き

予定納税の金額は前年の税額をベースに計算されます。そのため、今年の売上や収入が大幅に落ち込んでいても、前年の高い税額を前払いしなければならない状況が生まれます。厳しいところですね。


こうした場合に活用できるのが「減額申請」です。


減額申請とは、今年の所得見積もりが前年より大幅に下がる場合に、予定納税額を減らしてもらうための手続きです。所轄税務署に「予定納税額の減額申請書」を提出し、承認されると減額されます。


申請できる条件と期間は以下のとおりです。


| 対象 | 申請期間 | 見積基準日 |
|------|----------|------------|
| 第1期・第2期分 | 7月1日〜7月15日 | 6月30日時点 |
| 第2期分のみ | 11月1日〜11月15日 | 10月31日時点 |


申請が認められる主なケースは次のとおりです。


- 廃業・休業によって収入がゼロまたは大幅に減少した
- 業況不振で今年の所得が前年より明らかに少ない見込み
- 災害・盗難・横領によって事業資産に損害を受けた
- 扶養家族の増加など、所得控除額が大きく増える見込みがある


申請書の提出はe-Taxでも可能です。減額申請書には「6月30日(または10月31日)時点の所得見積額」を具体的に記入する必要があるため、その時点での帳簿や売上データを整理しておくと手続きがスムーズです。これは有料ではなく、無料です。


ただし、申請期限を1日でも過ぎると受け付けてもらえません。期限には注意が必要です。資金繰りへの影響が大きい場合、7月15日の締め切りを手帳やスマホカレンダーにあらかじめ登録しておくのが確実です。


参考リンク(減額申請書の書き方と提出方法の詳細)。
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁


予定納税の還付と還付加算金:あえて減額申請しない戦略

予定納税を納めたあと、実際の所得税額が予定納税額より少なかった場合、差額は翌年の確定申告で「還付」されます。ここまでは多くの方が知っている話です。


注目すべきは、還付を受けるときに「還付加算金」という利息が付く点です。これは使えそうです。


還付加算金の計算式は次のとおりです。


$$\text{還付加算金} = \text{還付額} \times \text{還付加算金特例基準割合} \times \frac{\text{日数}}{365}$$


2025年時点での還付加算金の利率は年0.9%です。これは一般的な銀行の普通預金金利(年0.02%程度)と比べると圧倒的に高い水準です。


たとえば、予定納税で20万円を前払いしていて、実際の税額が10万円だった場合、10万円の還付が発生します。その際、10万円×0.9%×(日数/365)分の還付加算金も一緒に受け取れます。半年程度の期間であれば400〜500円程度の加算になります。少額ですが、資金が手元にあることの機会費用とも比較すべき数字です。


このため、業績が下がっていても資金に余裕がある場合は、あえて減額申請をせずに還付加算金を受け取るという選択肢もあります。ただし、資金繰りが苦しい場合や、まとまったキャッシュが必要な局面では、迷わず減額申請を活用するほうが合理的です。自分の経営状況に合わせた判断が必要です。


還付加算金は「雑所得」として確定申告で申告する必要があることも覚えておいてください。金額が小さくても正確な申告が求められます。


参考リンク(還付加算金の仕組みと税率について)。
納めすぎた税金は戻ってくる!還付加算金の仕組みと税率、翌年の確定申告での扱い|小谷野税理士法人


予定納税の納付方法と延滞税:個人がやりがちな落とし穴

予定納税の納付方法は複数用意されており、キャッシュレスで完結する手段も増えています。自分に合った方法を選んでおけば、うっかり忘れを防げます。


主な納付方法は以下のとおりです。


- ダイレクト納付(e-Tax):指定口座から即時または日時指定で引き落とし
- インターネットバンキング:ペイジー対応金融機関から納付
- クレジットカード納付:国税クレジットカードお支払いサイトから。10,000円ごとに約83円の決済手数料が発生
- スマホアプリ納付:PayPay・d払い・auPAY・メルペイ・楽天ペイ。30万円以下の場合のみ利用可
- コンビニ納付(QRコード):ローソン・ファミリーマートなど。30万円以下の場合のみ
- 金融機関・税務署窓口:現金と納付書を持参


振替納税(口座引き落とし)を設定しておくと、期日に自動で引き落とされるため、納付忘れのリスクを大幅に減らせます。ただし、残高不足で引き落とせなかった場合も延滞税の対象になる点に注意が必要です。


延滞税については、次の割合が適用されます。


- 納期限翌日〜2ヶ月以内:年7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合(2025年分は約年2.4%)
- 2ヶ月を超えた場合:年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合(2025年分は約年8.7%)


たとえば、20万円の納税を1ヶ月忘れた場合、延滞税は20万円×2.4%×30日÷365日=約394円ですが、これが2ヶ月を超えると利率が跳ね上がります。痛いですね。通知書が届いたら、すぐに期限をカレンダーに登録しておくことが最善の対策です。


また、令和6年以降はe-Tax利用者には納付書が送付されなくなるケースがあります。「紙の通知書が来ない=対象外」ではないため、e-Taxにログインして通知を確認するひと手間を習慣にしてください。


参考リンク(延滞税の計算方法と具体的な割合)。
No.9205 延滞税について|国税庁