区分記載請求書等保存方式と免税事業者の関係を徹底解説

区分記載請求書等保存方式と免税事業者の関係を徹底解説

区分記載請求書等保存方式と免税事業者の関係を正しく理解する

免税事業者から仕入れた請求書を「そのまま保存しておけば控除できる」と思っていると、年間40万円以上の税負担増を招くことがあります。


この記事の3ポイント要約
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区分記載請求書等保存方式とは何か

2019年10月〜2023年9月まで適用された、軽減税率(8%)と標準税率(10%)の複数税率に対応した請求書の保存・管理方式。現在は廃止されているが、インボイス制度の経過措置でその知識が引き続き必要。

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免税事業者との取引で何が変わるのか

インボイス制度開始後、免税事業者からの仕入れは原則として仕入税額控除の対象外。ただし経過措置として段階的な控除が認められており、2031年9月まで適用される予定(令和8年度税制改正大綱による延長)。

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今すぐ確認すべき実務ポイント

帳簿に「経過措置の適用を受ける旨」の記載が漏れていると控除ゼロになるリスクがある。請求書の保存・帳簿記載・取引先の登録状況確認という3つの管理が実務の核心。


区分記載請求書等保存方式の基本と免税事業者への影響

2019年10月、消費税率が8%から10%に引き上げられると同時に、食品や新聞など日常生活に関わる一部商品には軽減税率8%が適用されるようになりました。複数の税率が混在する状況に対応するため、従来の「請求書等保存方式」に代わって導入されたのが「区分記載請求書等保存方式」です。


この方式のポイントは二つあります。一つは、請求書に軽減税率対象品目である旨を明示する必要があること。もう一つは、税率ごとに区分して合計した税込対価の額を記載しなければならないことです。これにより、仕入側の事業者は10%と8%それぞれの課税仕入れを正確に把握し、仕入税額控除の計算を行うことができました。


免税事業者への影響という観点では、区分記載請求書等保存方式が適用されていた期間(2019年10月〜2023年9月)は、免税事業者が発行した請求書であっても、必要事項の記載さえ満たしていれば仕入税額控除の対象として認められていました。つまり、取引相手が課税事業者かどうかは問わなかったわけです。これが重要な点です。


2023年10月に始まったインボイス制度適格請求書等保存方式)により状況は大きく変わりました。原則として、適格請求書発行事業者の登録番号が入った請求書がなければ、仕入税額控除を受けられなくなっています。免税事業者はこの登録番号を取得できないため、区分記載請求書等の旧様式の請求書を引き続き発行しています。


区分記載請求書に記載が必要だった項目は、発行者の氏名・名称、取引年月日、取引内容(軽減税率の対象品目である旨)、税率ごとに区分して合計した税込対価の額、受領者の氏名・名称の5項目です。適格請求書と比べた最大の違いは、登録番号と税率ごとの消費税額の明示が不要な点にあります。


つまり免税事業者が原則です。


なお、簡易課税制度を選択している事業者は、みなし仕入率を使って計算するため、受け取った請求書を使って仕入税額控除を計算する必要がありません。この場合は、区分記載請求書等保存方式に基づく請求書の保存が必ずしも求められないという点は、多くの方が見落としがちな部分です。


参考:国税庁「区分記載請求書等保存方式(帳簿及び請求書等の記載事項)に関するQ&A」では免税事業者からの仕入れに関する取扱いが詳しく解説されています。


国税庁:区分記載請求書等保存方式に関するQ&A(免税事業者からの課税仕入れの取扱い)


区分記載請求書等保存方式で免税事業者が発行する請求書の書き方

インボイス制度が始まった現在も、免税事業者が取引先へ請求書を発行する場面はあります。登録番号を持たない免税事業者が発行できるのは、旧来の区分記載請求書に準じた様式の請求書です。


では具体的にどのような記載が必要になるでしょうか?


区分記載請求書に準じた免税事業者の請求書には、最低限、次の5項目が含まれている必要があります。


記載項目 内容・注意点
①発行者の氏名または名称 屋号・個人名など、自分を特定できる情報
②取引年月日 サービス提供日・商品引渡日など
③取引内容 軽減税率対象品目は「※」などで明示
④税率ごとに区分した税込合計額 10%分・8%分それぞれを分けて記載
⑤受領者の氏名または名称 請求先の会社名・個人名


免税事業者が消費税を上乗せして請求すること自体は、法律上禁止されていません。取引価格の合意として双方が納得していれば問題にはならない、というのが公正取引委員会の見解です。一方で、買い手側(課税事業者)の立場からすると、受け取った請求書に消費税相当額が含まれていても、その分を仕入税額控除に使えない可能性がある点に注意が必要です。


これは使えそうです。


注意が必要なのは、消費税額を内訳として別記する場合です。免税事業者は消費税を国に納める義務がなく「消費税〇〇円」と明記することで、受け取る側が「仕入税額控除できる消費税」と誤解するリスクがあります。請求書の書き方ひとつで、取引先との認識齟齬や経理上のトラブルにつながることもあります。請求書の作成ルールをあらかじめ確認しておくことが大切です。


参考:公正取引委員会が発表した「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」では、免税事業者への取引条件変更に関する独占禁止法・下請法の観点が整理されています。


公正取引委員会:免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A


免税事業者からの仕入税額控除と経過措置の最新スケジュール

インボイス制度開始後、免税事業者から仕入れた分の消費税は、原則として仕入税額控除の対象外となりました。しかし「激変緩和」の観点から、一定期間は段階的に控除を認める経過措置が設けられています。この経過措置の内容が、令和8年度(2026年度)税制改正大綱によって見直されました。


当初は3段階で控除割合が引き下げられる予定でしたが、2026年10月から50%に一気に下がるスケジュールが急すぎると判断され、5段階に細分化されています。


期間 控除割合(改正後)
2023年10月〜2026年9月 80%
2026年10月〜2028年9月 70%(新設)
2028年10月〜2030年9月 50%
2030年10月〜2031年9月 30%(新設)
2031年10月以降 0%(控除不可)


この改正のポイントは二点です。一つ目は、2026年10月に80%から50%へと一気に30ポイント下がる予定だったところに、70%の期間が挟まれたこと。二つ目は、経過措置の終了時期が2029年9月から2031年9月へと2年間延長されたことです。


具体的な金額で考えてみましょう。免税事業者から年間550万円(税込・標準税率10%)分の仕入れをしている事業者がいるとします。この取引に含まれる消費税相当額は50万円です。


  • 📊 80%控除期間(〜2026年9月):自己負担額 10万円
  • 📊 70%控除期間(2026年10月〜):自己負担額 15万円(+5万円)
  • 📊 50%控除期間(2028年10月〜):自己負担額 25万円(+10万円)
  • 📊 30%控除期間(2030年10月〜):自己負担額 35万円(+10万円)
  • 📊 控除ゼロ(2031年10月〜):自己負担額 50万円(+15万円)


控除がゼロになると、年間40万円もの負担増になる計算です。


経過措置の適用を受けるためには、単に区分記載請求書等に準じた書類を保存するだけでなく、帳簿に「経過措置の適用を受ける旨」を記載しなければなりません。「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」といった記載を摘要欄に入れることが求められます。この記載が漏れていると、要件を満たさないとして税務調査で控除を否認されるリスクがあります。帳簿記載が条件です。


参考:令和8年度税制改正による経過措置の変更スケジュールの詳細は、創業手帳の解説記事にわかりやすくまとめられています。


創業手帳:【2026年10月改正】仕入税額控除の経過措置が2年延長!80→70→50…段階的変更の全貌


免税事業者が区分記載請求書等保存方式を正しく理解すべき独自視点:益税と取引排除リスクの二重構造

多くの解説記事は買い手側(課税事業者)の視点に立って経過措置を説明しますが、免税事業者側から見た場合の「見えにくいリスク」についても理解が必要です。


免税事業者が消費税を上乗せして請求できる根拠は、消費税法が「消費税の請求を禁じていない」という点にあります。制度上、免税事業者がもらった消費税相当額は国へ納める必要がなく、そのまま手元に残ります。この差益は「益税」と呼ばれ、長年議論の的になってきました。インボイス制度はこの益税を解消することも目的の一つです。


一方で、取引先(課税事業者)にとっては、免税事業者に消費税分を支払っても仕入税額控除に使えないという問題が生じます。たとえば年間110万円(税込・10%)を免税事業者に支払った場合、10万円の消費税を控除できないまま実質的な負担として残ります。規模の大きな取引になればなるほど、この影響は深刻になります。


厳しいところですね。


こうした状況を背景に、インボイス制度開始後、免税事業者との取引を見直す企業が増えています。しかし、課税事業者への転換を強要したり、一方的な値下げを迫ったりする行為は、独占禁止法や下請法に抵触する可能性があると、公正取引委員会が明確に指摘しています。下請法上の親事業者が免税事業者である下請に対して、インボイス未登録を理由に一方的に発注単価を引き下げた場合、違反行為として是正勧告や課徴金の対象となりえます。


免税事業者が「取引から排除されないためにインボイス登録を急ぐ」という選択をする場合も、慎重な判断が必要です。インボイス登録(適格請求書発行事業者になること)は、自動的に課税事業者になることを意味します。消費税の申告・納付義務が発生するため、売上規模によっては手取り収入が大幅に減ることになります。なお、令和5年度改正による「2割特例」は2026年9月30日を含む課税期間まで適用されており、これを活用することで急激な負担増を抑えることができます。


免税事業者にとっては「取引を続けるか」「インボイス登録するか」という二択ではなく、段階的な対応計画を立てることが重要です。取引先との関係性、自身の売上規模、経費構造などを踏まえて判断するためにも、税理士への相談を早い段階で行うことをおすすめします。


区分記載請求書等保存方式における実務対応と帳簿管理のチェックポイント

経過措置を確実に適用するための実務対応は、三つの柱で考えるとわかりやすくなります。それは「帳簿の記載」「請求書の保存」「取引先管理」の三つです。


まず、帳簿の記載について確認しましょう。通常の仕入れ記帳に加えて、経過措置対象の取引には「経過措置の適用を受ける旨」を必ず記載します。具体的には、「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」といった文言を摘要欄に入力する方法が一般的です。記号(「※」「☆」など)を用いて後から説明を補う方法も認められていますが、税務調査で即座に説明できる状態を整えておくことが原則です。


次に、請求書等の保存要件です。免税事業者から受け取る請求書が経過措置の対象となるためには、区分記載請求書に準じた事項(発行者名、取引年月日、取引内容、税率ごとの税込合計額、受領者名の5項目)が記載されている必要があります。登録番号がない点は問題ありませんが、税率区分が曖昧な記載だと控除を受けられないリスクがあります。受け取った時点でチェックする習慣をつけましょう。


電子帳簿保存法に対応した形での電子保存も可能です。ただし、電子データとして受け取った場合は、電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存しなければなりません。紙で受け取った場合でも、スキャナ保存の要件を満たせば電子データ化して管理できます。


最後に、取引先管理について整理します。取引先が適格請求書発行事業者かどうかは、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録番号を入力すると確認できます。年に1回以上、取引先リストと照らし合わせて登録状況を確認することをおすすめします。特に注意が必要なのは、年度途中で登録した(または取り消した)取引先です。登録前の取引と登録後の取引では控除のルールが変わるため、日付の管理が重要になります。


  • ✅ 帳簿の摘要欄に「経過措置の適用を受ける旨」を記載しているか
  • ✅ 受け取った請求書に5項目が正しく記載されているか
  • ✅ 取引先の適格請求書発行事業者登録の有無を定期確認しているか
  • 会計ソフトの控除割合の設定が最新スケジュールに合っているか
  • ✅ 2026年10月の70%への切り替えに合わせたシステム更新を計画しているか


これらが条件です。


会計ソフトによっては、免税事業者からの取引を自動識別して経過措置対応の仕訳を生成する機能が備わっているものもあります。マネーフォワード クラウド会計やfreee会計などのクラウド会計ソフトは、インボイス制度に対応した機能を随時アップデートしており、2026年10月の変更にも対応予定とされています。手作業でのミスを防ぐうえでも、こうしたシステムの活用は有効な手段の一つです。


参考:国税庁が公開している「適格請求書等保存方式の概要」は、制度の基本から経過措置の要件まで一次情報として確認できる資料です。


国税庁:適格請求書等保存方式の概要(令和6年12月版)