遺留分の割合一覧と相続人別の計算方法と請求手続き

遺留分の割合一覧と相続人別の計算方法と請求手続き

遺留分の割合一覧と相続人別の計算方法

遺言書に「全財産を長男に」と書いてあっても、あなたは法律で守られた取り分を長男に請求できます。


📋 この記事でわかること
📊
遺留分の割合を一覧で確認

相続人の組み合わせ別(配偶者のみ・子のみ・配偶者+子など)に、総体的遺留分と個別的遺留分の割合を一覧表で解説します。

🧮
計算方法と具体例

遺産総額への割合の当てはめ方・生前贈与の扱い・債務控除など、実際の計算手順をステップごとに確認できます。

侵害額請求と時効のポイント

遺留分侵害額請求権は「知ってから1年」で消滅します。時効を止める内容証明の使い方まで解説します。


遺留分とは何か・遺留分の割合が適用される法定相続人の範囲


遺留分とは、法律によって一定の相続人に保障された「最低限の遺産の取り分」のことです。被相続人(亡くなった方)が遺言書を残していても、その内容がどれほど偏っていても、遺留分の権利は消えません。


遺留分を持つのは「兄弟姉妹以外の相続人」と民法第1042条で定められています。具体的には、配偶者・子(直系卑属)・父母や祖父母(直系尊属)の3者です。


一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。 これは意外と見落としがちなポイントです。「兄弟姉妹も家族なのだから当然もらえるはず」と思っている方が多いですが、法律上の遺留分権利者には含まれません。


また、以下の場合は遺留分権利者であっても権利を失います。


- 相続放棄をした場合:放棄した時点で遺留分も失います。代襲相続も発生しません。


- 相続廃除・相続欠格に該当した場合:被相続人への虐待・遺言書の偽造などがあると、家庭裁判所の手続きを通じて相続権ごと剥奪されます。


権利者の範囲が基本です。まずここを押さえておけばOKです。


なお、孫が「代襲相続人」として相続する立場になった場合(親がすでに亡くなっているケース)、孫にも遺留分の権利が発生します。ただし被相続人が孫に直接「遺贈」する場合は代襲相続とは異なるため、孫に遺留分の権利があるかどうかは状況次第になる点も覚えておきましょう。


参考:遺留分権利者の範囲と割合についての基本的な解説(朝日新聞相続ガイド)


遺留分の割合一覧表|相続人の組み合わせ別に整理

遺留分の割合は「総体的遺留分」と「個別的遺留分」の2段階で決まります。まず遺産全体に対する遺留分の合計(総体的遺留分)を決め、そこに各相続人の法定相続分を掛けて個人ごとの取り分(個別的遺留分)を出します。


総体的遺留分のルールはシンプルです。


- 相続人が直系尊属(父母・祖父母)のみの場合 → 遺産の 1/3
- それ以外のすべてのケース → 遺産の 1/2


この原則が条件です。以下の一覧表で相続人の構成ごとに確認してください。






















































相続人の構成 総体的遺留分(全体) 各相続人の個別的遺留分
配偶者のみ 1/2 配偶者:1/2
子のみ(1人) 1/2 子:1/2
子のみ(2人) 1/2 子1人あたり:1/4
配偶者と子(1人) 1/2 配偶者:1/4、子:1/4
配偶者と子(2人) 1/2 配偶者:1/4、子1人あたり:1/8
配偶者と父母 1/2 配偶者:1/3、父母1人あたり:1/12
配偶者と兄弟姉妹 1/2 配偶者:1/2、兄弟姉妹:なし
父母のみ(2人) 1/3 父母1人あたり:1/6
兄弟姉妹のみ なし 全員:なし


💡 子が3人の場合は「1/2 × 1/2 × 1/3」でそれぞれ1/12、4人なら1/16というように人数で均等分されます。


たとえば遺産が6,000万円で「配偶者と子2人」が相続人の場合、計算は次のようになります。


- 配偶者の遺留分:6,000万円 × 1/4 = 1,500万円
- 子1人の遺留分:6,000万円 × 1/8 = 750万円(2人合計1,500万円)


遺産が6,000万円あっても「全額を長男に」という遺言があれば、配偶者は1,500万円、次男は750万円を長男に請求できます。つまり遺留分が条件です。


注意すべきは、配偶者と兄弟姉妹が共同相続人のケースです。このとき兄弟姉妹には遺留分がゼロのため、配偶者が遺産の1/2の遺留分権を単独で持つことになります。この構成は遺産争いが起きやすい組み合わせの一つです。


参考:法定相続分と遺留分の割合一覧表(税理士法人アイユーコンサルティング)
遺留分とは最低限受け取れる遺産|割合や範囲を分かりやすく解説


遺留分の割合を計算する際の基礎財産の算定方法

遺留分の計算で最も重要なのは「基礎財産の正確な算定」です。単純に「死亡時の遺産総額 × 割合」で計算してしまうと、本来請求できる金額より大幅に少なくなる可能性があります。


基礎財産は以下の式で算定します。


> 📌 基礎財産 = 相続開始時の積極財産 + 持ち戻し対象の生前贈与 ー 相続債務


「積極財産」とは、預貯金・株式・不動産・有価証券など相続価値のある財産全般を指します。一方「相続債務」には借入金や未払い税金なども含まれます。これが計算の起点です。


最も注意が必要なのは「生前贈与の持ち戻し」です。民法第1044条の規定により、以下の贈与が基礎財産に加算されます。


- 第三者(相続人以外)への生前贈与:相続開始前1年以内のもの
- 相続人への生前贈与(特別受益):相続開始前10年以内のもの
- 双方が遺留分侵害を認識した上での贈与:期間に関係なく対象


特別受益に該当するのは、婚姻・養子縁組・生計の資本として受けた贈与です。具体的には結婚資金や住宅取得資金などが含まれます。


たとえばこういうケースを考えてみます。遺産が5,000万円(死亡時点)でも、相続人の長男が8年前に住宅購入資金として3,000万円を贈与されていた場合、基礎財産は5,000万円+3,000万円=8,000万円で計算されます。遺産が少なく見えても実態は違うということですね。


この「10年縛り」は2019年の民法改正で明確化されました。改正前は相続人への贈与に期間制限がなかったため、遺留分計算の範囲は以前よりも絞られています。


参考:生前贈与と遺留分の持ち戻し・10年ルールの詳細(相続プロ)
生前贈与で遺留分侵害請求ができる財産の対象・割合は?計算方法


遺留分侵害額請求の手続きと知っておくべき時効の壁

遺留分を侵害された場合に実際に取り戻すための手段が「遺留分侵害額請求権」です。2019年7月の民法改正により、従来の「遺留分減殺請求(不動産などを現物で請求)」から「遺留分侵害額請求(金銭のみで請求)」に変わりました。


これは重要な変更です。改正前は不動産の共有状態を強制的に生み出すことができたため、事業承継などで深刻なトラブルの温床になっていました。金銭請求に統一されたことで、相続後の実務上の混乱はかなり減ったといえます。


手続きの流れは次のとおりです。


1. まず相手に意思表示をする(口頭でも可ですが、内容証明郵便の活用が強く推奨されます)
2. 協議で解決を試みる(金額・支払い方法などを相手と直接交渉)
3. 家事調停の申し立て(協議が不調の場合、家庭裁判所に調停を申し立て)
4. 遺留分侵害額請求訴訟(調停でも解決しない場合に裁判へ)


最も注意が必要なのが時効です。遺留分侵害額請求権は次の期間を過ぎると消滅します。


| 時効の種類 | 起算点 | 期間 |
|------------|--------|------|
| 消滅時効 | 相続開始 かつ 遺留分侵害の事実を知った日 | 1年 |
| 除斥期間 | 相続開始日(知らなくても適用) | 10年 |


時効は1年です。たとえ相続から10年経っていなくても、「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年」が経過すると権利が消えます。痛いところですね。


時効を止めるためには、1年以内に内容証明郵便で「遺留分侵害額を請求する」という意思を相手方に伝えることが必要です。内容証明郵便を使うのは「送付した日付」を証拠として残すためです。口頭では後から「言った・言わない」の問題が生じます。


相続の開始と侵害の事実を知ったタイミングから、1年間は油断できません。まず内容証明で意思表示→その後に協議や調停、という順序が現実的です。遺留分問題に直面した場合は、弁護士や司法書士への早期相談を検討することで、時効のリスクを回避しやすくなります。


参考:遺留分侵害額請求権の時効と手続きの詳細(弁護士法人シーライト)
遺留分侵害額請求の期間制限について


遺留分の割合を踏まえた生前対策と金融資産の活用法(独自視点)

ここまでは「受け取る側」の話でしたが、視点を変えて「財産を残す側(被相続人になる側)」の対策も整理しておく価値があります。金融に関心がある方であれば、自分の財産をどう分けるかという問題は切り離せないテーマです。


遺留分を完全にゼロにする方法は法律上ありませんが、合法的に「遺留分侵害リスクを軽減する」対策は複数あります。


① 養子縁組で相続人を増やして個別の遺留分を薄める


子が1人なら遺留分は1/4ですが、養子縁組で子が3人になれば1人あたりの遺留分は1/12に下がります。ただし養子縁組はその後の人間関係に影響するため、慎重な判断が必要です。


② 生命保険を活用して「相続財産」の総額を減らす


現金や株式は相続財産になりますが、生命保険金の受取人を特定の人に指定した場合、保険金は「相続財産」ではなく「受取人固有の財産」として扱われます。つまり遺留分の計算基礎となる財産に含まれません。


これは使えそうです。たとえば5,000万円の現金のうち3,000万円を終身保険の保険料に充てて特定の子を受取人に指定すれば、遺留分計算の基礎財産から3,000万円を外せます。ただし、明らかに遺留分逃れを目的とした保険契約は裁判所で問題になる場合もあるため、やり過ぎは禁物です。


③ 生前に遺留分の放棄を家庭裁判所に申し立てる


生前でも、相続人本人が家庭裁判所に申し立てて遺留分の放棄が認められるケースがあります。相続が発生する前に一定の財産を渡すことを条件に放棄に合意してもらう、という方法です。ただし家庭裁判所の許可が必須です。


④ 遺言書と付言事項でトラブルを未然に防ぐ


法的強制力はないものの、遺言書に「なぜこの配分にしたか」という理由を付言事項として添えることで、遺族間の感情的対立を和らげることができます。遺留分侵害額請求は「法律上の権利行使」ですが、実際には感情的な不満がトリガーになることも多いため、丁寧な説明が抑止力になることがあります。


遺留分の割合を把握した上で財産設計を行うと、相続トラブルの予防に大きく役立ちます。結論は「早め・合法・透明な対策」です。相続税や贈与税の絡む財産設計は税理士や相続専門の弁護士に相談するのが最も確実で、初回無料の相談を実施している事務所も多くあります。


参考:遺留分を渡したくない場合の具体的な生前対策(古野会計事務所)
遺留分を渡したくない!渡さなくていい方法と生前からできる対策


遺留分の割合に関するよくある誤解と見落としポイント

遺留分をめぐっては、実際の相談現場でも繰り返し出てくる誤解がいくつかあります。金融や資産管理に関心がある方でも意外と引っかかりやすいポイントです。


誤解①「遺言書があれば遺留分は関係ない」


これは間違いです。遺留分は遺言書よりも優先されます。遺言書に「全財産を長男に相続させる」と書かれていても、配偶者や他の子どもは遺留分侵害額を長男に対して請求できます。遺言書が遺留分を「なくす」ことはできません。


誤解②「生前贈与を終わらせれば遺留分計算に入らない」


相続人への生前贈与(特別受益)は、相続開始前10年以内のものが計算対象です。「10年以上前に渡したからもう関係ない」と思っていると、計算にしっかり含まれる可能性があります。


誤解③「10年経てば何も請求されない」


除斥期間の10年は「相続開始から10年」であり、遺留分を侵害する行為を知ってから1年以内の請求も別途要件として課されます。つまり2つの時効が独立して動いています。どちらかが先に到来した方で権利が消えます。


誤解④「遺留分の請求は裁判しかない」


実際には当事者間の協議でも解決できます。内容証明で意思表示した後、相手が任意に支払いに応じれば訴訟にならずに解決します。裁判は最終手段です。


誤解⑤「父母には遺留分がない」


父母も直系尊属として遺留分権利者に含まれます。子や配偶者がいない場合に親が相続人になるケースがあり、その際は遺産の1/3が遺留分の総体となります。子が先に亡くなり親が唯一の相続人、という状況は現実に起こります。これは必須の知識です。


誤解を一つひとつ解消しておくことが、相続トラブルの回避にもつながりますし、逆に自分が権利者として損をしないためにも不可欠です。遺留分は「知っていれば守られる、知らなければ時効で消える」という非常にシビアな制度です。1年という時効の短さは特に覚えておけばOKです。


参考:遺留分が認められないケース・よくある誤解の解説(相続プロ)
相続で遺留分がもらえない?知らないと損する7つのケースを解説




遺留分権利者の決定の自由