

調停で合意すると、翌日から給料を差し押さえられる可能性があります。
調停とは、裁判所という公的な場を使って行う「話し合いによる紛争解決の手続き」です。裁判のように裁判官が一方的に判決を下すのではなく、当事者双方が話し合い、お互いが納得した形で合意することを目的としています。
間に入るのは「調停委員」と呼ばれる第三者で、弁護士・医師・大学教授・公認会計士・不動産鑑定士などの専門家が最高裁判所によって選任されています。2021年4月時点で全国に約7,975人が在籍しており、当事者の間に立って中立的に話し合いを仲介します。
つまり調停です。
手続きも裁判と比べてシンプルで、裁判所のホームページから申立書の書式をダウンロードして記入・提出するだけで始められます。費用も、離婚調停を例に挙げると収入印紙1,200円+郵便切手代1,000円程度と、弁護士に依頼した場合の数十万〜150万円と比べると格段に安く済みます。
費用が安いのは確かです。
ただし「話し合い」であるため、相手方が出席を拒否したり、双方の主張が折り合わなければ「調停不成立(不調)」となり、自動的に解決することはありません。この点は裁判との大きな違いです。また調停は基本的に「非公開」で行われるため、プライバシーが守られるという利点もあります。
| 比較項目 | 調停 | 裁判(訴訟) |
|---|---|---|
| 解決方法 | 双方の合意 | 裁判官の判決 |
| 公開・非公開 | 非公開 | 原則公開 |
| 申立費用(目安) | 数千円〜 | 数万円〜 |
| 手続きの難易度 | 比較的簡単 | 専門知識が必要 |
| 合意できない場合 | 不調(手続き終了) | 判決が強制的に下る |
参考:裁判所における調停制度の概要について公式に説明されたページです。申立書の書式や手数料一覧も確認できます。
調停には大きく分けて3種類があります。どの調停を使うかは「トラブルの内容」によって決まります。ここが原則です。
まず「民事調停」は、お金の貸し借り、売買トラブル、近隣紛争、賃料の未払いなど、日常的な民事上の紛争全般を扱います。管轄は「簡易裁判所」です。金融に関わるトラブル、例えば貸したお金が返ってこない・取引先との代金回収問題なども、民事調停の対象になります。
次に「家事調停」は、離婚・遺産分割・養育費・婚姻費用など、家庭内や親族間のトラブルを扱います。管轄は「家庭裁判所」です。相続財産をめぐって親族間で争いが生じた場合に利用されることが多く、金融に関心がある方にとっても遺産相続の文脈で関わる可能性があります。
意外ですね。
そして「特定調停」は、民事調停の特例として設けられた手続きで、借金の返済が困難になった個人・法人が、裁判所の仲介のもとで債権者と返済条件を調整するものです。2000年(平成12年)に施行された「特定調停に関する法律」に基づいており、任意整理・個人再生・自己破産と並ぶ「債務整理の方法」のひとつです。
特定調停が条件です。
金融に関心がある方が「調停」と耳にした場合、最も関係が深いのは民事調停と特定調停の2種類です。以下にまとめます。
参考:調停の種類・仕組みを日本調停協会連合会が公式にまとめたページです。
調停の手続きは、大きく4つのステップで進みます。順を追って見ていきましょう。
①申立て:まず申立人が相手方の住所地を管轄する裁判所に申立書を提出します。裁判所のホームページに申立書のひな形が公開されており、法律知識がない一般の方でも記入・提出が可能です。費用は収入印紙代と郵便切手代で数千円程度に収まります。
②呼び出しと期日:申立書が受理されると、裁判所が調停期日(話し合いの日)を設定し、申立人と相手方の双方に呼び出し状が送付されます。調停は裁判官1名と調停委員2名以上で構成される「調停委員会」が仲介します。調停は平日の日中に行われることがほとんどです。
③話し合いと合意:調停委員が双方の言い分を個別に聞きながら、合意形成に向けて調整を進めます。1回で解決しない場合は、数週間おきに複数回の期日が設けられます。申立てから調停成立まで平均2〜3ヶ月程度かかるのが一般的です。
④調停成立または不成立:双方が合意すれば「調停成立」となり、合意内容が「調停調書」に記録されます。一方、合意に至らなければ「調停不成立(不調)」となり手続きが終了します。不調の場合は民事訴訟など別の手続きに移行することになります。
これが原則です。
注意が必要なのは調停期日の回数です。債権者が複数いる特定調停の場合、債権者の数だけ出廷回数が増えることがあります。仕事がある方は日程調整に苦労するケースも少なくありません。
参考:調停手続き全般の流れと、申立書のひな形・手数料一覧が確認できる裁判所の公式ページです。
調停が成立すると「調停調書」が作成されます。ここに多くの人が見落とすリスクが潜んでいます。
調停調書は、家事事件手続法第268条第1項によって「確定判決と同一の効力を有する」と定められています。これは裁判で勝訴したときの判決書と全く同じ法的効力を持つということです。
これは使えそうです。
ただし、これは諸刃の剣でもあります。合意した内容を守っている間はまったく問題ありません。しかし、調停で取り決めた支払いをひとつでも怠った瞬間、相手方は新たに裁判を起こすことなく、調停調書を根拠として「強制執行」を直ちに申し立てられます。
つまり、調停調書は差し押さえの即時発動ボタンです。
特定調停の場合、この点は特に重大なリスクになります。任意整理で交わされる和解書は「債務名義」に該当しないため、仮に支払いを怠っても相手方は改めて裁判を起こさなければ強制執行できません。しかし特定調停が成立すると、調停調書という債務名義が生まれるため、滞納した翌日にでも給与や預金口座を差し押さえられるリスクがあります。
差し押さえには期限があります。
この違いを理解せずに「費用が安い」という理由だけで特定調停を選ぶのは危険です。弁護士に相談したうえで、自分の状況に最も適した手続きを選択することが重要です。
参考:調停調書の法的効力と強制執行の仕組みについて、弁護士が詳しく解説したページです。
民事調停 | 債権回収・強制執行専門弁護士|弁護士 荒竹純一
借金問題の解決手段として調停を検討する場合、「特定調停」と「任意整理」のどちらを選ぶかは非常に重要な判断です。どちらも将来利息のカットを基本とした返済条件の調整という点では共通していますが、内容は大きく異なります。
似ているようで、全然違います。
特定調停の最大のメリットは費用の安さです。自分で手続きを進めれば、1社あたり収入印紙500円+郵便切手代500円程度(東京簡易裁判所の例)、複数社でも合計数千円以内で済みます。弁護士費用ゼロで債務整理を始められる点は確かに魅力的です。
コストが条件です。
一方で、前述のとおり特定調停の成功率は約14〜16%と非常に低く、10件申し立てると8〜9件は不成立に終わるという現実があります。また、成立した場合は調停調書によって即時強制執行のリスクが生まれます。加えて、信用情報機関への事故情報登録(ブラックリスト)は特定調停・任意整理・自己破産に共通するデメリットであり、完済から5年程度はローン審査やクレジットカードの利用に影響が出ます。
ブラックリストには期限があります。
任意整理は弁護士費用(1社あたり数万円程度)がかかりますが、受任通知を依頼直後に送れるため、督促が即日停止します。また過払い金の回収と同時進行できるという点で、特定調停にはないメリットがあります。
どちらを選ぶべきか迷ったときは、まず「無料相談」を活用するのが最善策です。弁護士法人・響など24時間365日対応の無料相談窓口を利用すれば、自分の状況に応じた最適な手続きを専門家にアドバイスしてもらえます。
| 比較項目 | 特定調停 | 任意整理 |
|---|---|---|
| 費用 | 1社500円程度〜 | 1社数万円〜(弁護士費用) |
| 成功率 | 約14〜16% | 比較的高い |
| 督促停止のタイミング | 開始通知書到達後(時間がかかる) | 受任通知送付後すぐ |
| 強制執行リスク | 高い(調停調書が債務名義になる) | 低い(和解書は債務名義でない) |
| 過払い金回収 | 同時にできない | 同時に可能 |
| ブラックリスト | 載る(完済から約5年) | |
| 官報掲載 | なし |
参考:特定調停のデメリットと成功率について、司法統計をもとに弁護士が詳しく解説したページです。
特定調停とは?デメリットや成功率と自分で行う費用や手続きの流れ|弁護士法人・響
金融に関わるトラブル解決の手段として、「調停」だけが選択肢ではありません。ここでは、一般的な解説記事にはほとんど出てこない「金融ADR(裁判外紛争解決手続き)」との比較で、調停の立ち位置を整理します。
金融ADRが条件です。
金融ADRとは、銀行・証券・貸金業・保険など金融分野のトラブルに特化した、国が指定する「指定紛争解決機関」を通じた調停に近い手続きです。日本貸金業協会や全国銀行協会などが運営しており、弁護士(紛争解決委員)が中立的に仲介します。裁判所を使わないため、通常の民事調停よりもさらに手軽に申し立てられるのが特徴です。
これは使えそうです。
たとえば貸金業者との金利や取り立てをめぐるトラブルであれば、日本貸金業協会のADRに申し立てることで、費用ゼロで専門家の仲介を受けられます。金融機関との口座トラブルや証券取引のトラブルにも対応する窓口が設けられており、裁判所に足を運ぶ手間が省けます。
一方で、金融ADRの合意内容は「調停調書」ではないため、法的な強制力が調停より弱い点があります。相手方の任意の協力が前提になります。これを踏まえると、金融トラブルの深刻度に応じて使い分けるのが賢明です。
金融ADRを活用したい場合は、まず日本貸金業協会や全国銀行協会のウェブサイトから申し立て窓口を確認するのが最初のステップです。
参考:金融分野のトラブルに特化した紛争解決制度(金融ADR)について、窓口と手続き方法が確認できます。