グループ法人税制とは簡単にわかるメリットと注意点

グループ法人税制とは簡単にわかるメリットと注意点

グループ法人税制とは簡単に理解できる仕組みとメリット・注意点

資本金1億円以下の子会社でも、親会社の規模次第で「中小企業の節税特典」が丸ごと消えます。


📋 この記事の3つのポイント
🏢
グループ法人税制は強制適用

100%の完全支配関係にある法人間には、会社の規模や意思に関係なく自動的に適用される税制です。選択の余地はありません。

💰
グループ内取引で課税ゼロも可能

完全支配関係の法人間では、資産の譲渡損益繰延・配当の全額益金不算入・寄附金の全額損金不算入など、グループ内の無税資金移動が実現できます。

⚠️
中小企業の特例が消えるケースがある

資本金5億円以上の親会社の傘下に入ると、軽減税率や交際費の定額控除など、中小企業向け7つの優遇制度が一切使えなくなります。


グループ法人税制とは何かを完全支配関係から簡単に解説

グループ法人税制とは、100%の完全支配関係にある企業グループを「1つの法人」とみなして課税する制度のことです。2010年(平成22年)10月1日の税制改正で導入されました。それ以前にあった「連結納税制度」をさらに発展させた形として創設されています。


この制度の一番の特徴は、グループ内での資産の移動や資金のやりとりが、税務上「社内の部門間移転」と同じように扱われる点です。たとえば、親会社A社が子会社B社に1億円の不動産を譲渡した場合、通常の取引であれば含み益に対して課税が発生します。しかしグループ法人税制が適用されると、その譲渡損益は「繰り延べ」となり、B社がグループ外に売却するまで課税されません。


つまり、グループ内は「同じ財布」ということですね。


制度が対象とするのは、あくまでも「完全支配関係」にある内国法人間です。完全支配関係とは、一の者(法人または個人)が他の法人の発行済株式等を100%直接・間接に保有している関係を指します。たとえば、A社がB社の株式を100%保有し、B社がC社の株式を70%、A社が直接C社の株式を30%保有するケースでも、合計すると100%保有とみなされ、A社・B社・C社の三社間にグループ法人税制が適用されます。


なお、外国法人はこの制度の対象外です。日本国内の「内国法人間」のみに適用されます。これは覚えておきたいポイントです。


参考:国税庁による「完全支配関係と連結完全支配関係の意義」に関する解説
国税庁|完全支配関係と連結完全支配関係の意義(法人税法第2条12号の7の6)


グループ法人税制の強制適用とは?連結納税制度との違いも

グループ法人税制を語るうえで避けられないのが「強制適用」という特徴です。連結納税制度(現在はグループ通算制度に移行)が「希望する場合に申請して選択できる任意適用」だったのに対し、グループ法人税制は完全支配関係がある限り自動的に適用されます。「やりたくない」「知らなかった」は通用しません。


強制適用が原則です。


この点は、多くの中小企業の経営者や経理担当者が見落としがちなポイントでもあります。たとえば、地方の中小企業の社長が大企業グループに会社を売却した場合、その翌月から自動的にグループ法人税制の対象になります。関係する税務処理が変わるにもかかわらず、気づかずに従来通りの申告をしてしまうケースは少なくありません。


一方、グループ通算制度(2022年4月から連結納税制度に代わって導入)との違いを整理しておきましょう。





























比較項目 グループ法人税制 グループ通算制度
適用方法 強制適用 任意適用(申請が必要)
損益通算 ❌ できない ✅ できる
申告主体 各単体法人が個別申告 各単体法人が個別申告(損益調整あり)
対象範囲 個人・法人が頂点でも対象 法人が頂点の100%グループ


大きな違いは「損益通算ができるかどうか」です。グループ法人税制では、A社が赤字でB社が黒字でも、それらを相殺して税金を減らすことはできません。損益通算をしたいなら、グループ通算制度を別途選択する必要があります。これは使えそうです。


参考:グループ通算制度の概要について詳しくはfreeeの解説を参照
freee|グループ通算制度とは?連結納税制度との違いなどを図解


グループ法人税制のメリット:資産の譲渡損益繰延と配当・寄附の益金不算入

グループ法人税制には、実務上かなり大きなメリットがあります。主に3つの取引で「無税での資金・資産移動」が可能になります。


① 資産の譲渡損益の繰り延べ


完全支配関係にある法人間で固定資産・土地・有価証券・金銭債権・繰延資産を移転した場合、その時点で発生する譲渡損益は「繰り延べ」になります。つまり、グループ内にいる間は課税されません。たとえば、親会社が3,000万円の含み益を持つ土地を子会社に時価5,000万円で売ったとしても、その3,000万円の利益に対して子会社がグループ外に売却するまで課税は生じません。


ただし、簿価が1,000万円未満の資産は繰り延べの対象外です。これだけは例外です。


また、棚卸資産(販売用在庫)も原則として対象外です。500万円の商品在庫や800万円の売掛金をグループ内で動かしても、通常通り課税されます。この閾値の存在は実務では非常に重要で、うっかり1,000万円未満の資産を無税と誤解しないよう注意が必要です。


② 配当の全額益金不算入


完全支配関係の法人から配当を受けた場合、その配当金の全額が益金不算入となります。通常、受取配当金は一定割合しか益金不算入にできませんが、完全支配関係の場合は負債利子控除なしに100%益金不算入で処理できます。子会社の稼いだ利益を親会社に吸い上げる際に、課税なしでキャッシュを移動できるのです。


③ 寄附金の全額損金・益金不算入


100%グループ内での寄附は、支出側が全額損金不算入、受取側が全額益金不算入となります。一見すると「損金に入らないのはデメリット」に見えますが、受取側にも課税されないので、グループ全体では課税ゼロのまま資金移動が実現します。キャッシュリッチな子会社から赤字の別の子会社へ資金を回す場面などで活用できます。


グループ内資金移動の自由度が上がるのが最大のメリットです。


参考:グループ法人税制の適用取引について詳しく解説した専門家コラム
光税理士法人|グループ法人税制のメリット・デメリットわかりやすく解説


グループ法人税制のデメリット:中小企業の優遇制度が適用除外になる

グループ法人税制の最大の落とし穴が、中小企業向けの特例措置が使えなくなるケースがある点です。資本金1億円以下の法人は通常「中小企業」として複数の税制優遇を受けられます。しかし、資本金5億円以上の法人と直接または間接に完全支配関係がある場合、以下の7つの特例が一切適用されなくなります。



  • 💼 軽減税率(年800万円以下の所得に対する15%の軽減税率)

  • 📉 貸倒引当金の法定繰入率の選択適用

  • 🍽️ 交際費等の損金不算入制度における定額控除制度(年800万円の損金算入枠)

  • 📋 欠損金等の控除限度額の特例

  • 🏦 貸倒引当金の繰入れ特例

  • 🔄 欠損金の繰戻しによる還付制度

  • 💸 特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用


中でも影響が大きいのが「軽減税率」の喪失です。通常、中小法人は年間所得800万円以下の部分について法人税率が15%に軽減されます。一方、通常の法人税率は23.2%です。その差は約8ポイント。年間所得が800万円の場合、軽減税率が使えるかどうかで約64万円の税負担差が生じます。厳しいところですね。


また、交際費の損金算入枠も消えます。中小企業は年間800万円まで交際費を損金に算入できますが、この特典も失われます。年間400万円の交際費がある法人の場合、全額が損金算入できなくなる可能性があり、実質的な税負担が増加します。


グループ法人税制は節税のためだけにある制度ではありません。中小企業にとっては「想定外のコスト増」につながる可能性があり、大企業グループに参加する際は事前に専門家への相談が必須です。税理士への確認だけは忘れずに行いましょう。


グループ法人税制の実務上の注意点:会計と税務のズレと申告調整

グループ法人税制は法人税法上の取り扱いであり、財務会計(一般の会計処理)とは別の世界の話です。この「ズレ」が実務上の大きな落とし穴になっています。


たとえば、グループ内で時価3,000万円の固定資産を帳簿価額2,000万円のものとして譲渡した場合を考えてみましょう。財務会計上は1,000万円の売却益が計上されます。しかし法人税上は譲渡損益が繰り延べられるため、この1,000万円はいったん「加算申告調整」として差し引く必要があります。その結果、「会計上の利益」と「法人税の課税所得」が大きく乖離するケースが出てきます。


調整額が積み上がる点に注意が必要です。


さらに複雑なのは、繰り延べた譲渡損益がいつ戻ってくるかの管理です。子会社がその資産をグループ外に売却したとき、または合併・解散したときに、繰り延べていた損益を一気に認識します。このタイミングを正確に把握していないと、申告漏れや過少申告のリスクが生じます。


実務上は、グループ内の資産移動を詳細に記録・管理する体制が必要です。特に、グループ会社が多い場合や、M&Aで新たにグループに加わった法人がある場合は、既存の会計システムでは対応が難しくなることがあります。


こうした課題の対策として、グループ対応の会計システムの導入が有効です。たとえば「マネーフォワード クラウド会計Plus」のようなグループ対応クラウド会計ソフトを使うと、親会社が複数子会社の経理状況をまとめて把握できます。グループ全体の繰延損益の管理漏れを防ぐために、まずシステムで対応できる範囲を確認してみましょう。


参考:グループ法人税制の注意点と会計処理の考え方について
マネーフォワード|グループ法人税制の注意点(公認会計士・税理士監修)


グループ法人税制を知らないと損する独自視点:M&Aと株式保有の盲点

金融や投資に関心のある人が見落としがちなのが、M&Aや株式取得のタイミングでグループ法人税制が突然「発動」するケースです。


たとえば、個人投資家や事業オーナーが、別会社の株式を100%取得した瞬間から、その2社間にはグループ法人税制が強制適用されます。「法人を設立して資産管理に使おう」「持株会社を作って節税しよう」と考えた段階で、知らないうちにグループ法人税制の対象になっているケースが多いのです。


これは意外ですね。


具体的な落とし穴の一例を挙げます。個人Aさんが、自分が100%出資する甲社と乙社の2社を保有しているとします。「個人」が頂点であっても、甲社と乙社の間に完全支配関係が成立し、グループ法人税制が適用されます。甲社が乙社に土地を売ったとき、その譲渡損益は繰り延べになります。これを知らずに普通に確定申告してしまうと、申告誤りになりかねません。


もう一つ、株価評価への影響も見逃せません。グループ法人税制で繰り延べられた譲渡損益は、一定のタイミングで子会社株式の帳簿価額調整(寄附修正)が発生します。これにより、相続税評価や株価算定に影響が出ることがあります。M&Aで会社を売却する際の株価交渉や、相続対策として株式を移転する際にも、グループ法人税制の影響を事前に確認しておくことが重要です。


金融の世界では「制度の盲点を知っている人が得をする」という側面があります。グループ法人税制は、知っていれば強力な資金移動ツールになる一方、知らなければ申告ミスや予想外の税負担増を招くリスクがある制度です。グループ会社を持つ、または検討している段階で、一度税理士に相談することが最も確実な対策といえます。


参考:グループ法人税制の全体像と適用範囲をまとめた専門家による解説
UKS|グループ法人税制の適用範囲・対象取引、連結納税制度との違い