

「ゴルフ場利用税」を租税公課で仕訳すると、法人税の申告で余計な手間が発生し、最悪の場合は税務調査で指摘されるリスクがあります。
ゴルフ場利用税とは、地方税法に基づいてゴルフ場を1日利用するたびに課される都道府県税です。納税義務者は利用者本人ですが、実際にはゴルフ場が代わりに徴収し、まとめて都道府県へ納める「特別徴収」の仕組みが採用されています。プレー当日に支払うプレー代の明細に記載されているあの金額が、まさにこの税金です。
税額は全国一律ではありません。地方税法で標準税額は1人1日あたり800円、上限は1,200円と定められていますが、実際の金額は各都道府県の条例とゴルフ場の「等級(ランク)」によって決まります。たとえば東京都内の名門コース(1級)では上限の1,200円、栃木県の簡易コースでは300円という具合に、最大4倍近い差が生じています。
なぜゴルフだけにこのような税金が課されるのかというと、歴史的な経緯があります。かつてボウリングやパチンコなどの娯楽施設にも「娯楽施設利用税」が課されていましたが、1989年の消費税導入と同時にほぼ廃止されました。ゴルフだけが「当時の贅沢なレジャー」という認識と、地方自治体の財源確保を理由に名前を変えて生き残ったのです。現在も年間約400億円以上の税収があり、その7割がゴルフ場の所在する市町村に交付されています。
つまり「地方の道路整備や環境保全の受益者負担」という位置づけです。
| 等級 | 東京都 | 千葉県 | 栃木県 |
|---|---|---|---|
| 特級・1級(名門) | 1,200円 | 1,200円 | 1,200円 |
| 2〜4級(一般) | 900〜1,100円 | 800〜1,000円 | 700〜1,000円 |
| 中堅・カジュアル | 600〜800円 | 500〜750円 | 400〜600円 |
| 最安クラス | 400円 | 350円 | 300円 |
なお、ゴルフ場利用税の税収の使途や税額決定の仕組みについては、総務省が公表している地方税制度の解説ページが参考になります。
参考:ゴルフ場利用税の仕組みについて(総務省 地方税制度)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/c-zeisei/index.html
ゴルフ場利用税の勘定科目で最も多い疑問が「交際費か、それとも租税公課か」という点です。結論から言えば、実務上は「交際費(不課税)」として処理するのが一般的であり、多くの税理士もこの方法を推奨しています。
その理由を整理しておきましょう。ゴルフ場利用税は「税金」という名称がついていますが、国税庁が定める「交際費」の定義は「取引先等への接待・供応・慰安などのために支出するもの」です。接待目的でゴルフ場を利用した以上、その利用税も含めて接待のために支出したコストと見なされます。したがって、名称が「税」であっても交際費として処理することが、法人税法上の考え方と一致するのです。
一方で、「租税公課」として処理することも法律上は可能です。しかしここに落とし穴があります。租税公課の勘定科目は会計ソフトで初期設定が「課税対象外(不課税)」になっていることが多く、消費税の処理という観点では間違いではありません。問題は法人税の申告時です。
租税公課は基本的に「損金算入科目」として処理されますが、ゴルフ場利用税は交際費に該当するため、交際費の損金算入限度額の計算に含める必要があります。租税公課で処理してしまうと、法人税申告書の別表15(交際費等の損金算入に関する明細書)で修正計算が必要になり、決算時に余計な手間が発生します。交際費として処理した方が、集計も申告もシンプルです。
これが原則です。
なお、ゴルフ場利用税だけでなく、同じく不課税となる「入湯税」「ゴルフ振興基金」「緑化協力金」なども同様に、交際費(不課税)として処理するのがすっきりします。これらも接待の一部として支出するコストに他ならないからです。
公益財団法人日本税務研究センターでは、ゴルフ場利用税の交際費該当性について相談事例の回答を公開しています。実務での判断に迷ったときに参考になります。
参考:ゴルフ場利用税は交際費かの相談事例(日本税務研究センター)
https://www.jtri.or.jp/counsel/detail.php?ca=001001&id=318
仕訳の最大の注意点は、消費税の区分です。プレー代やロッカー代、飲食代には消費税(10%)が課税されますが、ゴルフ場利用税は消費税法上の「不課税取引」に分類されます。消費税の課税対象となるのは「対価を得て行う取引」ですが、税金は一方的に支払うものであり対価がない、という考え方から不課税となっているためです。
つまり同じ「交際費」という勘定科目でも、消費税区分が異なる行を分けて仕訳する必要があります。ここが実務でミスが頻発するポイントです。
具体例で確認しましょう。取引先との接待ゴルフで、プレー代(税込)33,000円、昼食代(税込)8,800円、ゴルフ場利用税1,100円を現金で支払った場合の仕訳は以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 消費税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 交際費 | 41,800円 | 現金 | 42,900円 | 課税仕入(10%) |
| 交際費 | 1,100円 | 不課税 |
会計ソフトに入力する際は、「交際費」の行を2行に分けて入力し、ゴルフ場利用税の行の消費税区分を「不課税(対象外)」に変更することが必要です。特に交際費の勘定科目はデフォルトで「課税仕入れ」に設定されていることが多いため、意識的に切り替えなければなりません。これを怠ると大変なことになります。
具体的には、仕入税額控除が本来より多く計算され、消費税の申告が過大控除の状態になります。インボイス制度が導入された現在、適格請求書(インボイス)の記載内容と仕訳の整合性がより厳密に問われるようになりました。ゴルフ場から受け取った領収書の内訳をきちんと確認し、利用税の金額を正確に把握した上で分けて入力する習慣をつけることが重要です。
また、入湯税・ゴルフ振興基金・緑化協力金なども同様に不課税です。これらが明細に含まれている場合もまとめて「交際費(不課税)」の行に含めてしまえばOKです。
公認会計士・税理士の寺田誠一氏が解説するゴルフ利用税の仕訳詳細は、実務レベルで非常に参考になります。
参考:ゴルフ利用税・軽油引取税の会計と税務(法人税と消費税)
https://www.s-terada.com/実務会計/ゴルフ利用税と軽油引取税の会計と税務-法人税-消費税/
「ゴルフ場利用税はすべての人に課税される」と思っている人は多いですが、それは違います。地方税法第161条の規定により、特定の条件を満たす人は全額免除(非課税)または軽減措置の対象になります。1ラウンドあたり最大1,200円の節約になるため、知らないと損です。
非課税となる対象者は以下の通りです。
また、多くの都道府県では65歳以上70歳未満の方に対して税額を50%軽減する措置を設けています。ただし、これは各都道府県の条例によって異なるため、利用前に確認が必要です。
ここで最も重要な注意点があります。これらの免除・軽減はチェックイン時に自己申告しないと適用されません。ゴルフ場側はあなたの年齢を自動で判定して免除することはできないため、必ず受付で「非課税対象者です」と申し出て、公的証明書(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など)を提示し、備え付けの「非課税申告書」に記入する手続きが必要です。
払った後に「実は70歳以上でした」と言っても、原則として返還はされません。
また、「精算のときに言えばいい」は禁物です。多くのゴルフ場では、プレー開始前のチェックイン時でないとシステム上の対応が困難となっています。ラウンド後に申し出ても受け付けてもらえないケースがほとんどであることを覚えておきましょう。
自分が対象かどうかを事前に確認し、当日は証明書を必ず携帯すること。これだけ守れば節税になります。
参考:ゴルフ場利用税の非課税制度について(青森県庁)
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/zaimu/zeimu/024_08golf_0301.html
経理担当者が接待ゴルフの費用精算で迷いがちなのが「どこまでが交際費として処理できるのか」という点です。ここを間違えると、帳簿の整合性が崩れるだけでなく、税務調査でも指摘を受けるリスクがあります。
まず大前提として、接待ゴルフの費用を交際費として認めてもらうためには「取引先が参加している」ことが必要です。社内の従業員だけでラウンドした場合は、接待目的と見なされないため原則として交際費にはなりません。その場合、福利厚生費や給与に振り替えることになります。これが条件です。
取引先が参加している接待ゴルフであれば、以下の費用が交際費として経費計上できます。
少し意外なのが交通費の処理です。自社が主催のコンペに行くためのガソリン代や高速代は「交際費」ですが、取引先が主催するコンペに参加する際の交通費は「旅費交通費」になります。接待の主体が自社かどうかで勘定科目が変わるわけです。
一方で、以下の費用は経費計上が難しいケースが多いです。
領収書の保管と一緒に、参加者の企業名・氏名・日付・接待の目的を記録しておくことも大切です。記録が具体的であるほど、税務調査での説明が容易になります。会計ソフトの摘要欄に「〇〇社 田中部長 商談目的」のように記入しておくだけで、後の証明が格段に楽になります。これは使えそうです。
マネーフォワードが公開している接待ゴルフの経費処理ガイドは、仕訳例が豊富で参考になります。
参考:ゴルフで経費にできるものは?仕訳と勘定科目まとめ(マネーフォワード)
https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/63345/
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入以降、領収書の内訳チェックと仕訳の精度がより厳密に問われるようになっています。ゴルフ場から受け取る領収書には、プレー代(課税)とゴルフ場利用税(不課税)が混在しているため、消費税の処理を正確に行うためにも内訳の確認が必須です。
最も多い入力ミスは、「ゴルフ場への支払い総額をそのまま交際費(課税仕入れ10%)として1行で入力してしまう」というものです。たとえば合計15,000円(うち利用税800円)の支払いをすべて課税仕入れとして処理すると、本来は消費税が発生しない800円分まで仕入税額控除の対象にしてしまいます。これは消費税申告の過大控除です。
痛いですね。
正しい入力手順は次の通りです。まず、ゴルフ場の明細書で利用税の金額を確認します。次に会計ソフトで交際費の行を2行に分け、1行目にプレー代・飲食代などの課税分を「課税仕入(10%)」で入力し、2行目にゴルフ場利用税(および入湯税・振興基金など)を「不課税(対象外)」で入力します。最後に合計額が領収書と一致しているか確認してください。
クレジットカード払いの場合は、カード明細だけでは利用税の内訳が分からないことがあります。そのような場合はゴルフ場で発行される明細書を必ず保管しておきましょう。インボイス制度の下では、適格請求書の保存義務があるため、紛失すると仕入税額控除の適用を受けられなくなるリスクがあります。
なお、接待ゴルフの回数が少ない中小企業では、利用税の金額が数百〜1,000円程度と小さいため、消費税の申告額への影響が軽微となるケースが多く、実際に税務調査で厳しく指摘される場面は少ないとも言われています。しかし、正確な処理を習慣化しておくことで、万が一の調査時にも説明できる帳簿を保つことができます。
会計ソフトによっては、「ゴルフ場利用税」と摘要欄に入力すると自動で「不課税」に変換される設定があるものもあります。freee会計やマネーフォワード クラウド会計などを使っている場合は、勘定科目ごとのデフォルト税区分の設定を確認しておくと安心です。会計ソフト側の設定を一度見直しておくだけで、入力ミスのリスクを大幅に下げることができます。
東京都主税局が公開するゴルフ場利用税の手引きには、税額の計算方法や非課税制度に関する公式情報が詳しく記載されています。
参考:ゴルフ場利用税の手引き(東京都主税局)
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/golf_tebiki