

段階取得の差益を「ただの利益」だと思って処理すると、のれんの金額が数百万円単位でズレて連結財務諸表の組み替えが必要になります。
段階取得とは、親会社が同一の会社の株式を複数回にわたって取得し、最終的に支配を獲得して連結子会社にすることをいいます。たとえば「1回目でS社株式の15%を取得し、翌期に45%を追加取得して合計60%にした」というケースが典型例です。
ここで多くの学習者が混乱するのが、「最初に買った15%分の株式をどう処理するか」という点です。結論からいえば、支配を獲得した時点で、以前に取得した株式も含めてすべて「支配獲得日の時価」で評価し直します。これは「支配を獲得したことによって、それ以前の投資の実態・本質が変わった」と見なすためです。つまり、一旦その株式を時価で売却し、改めて時価で買い直したという概念処理になります。
この考え方に基づき、個別財務諸表上の帳簿価額と支配獲得日における時価との差額を「段階取得に係る差損益」として計上します。差益が出れば特別利益、差損が出れば特別損失です。
これが重要です。
参考:連結財務諸表上の段階取得の会計処理の根拠基準(企業結合会計基準第25項)について
EY Japan:連結(平成25年改正)第3回:段階取得の会計処理と設例
段階取得に係る連結仕訳は、大きく3つのステップに分解できます。最初のステップが「投資勘定の評価替え」です。
具体例で確認します。P社がX1年度にS社株式15%を150円、X2年度に45%を600円で取得し、X2年度末に支配を獲得したとします。個別財務諸表上の帳簿価額は150+600=750円です。このとき、S社株式60%全体の時価が800円であった場合、連結上は750円ではなく800円に評価替えが必要です。
仕訳は以下になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| S社株式 | 50円 | 段階取得に係る差益 | 50円 |
差額50円(800-750)が段階取得に係る差益として特別利益に計上されます。もし時価が750円を下回っていれば差損となり、特別損失です。
なお、時価が問題文に明記されていないケースでは「支配獲得時の取得単価×全保有株数」で算出できます。上記の例では、45%取得時に600円支払っているので、1%あたりの単価は600÷45。この単価に保有総数60%を掛けると800円になります。試験問題では時価を自力で計算する問題も出るので要注意です。
参考:差益・差損が発生する仕訳の具体例と投資と資本の相殺消去の流れ
投資勘定の評価替えが終わったら、次は子会社の資産・負債を支配獲得日の時価で評価替えします。
これは通常の連結処理と同じ流れです。
土地・建物・投資有価証券など、時価と簿価にズレがある資産・負債に対して評価差額を計上します。
たとえばS社が帳簿価額160,000千円の土地を保有していて、支配獲得日の時価が240,000千円だったとします。差額80,000千円が評価差額として計上されます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 80,000千円 | 評価差額 | 80,000千円 |
この評価差額は、次のステップである「投資と資本の相殺消去」において純資産の一部として扱われ、最終的にのれんの計算に組み込まれます。つまり評価差額を正確に出さないと、のれんの金額がズレるということです。
これが条件です。
また、評価差額に税効果を適用する場合は、繰延税金負債(または資産)も合わせて計上します。ただし連結上の税効果処理はやや複雑で、設例によっては「税効果は考慮しない」と明記されている場合が多いため、試験・実務ともに条件文を慎重に確認することが重要です。
3つ目のステップが「投資と資本の相殺消去」です。評価替え後のS社株式(支配獲得日の時価)と、S社の純資産(評価差額込み)を消去し、差額を「のれん」または「負ののれん」として計上します。
先ほどの設例を継続します。S社の純資産が資本金700、利益剰余金600、評価差額80,000千円(簡略化のため小数例で説明)だとすると、非支配株主持分(40%)と親会社持分(60%)に按分して計算します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 700 | S社株式 | 800 |
| 利益剰余金 | 600 | 非支配株主持分 | 520 |
| のれん | 20 |
ここで重要なのが「投資と資本の相殺消去では、支配獲得日の純資産額を使う」という原則です。前期末(支配獲得前)の純資産ではなく、あくまで支配獲得日時点の金額を使います。前期末の数字を誤用すると、計算が根本からズレます。
のれんは20年以内で定額償却します(日本基準)。
これは支配獲得日の翌期から開始します。
のれんが大きいほど毎期の費用負担も増えるため、段階取得における差損益の大きさはのれんの規模にも直結します。
段階取得の中でも特に処理が複雑になるのが「持分法適用関連会社から連結子会社に移行するケース」です。関連会社とは持分比率が20%以上50%以下程度で、持分法を適用している会社のことを指します。
このケースでは、投資勘定の評価替えの計算が異なります。単純な帳簿価額(取得原価の累計)ではなく、「持分法による評価額(取得原価+持分法による投資損益の累計-のれん相当額の償却累計)」との差額が段階取得に係る差損益になります。
具体的には、取得原価の合計が210,000千円でも、持分法適用期間中に純利益のうち持分相当額6,000が加算され、のれん償却3,600が控除されている場合、持分法による評価額は210,000+6,000-3,600=212,400千円です。支配獲得日の時価240,000千円との差額27,600千円が段階取得に係る差益となります。
持分法のケースが難しいのはここです。持分法適用期間中の累計仕訳まで遡って確認しないと、正しい差損益が計算できません。実務では持分法適用台帳の管理が重要になってきます。
参考:持分法から連結への段階取得における仕訳の詳細設例
renketsu.info:段階取得により関連会社から連結子会社になった場合の処理
連結会計の仕訳は単年度で完結しません。支配獲得日に行った連結修正仕訳は、翌期以降も引き継ぐ必要があります。
これが「開始仕訳」です。
段階取得に係る差損益は損益科目(P/L科目)であるため、翌期の開始仕訳では「利益剰余金当期首残高」に読み替えます。具体的には、支配獲得年度に行った以下の仕訳が
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| S社株式 | 50 | 段階取得に係る差益 | 50 |
翌期の開始仕訳では次のように変わります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| S社株式 | 50 | 利益剰余金当期首残高 | 50 |
このルールは連結会計全般に共通します。前期以前の損益科目はすべて利益剰余金に振り替えて開始仕訳を作成するのが原則です。開始仕訳が正しくないと、のれん償却の2年目以降の連結精算表が合わなくなります。
これは必須です。
また、のれんの償却仕訳も毎期計上が必要で、開始仕訳では「のれん償却累計額」を反映します。連結精算表を毎期イチから組み直すのではなく、前期からの連続性を意識した仕訳管理が求められます。
参考:連結2年目以降の開始仕訳の作成方法と注意点
パブロフ簿記:連結会計③ 連結修正仕訳と問題の解き方(開始仕訳の解説あり)
段階取得に係る差損益が発生した場合、税効果会計の適用が必要かどうかという論点があります。
これは実務・試験ともに重要な論点です。
まず、段階取得に係る差損益は「連結財務諸表固有の一時差異」に該当します。差益(将来加算一時差異)が発生した場合は原則として繰延税金負債を計上しますが、「親会社自身が株式の売却をコントロールでき、かつ近い将来に売却計画がない場合」は繰延税金負債を計上しないことができます。
一方、差損(将来減算一時差異)が発生した場合は原則として繰延税金資産を計上できません。ただし、近い将来の売却計画や評価減等による一時差異の解消見込みがあり、かつ回収可能性がある場合に限り、繰延税金資産の計上が認められます。
厳しいところですね。差損が出たからといって自動的に繰延税金資産を計上できるわけではないため、条件の確認が重要です。実務では連結税効果実務指針29-2項・31-32項を参照することになります。
試験問題では「税効果は考慮しない」という条件が多いですが、本試験の上位問題では税効果込みで出題される場合もあります。差損益の符号(差益か差損か)と、税効果適用条件の有無を常に意識して解くことが得点のカギになります。
参考:段階取得差損益に対する税効果適用条件の詳細解説
CPA CAT BLOG:公認会計士が解説する段階取得に係る損益の税効果処理
「株式を買い増したら段階取得に係る差損益を計上する」という思い込みをしている方は少なくありません。しかし実は、差損益の計上は「支配を獲得した時点(連結子会社化)」のみです。
持分比率を5%から25%に引き上げて持分法適用関連会社にした場合、この時点では段階取得に係る差損益は発生しません。理由は、差損益を認識するのは「支配の獲得」によって投資の本質が変わったと見なす場面に限られるからです。単純に持分法を適用し始める段階では、投資の実態が根本的に変わったとは見なされません。
これは意外ですね。「持分比率が上がったから評価替えが必要」と混同しやすいため、注意が必要です。
ただし例外が1つあります。非連結子会社として持分法を適用している場合(すなわち支配はあるが連結範囲外の子会社)は、支配自体は獲得しているため、その時点で段階取得に係る差損益を認識することになります。持分法適用=支配なし、とは限らない点が会計処理を複雑にしている要因の一つです。
このような論点は会計基準を逐一確認する必要があります。根拠条文は企業結合会計基準第25項(2)であり、EY Japanのコメンタリーでも詳しく解説されています。
段階取得の仕訳は日本基準だけでなく、IFRSでも同様の概念が存在します。しかし、処理の細部は異なるため、国際対応が必要な企業の担当者は両基準の違いを把握しておく必要があります。
日本基準とIFRSで共通している点は「支配獲得前に保有していた既存の投資を、取得日の公正価値で再測定する」という考え方です。IFRSではこれを「みなし売却・再取得」と説明しており、再測定による差額は当期の損益に計上されます。
最大の違いの一つが「のれんの償却」です。日本基準では20年以内で規則的にのれんを償却しますが、IFRSではのれんを償却しません。代わりに、毎年減損テストを実施して帳簿価額を検証する義務があります。結果として、IFRSを採用する企業はのれんの減損リスクと常に向き合う必要があります。
もう一つの違いが「評価差額の税効果」や「非支配株主持分の計算方法(全部のれん法と部分のれん法)」です。日本基準では部分のれん法(親会社持分相当のみでのれんを算出)が採用されていますが、IFRSでは全部のれん法も選択できます。これによりのれんの金額が変わるため、段階取得の差損益の計算結果にも影響が及びます。
参考:IFRS第3号における段階取得の会計処理の考え方
KPMG:IFRS基礎講座 IFRS第3号「企業結合」の段階取得に関する解説(PDF)
段階取得の仕訳は複数ステップが連動しているため、1か所の誤りが連鎖的に影響します。
よくあるミスを整理しておきましょう。
まず多いのが「時価評価に使う数値の取り違い」です。投資勘定の評価替えには「支配獲得日の時価」を使いますが、前期末の時価や直近取得時の単価を誤用してしまうケースがあります。また、「投資と資本の相殺消去」では支配獲得日時点の純資産(評価差額込み)を用います。
前期末の数字を引用するのは明確な誤りです。
次に多いのが「持分法からの移行時の差損益計算」のミスです。持分法による評価額は取得原価の単純合計ではなく、持分法損益の加算・のれん償却の控除後の金額です。この累計計算を省略すると差益(または差損)の金額がズレます。
そして見落としがちなのが「翌期以降の開始仕訳での差損益科目の振り替え」です。段階取得に係る差益・差損は損益科目なので、翌期の開始仕訳では必ず「利益剰余金当期首残高」に変換します。変換を忘れると連結精算表の利益剰余金が合いません。
以下に、段階取得の処理を正確に行うためのチェックリストをまとめます。
参考:連結会計における段階取得の間違いやすい論点(簿記1級レベル)
簿記1級マスター:間違いやすい簿記1級の用語・ポイント(段階取得の差損益解説あり)
段階取得の仕訳は、簿記試験の学習範囲にとどまらず、実際のM&A実務の場面でも頻繁に登場します。特に近年は、スタートアップ企業への段階的な出資(最初はマイノリティ出資→追加出資で子会社化)という形が増えており、このプロセスが会計上の段階取得そのものに該当します。
具体例として、スタートアップA社に対して最初は10%出資(関連会社にはならない)し、翌年に50%を追加取得して連結子会社化するケースを考えます。最初の10%取得時には個別財務諸表上で「関係会社株式」として計上するだけです。しかし連結子会社化した翌期の連結決算では、10%分も含めた60%全体を支配獲得日の時価で評価替えし、段階取得に係る差損益を計上します。
このとき、スタートアップA社の株価(時価)が最初の取得時から大幅に上昇していれば、差益が大きく計上されます。仮にIPO前のユニコーン企業に10億円で10%出資し、5年後に追加取得した時点の時価が1株50億円相当まで上昇していれば、差益の規模も相当なものになります。
これは使えそうです。
逆にスタートアップが業績不振で時価が下落していれば差損が計上され、特別損失として損益を悪化させます。この差損益の認識タイミングが連結決算の発表数字に影響するため、CFOや経営企画担当者はM&A計画の立案段階で事前に会計インパクトをシミュレーションすることが実務上の標準的な流れになっています。
段階取得では通常「のれん(正ののれん)」が発生しますが、条件によっては「負ののれん」が発生することもあります。負ののれんとは、支配獲得日における親会社の投資額(時価)が、子会社純資産の親会社持分を下回る場合に生じます。
負ののれんが発生するのは主に「割安で株式を取得できた場合」です。たとえば業績が低迷している企業の株式を市場価格よりも大幅に低い価額で取得したケースが代表例です。日本基準では負ののれんは発生した年度に一括して特別利益に計上します(企業結合会計基準第33項)。
一方、IFRSでは負ののれんを「バーゲン購入益」と呼び、取得日に損益(純利益)に認識します。取得価格の測定ミスや識別可能純資産の過小評価がないかを再確認した上での計上が求められるため、IFRSの方がより慎重なチェックが求められます。
段階取得でも負ののれんが発生しうるという点は見落とされがちです。差損益の計算で差損が生じつつ、かつ純資産の親会社持分が投資額を上回るときは、負ののれんが発生します。この場合は特別利益と負ののれん利益の両方が同時に計上される可能性があり、連結損益計算書への影響が複合的になります。
段階取得と混同されやすい処理に「支配獲得後の子会社株式の追加取得」があります。この2つは名前が似ていますが、会計処理は根本的に異なります。
これだけ覚えておけばOKです。
段階取得は「支配獲得前の複数回取得で最終的に支配獲得するケース」です。これに対し、支配獲得後の追加取得とは「すでに子会社化している会社の株式をさらに買い増すこと(例:60%→80%)」です。
支配獲得後の追加取得では、差損益(段階取得に係る差損益)は計上されません。代わりに、追加取得により増加した親会社持分と支払額との差額は「資本剰余金」として処理します(平成25年改正後の日本基準)。これは損益計算書を通さない純資産の中での調整です。
この違いを押さえずにいると、試験問題で「差損益を計上すべきか、資本剰余金を計上すべきか」の判断を誤ります。判断の基準は「その取得が支配獲得前か後か」という1点だけです。支配獲得前→段階取得→差損益、支配獲得後→追加取得→資本剰余金、というフローで覚えると整理しやすくなります。
参考:支配獲得後の追加取得と段階取得の違いについての会計基準解説
マネーフォワードBiz:段階取得に係る差益とは?わかりやすく解説(公認会計士・税理士監修)
段階取得の仕訳を正確に処理するためには、いくつかの前提知識が必要です。段階取得は連結会計の「応用論点」に位置するため、基礎が固まっていないと理解が追いつきません。
まず必要なのは「投資と資本の相殺消去」の理解です。これは連結会計の根幹にある処理で、子会社化した際に親会社の投資勘定と子会社の純資産を消去してのれんを計上する仕訳です。
段階取得の処理はこの延長線上にあります。
次に必要なのが「持分法の仕訳」の理解です。関連会社からの移行ケースを理解するには、持分法による投資損益の計上・のれん相当額の償却・評価差額の扱いをひと通り習得しておく必要があります。持分法の処理が曖昧なまま段階取得に進むと、差損益の計算で必ずつまずきます。
学習の順番としては「①基本的な連結修正仕訳(開始仕訳・のれん償却・成果連結)→②持分法の会計処理→③段階取得(単純ケース)→④持分法からの移行ケース→⑤税効果込みの総合問題」というロードマップが効率的です。日商簿記1級や公認会計士試験の受験者であれば、各ステップで過去問・答練を1テーマ10問以上は繰り返すことで定着します。
実務担当者向けとしては、基準書(企業結合会計基準・連結会計基準)を参照しながら設例を自分で作って仕訳を組む練習が特に効果的です。設例の数字を少し変えて差損になるケース・持分法ありのケースなど複数パターンを作ることで、仕訳の論理構造が自然に身につきます。

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