退職所得申告書の記入例と国税庁の書き方を完全解説

退職所得申告書の記入例と国税庁の書き方を完全解説

退職所得申告書の記入例と国税庁の手続きを徹底解説

申告書を1枚出し忘れると、退職金2,000万円から約408万円が余分に引かれます。


📋 この記事の3つのポイント
⚠️
提出しないと一律20.42%課税

「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと、勤続年数や控除に関係なく退職金の全額に20.42%の所得税が課税されます。勤続30年・退職金2,000万円の場合、申告書ありなら税額約40万円ですが、未提出なら約408万円もの源泉徴収になります。

📝
記入はA〜E欄の5区分

初めて退職金を受け取る人はA欄だけ記入すればOK。過去に退職金を受け取ったことがある人はB〜E欄も記載が必要です。国税庁のPDFフォームを使えば入力用も無料で入手できます。

🔄
2026年から大きなルール改正

令和8年(2026年)1月から退職所得申告書の様式が新しくなり、iDeCoとの控除調整期間も「5年」から「10年」に延長されました。この改正を知らずにiDeCoを先受け取りすると、退職金の控除が大幅に減額されます。


退職所得申告書とは何か・国税庁が定める正式名称と役割

「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金を受け取る人が勤務先(支払者)に対して提出する書類です。正式名称は「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」といいます。この1枚の書類が、退職金に対して適正な税額計算を行うための根拠になります。


退職金は、給与所得とは明確に区別された「退職所得」として課税されます。長年の勤労に対する報償的な性格と、老後の生活保障という2つの意味合いから、税法上は非常に手厚い優遇が設けられています。具体的には「退職所得控除」「1/2課税」「分離課税」という3つの優遇措置が適用されます。


申告書を提出することで、これらの優遇が適用された正しい税額で源泉徴収が行われます。つまり、適切な申告を行えば、原則として自分で確定申告をする必要がないというメリットもあります。


根拠法令は所得税法第203条および所得税法施行規則第77条です。提出は義務であり、未提出のまま退職金を受け取ると税法上の不利益を受ける仕組みになっています。


国税庁の公式ページでは、申告書の様式をPDF形式で公開しており、「入力用PDF」も提供されています。時期によって様式が異なるため、必ず現在の時期に対応したものを使用することが重要です。


退職所得にはさまざまな種類が含まれます。会社からの退職手当だけでなく、中小企業退職金共済(中退共)からの一時金、特定退職金共済からの一時金、確定給付企業年金の一時金なども対象です。これらすべてに対して、この申告書が必要になります。


国税庁の公式手続き案内ページでは、様式のダウンロードや添付書類の確認ができます。


【国税庁公式】退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)A2-29 ─ 様式ダウンロードと手続き概要の確認に


退職所得申告書の記入例・A欄からE欄までの国税庁書式の書き方

申告書の記入欄は大きく分けてA〜Eの5つに分かれています。これが基本です。まず全員が記入するA欄から確認しましょう。


A欄:全員が記入する基本情報


A欄には次の3項目を記入します。①「退職手当等の支払を受けることとなった年月日」には退職日を記入します。②「退職の区分」では、一般退職の場合は「一般」に丸を、在職中に障害者となりその障害が直接の原因で退職した場合は「障害」に丸をつけます。退職年の1月1日時点で生活保護を受けている場合は「有」にも丸をつけましょう。③「勤続期間」には入社日(自)と退職日(至)を記入し、勤続年数を計算します。


ここで重要な注意点があります。勤続年数に1年未満の端数がある場合は必ず切り上げて記入します。たとえば20年3ヶ月なら「21年」と記入するということです。わずか1ヶ月のズレで控除額が変わることもあるので、注意に注意を重ねたいところです。


B欄:同年に他の退職金を受け取った場合


同じ年に他の勤務先からも退職金を受け取っている人が記入します。先に受け取った退職手当の「退職所得の源泉徴収票」を手元に用意し、そこから勤続期間を転記します。A欄とB欄の勤続期間が重複しないように通算した期間を記入するのがポイントです。


C欄:前年以前の退職手当がある場合


前年以前4年以内(老齢一時金に該当する場合は14年以内)に退職手当を受け取っていた場合に記入します。勤続年数の端数の扱いが、A欄やB欄と異なります。C欄では1年未満を切り捨てて記載します。A欄では切り上げ、C欄では切り捨て、という違いをしっかり覚えておきましょう。


D欄:通算されている勤続期間がある場合


A欄とB欄の勤続期間のうち、以前受け取った退職手当と一部または全部が通算されている期間を記入します。D欄の端数処理も切り捨てです。


E欄:B欄・C欄に記載がある場合


B欄またはC欄に退職金がある場合に、その詳細を記入します。収入金額や源泉徴収税額を「退職所得の源泉徴収票」から転記し、支払者の所在地と名称も記載します。


初めて退職金を受け取る方で、過去に退職金の受給経験がない場合は、A欄だけ記入すれば申告は完了します。シンプルに考えれば大丈夫です。


【国税庁公式PDF】退職所得の受給に関する申告書(令和8年1月1日以後用)─ 記入欄の構成を実際に確認したい方に


退職所得申告書を提出しないと起きること・国税庁が定める20.42%課税のリスク

申告書の提出を忘れると何が起きるのか。結論は明確です。


申告書未提出の場合、退職手当等の「全額」に対して20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)の税率で源泉徴収が行われます。退職所得控除は一切適用されません。これが最大のリスクです。


具体的な数字で確認しましょう。勤続30年で退職金2,000万円を受け取った場合を例にします。


申告書を提出した場合、退職所得控除額は800万円+70万円×(30年−20年)=1,500万円。課税退職所得は(2,000万円−1,500万円)×1/2=250万円となり、所得税は約15万5,702円、住民税は25万円、合計約40万円の税負担です。退職金の手取りは約1,959万円になります。


申告書を提出しなかった場合、2,000万円×20.42%=408万4,000円が丸ごと源泉徴収されます。差額は368万円以上。これはサラリーマンの年収に相当する金額が飛んでいく計算です。痛いですね。


申告書を出し忘れたとしても、確定申告を行えば税金の還付を受けることが可能です。ただし、確定申告の手間がかかる上に、一時的に資金が引き出されるという不利益は避けられません。「あとで確定申告すればいい」という考え方より、退職前に申告書を確実に提出する方が圧倒的に合理的です。


なお、国税庁の公式説明によると、申告書を提出しなかった方は「退職金の収入金額から一律20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収される」と明記されています。


【国税庁公式】退職金と税 ─ 源泉徴収ルールや申告書提出の必要性をやさしく解説したページ


退職所得申告書の提出方法・提出先と提出時期・添付書類の確認

申告書の提出先は、退職金を支払う側、つまり勤務先の会社や共済組合です。税務署に直接提出する必要はありません。


会社は受け取った申告書を、原則として自社内で保管します。税務署から特に求められた場合以外は、税務署への提出義務はありません。ただし、2026年(令和8年)の改正以降、退職所得の源泉徴収票については会社員を含む全員分を税務署へ提出する義務が新たに課されました。申告書の保管は以前と変わらず会社側が行います。


提出のタイミングは、退職金の支払いを受ける時までです。実務上は、退職前に会社の担当者に提出するのが一般的です。支払者は申告書を受け取った後に源泉徴収額の計算を行うため、支払処理が始まる前までには必ず提出しましょう。


添付書類が必要な場合もあります。同年に他の勤務先から退職手当を受け取っている場合は、その退職手当に係る「退職所得の源泉徴収票」を1部添付します。A欄で「障害」に該当する人は「障害者手帳のコピー」、生活扶助の「有」に該当する人は「生活保護決定通知書のコピー」の添付が必要です。初めての退職金受給で特別な事情がない場合は、添付書類は不要です。


申告書の様式は国税庁のウェブサイトから無料でダウンロードできます。令和4年4月1日以後の様式と、令和8年1月1日以後の様式では記入内容が異なる点に注意が必要です。特に2026年以降に退職する方は、最新様式を使用してください。給与計算ソフトを使用している場合は、対応バージョンに更新されているかも確認することをおすすめします。


申告書の保存期間は従来7年でしたが、老齢一時金に該当する退職手当については、令和8年1月以降、保存期間が10年に延長されました。企業の実務担当者は、管理方法の見直しが必要です。


2026年から変わる退職所得控除の10年ルール・iDeCoと退職金の受取順序で税額が変わる

金融に関心のある方が特に注意すべき、2026年(令和8年)からの重要な制度改正があります。


従来は、iDeCo(個人型確定拠出年金)の老齢給付金を一時金で受け取った後、5年を超えてから退職金を受け取れば、退職所得控除を重複して使うことができました。これが「5年ルール」です。


2026年1月1日以降、この調整期間が「10年」に延長されました。つまり、iDeCoを先に受け取った後、10年以内に退職金を受け取ると、退職所得控除が重複して適用されなくなります。結果として、退職所得控除額が大幅に減額され、税負担が数十万円から数百万円増える可能性があります。


たとえば、60歳でiDeCoを一時金受給し、65歳で退職金を受け取る場合、以前の5年ルールでは控除満額が使えました。しかし新ルールでは、5年では足りず10年の間隔が必要になるため、同じスケジュールで受け取ると控除が調整されてしまいます。


逆に、退職金を先に受け取り、その後iDeCoを受給する場合の調整期間は「19年以内」です。これは以前より長い期間ですが、多くの人が退職金→iDeCoの順番で受け取るため、実質的な影響は限定的な場合もあります。


受取順序を考える上でのポイントをまとめます。


- iDeCoを先に受け取る場合:退職金との間隔を10年以上空ける
- 退職金を先に受け取る場合:iDeCoとの間隔を19年以上空けるか、iDeCoを年金形式で受け取ることを検討する
- 受取時期が近い場合:税理士などの専門家に相談し、どの受取方法が最も税負担を抑えられるか試算する


退職所得申告書自体の様式も、この改正に伴い令和8年1月1日以後は新様式への切り替えが必要です。退職所得申告書のC欄に関わる「前年以前特定要件の退職手当」の期間が変更されていますので、最新の様式を使用してください。


【freee公式】2026年施行・退職所得控除の5年ルールが10年ルールへ ─ iDeCoとの受取順序・改正内容の詳細確認に


退職所得申告書の独自視点・確定申告が必要になるケースと申告書提出後の注意点

退職所得申告書を正しく提出した場合でも、確定申告が必要になるケースがあります。これは、多くの人が「申告書を出したから確定申告は不要」と思い込みがちな部分です。実は条件次第で必要になります。


国税庁の見解では、退職所得申告書を提出した場合でも、医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税など)の適用を受けるために確定申告書を提出する場合、退職所得の金額を申告書に含めて申告する必要があります。退職所得の金額は、医療費控除の計算基準や寄附金控除の上限に影響を与えるためです。


つまり、退職した年に多額の医療費を支払った場合や、ふるさと納税をしている場合は、退職所得を含めた確定申告を行わなければなりません。還付を受けるためだけでなく、正しい税額を申告するための義務として理解しましょう。


もう一つ、あまり知られていない例外があります。退職する予定だった人が亡くなり、その死後3年以内に支払いが確定した退職金を相続人が受け取った場合、その退職金は所得税ではなく「相続税」の課税対象となります。この場合、500万円×法定相続人の数を超えた部分に相続税がかかります。退職所得申告書ではなく、相続税の手続きが必要になるため、注意が必要です。


また、副業不動産所得や事業所得がある場合で、それらが赤字になったとき、確定申告を通じて退職所得と損益通算できる場合があります。ただし、他の所得(給与・配当・雑所得)とまず通算してから退職所得と通算する順序が定められているため、税理士への相談が実質的に不可欠になります。


退職という人生の大きな節目で、税務上の手続きをすべて自分で正確に把握するのは決して簡単ではありません。確定申告の必要性や退職所得の申告漏れが心配な方は、国税庁の電話相談窓口(国税局電話相談センター)を活用するか、税理士に相談することを一つの選択肢として検討してみてください。


退職所得申告書そのものの記入は、初めての退職金受給であればA欄のみで完結します。提出先は会社、提出時期は退職金支払い前、これが基本です。


【国税庁公式】No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)─ 退職所得の計算方法と確定申告が必要なケースの公式解説