障害者雇用調整金と賃上げ税制の活用術と注意点

障害者雇用調整金と賃上げ税制の活用術と注意点

障害者雇用調整金と賃上げ税制を正しく組み合わせていますか

障害者雇用調整金を受け取っていても、賃上げ促進税制の控除額が思ったより大幅に減ってしまうケースがあります。


この記事のポイント3選
💡
調整金は賃上げ税制と密接に関わる

障害者雇用調整金は法人税上の益金として計上されます。賃上げ促進税制の計算では「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」として扱われるかどうかで控除額に大きな差が出ます。

📋
2026年以降は大企業の優遇が廃止

賃上げ促進税制は2026年3月末に大企業向けが廃止。中小企業は引き続き最大30%控除+5年繰越が使えますが、申請手順と期限に注意が必要です。

⚠️
法定雇用率は2026年7月にさらに引き上げ

民間企業の法定雇用率は2026年7月に2.5%から2.7%へ上昇予定。対象企業の範囲が広がる前に、調整金・納付金の試算と賃上げ計画を連動させた見直しが急務です。


障害者雇用調整金の基本的な仕組みと支給対象

障害者雇用調整金は、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づいて設けられた制度です。法定雇用率を達成しているだけでは受け取れません。常時雇用している労働者数が100人を超える企業で、かつ法定雇用率を上回って障害者を雇用している場合に限り、超過人数1人あたり月額2万9,000円が支給されます。


つまり条件は2つです。「100人超の企業であること」と「法定雇用率の超過達成」です。


2025年時点の民間企業の法定雇用率は2.5%です。従業員を40人以上雇用していれば雇用義務が生じますが、調整金の対象は100人超の企業に絞られます。この点は意外と混同されやすいため注意が必要です。


また、2024年4月からの制度改正により、支給対象人数が年間120人月を超えた場合、その超過分については1人あたり月額2万3,000円に減額されます。


これはかなり大きな変更点です。


大量に障害者を雇用している企業にとっては、想定より支給額が減ることになります。在宅就業障害者への仕事の発注に対して支給される「在宅就業障害者特例調整金」は1人あたり月額2万1,000円、100人以下の企業向け「報奨金」は1人あたり月額2万1,000円と設定されており、規模によって制度が異なります。


支給申請の期限は毎年4月1日から5月15日までです。期限を過ぎると支給が受けられなくなるため、事業年度末の集計作業は余裕を持って進めましょう。


独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」|調整金・納付金の支給金額の詳細が確認できます


障害者雇用調整金の計算方法と具体的な金額イメージ

計算式は次の通りです。


> (実際に雇用した障害者の年度合計数 ー 法定雇用率による障害者の年度合計数)× 2万9,000円


たとえば、従業員200人の企業(法定雇用率2.5%)の場合、法定雇用障害者数は5人です。


実際に8人雇用していれば超過は3人。


年間の調整金は「3人 × 2万9,000円 × 12か月 = 104万4,000円」になります。これはおよそ新入社員の初任給3〜4か月分に相当する金額感です。


金額が大きいように見えますが、注意点があります。


年120人月という上限ルールです。


120人月とは、たとえば10人を12か月雇用した場合の人数×月数が120になる状態を指します。Bリーグのコートと観客席を合わせた面積に例えるまでもなく、中規模以上の企業では容易に到達するラインです。


超過部分は2万3,000円に減額されるため、たとえば年間150人月分の超過があった場合、受け取れる調整金の総額は次のようになります。


- 120人月分:120 × 2万9,000円 = 348万円
- 超過30人月分:30 × 2万3,000円 = 69万円
- 合計:417万円


120人月以内であれば348万円ではなく435万円(150 × 2万9,000円)になるはずが、417万円にとどまります。


差額は18万円です。


雇用規模が大きくなればなるほど、この減額の影響は無視できません。金額だけでなく人月の管理も欠かせないということです。


パーソルダイバース「障害者雇用納付金とは?」|調整金・報奨金の計算方法と具体例が詳しく掲載されています


障害者雇用調整金の法人税上の取り扱いと益金算入のタイミング

障害者雇用調整金は法人税法上、益金として課税されます。これを見落としている企業担当者は少なくありません。


調整金は「収益」として扱われるため、受け取った事業年度の益金に算入されます。非課税扱いの助成金と混同すると、決算時に思わぬ課税が生じます。雇用調整助成金(新型コロナ禍で広く使われたもの)も課税対象ですが、消費税は非課税です。障害者雇用調整金も同様に法人税の対象となります。


2019年1月に国税庁が公表した照会事例(東京国税局)でも、親事業主が独立行政法人から支給を受ける障害者雇用調整金については「全額を益金の額に算入することが相当」との見解が示されています。グループ内での法定雇用率の合算計算に関わる特殊なケースにおいても、調整金は収益として処理することが原則です。


そのため、税務申告の際には決算書の「雑収入」や「補助金収入」等の勘定科目に正しく計上し、税額計算に含める必要があります。これが賃上げ促進税制の計算にも影響を与えることになります。


詳しくは次の節で説明します。


国税庁「障害者雇用促進法に基づき親事業主が支給を受ける障害者雇用調整金及び納付する障害者雇用納付金の法人税法上の取扱いについて」|調整金の益金算入に関する公式見解が確認できます


賃上げ促進税制の基本的な仕組みと控除率の概要

賃上げ促進税制とは、従業員の給与等を一定以上引き上げた場合に法人税から税額控除が受けられる制度です。2013年に「所得拡大促進税制」としてスタートし、2022年に現在の名称になりました。


控除率は企業の規模と賃上げ率によって異なります。2026年2月時点の主な内容は次の通りです。


| 区分 | 給与等支給増加率 | 税額控除率 |
|---|---|---|
| 中小企業(必須) | 1.5%以上 | 15% |
| 中小企業(上乗せ) | 2.5%以上 | 30% |
| 中堅企業(必須) | 3%以上 | 10% |
| 中堅企業(上乗せ) | 4%以上 | 25% |
| 全企業(大企業)| 3〜7%以上 | 10〜25% |


中小企業は特に優遇されており、教育訓練費が前年度比5%以上増加していれば控除率がさらに10%上乗せされます。また、くるみん・えるぼし認定を取得している場合にも5%の上乗せが適用されます。


ただし控除できる上限は、どの区分においてもその事業年度の法人税額の20%です。


これが上限です。


超えた分は中小企業に限り5年間繰り越すことができます。2026年3月末で大企業向け制度が廃止される見通しのため、大企業はこれが最後のチャンスです。中小企業向けは2029年3月末まで継続予定ですが、法改正には常に注意が必要です。


中小企業庁「中小企業向け賃上げ促進税制」|最新の適用条件・控除率・ガイドブックが確認できます


障害者雇用調整金が賃上げ促進税制の計算に与える影響

ここが最も注意が必要なポイントです。


賃上げ促進税制の「雇用者給与等支給額」を計算する際には、「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」を控除します。この金額に当てはまるものが多いほど、見かけ上の給与支給額が下がり、賃上げ率の判定や控除対象額が小さくなってしまいます。


では、障害者雇用調整金はこれに該当するのでしょうか。


調整金は、法定雇用率を超えて障害者を雇用したことに対して支給されるものです。その算定方法は「超過障害者数×月額単価」で計算されるため、給与等の支給実績を直接の基礎としていません。つまり、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のように「採用した障害者の給与支給実績をもとに算定される」タイプの助成金ではありません。


このため、障害者雇用調整金は原則として賃上げ促進税制における「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」には該当しないと解釈されています。また、「雇用安定助成金」(雇用調整助成金・産業雇用安定助成金など)にも含まれません。


これは企業にとって有利な点です。


ただし、個別の状況によっては専門家への確認が必要です。類似の仕組みを持つ助成金でも、要綱の記載内容や算定根拠が異なれば、「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当する可能性があります。調整金の受け取りがある場合は、確定申告前に税理士等へ相談することをお勧めします。


あすか税理士法人「賃上げ促進税制〜給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額・雇用安定助成金とは〜」|各助成金の控除対象の判断基準が詳しく解説されています


雇用安定助成金と障害者雇用調整金の違いを正確に把握する

金融担当者や経営者がよく混同するのが「雇用安定助成金」と「障害者雇用調整金」の違いです。


「雇用安定助成金額」とは、雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給される助成金のことを指します。


具体的には以下が該当します。


- 雇用調整助成金
- 産業雇用安定助成金
- 緊急雇用安定助成金
- およびこれらに上乗せして地方公共団体から支給される助成金


一方、障害者雇用調整金は雇用保険法に基づく制度ではなく、障害者雇用促進法に基づく制度です。


このため雇用安定助成金には含まれません。


賃上げ促進税制では、雇用安定助成金は「調整雇用者給与等支給増加額」を算出する際の上限計算に使用されます。ここで雇用安定助成金を誤って多く計上すると、控除の上限額が下がり、実際に受けられる節税効果が減少します。


逆に計上漏れがあっても問題が起きます。


調整金と雇用安定助成金を正しく区別することが大切です。


制度の区別は次のように覚えると整理しやすいです。


- 🔵 雇用安定助成金:雇用保険財源から支給、給与総額に連動して計算
- 🟡 障害者雇用調整金:障害者雇用納付金財源から支給、超過障害者数に連動して計算


障害者雇用調整金が「給与等充てるため」の金額に該当するかどうかの判断軸

賃上げ促進税制で問題になる「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当するかどうかは、以下の2つの基準で判断します。


【形式基準】 補助金等の要綱・要領・契約において、交付の趣旨・目的が「給与等の支給額に係る負担を軽減させることであること」が明らかにされているもの。


【実質基準】 算定方法が「給与等の支給実績または支給単価を基礎」として定められているもの。


障害者雇用調整金は「超過雇用人数×月額単価×月数」という算式で計算されます。月額単価は2万9,000円と法令で定められており、各企業の給与水準とは無関係です。また交付の趣旨も「障害者雇用に際する経済的負担の調整」であり、「給与負担の軽減」を直接の目的とはしていません。


このため、形式基準・実質基準のいずれにも該当しないと解釈するのが自然です。これが前述の「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額に原則として該当しない」という判断の根拠となります。


ただし、租税特別措置法の解釈は税務調査官により見解が異なるケースもゼロではありません。確定申告前に所轄税務署または税理士に確認するのが確実です。


確認する、これだけ覚えておけばOKです。


FP総合研究所「賃上げ等促進税制における給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額・雇用安定助成金とは」|各助成金の該当事例一覧が参照できます


賃上げ促進税制の控除額を最大化するための障害者雇用計画の立て方

障害者雇用と賃上げ促進税制は、切り離して考えてはいけません。どちらも給与支給総額を軸に設計されているからです。


賃上げ促進税制で最大30%の控除を受けるためには、中小企業の場合「雇用者給与等支給額が前年度より2.5%以上増加していること」が必要です。加えて教育訓練費要件も満たす必要があります。


ここで重要なのが、障害者雇用によって採用した従業員への給与もカウントできるという点です。正規・非正規を問わず、国内雇用者として賃金台帳に記載されている従業員への給与等は、すべて雇用者給与等支給額に含まれます。障害者雇用による新規採用が賃上げ率の向上につながるケースもあります。


これは使えそうです。


たとえば、前年度の雇用者給与等支給額が5,000万円の企業が障害者雇用で2名追加し、年間各240万円の給与を支払った場合、増加額は480万円(9.6%増)となります。


これは2.5%要件を大きく上回ります。


控除対象増加額480万円に30%を掛ければ、144万円の税額控除が見込めます。法人税額が720万円以上あれば全額控除可能な計算です。


ただし実際の計算では調整雇用者給与等支給増加額(雇用安定助成金を考慮した上限)との比較が必要です。また、全体の採用計画・給与水準・退職者数の変動なども影響します。年度末だけでなく、事業年度の前半から継続的にシミュレーションしておくことが控除額の最大化につながります。


賃上げ促進税制の申請手順と確定申告時に必要な書類一覧

賃上げ促進税制の適用に際して、特別な許可申請は必要ありません。


確定申告時に必要書類を添付するだけです。


申請手順は比較的シンプルです。


確定申告の際に必要な書類は以下の通りです。


- ✅ 税額控除の対象となる控除対象雇用者給与等支給増加額の計算に関する明細書
- ✅ 継続雇用者給与等支給額・比較給与等支給額の記載
- ✅ 控除を受ける金額の計算明細書
- ✅ 適用額明細書(法人のみ)
- ✅ 大企業等の場合:マルチステークホルダー方針の公表と届出の受理通知書の写し


マルチステークホルダー方針の届出が必要な企業(資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上等)は、届出から受理まで15日程度、gBizIDプライムのアカウント取得に2週間程度かかります。合計で約1か月が必要なため、事業年度終了前から準備を始めることが重要です。


中小企業であれば届出義務はなく、確定申告書の提出時に計算明細書を添付するだけで申請が完了します。電子申告(e-Tax)でも対応可能で、申告作業の効率化のために活用することをお勧めします。繰越控除を使う場合は「繰越税額控除限度超過額の明細書」の添付も必要です。


この書類も期限に注意すれば大丈夫です。


2026年以降の障害者雇用調整金と賃上げ税制の改正ポイント

2026年は障害者雇用と賃上げ税制の双方で大きな変化が訪れます。


障害者雇用については、2026年7月に民間企業の法定雇用率が現行の2.5%から2.7%に引き上げられる予定です。これにより、雇用義務が生じる企業の基準も40人以上から37.5人以上へと変わります。つまり、従来は対象外だった40人未満の企業にも影響が出てくる可能性があります。


調整金の面では、2024年4月以降の雇用期間から「年間120人月超過分は月額2万3,000円に減額」というルールが適用されています。大量に障害者を雇用している企業は調整金の合計額を過去と同じように見積もると誤差が生じます。


一方、賃上げ促進税制については次の点が整理されます。


| 区分 | 変更内容 |
|---|---|
| 大企業(全企業向け) | 2026年3月末に廃止(前倒し) |
| 中堅企業 | 2027年3月末で廃止予定・要件厳格化 |
| 中小企業 | 2029年3月末まで継続・繰越控除5年維持 |


大企業向けが廃止されることで、中小企業優遇への集中が鮮明になります。中小企業にとっては引き続き使える制度ですが、控除上限は法人税額の20%というルールは変わりません。繰越控除を活用し、計画的に節税メリットを積み上げることが求められます。


OBC「令和8年度(2026年)の税制改正ポイントを解説」|賃上げ促進税制廃止・縮小の詳細スケジュールが確認できます


障害者雇用納付金を支払う企業が賃上げ税制を適用する際の注意点

法定雇用率を満たせず納付金を支払っている企業も、賃上げ促進税制の対象から外れるわけではありません。


障害者雇用納付金を支払うのは「法定雇用率未達成の企業」で、賃上げ促進税制の適用は「青色申告をしている法人・個人事業主で賃上げ要件を満たしたもの」という別の軸で判断されます。


両者は独立した制度です。


ただし、納付金を支払っている企業には注意点があります。障害者雇用納付金は損金として計上できますが、「申告書が提出された日の属する事業年度」の損金算入となるため、計上タイミングに注意が必要です。一方で、調整金は受け取った事業年度の益金として算入されます。


さらに、法定雇用率を満たしていない状態が続くと次のようなリスクが生じます。


- 💡 ハローワークからの雇用率達成指導(まず計画作成命令が出る)
- 💡 改善が見られない場合の特別指導
- 💡 最終手段としての企業名公表


企業名が公表されると採用活動・ブランドイメージに影響し、株価にまで波及するケースがあります。


厳しいところですね。


納付金を払えばよいと考えず、雇用の拡大と税制活用を並行して進める視点が大切です。


障害者雇用率と賃上げ率を同時に高める独自戦略:農業型・テレワーク型活用

一般的な解説記事にはあまり取り上げられないアプローチとして、「農業型障害者雇用」と「テレワーク型雇用」を活用した法定雇用率の達成と賃上げの同時進行があります。


農業型障害者雇用とは、企業の雇用主責任を保ちながら、支援事業者が整備した農業施設で障害者が就労するモデルです。企業側の給与支払い義務は変わらないため、雇用者給与等支給額にカウントされます。一方で施設整備や雇用管理の実務は支援事業者が担うため、初期コストと内部リソースを抑えられます。


調整金の受け取り対象にもなります。


テレワーク型では、週20時間以上の雇用であれば法定雇用率にカウントできます。交通費や通勤コストの低減が可能で、障害者本人にとっても就労継続がしやすい環境が整います。給与はきちんと支給されるため賃上げ促進税制の対象となり、雇用率達成と賃上げ税制の二つのメリットを同時に取れる設計になります。


どちらの形態でも、ポイントは「国内雇用者として賃金台帳に記載される正規の雇用契約を結ぶこと」です。業務委託や外注では法定雇用率にも賃上げ税制にも算入できません。在宅就業障害者への業務発注は「特例調整金」として別の仕組みが存在しますが、雇用ではなく外注扱いになります。


この点を正確に理解しておきましょう。


障害者雇用調整金と賃上げ促進税制をW活用するための実務チェックリスト

ここまでの内容を踏まえて、実務で活用できるチェックリストをまとめます。


📌 障害者雇用調整金の確認事項


- ✅ 常時雇用労働者数が100人超かどうかを確認する
- ✅ 前年度の超過障害者数の年間合計を人月ベースで集計する
- ✅ 年間120人月を超えているかどうか確認する(超過分は月額2万3,000円)
- ✅ 申告期限(4月1日〜5月15日)を事前にカレンダーに入れる
- ✅ 調整金受領額を「雑収入」等で正しく益金計上する


📌 賃上げ促進税制の確認事項


- ✅ 自社の規模(中小・中堅・大企業)を確認する
- ✅ 前年度と当年度の雇用者給与等支給額を正確に算定する
- ✅ 雇用安定助成金の受領有無を確認し、調整雇用者給与等支給増加額の上限を把握する
- ✅ 障害者雇用調整金が「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当するか税理士に確認する
- ✅ 教育訓練費・くるみん認定等の上乗せ要件を満たしているか確認する
- ✅ 赤字年度の場合は繰越控除(5年間)の適用を検討する
- ✅ 大企業の場合、2026年3月末が制度の最終期限であることを念頭に置く


チェックリストの各項目は、決算前の3か月の間に一度確認するのが理想的です。


全部で10項目です。


専任担当者がいない中小企業は、税理士法人のサポートを活用することで確認漏れを防ぐことができます。


これが条件です。


厚生労働省「事業主の方へ(障害者雇用)」|法定雇用率・納付金・調整金制度の全体像が整理されています


障害者雇用調整金と賃上げ促進税制の組み合わせシミュレーション例

理解を深めるために、具体的な数値でシミュレーションしてみましょう。


【前提条件】
- 中小企業(資本金8,000万円、従業員150人)
- 前年度雇用者給与等支給額:6,000万円
- 当年度雇用者給与等支給額:6,120万円(前年比+2%増)
- 当年度法定雇用障害者数:3.75人(150人×2.5%)→ 実際4人雇用
- 超過人数:0.25人月換算で年間3人月(調整金支給対象)
- 調整金受取額:3人月 × 2万9,000円 = 8万7,000円


【賃上げ促進税制の試算】
- 増加率:(6,120 ー 6,000) ÷ 6,000 = 2.0%(2.5%要件未達)
- 控除率:15%(1.5%以上2.5%未満のため)
- 控除対象増加額:120万円
- 調整雇用者給与等支給増加額:雇用安定助成金なし → 上限120万円
- 税額控除額:120万円 × 15% = 18万円


仮にさらに1名障害者を採用し(年間給与240万円)、給与等支給額が6,360万円になった場合は次のようになります。


- 増加率:(6,360 ー 6,000) ÷ 6,000 = 6.0%(2.5%要件クリア)
- 控除率:30%
- 控除対象増加額:360万円
- 税額控除額:360万円 × 30% = 108万円(法人税額20%以内なら全額適用可)


加えて調整金も増加します。超過人数が1.25人(年間15人月)になれば、調整金は15人月 × 2万9,000円 = 43万5,000円です。


2名採用した場合の合計メリット(税額控除+調整金)は概算で108万円+43.5万円=151.5万円となります。1名採用時の18万円+8.7万円=26.7万円と比較すると、採用1名の差が約125万円の財務メリットに変わります。


計算はあくまで概算です。一方で障害者雇用に伴うコスト(教育・設備・相談員等)も別途発生するため、総合的な採算を見た上での判断が重要です。


賃上げ税制の繰越控除制度を障害者雇用の拡大局面で活用する方法

中小企業に認められた5年間の繰越控除制度は、障害者雇用の拡大コストが一時的に利益を圧迫するケースで特に有効です。


たとえば、障害者雇用を積極的に拡大した年度に設備投資も重なり、法人税額が通常より小さくなった場合を考えます。賃上げによる控除対象額が300万円あっても、控除上限(法人税額の20%)が100万円であれば、その年度には200万円分を使い切れません。


従来はこの200万円が失効していました。しかし2024年度改正により、翌年度以降5年間繰り越すことが可能になりました。業績が回復した年度に200万円の控除を受けられます。


繰越を行うためには、繰越税額控除限度超過額の明細書を確定申告書に添付することが必要です。加えて、繰越税額控除措置の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に計算明細書を添付しなければなりません。


忘れると権利が消滅します。


この手続きは必須です。


障害者の新規雇用は初期コストがかかりますが、その費用が翌年度以降に節税効果として戻ってくる仕組みを活用することで、長期的な財務メリットを設計できます。投資期間と回収期間を明確にしたシミュレーションを事前に税理士と行っておくと、経営判断の精度が上がります。


NK税理士法人「令和7年度以降の賃上げ促進税制」|繰越控除制度の新設内容と実務対応が詳しく解説されています


障害者雇用調整金の申請期限と申告書の提出方法

調整金の申請は自動的に行われるものではありません。事業主が自ら申請書を作成し、期限内に提出する必要があります。


申請期間:毎年4月1日〜5月15日(前年度4月〜当年3月分の実績に基づく)


申請方法は2つあります。


① 電子申告申請システム(オンライン)
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営する専用システムを使います。IDの取得が必要ですが、申請書の作成自体はログイン不要で行えます。データ送信後に審査結果メールが届く仕組みです。


② 郵送または窓口持参
事業所を管轄する都道府県の申告申請窓口に申告申請書と報告書を1部提出します。受理日の確認を希望する場合は別途書類が必要です。


注意点として、申告申請書の様式は定期的に改正されます。古い様式で提出すると再提出を求められるため、毎年JEEDのウェブサイトから最新版を確認してから作成することをお勧めします。またExcel様式の直接編集は表示形式のズレが生じやすいため、電子申告申請システム上での作成が推奨されています。


申請期限を1日でも過ぎると、その年度の調整金は受け取れなくなります。


期限には注意が必要です。


担当者の異動や業務多忙でも申請漏れが起きないよう、リマインド設定を早めに行っておきましょう。


独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」|電子申告申請システムへのリンクや各種様式が確認できます