障害者控除とは対象者や控除額と申請方法を徹底解説

障害者控除とは対象者や控除額と申請方法を徹底解説

障害者控除とは何か・対象・金額・申請を完全解説

手帳を持っていないと障害者控除は絶対に受けられない、と思っていませんか?


この記事の3つのポイント
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障害者控除とは?

障害者控除は、納税者本人や扶養家族に障害がある場合、所得税・住民税・相続税を軽減できる制度。控除額は最大75万円(同居特別障害者)に達し、年間数万円~数十万円単位の節税になる。

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意外な対象者とは?

手帳がなくても、65歳以上で要介護認定を受けた家族がいれば「障害者控除対象者認定書」で申請できる。うつ病・発達障害も精神障害者保健福祉手帳があれば対象に入る。

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申請忘れは過去5年まで取り戻せる

障害者控除を申請し忘れた年分は、「更正の請求」を使えば過去5年分までさかのぼって還付を受けられる。自動適用はされないため、自分で手続きが必要。


障害者控除とは何か・所得控除の仕組みと基本

障害者控除とは、納税者本人・同一生計の配偶者・扶養親族のいずれかが所得税法上の「障害者」に該当する場合に、一定金額を課税所得から差し引ける所得控除の制度です。所得控除とは、税金の計算の元になる「課税所得」を減らすことで、結果として支払う税額そのものを圧縮するしくみです。


「控除=税金が直接戻る」と誤解している人は少なくありません。正確には「課税所得が減る→そこに税率をかけた分だけ税額が下がる」という流れになります。たとえば、税率が10%の人が27万円の控除を受けると、27万円×10%=2万7,000円が節税額になります。税率が20%なら同じ27万円の控除で5万4,000円の節税です。税率によって恩恵の大きさが変わる点が所得控除の特徴です。


所得控除には基礎控除医療費控除配偶者控除・生命保険料控除など多くの種類があります。障害者控除はそのうちの一つで、一般控除・特別障害者控除・同居特別障害者控除の3段階に分かれています。つまり障害の程度が重いほど控除額が大きくなる設計です。


対象となる税目は所得税と住民税だけではありません。相続税でも障害者控除が設けられており、仕組みは別になります。この制度は本人が自動的に適用されるわけではなく、年末調整や確定申告で自ら申請して初めて受けられます。これが重要です。


国税庁「No.1160 障害者控除」|障害者控除の対象者・金額・根拠法令の公式情報


障害者控除の対象者・手帳の種類と等級の一覧

障害者控除の対象は、次の要件のいずれかを満たす人です。


区分 主な対象 控除額(所得税)
障害者 精神障害者保健福祉手帳2〜3級、身体障害者手帳3〜6級、療育手帳(軽度〜中度)など 27万円
特別障害者 精神障害者保健福祉手帳1級、身体障害者手帳1〜2級、重度知的障害、寝たきりで複雑な介護が必要な人など 40万円
同居特別障害者 上記「特別障害者」に該当する配偶者・扶養親族と同居している場合 75万円


手帳ごとに等級の区分が異なる点に注意が必要です。精神障害者保健福祉手帳は1〜3級で、1級のみ「特別障害者」扱いになります。身体障害者手帳は1〜7級ですが、7級単独では控除の対象外であり、他の障害と組み合わせた場合に限って対象になります。療育手帳(地域によって「愛の手帳」「みどりの手帳」とも呼ばれる)は交付機関による判定で等級が決まります。


発達障害やうつ病、統合失調症、双極性障害(そううつ病)などの精神疾患は、精神障害者保健福祉手帳の取得を通じて控除の対象になります。特に発達障害は手帳を持っていない人が多い印象ですが、診断から6か月以上が経過していれば申請の対象です。手帳の有無が控除の壁になっているケースが多く、まだ申請していない人は一度確認してみる価値があります。


また、身体障害者手帳の交付を申請中であっても、医師の診断書を添付することで控除を受けられる場合があります。手帳が手元に届く前でも対応可能なのは、知っておくと時間的なロスを防げます。


国税庁「障害者と税」|手帳の種類別・障害者区分と控除額の詳細


手帳なしでも対象になる!障害者控除対象者認定書の活用法

障害者控除は手帳がなければ受けられない、というのは多くの人が持つ先入観です。実は違います。


65歳以上で要介護認定(要介護1〜5)を受けている人は、「障害者控除対象者認定書」を市区町村で取得することで、障害者手帳なしに障害者控除を申請できます。ただし、要介護認定を受けているだけでは自動的には対象になりません。お住まいの市区町村に申請し、認定書の交付を受ける必要があります。この手続きを踏まずに申告してしまうと誤申告になるため注意が必要です。


認定の目安は次の通りです。


- 🟡 要介護1〜2相当 → 障害者として認定される場合がある(控除額:所得税27万円)
- 🔴 要介護3〜5相当、または寝たきりで複雑な介護が必要な状態 → 特別障害者または同居特別障害者として認定される場合がある(控除額:所得税40〜75万円)


ただし要支援1・2の認定は原則として対象外です。自治体によって認定基準が若干異なることもあるため、確認は各市区町村の窓口が確実です。


親が要介護状態にある人は、年間数万円〜十数万円の節税になる可能性を見逃している場合があります。手帳のない高齢の親を扶養している場合でも申請を検討できます。これは使えそうです。


この制度を利用するための流れは「①要介護認定の確認→②市区町村窓口で認定書を申請→③年末調整または確定申告で申告」とシンプルです。まず市区町村の高齢福祉担当窓口に「障害者控除対象者認定書」の交付を相談することから始めましょう。


戸田市「障害者控除対象者認定」|65歳以上・要介護認定による認定基準の実例


障害者控除の控除額と節税シミュレーション・具体的な金額

控除額と実際の節税額は別物です。所得税の控除額は課税所得から差し引かれる金額であり、手元に戻る金額はそこに税率を掛けた値になります。


所得税・住民税それぞれの控除額を整理すると次の通りです。


区分 所得税の控除額 住民税の控除額
障害者 27万円 26万円
特別障害者 40万円 30万円
同居特別障害者 75万円 53万円


具体的な節税額を試算してみましょう。年収400万円の会社員(精神障害者保健福祉手帳3級=一般障害者)のケースです。


- 所得税率:おおよそ10%
- 所得税の節税額:27万円 × 10% = 2万7,000円
- 住民税の節税額:26万円 × 10% = 2万6,000円
- 合計節税額:約5万3,000円


同居特別障害者の扶養を抱える場合はさらに大きく変わります。同じ年収400万円の人が、身体障害1級の親と同居・扶養しているとすると、所得税控除額は75万円となり、所得税率20%適用なら75万円 × 20% = 15万円の節税が実現します。東京23区の平均的な家賃1か月分を超える金額です。


「所得税で1〜4万円、住民税で0〜8万円程度」という目安が一般的に示されていますが、同居特別障害者の区分になると合計で10万円以上の節税になるケースも珍しくありません。金額が条件です。


障害者控除と医療費控除・配偶者控除などを組み合わせて申告することで、課税所得をさらに圧縮できます。適用可能な控除を一括して確認したい場合は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」のシミュレーション機能を活用するのが効率的です。


Kaien「障害者控除とは?対象者や控除額、申請方法について解説」|年収別の節税額シミュレーション付き


障害者控除の申請方法・年末調整と確定申告の手続き

障害者控除を受けるには、必ず自分で申請する手続きが必要です。自動適用はされません。申請のタイミングは、会社員か個人事業主かによって異なります。


会社員の場合(年末調整):


毎年10〜11月頃に会社から渡される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄に必要事項を記載します。手帳のコピーなどの添付書類は原則不要ですが、会社によっては提出を求める場合もあるため事前に確認しましょう。


個人事業主・フリーランスの場合(確定申告):


確定申告書の「障害者控除」の欄に区分と金額を記入します。こちらも手帳の添付は原則不要です。障害者控除対象者認定書を使う場合は、書類の保管を確実に行っておきましょう。


年末調整で書き忘れた場合:


翌年2月16日〜3月15日の確定申告期間中に自分で確定申告をすれば、適用を受けることができます。これが基本です。


過去に申請漏れがあった場合(更正の請求):


障害者控除を知らずに申請していなかった年があっても、過去5年分まで「更正の請求」という手続きで還付を受けることが可能です。5年分をまとめて取り戻すと、総額10万円以上になるケースもあります。期限があります。提出先は所轄の税務署で、書類は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。


ただし、過去の年分に「その年の12月31日の現況で障害者に該当していたこと」が前提になります。翌年以降に手帳の交付を受けた事実をさかのぼって適用することはできない点に注意が必要です。


障害者ドットコム「忘れた障害者控除を後から申請し、還付金を取り戻す方法」|更正の請求の手順と注意点


相続税でも使える障害者控除・金融資産を守る視点からの活用法

財務・資産管理の観点からも見落とせないのが、相続税における障害者控除です。所得税・住民税の制度とは別の根拠に基づいており、仕組みも大きく異なります。


相続税の障害者控除が適用されるのは、「相続または遺贈で財産を取得した人が、相続開始時点で85歳未満の障害者であるとき」です。被相続人(亡くなった方)が障害者だった場合は対象外です。つまり、相続を「受け取る側」に障害がある場合に適用される制度です。意外ですね。


控除額の計算式は次の通りです。


$$\text{控除額} = (85 - \text{相続開始時の年齢}) \times 10\text{万円(一般障害者)または}20\text{万円(特別障害者)}$$


たとえば、相続時に60歳の一般障害者が財産を受け取った場合は、(85−60)× 10万円 = 250万円 が相続税から差し引かれます。30歳の特別障害者なら(85−30)× 20万円 = 1,100万円 という大きな控除になります。


この控除額が相続税を超える場合、余った控除額は他の相続人の相続税から引くことができる繰越控除の仕組みもあります。


金融資産の承継を考えるうえで、家族内に障害者がいる場合は相続税の障害者控除を税理士と一緒に事前にシミュレーションしておくことが重要です。相続は一度きりであり、申告後に控除を追加することが難しい手続きです。遺産額が大きい場合ほど差が出やすいため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。


税理士法人チェスター「相続税の障害者控除を使いたい人必見!要件と計算方法を徹底解説」|相続税控除の計算例と要件詳細