

法人化すると食品国保には新規加入できません。
食品国民健康保険組合の最も大きなデメリットは、扶養家族それぞれに保険料がかかる点です。社会保険では扶養家族が何人増えても保険料は変わりませんが、食品国保では加入者一人ひとりが保険料を負担します。
参考)カケル株式会社
月収40万円で妻と子2名を扶養に入れた場合、協会けんぽでは約19,560円/月ですが、名古屋市食品国保では約58,200円/月と約3倍の差が生じます。
つまり家族が多いほど不利です。
東京食品販売国民健康保険組合では、事業主組合員が4人加入すると月額53,900円、従業員組合員4人で月額45,300円かかります。これは年額にすると事業主で646,800円、従業員で543,600円です。
参考)https://www.toshoku-kokuho.or.jp/subscription
3人家族以上の事業所では社会保険のほうが保険料負担を抑えられるケースが多くなります。
保険料比較は加入前に必須です。
食品国保への加入には複数の条件があり、手続きも煩雑です。まず法人事業所は新規加入できず、個人事業主のみが対象となります。
参考)国民健康保険 « 愛知県飲食生活衛生同業組合
加入には生活衛生同業組合などの指定された組合や協会への加入が必須です。これにより加盟団体の入会金・年会費を別途支払う必要があり、保険料以外のコストが発生します。
参考)国民健康保険料より安い? 高い? 「国民健康保険組合」の費用…
業種の確認や仕事実績の証明書類、請求書や名刺の提出が求められるため、書類の準備や手続きに時間と手間がかかります。営業許可証の写しや住民票、個人番号カードの写しなど多数の書類が必要です。
参考)知らなきゃ損!「国民健康保険」と「国民健康保険組合」の違い|…
事業所全員が加入する必要があるため、従業員のみの加入はできません。
このルールが組織運営の柔軟性を制限します。
食品国保の給付内容は法定給付のみで、社会保険のような手厚い付加給付はかなり限定的です。傷病手当金は組合員1日1,000円、家族500円という金額設定で、社会保険の標準報酬日額の3分の2と比べると大幅に少なくなります。
出産手当金は多くの食品国保組合では支給されません。社会保険では産前産後休業中の収入を補填する制度がありますが、食品国保にはこの保障がないため、従業員の福利厚生面で劣ります。
法定給付である療養の給付や入院時食事療養費は社会保険と同等ですが、それ以外の付加給付がないことは実務上の大きな制約です。会社を辞めても資格が残る社会保険と異なり、退職後の保障も限定的です。
定期健診の補助や高額療養費など一部の給付は手厚いケースもありますが、全体としては社会保険に及びません。
参考)飲食店オーナー必見!飲食店のための国民健康保険の選び方
個人事業所から法人事業所へ変更する場合、協会けんぽ(社会保険)への加入が原則となります。法人化後も食品国保に継続加入するには、会社設立から14日以内(厚生年金保険被保険者資格取得届は5日以内)に年金事務所へ「健康保険適用除外承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。
参考)経営形態を変更するとき
この期限を過ぎると自動的に社会保険への切り替えが必要となり、食品国保の資格を失います。14日という短期間での手続きは税務や登記業務と重なるため、実務上かなり厳しいです。
参考)法人事業所になったとき|こんなとき、どうする|大阪府食品国民…
法人化を検討している事業所では、この切り替え制約が事業計画に影響を与える可能性があります。適用除外承認を受けても厚生年金への加入は必須となるため、年金の二重管理が発生します。
参考)加入資格(条件等)|食品国保について|兵庫県食品国民健康保険…
法人として新規加入できないルールは、事業拡大を目指す事業主にとって大きな制約です。
食品国保の保険料は所得に関わらず均一の定額制です。これは高所得者にとってはメリットですが、開業したばかりや売上が低迷している時期には大きな負担となります。
市町村の国民健康保険には所得が一定以下なら保険料を軽減する減免制度がありますが、食品国保には原則として減免制度がありません。所得が少ない人にとっては割高になる可能性が高いです。
収入が低い時期でも一定額を支払う必要があるため、キャッシュフローの厳しい時期には資金繰りを圧迫します。所得の変動が大きい飲食業や食品販売業では、この固定費負担が経営リスクになります。
組合員数が少ない場合、運営が安定しにくく保険料や給付内容が見直されるリスクもあります。
この不確実性も考慮すべきです。
食品国保の保険料は社会保険料控除の対象となり、支払った全額を所得から差し引けます。これは年末調整や確定申告で申告することで、所得税・住民税の負担を軽減できます。
ただし事業主が従業員の保険料を負担した場合、その金額は従業員の給与所得として課税対象になります。たとえば月給20万円の従業員の保険料8,000円を事業主が負担すると、従業員の課税所得は208,000円となり、社会保険料控除は8,000円です。
参考)社会保険料や国民健康保険組合の保険料等を雇用主が負担した場合…
食品国保は事業主より一括で徴収される仕組みのため、税務処理では誰が実際に負担したかを明確にする必要があります。控除できるのは「実際に支払った人」が「本人の所得」からのみです。
参考)年末調整の国民健康保険料はこう控除!書き方・対象期間・還付額…
社会保険のような労使折半の義務はないため、事業主がどこまで負担するかは任意ですが、負担した分の税務処理には注意が必要です。参考として国税庁の社会保険料控除の詳細を確認すると良いでしょう。
国税庁:社会保険料控除の対象範囲と控除額の計算方法について
食品国保への加入を決定する前に、社会保険との保険料比較を必ず行うべきです。東京都では東食国保(東京食品販売国民健康保険組合)に加入するとお得なケースもありますが、家族構成や所得によって結果は大きく変わります。
参考)その4:「社会保険の論点」(飲食店編) – sa…
従業員5名以上の個人事業所は社会保険と厚生年金の強制適用対象ですが、適用除外承認申請により食品国保+厚生年金という組み合わせも可能です。この場合、健康保険のみ食品国保を選択できます。
加入後に協会けんぽへ変更したくなった場合、手続きには時間がかかるため、初期の判断が重要です。給付内容、保険料、将来の法人化計画などを総合的に評価しましょう。
保険料は組合によって異なるため、地域の食品国保組合に直接問い合わせて正確な金額を確認することが不可欠です。オンラインの情報だけで判断せず、窓口での相談をおすすめします。
税務担当者としては、社会保険料控除の適用や給与計算への影響も含めて、経営者に正確な情報を提供する責任があります。知識不足で誤った選択をすると、後で取り返しがつきません。