

リース料を毎月定額で払っているから、節税の効果も毎年均等に得られると思っていませんか?実は、リース期間定額法で賃貸借処理している場合、短期前払費用の特例が一切適用されず、年払いしても節税にならないことが税法上の規定で明確に定められています。
リース期間定額法とは、所有権移転外ファイナンス・リース取引において法人税法上唯一認められた減価償却方法です。計算の仕組みはシンプルで、リース資産の取得価額をリース期間の総月数で割り、当期のリース期間月数を掛けた金額が各事業年度の償却限度額となります。
たとえば、コピー機(取得価額300万円)をリース期間7年(84ヶ月)でリースした場合、年間の償却費は次のように計算されます。
| 項目 | 金額・内容 |
|---|---|
| 取得価額 | 300万円 |
| リース期間 | 7年(84ヶ月) |
| 年間償却費(12ヶ月分) | 300万円 ÷ 84 × 12 ≒ 42万8,571円 |
| 残存価額 | ゼロ円(通常の定額法の1円残しは不要) |
重要なのは「耐用年数ではなくリース期間を使う」点です。同じコピー機でも自社購入なら法定耐用年数5年で償却しますが、リース期間定額法ではリース契約の期間(例:7年)を使います。
また、通常の定額法では最終年度に備忘価額として1円を残しますが、リース期間定額法ではリース終了後に資産が手元に残らないため、残存価額はゼロです。
これが原則です。
この方法は、2008年(平成20年)4月1日以後に締結された所有権移転外ファイナンス・リース契約に適用されます。それ以前の旧来の契約は引き続き賃貸借処理が適用されます。
国税庁タックスアンサーNo.5704「所有権移転外リース取引」:法定の償却方法・適用除外制度の詳細が掲載されています
リース取引はまず「ファイナンス・リース」か「オペレーティング・リース」に分けられます。ファイナンス・リースはさらに所有権の移転の有無で2つに分類されます。
| 種類 | 減価償却の方法 | リース期間定額法の適用 |
|---|---|---|
| 所有権移転ファイナンス・リース | 法定耐用年数×定額法or定率法 | ❌ 適用不可 |
| 所有権移転外ファイナンス・リース | リース期間定額法 | ✅ 適用(唯一の方法) |
| オペレーティング・リース | 減価償却なし(支払リース料を費用計上) | ❌ 対象外 |
所有権移転リース(所有権が借手に移る契約)に対しては、リース期間定額法は認められていません。
これは重要な点です。
所有権移転に該当するのは、以下のいずれかに当てはまるケースです。
- リース終了時に無償または名目的な金額で資産が借手に譲渡される(譲渡条件付)
- 著しく有利な価格で買い取る権利が付与されている(割安購入選択権付)
- 借手専用に製作された特別仕様の資産(専属使用資産)
- リース期間が法定耐用年数の70%(耐用年数10年以上は60%)を下回る契約
たとえば「5年契約でリース終了後に1円で買い取れる」といった特約がついている場合、それは所有権移転リースとなり、リース期間定額法ではなく通常の定額法・定率法で償却しなければなりません。
これが原則です。
「任意償却」という言葉は、本来は開業費や試験研究費など繰延資産に対して認められる償却方法で、事業者が自由に償却タイミングを選べる仕組みです。
では、なぜリース期間定額法と任意償却が一緒に語られるのでしょうか。
実務上の理由があります。freeeなど多くの会計ソフトでは、リース期間定額法に直接対応していないケースがあります。そのため代替処理として、固定資産台帳の償却方法を「任意償却」に設定し、毎期手動でリース期間定額法の計算結果を入力するという運用が行われています。
ただしこれはあくまで会計ソフト側の処理上の呼び名にすぎません。税法上の「リース資産の任意償却」という概念とは別物です。
任意ということですね。
一方で税務上のリース資産は「リース期間定額法による償却が義務」であり、そこに任意性はありません。
freeeサポートページ「所有権移転外ファイナンス・リースにおける減価償却費の計上」:任意償却を使った代替登録の手順が詳しく解説されています
所有権移転外ファイナンス・リース取引であっても、中小企業には賃貸借処理(オペレーティング・リースと同様に支払リース料をそのまま費用計上する方法)が認められています。
これは使えそうです。
ただし「会計上は賃貸借処理でも、税務上は売買処理として扱う」という二重構造を理解することが重要です。
税法上は次のように整理されています。
中小企業の場合、「中小企業の会計に関する基本要領」に基づき、リース会計基準を適用しないで賃貸借処理することが一般に公正妥当とされています。
この扱いは実務上かなり便利です。
また、以下のいずれかに該当すれば、大企業も含めて賃貸借処理が認められます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| リース期間1年以内 | 短期リースとして費用処理が可能 |
| リース料総額300万円以下 | 少額リースとして費用処理が可能 |
| 借手側が中小企業 | 未払リース料残高の注記条件あり |
公益社団法人リース事業協会「リース税制の概要」:賃貸借処理時の税務取り扱いと申告調整の考え方が解説されています
ここが多くの方が見落とすポイントです。
リース料を年払いにすれば、「短期前払費用の特例」が使えて節税になると考えていませんか?それは間違いです。
短期前払費用の特例とは、翌年度の費用を当期に前払いした場合に損金算入を認める制度です。家賃の1年分前払いや保険料の年払いなどによく利用されます。
しかし、リース料を賃貸借処理している場合でも、賃借料として損金経理した金額は「償却費とみなされた費用」です。本質は「償却費の代替処理」であるため、短期前払費用のような役務提供の前払いとは性格が異なります。
痛いですね。リース料率を金利と誤解するケースと同様に、「賃貸借処理だから賃料と同じ扱いになる」と誤解するケースは実務上よく見られます。TKCの専門家コラムでも「短期前払費用の特例は適用できないことに注意が必要」と明示されています。
リース契約を結ぶ前に、契約内容・払い方・処理方法の3点を整理することが条件です。
TKC WEBコラム「第3回 リース会計の法人税実務」:短期前払費用の適用不可を含む実務上の注意点が公認会計士・税理士により解説されています
国税庁が明示しているとおり、所有権移転外リース取引には次の制度が適用されません。
これだけは例外です。
一方、例外的に適用が認められるものもあります。
「コピー機を30万円以下でリースすれば、中小企業者等の30万円特例で全額損金にできる」という考え方は正しいです。
これは使えそうです。
ただし「特別償却」による節税はリース資産では使えないため、補助金を使って設備を自社購入する場合との損益比較を行う際は注意が必要です。
設備投資の方法を検討する際は、「リースvs購入」の比較として節税制度の適用可否を必ずチェックすることを強く推奨します。
所有権移転外ファイナンス・リース契約の中には、「残価保証額」が設定されているケースがあります。残価保証額とは何でしょうか?
リース期間終了時に資産の処分価額が契約で定めた保証額を下回った場合、その差額を借手(賃借人)が貸手(賃貸人)に支払う義務を負う。
その契約上の保証額が「残価保証額」です。
重要なのは、会計と税務で残価保証額の取り扱いが異なる点です。
| 取り扱い | 旧会計基準(2024年まで) | 税務(改正前) |
|---|---|---|
| 取得価額への算入 | リース料総額+残価保証額 | 支払リース料総額のみ(残価保証額を含まず) |
| 償却対象額 | 取得価額−残価保証額 | 取得価額(支払リース料総額) |
つまり旧来の税務処理では、残価保証額が取得価額に含まれていない一方、会計上は残存価額として残される仕組みでした。
この複雑さが令和7年度改正で整理されました。
詳しくは次節で解説します。
2025年(令和7年)の税制改正により、リース期間定額法に大きな変更が加えられました。
改正のポイントは以下のとおりです。
経過リース期間定額法が使えると、たとえば残価保証額200万円が含まれている車両リース(取得価額700万円)の場合、改正前は500万円(700万−200万)を償却対象としていたのが、改正後は700万円をそのまま1円まで償却できます。最終年度に200万円分多く損金算入できることになり、利益計画への影響が大きいです。
国税庁「令和7年度 法人税改正の概要:新リース会計基準への対応」(PDF):リース期間定額法の改正詳細と経過措置の規定が掲載されています
2027年4月から、リース会計基準が大幅に改正されます。これは上場企業や大会社等に強制適用となる新基準です。
最大の変化は、オペレーティング・リース取引も含め原則すべてのリースをオンバランス化(資産・負債に計上)することです。具体的には「使用権資産」と「リース負債」を計上し、使用権資産を減価償却します。
| 区分 | 現行(2027年3月まで) | 新基準(2027年4月以降) |
|---|---|---|
| オペレーティング・リース | 支払リース料を費用計上のみ(オフバランス) | 使用権資産・リース負債を計上(オンバランス) |
| 所有権移転外ファイナンス・リース | リース期間定額法で減価償却 | 使用権資産として計上・償却 |
| 短期・少額リース | — | 引き続き費用処理でOK(例外あり) |
新基準の対象外(引き続き費用処理できる例外)は次のとおりです。
新基準の施行により、オペレーティング・リースを多用している企業では、貸借対照表の資産・負債が大幅に膨らむ可能性があります。借入比率(D/Eレシオ)が上がり、金融機関との融資審査に影響するケースも想定されます。
厳しいところですね。
小谷野税理士法人「新リース会計基準とは?変更点や必要な対応について解説」:2027年施行の新基準の変更点と実務対応がまとめられています
所有権移転外リース取引に係る減価償却の申告調整は、法人税申告書の「別表16(4)」(リース期間定額法による償却額の計算に関する明細書)で行います。
この別表に記載が必要な主な項目は次のとおりです。
賃貸借処理をしている中小企業の場合でも、毎月の支払リース料がリース期間定額法の償却限度額と同額であれば、申告調整は不要です。つまり別表16(4)への記載が不要になるケースも多くあります。
ただし不均等払い(月額が変動するリース)の場合は差額を申告調整する必要があり、見落とすと過大または過少な損金算入が発生します。
これが原則です。
リース取引に精通した経理担当者でも、意外と見落としがちな視点があります。
それは「リース料率と金利の混同」です。
たとえば、300万円の機械をリース料率1.9%・リース期間5年の月払いで契約する場合を考えてみましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月額リース料 | 300万円 × 1.9% = 57,000円 |
| リース料総額(60ヶ月) | 57,000円 × 60 = 342万円 |
| リース料率(公称) | 1.9%(月額) |
| 実質年利換算 | 約5.28% |
「月1.9%なら年利1.9%くらいだろう」と思うと大きな誤りです。実質的な調達コストは年利5.28%に達します。
これは意外ですね。
リース料率には固定資産税・保険料・リース会社の利益マージンが含まれているため、単純な金利よりも高くなります。リース期間定額法で毎年均等に費用計上できたとしても、その費用総額は自社購入と比べて高額になることが多いです。
節税効果と資金調達コストを両方検討する姿勢が、財務担当者には求められます。「リース=節税」という思い込みは持たないことが大切です。
金融機関からの借入とリースを比較する場合、「実質年利ベースの比較」と「設備投資に使える節税制度(中小企業投資促進税制の税額控除など)の適用可否」を同時に検討することを推奨します。
実務で計算ミスが発生しやすい場面を整理します。
間違いやすいですね。
【よくある間違い1】耐用年数で割ってしまう
リース期間定額法の分母は「リース期間の月数」です。
法定耐用年数の月数ではありません。
【よくある間違い2】期中取得時の月按分を忘れる
事業年度の途中でリース契約を開始した場合、初年度は月数按分が必要です。
【仕訳の実例】間接法による仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 428,571円 | リース資産減価償却累計額 | 428,571円 |
【仕訳の実例】賃貸借処理(支払リース料で費用計上)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払リース料 | 35,714円 | 現金預金 | 35,714円 |
(月額:428,571円 ÷ 12 = 35,714円)
月払いのリース料が償却限度額と一致している場合、賃貸借処理では毎月この仕訳を行うだけで申告調整は不要です。
これが基本です。
ここまでの内容を踏まえて、リース期間定額法を正しく理解・活用することで得られる実務上のメリットを整理します。
🔵 メリット1:法定耐用年数より短い期間で費用化できる
たとえば耐用年数8年の機械でも、5年リースなら5年間で全額費用化が完了します。自社購入より早く損金算入が終わるため、利益圧縮効果が高いケースがあります。
🔵 メリット2:残存価額ゼロで全額費用化できる
通常の定額法では最終年度に1円の備忘価額が残りますが、リース期間定額法はゼロまで償却可能です。
全額費用化できることですね。
🔵 メリット3:月払いと償却費が一致する設計がしやすい
通常のリース契約では、月払いリース料とリース期間定額法の月額償却費が一致するよう設計されています。賃貸借処理を採用する中小企業では申告調整が不要になるケースがほとんどです。
🔵 メリット4(令和7年度改正後):残価保証額も1円まで償却可能
改正後の新ルールまたは経過措置を活用することで、残価保証額を含む全額を備忘価額1円まで償却できます。従来比で最終年度の損金算入額が大幅に増えるケースがあります。
TKC WEBコラム「経過リース期間定額法と残価保証額について」:令和7年度改正の残価保証額に関する詳細解説が掲載されています