

源泉徴収票に「課税所得」という項目はありません。
課税所得とは、所得税を計算する際に税率をかける対象となる金額のことです。源泉徴収票には「課税所得」という項目は直接記載されていませんが、記載されている数値から計算できます。
計算式は次のとおりです。
課税所得 = 給与所得控除後の金額 - 所得控除の額の合計額
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この2つの項目はいずれも源泉徴収票に記載されています。給与所得控除後の金額は、支払金額(年収)から給与所得控除を差し引いた金額で、所得控除の額の合計額は社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除などを合計したものです。
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税務担当者が源泉徴収票を確認する際は、この計算式を念頭に置くことが基本です。課税所得が正しく算出されていないと、源泉徴収税額にも誤りが生じます。
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源泉徴収票で課税所得を計算するために必要な項目は、「給与所得控除後の金額」と「所得控除の額の合計額」の2つです。
給与所得控除後の金額は、源泉徴収票の上部に記載されています。これは年収から給与所得控除を差し引いた後の金額で、いわゆる「給与所得」です。給与所得控除は、会社員の必要経費として認められる概算控除で、年収に応じて控除額が決まります。
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所得控除の額の合計額は、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除などを合計した金額です。源泉徴収票の中段に記載されており、これらの控除は納税者の個別事情を反映したものです。
この2つの項目を正しく把握することが、課税所得計算の第一歩となります。
課税所得が算出できたら、次は所得税率をかけて源泉徴収税額を計算します。所得税は累進課税制度を採用しており、課税所得の金額に応じて5%から45%まで7段階の税率が適用されます。
例えば、課税所得が300万円の場合、税率は10%で控除額は97,500円です。
計算式は次のようになります。
源泉徴収税額 = (課税所得 × 税率) - 控除額
さらに、復興特別所得税として所得税額の2.1%が加算されます。つまり、所得税と復興特別所得税の合計税率は「所得税率 × 102.1%」となります。
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年末調整では100円未満を切り捨てて、最終的な源泉徴収税額が決定されます。税務担当者は、この一連の計算プロセスを正確に行う必要があります。
税務担当者が特に注意すべきなのが、課税所得計算後に適用される控除の存在です。
つまり所得控除ではありません。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、課税所得から計算した所得税額からさらに差し引かれる税額控除です。所得控除と混同すると、税額に大きな誤りが生じます。源泉徴収票には摘要欄に住宅ローン控除額が記載されるため、確認が必要です。
2024年分から始まった定額減税も、所得税額から直接控除される仕組みです。源泉徴収票の摘要欄には「源泉徴収時所得税減税控除済額」と「控除外額」が記載されます。控除外額が0円でない場合、減税しきれなかった金額があることを意味します。
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これらの税額控除は課税所得の計算には含めず、所得税額から差し引く点を理解しておく必要があります。
源泉徴収の計算ミスは、税務調査で指摘されると会社側が追徴課税を支払うことになります。不足額には原則10%の不納付加算税が上乗せされ、さらに延滞税も日数分かかります。
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計算ミスで特に多いのが、所得控除の額の合計額が空欄のまま処理されたり、給与所得控除を所得控除に含めてしまうケースです。給与所得控除は個人事業での経費的な意味合いがあるため、源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」には含めません。
参考)源泉徴収票の税額に誤りがあった場合
支払金額や源泉徴収税額の入力ミスも頻発します。本来よりも少なく税金を納めている場合は、確定申告で従業員が自ら納税することになり、トラブルの原因となります。
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計算ミス1つで数十万円から数百万円の出費につながる可能性があるため、チェック体制の構築が不可欠です。
月の給与が8万8千円未満で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員は、源泉徴収の対象外です。給与から社会保険料を差し引いた金額が1か月8万8,000円未満の場合、源泉徴収税額は0円となります。
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年収が少ない場合も、給与所得控除と所得控除を差し引くと課税所得が0円になることがあります。基礎控除だけでも48万円あるため、給与所得が48万円以下なら課税所得は0円です。
住宅ローン控除の適用を受けている場合も、源泉徴収税額が0円と表記されるケースが多くなります。これは課税所得が0円という意味ではなく、税額控除により最終的な納税額が0円になったことを示します。
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これらのケースでは、源泉徴収票の発行は必要ですが、税額が発生しないため処理が異なります。
源泉徴収票と課税証明書では、記載される金額が異なる場合があります。どういうことでしょうか?
課税証明書は市区町村が発行する書類で、住民税の計算に使われる課税所得が記載されています。一方、源泉徴収票は給与収入に対する所得税の情報のみです。
参考)https://jp.indeed.com/career-advice/career-development/taxation-certificate-withholding-tax-slip-match
給与収入以外に家賃収入や副業収入がある場合、確定申告を行うと課税証明書にはそれらの収入も含めた課税所得が反映されます。源泉徴収票には給与収入分しか記載されていないため、金額に差が生じるのです。
税務担当者としては、従業員から収入証明の相談を受けた際に、この違いを説明できることが重要です。給与以外の収入がある方には、市区町村発行の課税証明書が適していることを伝えましょう。
源泉徴収票は、従業員への交付だけでなく、一定の条件に該当する場合は税務署への提出も義務付けられています。
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税務署への提出が必要なのは、次のケースです。
これらに該当する場合は、課税所得の計算が正確であるか特に慎重に確認する必要があります。税務署提出分は、マイナンバーの記載も必須です。
提出期限は翌年1月31日で、遅延すると加算税の対象となるため、年末調整後の発行スケジュール管理が重要です。
国税庁の源泉徴収票作成の手引き(PDF)には、具体的な記載例と注意点が掲載されています
源泉徴収票の金額に誤りが判明した場合、1月31日までなら会社に訂正を依頼して正しい源泉徴収票を再発行してもらいます。
これで対応は完了します。
特に住宅ローン控除や扶養控除は、所得税や住民税に影響が大きいため、優先的に確認すべき項目です。支払金額や源泉徴収税額が本来の数字と異なっている場合は、完全に入力ミスのパターンです。
従業員側で源泉徴収票の数字を修正することはできないため、訂正後の源泉徴収票をもとに確定申告をする必要があります。本来よりも少なく税金を納めている場合は、確定申告で従業員が自ら納税することになります。
気付いたらすぐに会社に伝えて訂正してもらい、必要に応じて確定申告を行えば問題ありません。
国税庁の源泉徴収票等の訂正・再交付についてのページでは、訂正手続きの詳細が確認できます