火災保険経費の計上方法と税務処理

火災保険経費の計上方法と税務処理

火災保険経費の計上方法

3年分の火災保険料を一括払いしても全額経費にはできません。


この記事のポイント
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事業用物件のみ経費計上可能

火災保険料は事業に直接関係する物件に限り経費算入できます。自宅部分は原則対象外です

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複数年契約は前払費用で処理

2年以上の契約は前払費用として資産計上し、毎期適切に振替える必要があります

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自宅兼事務所は家事按分が必須

事業使用部分の面積割合に応じて経費計上する按分処理が求められます

火災保険経費として認められる基本条件

火災保険料を経費計上できるのは、保険をかけた物件が事業用である場合に限られます。事業の継続に必要な費用として認められる範囲は、オフィスビル、店舗、工場、倉庫などの事業用建物や、業務に使用する設備・什器にかけた保険料です。


参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-journal/fire-insurance/


逆に経費にできないのは、事業と無関係の自宅にかけられた火災保険です。個人の衣食住に関わる支出は事業の必要経費として認められません。


これが原則です。



参考)火災保険は経費にできる?仕訳と勘定科目の解説

自宅を事務所としても使用している場合には、事業用途の部分だけ経費算入できます。この処理方法については後述する家事按分のセクションで詳しく解説します。

オフィスを借りる際に大家から火災保険への加入を求められた場合、その保険料は業務に必要な費用として経費に計上できます。契約書に基づいて事業関連性を明確にしておくことで、税務調査時の説明がスムーズになります。


参考)保険料の会計処理について|注意点や経費として認められるかなど…

火災保険の勘定科目と仕訳方法

火災保険料の仕訳に使用する主な勘定科目は「保険料(または損害保険料)」と「前払費用」です。契約期間が1年以内の場合は支払時に全額「保険料」として経費処理します。


参考)https://support.yayoi-kk.co.jp/business/faq_Subcontents.html?page_id=824


契約期間が2年以上のものについては、翌期以降の経費計上分を「前払費用」として資産計上する必要があります。たとえば5年契約で100万円を一括払いした場合、支払時は全額を「前払費用」とし、各期末に該当年分の20万円だけ「保険料」へ振替える仕訳が必要です。


参考)税理士が知っておきたい火災保険の仕訳と経費処理のポイント


具体的な仕訳例を見てみましょう。3年契約で30万円の火災保険料を5月に前払いした場合、支払時は「前払費用 30万円 / 現金 30万円」と記帳します。その後、決算時に「保険料 10万円 / 前払費用 10万円」と振替えることで、毎年適切に費用配分されます。


参考)事例で確認!「短期前払費用の特例」を適用できる・できないケー…


1年以内の契約なら問題ありません。支払時に全額を「保険料」勘定で経費処理すれば完了します。

積立型の火災保険の場合は注意が必要です。保険料の一部が積立部分に該当するため、その部分は「保険積立金」として資産計上し、掛け捨て部分のみを「保険料」として経費処理します。


参考)火災保険を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ

火災保険の複数年契約と前払費用処理

3年分や5年分の火災保険料を一括で前払いした場合、支払時に全額を費用処理することはできません。1年を超えた期間の火災保険料は、その契約期間にわたって費用処理する必要があります。


参考)経理の「?」を「!」に — 支払時に「一括費用計上」できるも…


たとえば3年契約の場合、当期は1年分だけを「保険料」として費用処理し、残りの2年分は「前払費用」として資産に計上します。決算月に契約を開始した場合、当期は1か月分だけが経費となり、残りは翌期以降に振替えることになります。

この処理を怠って全額を経費計上すると、税務調査で否認されるリスクがあります。5年分の火災保険料を一括で経費処理した場合、税務署から指摘を受け、顧問先の信頼にも影響する可能性があります。

契約期間全体の保険料を「前払費用」として資産計上し、各決算期ごとに該当分のみ「支払保険料」へ振り替える処理が一般的です。例えば3年分の火災保険料を一括払いした場合、毎年1/3ずつ経費化します。

ただし「短期前払費用の特例」という例外的な取り扱いがあります。支払日から1年以内に提供を受けるサービスで、継続的・等質等量の役務提供を受ける契約であれば、支払時に一括で損金算入できる可能性があります。火災保険料もこの特例の対象になりますが、決算対策として活用する場合には要件を慎重に確認する必要があります。


参考)短期前払費用の特例とは?活用する際の注意点や否認事例 | 富…


火災保険の家事按分による経費処理

自宅の一部を事務所として利用している場合、火災保険料は家事按分をしたうえで経費に計上できます。自宅の減価償却費や固定資産税と同様に、事業使用部分の割合に応じて按分する処理が必要です。


参考)自宅兼事務所の火災保険料を払ったときの取り扱い

按分の基準は事業に使用しているスペースの面積割合が一般的です。たとえば自宅が100㎡で、そのうち30㎡を事務所として使っている場合、火災保険料の30%を経費に計上できます。


参考)【火災保険や地震保険は経費?】自宅兼事務所で活動するクリエイ…

注意点として、その火災保険料の中に地震保険料が混ざっていたとしても、地震保険料も含めた金額に対して家事按分をして経費に入れることになります。地震保険料だけを別扱いにする必要はありません。

家事按分で経費算入が認められなかったプライベートな費用を、個人の所得から控除する扱いは不可となるため注意が必要です。火災保険料は法人会計で経費には計上できますが、個人の所得税における保険料控除の対象ではありません。損害保険料で所得の控除対象となっているのは地震保険だけです。

証拠書類や支払記録はちゃんと残しておきましょう。税務調査時に按分比率の根拠を説明できるよう、事務所の間取り図や使用状況を示す資料を保管しておくことが重要です。

火災保険の解約返戻金の税務処理

保険を契約途中で解約すると解約返戻金が出ることがあります。解約返戻金を受け取った場合もしっかりと仕訳をして記帳する必要があります。解約返戻金の勘定科目は「雑収入」として処理します。


参考)https://hoken-room.jp/fire/8341

法人の場合、解約返戻金は益金として計上されます。支払った保険料のうち経費に算入した部分がある場合、その分が収益として課税対象になるということです。つまり、過去に経費処理した分が戻ってきた形になるため、収益として認識する必要があります。


個人事業主の場合、支払い保険料のうち経費に算入した部分を除いた金額を、解約返戻金から控除します。


マイナスであれば課税は0円です。


たとえば360万円の返戻金を受け取った場合でも、過去に経費算入していない部分が360万円以上あれば課税されません。


参考)火災保険の中途解約による返戻金の確定申告について

解約返戻金が払込保険料の総額を上回る場合には確定申告が必要となります。解約返戻金のうち、払込保険料を超えた部分が「利益」として所得税や贈与税の課税対象になるためです。


参考)解約返戻金は確定申告が不要?必要・不要をケース別に解説

契約者と解約返戻金の受取人が異なる場合(例えば、契約者が親で受取人が子供などの場合)は、贈与税が課税される可能性があります。法人契約で経営者個人が受け取った場合、役員賞与として損金否認され、源泉徴収不足分の追徴課税を受けるリスクがあります。


これは避けたいところですね。



参考)法人保険が税務調査で否認される理由と回避策|安全な契約・経理…


保険期間が5年以下、または保険料払込期間が5年以下の短期間の貯蓄型保険の場合、解約返戻金が一時所得として扱われるため課税対象となります。一方で、解約返戻金が払込保険料を下回る場合は、所得税や贈与税は発生しないため確定申告は不要です。

火災保険経費処理での税務調査リスク回避策

法人保険が税務調査で否認されるケースとして、事業関連性が不十分な契約が挙げられます。保険金受取人が経営者やその家族で、会社の事業に直接関係がない場合や、保障内容が実質的に個人保険と同等の場合は否認されるリスクが高まります。

契約目的や保障内容が会社の事業に関連していることを明文化することが重要です。契約書や社内稟議で「従業員保障」「事業リスク対応」といった目的を明示することで、税務調査時の説明が容易になります。

決算直前の高額一時払保険料も要注意です。決算直前に多額の利益が出たため高額一時払保険を契約し、保険料全額を当期の損金に算入した場合、税務調査で「利益圧縮目的が明らか」と判断され、損金否認と過少申告加算税が発生するケースがあります。

取引のタイミングからみて節税目的が明白と判断されないよう、契約時期や金額の妥当性を慎重に検討する必要があります。短期間の契約で貯蓄性が高い保険は、税務上の損金要件を満たさない可能性があります。

もし不適切な契約や処理が見つかれば、保険料の損金算入が否認され、多額の追徴課税や延滞税が発生する可能性があります。通常、否認される可能性はあるものの、明らかに使用していないケースを除けば全く認めてくれないという事はありません。交渉をおこない、納税者も納得の上で修正申告するという流れになります。


参考)税務調査で問題となりがちな家事費、家事関連費について||梁瀬…


国税庁が定める経理処理ルールに従った正確な記帳と、契約目的の明確化が税務調査リスクを回避する鍵となります。過去複数年分の誤りが蓄積していた場合、まとめて否認される可能性もあるため、定期的な見直しが欠かせません。

火災保険は経費にできる?仕訳と勘定科目の解説 | マネーフォワード
火災保険料の基本的な経費処理方法と、事業用・個人用の区別について詳しく解説されています。


税理士が知っておきたい火災保険の仕訳と経費処理のポイント
税理士向けに火災保険料の具体的な仕訳例と、複数年契約の前払費用処理について実務的な説明があります。


事例で確認!「短期前払費用の特例」を適用できる・できないケース
短期前払費用の特例の適用要件と、火災保険料を含む具体的な事例が紹介されています。


法人保険が税務調査で否認される理由と回避策
法人保険が税務調査で否認される具体的なケースと、リスクを回避するための契約時の注意点が解説されています。