

所得税がゼロでも、住民税の所得割は5万円以上かかることがある。
住民税は大きく「所得割」と「均等割」の2種類で構成されています。均等割は所得に関係なく一律で課される固定額(2024年度からは森林環境税を含め年間5,000円)ですが、所得割は前年の所得に比例して変わる部分です。金融や資産運用に関心を持つ方にとって、この所得割をいかに正確に把握するかが節税の出発点となります。
所得割の計算式は次のとおりです。
| ステップ | 計算内容 |
|---|---|
| ①所得金額の計算 | 収入 ー 必要経費(給与所得控除など) |
| ②課税所得金額の計算 | 所得金額 ー 所得控除額(基礎控除・社会保険料控除など) |
| ③所得割額の計算 | 課税所得金額 × 10% ー 税額控除額 |
| ④住民税の合計 | 所得割 + 均等割(5,000円) |
所得割の税率は一律10%です。内訳は都道府県民税(道府県民税・都民税)が4%、市区町村民税が6%となっています。かつては平成18年度まで所得額に応じて5〜13%の累進課税でしたが、平成19年度の税制改正によって一律10%のフラット課税に変わりました。これが原則です。
給与所得者の場合、まず収入から「給与所得控除」を差し引いて所得金額を求めます。たとえば年収500万円であれば給与所得控除は144万円となり、所得金額は356万円です。ここからさらに基礎控除や社会保険料控除を引いたものが課税所得となります。
具体的な計算例を見てみましょう。
月割にすると約2万円が毎月の給与から天引きされる計算です。つまり10%という数字が基本です。
参考:住民税の計算構造と控除の詳細(東京都主税局・個人住民税)
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju
所得控除は課税所得を小さくするための仕組みで、控除が増えれば所得割額も下がります。住民税における所得控除の種類と主な金額を整理しておきましょう。
| 控除の種類 | 住民税の控除額(目安) |
|---|---|
| 基礎控除 | 最高43万円 |
| 扶養控除(一般) | 扶養親族1人あたり33万円 |
| 配偶者控除(一般) | 最高33万円 |
| 社会保険料控除 | 支払額の全額 |
| 生命保険料控除 | 最高7万円(新契約) |
| 地震保険料控除 | 最高2万5,000円 |
| 医療費控除 | 実費ベースで計算(確定申告が必要) |
| 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo等) | 支払額の全額 |
控除の対象となる支出があれば、積極的に申告することが重要です。控除が条件です。
注意が必要なのは、医療費控除や雑損控除は年末調整では申告できず、確定申告をしなければ住民税にも反映されない点です。「年末調整で済ませているから大丈夫」と思っていると、本来下げられる住民税を高いまま払い続けることになります。痛いですね。
また、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額が所得控除の対象になります。たとえば月2万3,000円(会社員の上限)を拠出した場合、年間27万6,000円がまるごと課税所得から引かれます。住民税の所得割が10%のため、年間で約2万7,600円の節税効果が生まれます。これは使えそうです。
所得控除を漏れなく申告することで、住民税の所得割を合法的に抑えることができます。確定申告の時期にまとめて確認するのが確実です。
参考:freee「住民税の計算方法とは?税率や計算シミュレーションを紹介」(所得控除の種類と適用条件について詳しく解説)
https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/how-to-calculate-inhabitant-tax/
金融に関心を持つ方でも意外と見落とすのが、住民税と所得税で控除額が異なるという点です。「どちらも同じ税法に基づいているから同じはず」と考えてしまいがちですが、実際には体系がまったく別です。
代表的な違いを確認してみましょう。
| 控除の種類 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 基礎控除 | 48万円 | 43万円 | ▲5万円 |
| 扶養控除(一般) | 38万円 | 33万円 | ▲5万円 |
| 配偶者控除(一般) | 38万円 | 33万円 | ▲5万円 |
基礎控除だけを見ても5万円の差があります。扶養家族がいる場合はその人数分だけ控除の差が広がっていきます。所得税の計算では課税されなくても、住民税では課税されるケースが生まれるのはこの違いが原因です。
なぜこの差があるのか。住民税は「地域の行政サービスの経費を住民で広く分担する」という性格が強く、所得税よりも応益性が高い税金とされているからです。そのため控除額が小さく設定されており、課税範囲が広くなっています。つまり所得税より住民税のほうが課税される人の範囲が広いということですね。
この差を吸収するために「調整控除」という仕組みがあります。これは平成19年の税源移譲に伴い、所得税と住民税の人的控除額の差によって住民税の負担が増えないよう設けられた控除です。課税所得が200万円以下の場合は「人的控除の差の合計額」と「課税所得金額」のいずれか少ない方の5%が所得割額から差し引かれます。
調整控除は自動的に計算されるため、自分で申告する必要はありません。しかし「なぜか住民税が思ったより高い」と感じたときは、この調整控除がどう計算されているかを住民税の決定通知書で確認してみてください。
参考:所得税が0円でも住民税がかかる理由(控除額の違いを詳しく解説)
https://waku-tax.com/juuminzei-kazeishotoku/
ふるさと納税の上限額(控除しきれる上限)は、住民税の所得割額と直接連動しています。この仕組みを知らずにふるさと納税をすると、自己負担2,000円のはずがそれ以上の実質負担になることがあります。
ふるさと納税による住民税の控除は2種類あります。
この特例分に上限が設けられており、「住民税所得割額の20%」を超えることはできません。上限を超えた分は控除されず、実質的な自己負担が増えます。これが条件です。
正確な控除上限額の計算式は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除上限額の計算式 | 住民税所得割額(調整控除後)× 20% ÷(90% ー 所得税率 × 1.021)+ 2,000円 |
| 計算例(所得割29万3,500円・所得税率10%の場合) | 293,500円 × 20% ÷(90% ー 10% × 1.021)+ 2,000円 ≒ 75,568円 |
つまり、住民税の所得割額を正確に知っていないと、ふるさと納税の上限額も正確に計算できないということです。多くのふるさと納税サイトで提供しているシミュレーションは年収ベースの概算であるため、実際の所得割額と乖離が生じることがあります。
より正確な数字を把握するには、毎年6月に職場や自宅に届く「住民税の決定通知書」に記載されている所得割額(調整控除後)を確認するのが確実です。その数字をふるさと納税サイトのシミュレーターに入力すれば、自己負担2,000円で最大活用できる上限が把握できます。
参考:ふるさと納税の仕組みと控除計算(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
所得割が非課税になる基準を知ることも、資産形成の戦略上で重要な情報です。非課税かどうかによって、給付金の受給資格や社会保険料の算定に影響が出ることがあるからです。
所得割が非課税となる条件は次のとおりです(東京23区内の場合)。
年収ベースで見た所得割非課税の目安は以下のとおりです(東京23区・1級地の場合)。
| 世帯区分 | 所得割のみ非課税となる年収目安 |
|---|---|
| 単身世帯 | 100万円以下(2025年以降は110万円以下) |
| 夫婦のみ世帯 | 170万円以下 |
| 夫婦+子1人世帯 | 221万4,000円以下 |
| 夫婦+子2人世帯 | 271万4,000円以下 |
| 高齢者単身世帯(65歳以上) | 155万円以下 |
ここで見逃せないのが2025年以降の制度変更です。令和7年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられることが決まりました。これに伴い、単身世帯の住民税所得割が非課税となる年収ラインが従来の100万円から110万円に引き上げられます。意外ですね。
給与所得控除が10万円引き上がることで、課税所得が下がり、非課税の対象が広がる形です。これはパートや副業で収入を得ている方にとっても関係するポイントです。自分の収入がこのラインの近くにある場合は、2025年以降の給与所得控除額の計算表を確認するのが大切です。
また、住民税は「前年所得」に基づいて翌年度に課税されます。2025年の収入に基づく住民税は2026年6月から課税が始まります。この1年のタイムラグを把握していないと、転職や退職後に思わぬタイミングで住民税の請求が来て資金繰りに影響することがあります。これには期限があります。
参考:住民税非課税世帯とは?(freee、年収目安と非課税条件の詳細)
https://www.freee.co.jp/kb/kb-trend/resident-tax-exempt-household/