配当控除とは何か確定申告で得する仕組みを徹底解説

配当控除とは何か確定申告で得する仕組みを徹底解説

配当控除とは何か・確定申告で得する仕組みを解説

源泉徴収で税金が引かれているのに、確定申告すると逆に税金が増えることがあります。


📋 この記事の3ポイント要約
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配当控除で税負担を軽減できる

総合課税を選択して確定申告することで、源泉徴収された税額の一部が戻ってくる仕組みが配当控除です。課税所得が695万円以下なら特に効果的です。

⚠️
申告方法によっては損になる

課税所得が高い人が総合課税を選ぶと、税率が上がり逆効果になることがあります。自分の所得水準に合わせた申告方法の選択が必須です。

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外国株の配当には配当控除が使えない

配当控除は国内株式の配当が対象です。米国株など外国株の配当収入には適用されないため、外国税額控除との使い分けが重要になります。


配当控除とは何か・確定申告における基本的な仕組み


配当控除とは株式の配当金や投資信託の収益分配金に対してかかる所得税・住民税を軽減するための税額控除制度です。日本の税法上、法人が利益に対して法人税を支払った後に株主へ配当を分配するため、そのまま株主個人の所得税にも課税すると「二重課税」になってしまいます。この二重課税を調整するために設けられたのが配当控除の仕組みです。


具体的には、確定申告で「総合課税」を選択した場合に限り、配当所得の一定割合を所得税額から直接差し引くことができます。所得税では配当所得の10%(一定の場合は5%)、住民税では配当所得の2.8%(一定の場合は1.4%)が控除される計算です。


これが基本です。


たとえば配当収入が年間50万円あったとすると、所得税の配当控除額は50万円×10%=5万円となります。東京ドーム1個分の広さを持つ農地の話ではなく、毎年コツコツ積み上げる配当収入からきっちり取り戻せる金額が「5万円」というのは、投資家にとって無視できない数字です。


ただし、この控除が有利に働くかどうかは課税所得の水準によって大きく異なります。後述しますが、課税所得が900万円を超えると総合課税を選ぶことでかえって税負担が増す場合があるため、「配当控除=必ず得」という認識は危険です。


つまり課税所得の確認が条件です。


国税庁|配当控除(所得税基本的な計算方法の解説)


配当控除の計算方法・確定申告での控除額の求め方

配当控除の控除率は、配当の種類と課税所得の金額によって2段階に分かれています。まずここを整理しておきましょう。


課税所得が1,000万円以下の場合、国内の上場株式等から受け取った配当所得に対して、所得税10%・住民税2.8%の控除率が適用されます。一方、課税所得が1,000万円を超える部分については、所得税5%・住民税1.4%に控除率が下がります。


課税所得 所得税の控除率 住民税の控除率
1,000万円以下の部分 10% 2.8%
1,000万円超の部分 5% 1.4%


また、投資信託の普通分配金については、含まれる株式や債券の比率によってさらに控除率が変わります。株式投資信託の場合は配当所得の5%(住民税1.4%)が基本となり、外貨建て資産の割合が高いファンドでは控除率が段階的に低下します。


計算の流れを具体例で見てみます。給与所得が400万円・配当所得が50万円の会社員の場合、課税所得が600万円程度(各種控除後)と仮定すると、配当控除による所得税の控除額は50万円×10%=5万円、住民税の控除額は50万円×2.8%=1.4万円となります。合計6.4万円を税額から直接差し引けるため、手取りが増える計算です。


これは使えそうです。


一方で注意が必要なのは、総合課税で申告すると配当所得が給与所得と合算されるため、所得税率そのものが上がる可能性がある点です。課税所得が695万円を超えると所得税率が23%から33%に上昇し、控除で取り戻せる金額よりも税率アップによる増税分が上回るケースが出てきます。


配当控除の効果が出るのは695万円が目安です、と覚えておけばOKです。


国税庁|配当所得の課税方式(総合課税・申告分離課税・申告不要の選択)


総合課税・申告分離課税・申告不要の3択を比較して配当控除の有利・不利を判断する方法

確定申告における配当所得の申告方法は、大きく3つから選択できます。①申告不要制度(源泉徴収で完結)、②申告分離課税(一律20.315%で申告)、③総合課税(給与など他の所得と合算して累進税率で申告)です。


この3つの選択が、損得を大きく左右します。


申告不要制度は、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を使っている場合に自動的に適用されます。所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%の合計20.315%が源泉徴収されており、そのまま何もしなくても課税関係が完結します。手間がかからない半面、配当控除のメリットも受けられません。


申告分離課税では、株式の譲渡損失と配当所得を損益通算できるメリットがあります。たとえば年間で株の売却損が30万円あり、配当収入が50万円あった場合、損益通算すると課税対象の配当所得を20万円に圧縮できます。この「損益通算」は申告分離課税でしか使えない手法です。


総合課税は配当控除を使える唯一の申告方法ですが、メリットが出る所得層は限られています。課税所得695万円以下の方であれば、総合課税+配当控除の組み合わせが有利になることが多いです。


3つの申告方法ごとに得な所得帯をまとめると以下の通りです。


申告方法 有利な課税所得の目安 主なメリット
申告不要 695万円超〜 手間なし・国保等への影響なし
申告分離課税 譲渡損失がある場合 損益通算・繰越控除が使える
総合課税 695万円以下が目安 配当控除で実質税率を下げられる


意外なのは、課税所得が低い方ほど配当控除の恩恵が大きいという点です。課税所得が195万円以下(所得税率5%)の場合、源泉徴収された15%との差引きで、最大で所得税10%分が還付されます。配当収入100万円なら最大10万円の還付も理論上あり得ます。


これは大きいですね。


ただし、総合課税を選ぶと国民健康保険料の算定基礎となる所得に配当が加算されるため、国保加入者は保険料が上がるリスクもあります。サラリーマンで健康保険に加入している方には関係ありませんが、自営業者やフリーランスの方は特に注意が必要です。


申告方法は毎年変更が可能です。


配当控除が使えないケース・外国株・NISA・J-REITの注意点

配当控除は「万能」ではありません。受け取る配当の種類によっては、そもそも制度の対象外になることがあります。


まず外国株の配当は配当控除の対象外です。米国株・欧州株など外国企業からの配当は、日本の法人税ではなく現地の法人税が課されているため、日本の二重課税調整の仕組みが適用されません。米国株で人気の高配当ETF(VYM・HDVなど)から配当を受け取っている場合も、配当控除は使えません。


外国株には外国税額控除が別途使えます。米国株の配当は米国側で10%が源泉徴収されるため、確定申告で「外国税額控除」を申請すれば、この10%分を日本の税額から差し引くことができます。外国株投資家は配当控除ではなくこちらを活用するのが原則です。


次に、NISA口座で受け取る配当は非課税のため、そもそも確定申告の必要がなく配当控除も使えません。「NISAで配当をもらっているから配当控除で還付が来る」と期待する方がいますが、NISAは最初から非課税なので配当控除の出番がないのです。


厳しいところですね。


J-REIT(不動産投資信託)の分配金も配当控除の対象外です。J-REITは法人税を実質的に課されない特殊な構造をしているため、二重課税の問題が発生しないとみなされており、配当控除の適用が認められていません。高利回りのJ-REITに投資している場合は、申告分離課税か申告不要制度を選ぶことになります。


まとめると、配当控除が使えるのは国内株式・株式投資信託の分配金に限られるということです。


国税庁|外国税額控除の概要(外国株投資家向けの税額控除解説)


配当控除の確定申告の手順と、住民税だけ申告不要を選べる「課税方式の分離」という節税テクニック

確定申告で配当控除を申請する手順を順を追って説明します。まず証券会社から送られてくる「配当等の支払通知書」または「特定口座年間取引報告書」を用意してください。これが申告の基本資料になります。


確定申告書への記載の流れは以下の通りです。


  • 📋 配当等の支払通知書から「配当金額」と「源泉徴収税額」を確認する
  • 📝 確定申告書の「配当所得」欄に収入金額を記入する
  • 💰 配当控除額を計算し「税額控除」欄に記入する(配当所得×10%が基本)
  • 🔁 既に源泉徴収された税額を「源泉徴収税額」欄に記入する
  • 📤 e-Taxまたは書面で申告書を提出する


e-Taxを使えばほぼ自動計算されるので、数字を入力するだけで控除額が算出されます。国税庁の確定申告書等作成コーナーは無料で使えるため、ぜひ活用してください。


ここで知っておくと得する独自の節税テクニックがあります。それが「住民税の課税方式の分離」です。


2022年度の税制改正以前は、所得税で総合課税を選びつつ、住民税だけ申告不要制度を選択する「所得税と住民税で異なる課税方式を選択する」方法が認められていました。住民税の税率は所得税よりも累進性が低いため(一律10%)、総合課税にすると住民税の計算基礎となる所得が増え、国民健康保険料などが上がるデメリットがありました。住民税だけ申告不要にすれば、所得税で配当控除を受けつつ住民税・国保への影響を抑えられたのです。


ただし、2023年度(2023年分)以降はこの分離選択が廃止されました。現在は所得税と住民税で同じ課税方式を選択しなければなりません。


廃止前の恩恵を知っている人ほど注意が必要です。


旧制度を前提にした節税情報がWeb上に残っている場合があるため、情報の日付を確認することが重要です。「住民税だけ申告不要にする」方法は2022年以前の情報であり、現在は使えません。国税庁や各市区町村の公式情報を参照するか、税理士に相談して最新ルールで試算することをお勧めします。


総務省|上場株式等に係る配当所得等の課税方式の統一(2023年度改正の公式説明)


参考情報として: 自分の課税所得を正確に把握し、総合課税と申告分離課税のどちらが有利かをシミュレーションするには、証券会社各社が提供する「税金シミュレーター」や、確定申告前に国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の試算機能を活用するのが手軽です。SBI証券や楽天証券は無料で税金シミュレーションツールを提供しており、入力するだけで申告方法ごとの税額を比較できます。まず1回試算してみることをお勧めします。




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