再販売価格基準法とは移転価格税制の基本三法のひとつ

再販売価格基準法とは移転価格税制の基本三法のひとつ

再販売価格基準法とは:移転価格税制を理解する基本三法

再販売価格基準法(RP法)に「詳しい」と思っているあなた、実は日本の税務当局は過去7年分まで遡って追徴課税を行う権限を持っており、100億円規模の課税事例も実在します。


この記事の3ポイント要約
📌
再販売価格基準法(RP法)とは?

国外関連取引で買い手が第三者に再販売する価格(再販売価格)から、通常の利潤を控除して独立企業間価格を算定する「基本三法」のひとつ。 主に商社・販売子会社の取引に適用されます。

⚠️
課税リスクの実態

比較対象企業の選定が当局に否認されると数億〜数十億円の追徴課税に発展するケースも。IHI・良品計画・ファナックなど大企業でも課税事例が相次いでいます。

リスクを避けるために

移転価格ポリシーの策定・ローカルファイルなどの文書化・事前確認制度(APA)の活用が有効。専門税理士への相談も早めに行うことが損失回避の鍵です。

このページの目次
  1. 再販売価格基準法とは:移転価格税制を理解する基本三法
    1. 再販売価格基準法とは何か:移転価格税制における位置づけ
    2. 再販売価格基準法の計算方法と具体例:数字でわかる仕組み
    3. 再販売価格基準法と原価基準法の違い:逆向きのアプローチを比較
    4. 再販売価格基準法が適用される主なケース:商社・販売子会社への適用
    5. 再販売価格基準法の長所と短所:独立価格比準法との比較で見えてくるポイント
    6. 再販売価格基準法における比較対象取引の選定:機能とリスクの類似性が最重要
    7. 再販売価格基準法での課税リスク:比較対象否認と多額の追徴税を防ぐには
    8. 再販売価格基準法と独立企業間価格の6つの算定方法:どれを選ぶべきか
    9. 再販売価格基準法における検証対象の選び方:親会社か子会社か、どちらを検証するか
    10. 再販売価格基準法と文書化義務:ローカルファイル作成がリスクを下げる理由
    11. 再販売価格基準法と事前確認制度(APA):税務調査リスクをゼロに近づける方法
    12. 再販売価格基準法を中小企業が見落としがちな理由:「うちは関係ない」という落とし穴
    13. 再販売価格基準法の独自視点:「利益率の国際的な逆転現象」が課税リスクを生む
    14. 再販売価格基準法を正しく活用するための実践ステップ:今すぐできる対策


再販売価格基準法とは何か:移転価格税制における位置づけ


再販売価格基準法(Resale Price Method、略称:RP法)とは、国外関連取引において、買い手が第三者へ棚卸資産を再販売する際の価格(再販売価格)から「通常の利潤の額」を差し引いて独立企業間価格を算定する方法です。日本の租税特別措置法第66条の4に基づく移転価格税制において、独立価格比準法・原価基準法とともに「基本三法」のひとつとして位置づけられています。


移転価格税制そのものとは、グループ企業間の国際取引において、独立した第三者同士ならば成立するであろう価格(独立企業間価格)と異なる価格で取引を行うことで、所得が不当に海外へ移転することを防ぐための制度です。日本では1986年に導入され、現在は海外子会社との取引価格の妥当性が年々厳しく問われるようになっています。


基本三法の中でも、RP法は「売り手側の原価」ではなく「買い手側の再販価格」から逆算する点が特徴です。つまり、最終的な外部への販売価格が起点になります。


算定方法 起点となるデータ 主な適用場面
独立価格比準法(CUP法) 第三者間の取引価格 価格の直接比較ができる場合
再販売価格基準法(RP法) 再販売価格(外部への販売価格) 商社・販売子会社がある場合
原価基準法(CP法) 製造原価・仕入原価 製造子会社がある場合


独立価格比準法は直接比較のため信頼性が最も高いとされますが、完全に同種の取引を見つけるのが難しい、という実務上の課題があります。RP法はその次に位置するセカンド・ベストの方法です。


再販売価格基準法の計算方法と具体例:数字でわかる仕組み

RP法の計算式は非常にシンプルで、以下のように表せます。


独立企業間価格 = 再販売価格 ×(1 − 通常の利益率)


具体的な数値例で確認しましょう。


日本の親会社が、タイの子会社(販売子会社)へ製品Xを販売し、タイの子会社がそれを第三者の顧客へ「120」で販売するとします。このとき、類似取引における通常の売上総利益率が20%であれば。


  • 通常の利潤 = 120 × 20% = 24
  • 独立企業間価格 = 120 − 24 = 100


つまり、日本の親会社はタイの子会社に対して「100」で販売しなければならない、という算定結果になります。


ここで重要なのが「通常の利益率」の根拠です。この数値は「売上総利益÷売上高」で算出される売上総利益率(グロスマージン)を使います。


販管費は含みません。


つまり「売上 − 売上原価」ベースです。実務では、複数の比較対象企業の売上総利益率の幅(インターカーティル・レンジ)を算出し、検証対象企業の利益率がその範囲内に収まっていれば問題なしと判断します。


比較対象利益率のレンジは「5%〜25%」のように幅を持ちます。これは東京23区の地価の相場感に似ていて、ひとつの数字ではなくゾーンで判断するイメージです。


この計算方法が条件を満たす取引に適用されるという点が原則です。


再販売価格基準法と原価基準法の違い:逆向きのアプローチを比較

RP法と原価基準法(CP法)は、しばしば対比して語られます。どちらも売上総利益率を指標に使いますが、出発点が正反対です。


  • 🔁 RP法:再販売価格(外部への販売価格)を起点に「通常利益を引いて」独立企業間価格を逆算する
  • 🔁 CP法:仕入原価(製造コスト)を起点に「通常利益を足して」独立企業間価格を算出する


RP法は「買い手(輸入・販売子会社)側」に適した方法であり、CP法は「売り手(製造子会社)側」に適した方法と言えます。海外に販売子会社を持つ企業にはRP法が、海外に製造子会社を持つ企業にはCP法が適用されやすいということです。


どちらも売上総利益率を軸に検証する点は共通していますが、計算の方向性が逆というのが基本です。金融的に言えば、RP法は「DCF法における割引計算」のように最終価値から現在価値に戻すイメージです。


この違いは重要です。なぜなら、自社の取引がRP法対象なのにCP法の利益率で検証しようとすると、比較対象選定の段階で論理が崩れてしまうからです。


再販売価格基準法が適用される主なケース:商社・販売子会社への適用

RP法が特に適しているのは、次のような取引形態です。


  • 🏢 日本の本社から海外の販売子会社へ製品を輸出し、その販売子会社が現地の第三者顧客へ転売する取引
  • 🏢 海外子会社が商社的機能を持ち、自ら大きな付加価値を加えずに製品を再販する取引
  • 🏢 アフターサービスや独自の広告宣伝を行わない、シンプルな再販型の海外子会社がある取引


逆に、RP法が適用しにくいケースもあります。例えば、販売子会社が独自ブランドでの大型マーケティング投資を行っていたり、研究開発機能を担っていたりする場合は、機能の複雑さから比較対象の選定が困難になります。


つまり、「機能がシンプルであること」がRP法適用の鍵です。


押方移転価格会計事務所によれば、実務においては「複数の比較対象企業の売上総利益率の幅の中に、国外関連取引の売上総利益率が収まっていれば問題ない」と結論づけることが多いとされています。


再販売価格基準法で使う比較対象は、内部比較(自社の別の取引)と外部比較(独立した第三者企業の取引)のどちらも利用可能です。内部比較の方が情報の入手精度が高く、機能・リスクの類似性も確認しやすい傾向があります。


参考:再販売価格基準法(RP法)とは | 押方移転価格会計事務所
https://www.oshikata-tp.com/information/words/resale-price-method/


再販売価格基準法の長所と短所:独立価格比準法との比較で見えてくるポイント

RP法には明確な長所と短所があります。両面を理解した上で活用することが、実務では重要です。


【長所】


まず、売上総利益は販売価格と密接な関係にあるため、独立価格比準法に次いで「直接的」な独立企業間価格算定が可能です。また、独立価格比準法では「同種」の商品という厳格な条件が求められますが、RP法では「類似」の商品でも比較対象として認められるため、比較対象を見つけやすいという側面があります。


「類似」とは、性状・構造・機能等の面において似ているという意味です。


【短所】


一方で、売上総利益率は取引当事者が果たす「機能の差異」に非常に敏感です。たとえば、検証対象の海外子会社がほとんど広告宣伝を行っていないのに対して、比較対象企業が多額の販促費を投入していると、利益率に大きな差が出てしまいます。この機能の差異を調整しなければ比較が成立しないため、公開情報から適切な比較対象取引を見つけることが難しいケースが多い、というのが最大の短所です。


厳しいところですね。実務では外部の公開データだけで比較対象を探してもうまくいかないことが多く、内部比較対象取引(自社グループ内の類似取引)が存在するかどうかが勝負になります。


再販売価格基準法における比較対象取引の選定:機能とリスクの類似性が最重要

RP法の適用で最も難しく、かつ最も重要な作業が「比較対象取引の選定」です。


比較対象取引を選ぶ際には、単純に「似た商品を扱っている会社」を選べばよいわけではありません。以下の要素についての類似性が厳密に検討されます。


  • 📋 製品・サービスの性質(物理的な類似性)
  • 📋 取引当事者が担う機能(販売、物流、マーケティング、アフターサービス等)
  • 📋 取引当事者が負担するリスク(在庫リスク、信用リスク、為替リスク等)
  • 📋 取引条件(取引量、支払い条件、輸送条件等)
  • 📋 市況・競争環境


注意すべきは、RP法では「製品の類似性」よりも「機能・リスクの類似性」の方が重視されるという点です。これは独立価格比準法と対照的で、RP法のユニークな特徴です。


比較対象が適切に選べないと、税務当局からその選定を否認されるリスクがあります。課税リスクのポイントとして、「比較可能性が十分でないとして税務当局から否認を受けるリスクがある」と専門家も指摘しています。比較対象取引が全て否認された場合、RP法そのものが「適用不能」と判断されるケースもあります。


機能とリスクが条件です。


再販売価格基準法での課税リスク:比較対象否認と多額の追徴税を防ぐには

RP法に限らず移転価格税制全般で、「比較対象会社の選定が否認される」リスクは常に存在します。しかし、RP法は特に機能・リスクの類似性への感度が高いため、このリスクが顕在化しやすい算定方法とも言えます。


日本企業の実際の課税事例を見てみましょう。


  • 🏭 IHI(タイ子会社・2019年):東京国税局から約100億円の移転価格課税、追徴税額は約43億円。比較対象企業の選定が争点となった訴訟を提起し、2023年12月に第1審で勝訴。
  • 👟 良品計画(2020年):海外子会社との取引で東京国税局から約70億円の申告漏れ指摘。

    追徴税額は約20億円。

    中国との相互協議を申し立て。
  • ⚙️ ファナック(2024年):台湾子会社との取引で3年間・約97億円の申告漏れ指摘。

    追徴税額は約22億円。

  • 🏕️ スノーピーク(2024年):韓国子会社との取引で3事業年度・約6億円の申告漏れ指摘。

    追徴税額は約1.5億円。


これらは大企業のケースですが、移転価格税制の調査対象は売上規模に限りません。国税庁のデータによれば、2020年以降は大型課税の件数は減少しつつも、中小規模の企業への調査件数が増加傾向にあります。


日本の移転価格税制では、税務当局が最大で過去7年間に遡って所得の更正が可能(2020年4月1日以後開始事業年度より)です。これは一般的な税務調査の遡及期間5年よりも長い点に注意が必要です。7年間という期間を考えると、1年あたりの課税額が小さくても累積で相当な金額になり得ます。


痛いですね。


参考:日本における移転価格課税の動向と最近の事例 | 株式会社iTPS
https://itps-jp.com/transfer-pricing-tax-case/


再販売価格基準法と独立企業間価格の6つの算定方法:どれを選ぶべきか

日本の移転価格税制では、独立企業間価格の算定方法として以下の6つが規定されており、取引の実態に応じて「最も適切な方法」を選ぶことが求められています(ベストメソッドルール)。


算定方法 略称 特徴
独立価格比準法 CUP法 最も直接的・信頼性高いが類似取引を見つけにくい
再販売価格基準法 RP法 販売子会社向け・再販価格からの逆算
原価基準法 CP法 製造子会社向け・製造コストへの加算
取引単位営業利益 TNMM法 営業利益率を比較・最も広く使われる
利益分割法 PS法 合算利益を貢献度で分割・無形資産取引に有効
DCF法 DCF法 将来CF割引・2019年税制改正で追加・無形資産譲渡に使用


実務では、TNMM法(取引単位営業利益法)が最も広く使われています。これは、財務データベース等から比較企業を比較的抽出しやすく、使いやすい方法であるためです。単純な機能しか持たない日本企業の海外販売子会社にはTNMM法が適用されることも多いです。


RP法が選ばれるのは、主に内部比較対象取引が存在する場合や、販売子会社の機能がシンプルで外部比較対象の機能類似性が確保できる場合です。


これが条件です。


参考:独立企業間価格の6つの算定方法 | xBridge Advisory
https://xbridge-advisory.com/it-main2-tp5/


再販売価格基準法における検証対象の選び方:親会社か子会社か、どちらを検証するか

RP法やCP法、TNMM法では、国外関連取引の当事者のうち「いずれか一方」を検証対象に選ぶ必要があります。


では、どちらを選べばよいのでしょうか。


原則は「より機能がシンプルな方を検証対象にする」です。


なぜなら、機能がシンプルな方が比較対象を選定しやすく、比較可能性が高い非関連者間取引を見つけやすいからです。典型的には、日本本社(研究開発・製造・ブランディングなど多機能)と海外販売子会社(単純な再販機能)を比べると、海外販売子会社の方がシンプルです。海外子会社を検証対象にすることが多くなります。


ただし、例外も存在します。


海外子会社が主導的な立場で事業をリードしており、日本本社が製造の一部を担うだけという取引形態では、むしろ本社側の方が機能が単純と判断される場合もあります。移転価格に経験のある担当者ほど「当然、子会社が検証対象」と思いがちですが、本社側が検証対象となる可能性も常に頭に置くことが重要です。


意外ですね。


また、日本本社が赤字になっている状況では、当局が本社を検証対象として比較対象企業を選定し、課税を行うケースも実例として報告されています。


この点は特に注意が必要です。


再販売価格基準法と文書化義務:ローカルファイル作成がリスクを下げる理由

平成28年(2016年)度の税制改正によって、移転価格文書化制度が大幅に強化されました。現在、以下の文書の作成・保存が義務づけられています(企業規模・取引金額による要件あり)。


  • 📄 ローカルファイル:各国の関連者間取引の詳細・独立企業間価格の算定根拠を記載
  • 📄 マスターファイル:グループ全体のビジネスモデルや移転価格ポリシーを記載
  • 📄 CbCレポート(国別報告書):グループ各社の国別の売上・利益・税額等を記載


文書化の義務がない中小企業であっても、ローカルファイルに相当する資料を整備しておくことは、税務調査対応において非常に有効です。なぜなら、調査開始時に合理的な文書を提出できた場合、当局の調査対象から移転価格部分が除外されたり、簡易な調査で済む可能性があるからです。


文書化は「義務だから作る」ではなく、「リスクヘッジとして活用する」という発想が重要です。RP法を使っている場合、比較対象取引の選定根拠や機能・リスク分析の詳細をローカルファイルに盛り込んでおくことで、税務当局との見解の相違を事前に最小化できます。


文書化が原則です。


参考:移転価格税制とは?独立企業間価格の算定方法やリスク対策を解説 | M&Aキャピタルパートナーズ
https://www.ma-cp.com/about-ma/transfer-pricing-taxation/


再販売価格基準法と事前確認制度(APA):税務調査リスクをゼロに近づける方法

RP法の適用において、最もリスクを低減できる方法のひとつが「事前確認制度(APA:Advance Pricing Agreement)」の活用です。


APAとは、企業が税務当局に対し、独立企業間価格の算定方法について事前に合意を得る制度です。一度合意が成立すれば、その対象期間(通常3〜5事業年度)については移転価格課税リスクをほぼ排除できます。


APAには3種類あります。


  • 🤝 ユニラテラルAPA:自国(日本)の税務当局とのみ確認する方法。

    手続きは比較的シンプル。

  • 🤝 バイラテラルAPA:取引相手国の税務当局も含めた二国間での確認。二重課税リスクを排除できるが、取得まで数年単位の時間がかかる。
  • 🤝 マルチラテラルAPA:3カ国以上が関与する場合の確認。最も複雑だが、多国間取引のある大企業グループには有効。


バイラテラルAPAは取得に時間がかかりますが、得られる安心感は大きいです。特に、アジア子会社との取引でRP法を使っている企業には、将来の税務リスクを封じ込める意味で検討に値します。


APAを取得していない場合でも、移転価格ポリシーの策定と定期的なベンチマーク分析を行い、子会社の利益水準が「独立企業間レンジ」の範囲内に収まっているかを毎年モニタリングすることが、実務上の最低限の対策として推奨されています。一般的な目安として、子会社の営業利益水準が10%を超えると調査の検討対象になりやすいとされている点も覚えておくと役立ちます。


これは使えそうです。


再販売価格基準法を中小企業が見落としがちな理由:「うちは関係ない」という落とし穴

移転価格税制やRP法は、「大企業向けの話」と思われがちです。実際、過去の大型課税事例が報道されるのはIHIや良品計画のような上場大企業ばかりです。


しかし、これは実態とは異なります。


国税庁のデータによれば、移転価格調査の件数は中小規模の企業への広がりを見せており、「海外子会社を1社でも持つ企業」であれば、規模を問わず調査の対象になり得ます。年間売上が数十億円規模の企業でも、海外子会社への価格設定が不適切と判断されれば、数千万〜数億円の追徴課税につながる可能性があります。


中小企業が移転価格対応を怠りやすい理由として、以下の点が挙げられます。


  • 💡 「大企業の話だから関係ない」という誤解
  • 💡 移転価格専門の税理士に依頼していない(通常の顧問税理士が国際税務に不慣れなケースがある)
  • 💡 ローカルファイル等の文書化が義務ではない規模感であるため、何もしていない
  • 💡 海外子会社に「儲けさせすぎている」または「損させすぎている」ことに気づかない


特にRP法の文脈では、「海外の販売子会社の粗利率が高すぎる」または「低すぎる」状態が続いていると、当局に目を付けられやすくなります。1つだけ覚えておけばOKです:子会社の売上総利益率が業界平均と大きくかけ離れていないかを定期確認する習慣をつけましょう。


参考:移転価格税制、中小の対策急務 |日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO89494580Y5A710C1TCJ000/


再販売価格基準法の独自視点:「利益率の国際的な逆転現象」が課税リスクを生む

ここからは、検索上位ではなかなか語られない独自の視点を紹介します。


RP法の実務適用において、見落とされがちな落とし穴が「国・地域によって利益率の水準が大きく異なる」という事実です。


例えば、アジア新興国の販売子会社では、競争環境・物価水準・販売コストが日本と大きく異なります。現地の独立した流通業者と比較した場合、国外関連者である販売子会社の売上総利益率が「見かけ上は高い」ように見えても、実態として現地のコスト構造を反映した適正な利益率である可能性があります。


しかし、日本の税務当局は日本側の視点から比較対象を選定するため、現地市場の実態を十分に反映しない比較対象が選ばれてしまうことがあります。この「利益率の国際的な逆転現象」が、課税と実態の乖離を生むひとつの要因です。


この問題を回避するには、比較対象企業の所在地・市場環境・競争環境についての詳細な分析をローカルファイルに記載し、利益率の差異が「地域要因」によるものであることを事前に説明できる体制を整えることが有効です。税務調査が始まってから慌てて資料を集めるのでは遅い場合があります。


また、OECDの移転価格ガイドラインも定期的に改訂されており、各国の課税当局がガイドラインの変更に沿って新たな論点を持ち込んでくるリスクがあります。日本でも令和元年の税制改正でDCF法が追加されたように、制度は常に進化しています。最新の動向をキャッチアップするためには、国際税務に精通した専門家への定期的な相談が有効です。


参考:経済産業省「移転価格税制の基礎知識」(PDF)
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kokusaisozei/itaxseminar2023/02.itenkakaku.pdf


再販売価格基準法を正しく活用するための実践ステップ:今すぐできる対策

RP法を含む移転価格対応を適切に行うために、今すぐ取り組める実践ステップを整理します。


ステップ1:グループ取引の洗い出し
海外子会社との全取引を一覧化し、「どの取引がRP法の対象になりうるか」を確認します。商社的機能を担う販売子会社への棚卸資産の輸出取引が主な対象です。


ステップ2:子会社の利益率モニタリング
販売子会社の売上総利益率を業界データと定期的に比較します。利益率が同業他社の相場と大きくかけ離れている場合はリスクのサインです。目安として、営業利益率10%超が移転価格調査の検討対象になりやすいとされています。


ステップ3:比較対象取引の精査
内部比較対象取引(自社グループ内での類似取引)が存在するかを確認します。存在する場合は、機能・リスクの類似性を詳細に文書化しておくことが有効です。


ステップ4:ローカルファイル等の文書化
義務がある・ないにかかわらず、RP法の適用根拠・比較対象の選定理由・機能分析・リスク分析を文書として整備します。この文書が税務調査の際の「防御壁」になります。


ステップ5:専門家への相談
海外子会社との取引規模が大きくなってきた場合、国際税務専門の税理士や会計士への相談を検討します。特にAPA(事前確認制度)の活用は専門家なしには難しく、早期着手が肝心です。


国税庁の公式参考事例集には、RP法の適用上のポイントを示す具体的な事例が掲載されています。実務担当者は一度目を通しておくことをおすすめします。


参考:国税庁「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」(PDF)
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/010601/pdf/bessatsu.pdf




日本旧紙幣 50銭札 大正10年発行 2枚 <1014z古銭>