

源泉徴収票の「支払金額」がそのまま手取りだと思うと、実際の振込額より数十万円少なくて驚くことになります。
多くの人が「源泉徴収票の一番上に書いてある支払金額=手取り」と誤解しています。これは大きな勘違いです。
「支払金額」とは、いわゆる「額面年収」のことで、税金や社会保険料が一切差し引かれる前の総支給額を指します。実際に銀行口座に振り込まれる「手取り」は、そこからさまざまな控除が引かれた後の金額です。
たとえば年収(支払金額)が500万円の会社員の場合、手取りの目安は約390〜400万円程度になることが多く、差額は約100〜110万円に上ります。つまり支払金額の約78〜80%が手取りという計算です。
この差を生み出す主な要素は以下の3つです。
| 控除の種類 | 概要 | 年収500万円の目安 |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 健康保険・厚生年金・雇用保険など | 約72万円 |
| 所得税 | 源泉徴収票の「源泉徴収税額」に記載 | 約15〜20万円 |
| 住民税 | 源泉徴収票には記載なし(翌年課税) | 約24〜25万円 |
住民税が源泉徴収票に載っていない点は見落としがちです。注意が必要ですね。
源泉徴収票を見て「税金こんなに取られてたの?」と感じたとしたら、それはむしろ正常な感覚です。社会保険料まで含めると、手取りは額面の75〜85%程度に収まるのが一般的な目安と覚えておきましょう。
源泉徴収票には多くの欄がありますが、まず押さえるべき主要な7項目があります。それぞれが何を意味するかを理解することで、自分の税計算の全体像が見えてきます。
① 支払金額
いわゆる「額面年収」です。1年間に会社から支払われた給与・賞与の合計額で、税金・社会保険料控除前の金額です。
② 給与所得控除後の金額
支払金額から「給与所得控除」を差し引いた金額です。給与所得控除とは、会社員が経費として認められる概算控除のことで、年収162.5万円以下なら55万円、年収500万円なら144万円などと、収入に応じて段階的に決まります。つまり原則ですね。
③ 所得控除の額の合計額
配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除・医療費控除など、個人の事情に応じた各種控除の合計です。この金額が大きいほど税金が減ります。
④ 源泉徴収税額
1年間に源泉徴収された所得税の合計額です。年末調整後の最終的な所得税額がここに表れます。
⑤ 社会保険料等の金額
健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の合計額です。この金額は③の所得控除にも含まれています。
⑥ 生命保険料の控除額
民間の生命保険・個人年金・介護医療保険の保険料に応じた控除額が記載されます。各種類の上限は4万円、合計最大12万円です。
⑦ 住宅借入金等特別控除の額(住宅ローン控除)
住宅ローン残高の0.7%が所得税から直接差し引かれる控除額です。これは所得控除ではなく税額控除であるため、所得税を直接減らす効果があります。これは使えそうです。
源泉徴収票を使って、実際の手取りを逆算する方法を解説します。ただし源泉徴収票だけでは住民税額が分からないため、完全な計算には少し補完作業が必要です。
まず、源泉徴収票から読み取れる「引かれる金額」を整理します。
手取りの概算計算式
> 手取り = 支払金額 − 社会保険料等の金額 − 源泉徴収税額 − 住民税(別途推計)
住民税は源泉徴収票に記載がないため、「課税所得(②−③)× 10%」で概算できます。
年収400万円の会社員の場合を例に取ると、支払金額400万円から社会保険料約59万円・所得税約9万円・住民税約19万円を差し引いた手取りは約313万円となります。月換算では約26万円です。
意外ですね。
給与明細を毎月確認していても、年間合計で見ると「こんなに引かれていたのか」と驚く人は多いです。源泉徴収票は1年間の総括として、自分のお金の流れを俯瞰できる貴重な書類です。
なお、手取り計算を簡単に行うには「給与計算ツール」や「手取り計算シミュレーター」を提供している国税庁の確定申告書等作成コーナーや、各金融機関のシミュレーターも活用できます。計算が煩雑だと感じたら、そうしたツールで確認する方法が現実的です。
国税庁:確定申告書等作成コーナー(税額・控除額の計算ができる)
源泉徴収票の読み方を一段深めると、自分の「課税所得」と適用されている所得税率が分かります。これが分かると、節税戦略を具体的に立てられます。
課税所得は次の式で求められます。
> 課税所得 = 給与所得控除後の金額(②) − 所得控除の額の合計額(③)
たとえば②が350万円、③が120万円なら、課税所得は230万円です。
所得税率は課税所得に応じて以下のように決まります。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
先ほどの例(課税所得230万円)なら税率10%が適用されます。実際の税額は「230万円 × 10% − 97,500円 = 132,500円」です。
この計算結果が源泉徴収票の「源泉徴収税額」と概ね一致していれば、年末調整が正しく行われたことの確認にもなります。
重要なのは、「課税所得の増減が税率ブラケットをまたぐかどうか」という視点です。たとえば課税所得が335万円であれば税率20%ですが、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金(最大年27.6万円)を活用することで課税所得を330万円以下に下げ、税率を10%に引き下げられる可能性があります。これは節税効果が数万円単位になるケースもあります。
iDeCoは掛金全額が所得控除になるため、自分の課税所得が税率ブラケットの境界付近にある人にとって特に有効な手段です。
これは検索上位ではほとんど触れられていない独自の視点です。源泉徴収票の③「所得控除の額の合計額」と②「給与所得控除後の金額」の差、つまり「どれだけ控除を使い切っているか」に着目することで、節税の余白を数値で見える化できます。
これを「控除の空白」と呼びます。
たとえば②が350万円で、③が80万円しかない人は、270万円が丸ごと課税所得になっています。一方、同じ②350万円でも③が180万円ある人は課税所得が170万円で済みます。税率5〜10%の差が積み重なると、年間で5〜15万円単位の税負担の違いになります。
③を増やすための代表的な手段は次のとおりです。
源泉徴収票を見て③の数字が少ないと感じたら、来年の節税戦略を立てる絶好のタイミングです。これが原則です。
特にiDeCoは、掛金を増やすことで課税所得を直接圧縮できるため、税率ブラケットが高い人ほど効果が大きくなります。加入・掛金変更は金融機関の口座開設から始まりますが、ネット証券(SBI証券・楽天証券など)なら手続きはすべてオンラインで完結します。