電子取引とは 電子帳簿保存法の保存要件と対象者

電子取引とは 電子帳簿保存法の保存要件と対象者

電子取引とは 電子帳簿保存法の保存要件と対象

印刷した紙を保存しても違反です

この記事のポイント
📧
電子取引データ保存は全事業者が対象

メールで請求書を受け取った場合、データのまま保存が義務。個人事業主も対象となります

🔐
真実性と可視性の確保が必須

タイムスタンプや訂正削除履歴の保存など、改ざん防止措置と検索機能の整備が求められます

⚠️
違反時は青色申告取消しのリスク

適切に保存しないと税制優遇が失われ、最大100万円の過料が科される可能性があります

電子取引の定義と対象範囲


電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引のことです。メールに添付されたPDFの請求書や領収書、Webサイトからダウンロードする取引明細、クラウドサービスで受け取る見積書などが該当します。


参考)https://www.yayoi-kk.co.jp/denchoho/oyakudachi/denshichobohozonho-02/


2024年1月から電子取引のデータ保存は完全義務化されました。電子データで受け取った取引書類は、紙に印刷して保存するだけでは要件を満たしません。


つまり電子データのまま保存することが原則です。



参考)電子帳簿保存法、違反するとどうなる?違反リスクと対策ポイント…


対象となる事業者は、所得税や法人税の申告義務がある全ての法人と個人事業主です。副業雑所得を得ており、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合も対象になります。


参考)電子帳簿保存法に個人事業主はどう対応する?ポイントを解説 -…


電子取引に該当するものは以下の通りです。


  • 📨 電子メールによるPDF請求書・領収書の受領や送信
  • 🌐 取引先のWebサイトからの請求書・領収書のダウンロード
  • ☁️ クラウドサービスを利用した電子請求書・領収書の授受
  • 💳 クレジットカード・ICカードの利用明細データ
  • 🖨️ ペーパレスFAX・複合機で受信したデータ
  • 📀 EDIシステムやDVDなどの記録媒体を通じたデータ授受

国税庁の電子帳簿保存法一問一答では、電子取引の具体例や保存要件について詳しく解説されています。

電子取引データの保存要件における真実性の確保

真実性の確保とは、保存されたデータが改ざんされていないことを証明する仕組みのことです。以下のいずれか1つの措置を講じれば要件を満たします。


参考)【義務】電子取引のデータ保存について知りたい - 弥生株式会…


第一の方法は、タイムスタンプの付与です。取引相手からタイムスタンプが付与されたデータを受け取るか、受領後すみやかに自社でタイムスタンプを付与します。


参考)http://www.ntt-finance.co.jp/billing/biz/column/20230427_11


第二の方法は、訂正削除履歴が残るシステムでの保存です。クラウド型の文書管理システムや会計ソフトなど、データの変更履歴が自動的に記録されるシステムを利用すれば対応できます。


これが最も導入しやすい方法です。



参考)電子帳簿保存法にはどう対応すればいい?図解でわかる7つの実務…


第三の方法は、訂正削除の防止に関する事務処理規程の制定と運用です。事務処理規程には、データの訂正・削除を行う場合の申請手続きや承認フローを明記します。


参考)電子取引の保存要件は? 電子帳簿保存法における電子取引のデー…


第四の方法は、正当な理由がない訂正削除の防止に関する事務処理規程です。税務調査時には、この規程に基づいて適切に運用されていることを示す必要があります。

電子取引保存の可視性確保と検索要件

可視性の確保とは、保存したデータを必要なときに検索・表示できる状態にすることです。


具体的には3つの要件があります。



参考)【図解】電子帳簿保存法の電子取引とは?4つの保存要件や対応方…


一つ目は、関連書類の備え付けです。システム概要書やマニュアルなど、保存システムの仕組みを説明する書類を用意しておきます。


二つ目は、検索機能の確保です。取引年月日・取引金額・取引先名の3項目で検索できる必要があります。さらに、年月日や金額については範囲指定での検索ができ、2つ以上の項目を組み合わせた検索も可能でなければなりません。


参考)電子帳簿保存法の検索要件とは?不要な場合も解説


三つ目は、ディスプレイやプリンタの備え付けです。税務調査の際、電子データを画面表示したり、速やかに印刷できる環境を整えておきます。


これは基本的な要件です。



検索要件については、一定の条件を満たす事業者には緩和措置があります。前々年度の売上高が5,000万円以下の事業者や、税務調査時にデータのダウンロードに応じられる事業者は、検索機能の一部または全部が不要になります。


ただし検索要件が緩和されても、データそのものの保存義務はなくなりません。プリントアウトした書面を取引年月日や取引先ごとに整理して提示できる状態にしておく必要があります。


電子取引保存に対応する具体的な方法

保存方法は大きく分けて2つのパターンがあります。システムを活用する方法と、フォルダ管理で対応する方法です。


参考)”電子帳簿保存法でPDFはどう取り扱う? スキャナ保存・電子…


システムを活用する場合、電子帳簿保存法に対応した会計ソフトや文書管理システムを導入します。これらのシステムは、タイムスタンプ機能や訂正削除履歴の記録、検索機能をすべて備えているため、真実性・可視性の要件を自動的にクリアできます。導入コストはかかりますが、業務効率化にもつながるメリットがあります。


フォルダ管理で対応する場合は、自社のサーバやクラウドストレージに専用フォルダを作成します。ファイル名には「取引年月日_取引先名_金額」のように、検索項目となる情報を含めるルールを統一します。例えば「20260208_ABC商事_55000円」といった形式です。

業務フローの見直しも重要なポイントです。電子データで受け取った請求書を、別途紙で受け取っている場合は、取引先に紙の送付を停止してもらうよう依頼しましょう。


二重管理を避けられます。



従業員への周知徹底も欠かせません。事務処理規程を作成し、電子取引データの取扱いルールを全員に説明します。特に経費精算で従業員がクレジットカードを使用する場合、利用明細データの保存方法について明確な指示が必要です。

バックアップ体制の構築も忘れてはいけません。システム障害やデータ消失のリスクに備え、定期的にバックアップを取得する仕組みを整えます。7年間の保存期間を考慮すると、長期的に安定して運用できる環境が求められます。

OBCの電子帳簿保存法実務対策ガイドでは、7つの具体的な対応方法が図解で紹介されています。

電子取引保存の違反リスクと罰則

電子帳簿保存法に違反した場合、複数の罰則が科される可能性があります。


最も重いのは青色申告承認の取消しです。



参考)電子帳簿保存法に導入対応しないとどうなる?罰則・リスクや違反…


青色申告の承認が取り消されると、税制上の優遇措置をすべて失います。青色申告特別控除が適用されなくなり、欠損金の繰越控除もできなくなります。


これは企業にとって大きな経済的損失です。



会社法上の罰則としては、100万円以下の過料が定められています。帳簿保存義務に違反した場合、会社法第976条に基づいて過料が科されます。


さらに深刻なのは、意図的な隠蔽や改ざんが認められた場合です。この場合、重加算税として通常の35%もの追加税率が課されます。仮に本来の税額が1,000万円だった場合、追加で350万円の税負担が発生する計算になります。これは東京23区内のワンルームマンション1年分の家賃に相当する金額です。

税務調査時にデータを提示できない場合も問題です。適切に保存していないと判断されれば、推計課税が行われるリスクがあります。推計課税では、実際の取引内容とは異なる金額で税額が計算される可能性があります。

違反のリスクは金銭的損失だけではありません。取引先からの信頼を失い、企業の社会的評価が低下する恐れもあります。上場企業であれば、内部統制の不備として株価に影響を与える可能性も考えられます。

電子取引の猶予措置と今後の注意点

2024年1月から電子取引データ保存は完全義務化されましたが、一定の条件を満たす場合には経過措置が適用されます。

経過措置の対象となるのは、保存要件に従った保存ができなかったことについて相当の理由があると認められる場合です。この場合、税務調査時にデータのダウンロードの求めに応じることと、印刷した書面を提示できることが条件となります。


ただしこれは一時的な措置です。



保存要件を満たせない相当の理由とは、システム導入が間に合わなかった、取引先との調整に時間がかかっているなどの事情を指します。しかし、この理由が認められるかどうかは税務署の判断によります。

2024年以降も対応が遅れている場合、早急に体制を整える必要があります。まず自社で行っている電子取引をすべて洗い出します。請求書、領収書、契約書、見積書など、どの書類を誰から何で受け取っているかを確認しましょう。

次に、使用している会計ソフトや業務システムが電子帳簿保存法に対応しているかチェックします。対応していない場合は、システムのバージョンアップや乗り換えを検討します。システム利用料については、7年間の保存期間を考慮して、長期的なコストを試算しておくことが重要です。

電子取引の範囲は今後さらに拡大していくと予想されます。請求書の電子化を進める企業が増えており、紙での取引は減少傾向にあります。早めに電子データでの保存体制を構築しておけば、将来的な業務負担の軽減にもつながります。


弥生の電子取引解説ページでは、データ保存要件の詳細と具体的な対応方法が紹介されています。




電子商取引とeビジネス: ネット通販からプラットフォーム、AIの活用へ