

廃止後も「合計税負担はほぼ変わらない」と言われますが、実は業種や規模によって負担増になった会社が続出しています。
地方法人特別税は、2008年(平成20年)10月から始まった国税です。 法人事業税の所得割・収入割の標準税率を引き下げた分を、「地方法人特別税」として国が一括で集め、地方交付税として再分配する仕組みでした。 要するに、東京・大阪などの税収が豊かな自治体から、税収の少ない地方自治体へお金を流すための調整弁です。 pref.kanagawa(https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b008/index.html)
この制度はあくまで「税制の抜本的な改革が行われるまでの暫定措置」でした。 そして2019年(令和元年)10月1日以後に開始する事業年度をもって正式に廃止されました。 消費税率が8%から10%へ引き上げられたタイミングと重なっており、税制全体の再整理の一環です。 pref.fukuoka.lg(https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/tokubetuzei.html)
廃止によって何が起きたかというと、一度引き下げられていた法人事業税の税率が元の水準へ「復元」され、同時に新たな国税として「特別法人事業税」が創設されました。 名前はよく似ていますが、地方法人特別税と特別法人事業税は別の税です。これは重要な点です。 pref.kyoto(https://www.pref.kyoto.jp/zeimu/1216365428848.html)
廃止後でも、令和元年9月30日までに開始した事業年度の申告については旧制度の規定がなお有効です。 つまり過去の事業年度をまたぐ会社は経過措置を確認する必要があります。注意が必要です。 pref.fukuoka.lg(https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/tokubetuzei.html)
| 項目 | 地方法人特別税(旧) | 特別法人事業税(新) |
|---|---|---|
| 適用開始 | 2008年10月 | 2019年10月 |
| 税の種類 | 国税 | |
| 課税標準 | 法人事業税の所得割・収入割 | 基準法人所得割額・収入割額(標準税率ベース) |
| 一般法人税率(目安) | 廃止前:約43.2% | 37.0% |
| 申告・納付 | 法人事業税と合算 |
廃止の最大のポイントは、法人事業税の「税率復元」です。 地方法人特別税が存在していた間、法人事業税の税率は引き下げられた状態でした。廃止によって法人事業税の税率は引き上げられ、ほぼ元の水準に戻っています。 pref.kanagawa(https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b008/index.html)
ただし同時に特別法人事業税が新設されたため、「法人事業税+特別法人事業税」の合計で見ると税負担はほぼ同水準とされています。 これが「税負担は変わらない」と言われる理由です。 yamada-partners(https://www.yamada-partners.jp/reform/h28/h05-correcting-the-uneven-distribution-of-local-corporate-taxation)
つまり課税標準の基準が変わった点が条件です。単純に「税率が下がったから有利」と判断するのは早計です。
参考:特別法人事業税の税率・計算方法(総務省)
総務省|地方税制度|地方法人課税の偏在是正(制度の概要・税率の詳細)
廃止の話は地方法人特別税だけにとどまりません。同時期に法人住民税の法人税割の税率も大幅に引き下げられています。 大阪府の例では、府民税法人税割が改正前の3.2%から1.0%へ、市民税法人税割も変更されました。こちらの影響は決して小さくありません。 kubotax(https://www.kubotax.com/blog/2019/10/post-788.html)
法人住民税の法人税割が下がった分は、国税として「地方法人税」の税率引き上げに充てられています。 地方法人税の税収は全額が地方交付税の原資となるため、税収の少ない自治体へ再配分されます。これがセットの改革です。 km-hojinkai.or(https://km-hojinkai.or.jp/pdf/zeiseikaisei.pdf)
金融に関わる法人や投資家として見ると、この一連の改正は「地域ごとの税負担の差」を縮める方向に動いています。 以前は都市部の法人が高い法人住民税を払い、地方の法人が比較的低かった構図でしたが、国税化を通じて平準化されてきました。 yamada-partners(https://www.yamada-partners.jp/reform/h28/h05-correcting-the-uneven-distribution-of-local-corporate-taxation)
地方税から国税への移し替えは、自治体の独自課税の余地を狭める側面もあります。これは財政的自立を目指す自治体にとって厳しいところですね。
参考:改正前後の税率の詳細
久保田会計事務所|地方法人特別税の廃止と特別法人事業税の創設(改正前後の税率比較あり)
「合計の税負担はほぼ変わらない」という建前がある一方、実際には業種・規模・所在地によって有利不利が生まれました。これは意外な落とし穴です。
まず外形標準課税の対象外の中小企業(資本金1億円以下)を例にとります。特別法人事業税の税率は37.0%で、課税標準は「標準税率で計算した法人事業税の所得割」です。 改正前と課税ベースが変わっているため、実効税率ベースでの影響は会社の規模・収益構造によって異なります。 japanex(https://japanex.jp/blog/about_business_tax_return)
特に注意が必要なのは予定申告の計算方法です。 予定申告(中間申告)では前年度の事業税額を12で割って月数をかける計算をしますが、地方法人特別税が廃止された直後の事業年度では前年と計算科目が変わるため混乱が起きやすいです。税理士や会計ソフトへの確認を一度行うだけで、申告ミスを防げます。 kubotax(https://www.kubotax.com/blog/2019/10/post-788.html)
数字で整理すると、特別法人事業税(37%)+法人事業税(所得割・標準税率)の合計と、廃止前の地方法人特別税+法人事業税(旧税率)の合計を比べる必要があります。これは必ず試算してください。
参考:特別法人事業税の税率一覧・計算例
税制の変更は「コスト」として捉えられがちですが、金融に関わる視点からは「投資先選定の材料」にもなります。これは使えそうです。
地方法人特別税の廃止と特別法人事業税の創設は、税収の地方再配分を安定化させる制度設計です。 これは地方自治体の財政の予測可能性を高める方向に働くため、地方債や地方自治体が関与するインフラファンドへの投資評価に影響します。財政基盤が安定した自治体の地方債は、信用格付けの観点でも評価しやすくなります。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%96%B9%E6%B3%95%E4%BA%BA%E7%89%B9%E5%88%A5%E7%A8%8E)
また、法人住民税法人税割の引き下げは、都市部の法人にとってコスト削減効果をもたらしました。 大阪府の例で府民税法人税割が3.2%→1.0%に下がったインパクトは、利益水準が高い法人ほど大きくなります。上場企業の決算資料で法人税等の実効税率が変化した背景のひとつがここにあります。 kubotax(https://www.kubotax.com/blog/2019/10/post-788.html)
さらに見落とされがちな点として、特別法人事業税は国税として扱われるため、損金算入のタイミングが法人事業税と同じ「申告書を提出した事業年度」になります。 これは税務上の費用認識に直結するため、期末の節税タイミングを検討する際に重要な知識です。結論はシンプルです。 japanex(https://japanex.jp/blog/about_business_tax_return)
参考:地方法人課税の現状と課題(総務省資料)
総務省|地方法人課税の現状と課題(PDF):税源偏在の是正に関する詳細データ
廃止後の実務でミスが発生しやすいポイントがいくつかあります。実際にありがちな間違いです。
第一に、廃止された地方法人特別税の旧制度が「令和元年9月30日までに開始した事業年度」には引き続き有効であることです。 3月決算の法人なら2019年4月〜2020年3月の事業年度(令和元年4月開始)は旧制度の対象外ですが、2018年10月〜2019年9月開始の事業年度の申告が残っている場合は旧制度で処理します。これだけは例外です。 pref.shiga.lg(https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kurashi/zeikin/11300.html)
第二に、予定申告(中間申告)の計算です。 廃止直後の中間申告では「前年度に地方法人特別税が発生していた」ため、科目の切り替えが必要になります。会計ソフトによっては自動更新されていないケースがあり、手作業での修正が発生することがあります。 kubotax(https://www.kubotax.com/blog/2019/10/post-788.html)
第三に、都道府県によって申告書の書式・様式が変更されています。 宮城県や福岡県など各都道府県が独自の様式を提供しているため、本社所在地の最新の申告書をダウンロードして使用することが必須です。古い様式を使い回すと不備になります。 pref.miyagi(https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/zeimu/houjinjigyou-zeritsu.html)
申告書は都道府県税事務所の公式サイトから最新版を取得するのが基本です。法人事業税の申告時に一緒に特別法人事業税も計算・申告するため、記入欄の位置を事前に確認しておくと申告作業がスムーズです。税理士に依頼している場合でも、事業年度の開始日を正確に伝えることが条件です。
参考:各都道府県の申告様式・制度案内
福岡県庁|地方法人特別税の廃止について(経過措置・申告対応の案内)