地方交付税不交付団体一覧と財政力指数の読み方

地方交付税不交付団体一覧と財政力指数の読み方

地方交付税・不交付団体の一覧と財政力の仕組みを解説

不交付団体に住む人がふるさと納税をすると、減収分が1円も補てんされません。


この記事でわかること
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不交付団体とは何か

地方交付税を受け取らない自治体の定義と、財政力指数1.0超えという判定基準をわかりやすく解説します。

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令和7年度の不交付団体一覧

総務省発表の最新データをもとに、東京都をはじめ全国85団体の顔ぶれと地域的な傾向を整理します。

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ふるさと納税と不交付団体の損得

不交付団体の住民がふるさと納税をした場合、減収補てんがゼロになる理由と、金融的な観点からの注意点を説明します。


地方交付税の仕組みと不交付団体の定義

地方交付税とは、国が所得税・法人税・酒税・消費税たばこ税の一定割合を集め、各自治体に再配分する制度です。全国どこに住んでいても最低限の行政サービスを受けられるよう、財政力の格差を埋めることが目的となっています。


この仕組みの核心にあるのが、「基準財政需要額」と「基準財政収入額」という二つの数字です。基準財政需要額は「この規模の自治体が標準的なサービスを提供するために必要な費用」、基準財政収入額は「その自治体が標準的に集められる税収の見込み」をそれぞれ指します。つまり基本的な計算は次の通りです。


$$\text{普通交付税額} = \text{基準財政需要額} - \text{基準財政収入額}$$


この差がプラスになる(需要額>収入額)自治体には交付税が配られます。逆に、収入額が需要額を上回っている自治体は「自前でまかなえる」と判断され、普通交付税が支給されません。これが「不交付団体」です。


不交付団体かどうかを判断するもう一つの指標が「財政力指数」です。計算方法はシンプルで、基準財政収入額を基準財政需要額で割った値であり、この数値が1.0を超えると不交付団体とみなされます。財政力指数1.0はちょうど「収入と必要経費がトントンの状態」です。1.5なら必要経費の1.5倍の税収があるほど余裕がある状態と考えれば、直感的に理解しやすいでしょう。


$$\text{財政力指数} = \frac{\text{基準財政収入額}}{\text{基準財政需要額}}$$


ここで一つ重要な誤解を解いておく必要があります。「不交付団体=国からお金が一切もらえない」と思っている人は少なくないのですが、それは正確ではありません。不交付なのはあくまで「普通交付税」だけです。災害発生時や特別な財政事情に対応する「特別交付税」については、不交付団体でも受け取れるケースがあります。また地方特例交付金(例:住宅ローン控除に伴う減収補てん分)は、普通交付税の交付・不交付に関わらず全自治体に支給されます。この点は金融・税務の観点から特に注意が必要です。


つまり不交付団体です。


参考リンク(総務省・地方交付税制度の概要):地方交付税の種類・算定方法・交付基準が公式に解説されています。


総務省|地方交付税 – 地方財政制度


地方交付税の不交付団体一覧(令和7年度・最新版)

総務省が2025年7月29日に発表した令和7年度の算定結果によると、普通交付税の不交付団体は全国で85団体です。前年度(令和6年度)の83団体から2団体増え、4年連続の増加となりました。


不交付団体は都道府県レベルでは東京都の1団体のみです。市町村レベルでの84団体との合計が85団体という内訳になっています。主な不交付団体を都道府県別に整理すると次の通りです。


都道府県 主な不交付団体
東京都(道府県) 東京都
愛知県 名古屋市・豊田市・刈谷市・岡崎市・碧南市・安城市・小牧市・東海市・大府市・高浜市・日進市・田原市・みよし市・長久手市・豊山町・大口町・飛島村・武豊町・幸田町・半田市(計20市町村で全国最多)
神奈川県 川崎市・平塚市・鎌倉市・藤沢市・厚木市・海老名市・寒川町・箱根町・愛川町
千葉県 市川市・成田市・市原市・君津市・浦安市・袖ケ浦市・印西市
東京都(市町村) 立川市・武蔵野市・三鷹市・府中市・調布市・小金井市・国分寺市・国立市・多摩市・瑞穂町
埼玉県 戸田市・和光市・八潮市・三芳町
茨城県 つくば市・神栖市・東海村
静岡県 富士市・御殿場市・裾野市・湖西市・長泉町
福島県 西郷村・広野町・大熊町
熊本県 菊陽町(令和7年度に初めて不交付団体入り)
その他 北海道泊村・青森六ヶ所村・宮城女川町・栃木宇都宮市・芳賀町・新潟聖籠町・刈羽村・福井美浜町・高浜町・おおい町・山梨昭和町・忍野村・長野軽井沢町・三重四日市市・川越町・京都久御山町・大阪田尻町・兵庫芦屋市・福岡苅田町・佐賀玄海町 など


令和7年度に新たに不交付団体となった10団体の中でも、特に注目されたのが熊本県菊陽町です。TSMCの本格稼働によって固定資産税収入が約55億7100万円に急増し、財政力指数が一気に1.0を超えました。これはまさに「大型企業進出が自治体財政を一変させた」典型例であり、金融・投資の視点からも非常に示唆に富む事例です。


愛知県については、54市町村のうち20市町村が不交付団体となり全国最多を誇ります。製造業を中心とした産業集積と、トヨタ自動車関連のサプライチェーンが県内に根付いていることが税収安定の主因とされています。


参考リンク(総務省・令和7年度普通交付税算定結果):不交付団体の全一覧表と各自治体への交付額が掲載されています。


総務省|令和7年度 普通交付税の算定結果等(PDF)


不交付団体とふるさと納税の落とし穴を財政的に読む

金融に興味のある読者にとって、不交付団体とふるさと納税の関係は特に注目すべきポイントです。ここに「損得」が潜んでいます。


通常、ふるさと納税で住民税が控除されると、その自治体(居住地)の税収が減ります。しかし、地方交付税の「交付団体」の場合、その減収額の75%が国から地方交付税として補てんされる仕組みがあります。「損失が4分の1に圧縮される」イメージです。


問題は不交付団体の場合です。不交付団体には地方交付税による補てんが一切ありません。補てん率はゼロです。つまり、不交付団体の住民がふるさと納税をすると、その自治体には減収分が丸ごと損失としてのしかかります。


浦安市の公式サイトが公表しているデータによれば、令和6年度のふるさと納税による市税流出額は約15億6200万円にのぼりました。平成27年度の約4840万円と比べると、10年間で実に30倍以上に膨らんだ計算です。この金額はすべて補てんなしの「純粋な減収」となります。


ふるさと納税の観点から見ると、不交付団体の住民は「税収が流出しても補てんがないまちに住みながら、他の自治体を支援している」構図になります。これは行政サービスの質に直結する問題です。


一方、住民個人の立場でいえば、ふるさと納税制度の利用自体は合法であり、節税メリットを享受できます。ただし、自分が暮らす自治体の財政を間接的に悪化させているという事実には、金融リテラシーの高い読者であれば目を向けておきたいところです。


参考リンク(浦安市・ふるさと納税による市税流出の詳細):不交付団体における補てんなし減収の具体的な数字と、ワンストップ特例制度の問題が整理されています。


浦安市公式|ふるさと納税による市税の流出について


不交付団体の財政力指数ランキングと愛知県が最多の理由

財政力指数は自治体の「稼ぐ力」を数値化したものです。1.0を超えると不交付団体となりますが、上位団体はどれほどの数値をマークしているのでしょうか。


市町村別の財政力指数でみると、愛知県飛島村は全国でもトップクラスの高水準を示します。工場用地が多く、法人税・固定資産税の税収が人口に対して突出しているためです。飛島村の人口は約4500人と小規模ですが、工業団地が広がる臨海部に位置するため、税収規模が桁違いになっています。財政力指数という数値だけで見れば、大都市よりも工業特化の小規模自治体が上位に来ることがあります。意外ですね。


愛知県が不交付団体数で全国最多となる最大の理由は、製造業の集積密度にあります。トヨタ自動車を中核とするサプライチェーンが県内に広く根付いており、関連企業から生じる法人市民税・固定資産税が自治体財政を下支えしています。令和7年度に半田市が16年ぶりに不交付団体へ返り咲いたのも、製造業の業績回復が主因とされています。


ただし、同じ愛知県内でも、不交付団体なのに「財政非常事態宣言」を出した自治体があります。碧南市です。不交付団体の地位を維持しながらも、過去に美術館や水族館といった大型施設を積極整備したため、維持管理費や将来の更新コストが財政を圧迫しています。財政力指数が高くても、支出の管理を怠れば危機に陥ることを示す好例です。


これが基本です。「財政力指数が高い=住民サービスが充実している」とは限りません。投資判断における「収益性が高くても費用管理が伴わなければ意味がない」という原則と全く同じ構造と言えます。財政分析に興味のある読者であれば、単に指数の大小だけでなく、経常収支比率や公債費比率も合わせて確認する習慣をつけると、自治体の財務体力をより正確に把握できます。


参考リンク(日経新聞・2025年度愛知の不交付団体最多報道):愛知県内の不交付団体状況と半田市の返り咲きについての解説が掲載されています。


TSMC菊陽町に見る「企業進出と不交付団体化」のメカニズム

2025年度の不交付団体ニュースで最も注目を集めたのが、熊本県菊陽町です。人口約4万4000人のこの町が、世界最大の半導体受託製造企業・台湾積体電路製造(TSMC)の進出を機に、初めて不交付団体に名を連ねました。


TSMCの熊本工場は2024年に本格稼働を開始しました。これに伴い、菊陽町の固定資産税収入が約55億7100万円に急増したのです。従来、同町の財政力指数は約0.9台で推移しており、不交付団体とは無縁の状態でした。それがわずか数年で劇的に変わりました。


このメカニズムを整理すると非常にシンプルです。大型工場という「固定資産」が町内に設置されると、その評価額に基づいて固定資産税が課税されます。半導体工場は超精密設備の塊であり、装置産業として建物・設備の評価額が莫大になります。これが基準財政収入額を押し上げ、財政力指数が一気に1.0を超えたわけです。


金融・投資の視点で読み解くと、これは「特定の大型投資(工場)が地域の税収構造を根本から変える」という好例です。ただし同時に、リスクも内包しています。一社依存の税収構造は、その企業の撤退や業績悪化で一気に崩れる可能性があります。菊陽町がこの先も不交付団体であり続けるかどうかは、TSMC及びその関連産業の動向次第とも言えます。これは景気リスクへの依存度が高い新興市場への投資とよく似た構造です。


一方、TSMC進出に伴って政府が1兆円超の補助金を投じているという事実もあります。国費投入があって初めて成立したビジネスモデルであり、純粋な市場原理だけで財政力が高まったわけではない点には、分析的な目線を持つ読者は留意しておきたいです。


参考リンク(産経新聞・菊陽町が初めて不交付団体へ):TSMC工場稼働に伴う菊陽町の財政変化と令和7年度の新規不交付10団体の詳細が掲載されています。


不交付団体の数の推移と「財政自立」が意味すること【独自視点】

不交付団体の数は、景気サイクルや制度変更に敏感に反応して増減します。長期的な推移を見ると、この数字は単なる自治体財政の話にとどまらず、日本経済の構造変化を映す鏡でもあります。


リーマン・ショック(2008年)の前後では、法人税収の急落によって不交付団体数が大きく落ち込みました。その後、アベノミクス以降の景気回復局面で増加に転じ、令和5年度は76、令和6年度は83、令和7年度は85と増加基調が続いています。この4年連続増加の背景には、企業業績の改善による法人税収増と、円安による輸出企業の収益拡大が挙げられます。


一方で、この数字の「上げ潮」を手放しで喜ぶのは早計です。不交付団体が増えるということは、地方交付税の財源が「交付が必要な側」に相対的に集中することを意味します。財政的に自立できる自治体が少数いる一方で、多くの自治体が依然として国の再配分に頼らざるを得ない構造は変わっていません。全国約1700の市町村のうち、不交付団体は令和7年度でも84団体(市町村分)に過ぎず、全体の約5%です。


金融リテラシーを地方財政に応用するとすれば、不交付団体であることは「有利子負債に頼らず自己資本で運営できる企業」に近いイメージです。財務的な自由度は高い。しかし、経営環境(景気・産業集積)が変われば状況は変わり得ます。また、「自由に使えるお金が多い」からこそ、無駄な箱物投資に走るリスクも高まります。碧南市の事例がまさにそれです。


住んでいる自治体の財政力が気になる読者は、総務省の「地方財政状況調査」を確認するのが最も手っ取り早い方法です。財政力指数・経常収支比率・将来負担比率などが市町村単位で公開されており、数値を読むだけで「この街はこの先も行政サービスを維持できるか」の大まかな判断ができます。資産運用と同様、「情報をもとに能動的に選ぶ」姿勢が、住む場所を選ぶ際にも有効に働くはずです。


参考リンク(総務省・地方財政状況調査):全市町村の財政力指数・経常収支比率・将来負担比率など主要指標が都道府県別に検索できます。


総務省|地方財政状況調査関係資料