遺言執行者の報酬と行政書士への依頼で費用を抑える方法

遺言執行者の報酬と行政書士への依頼で費用を抑える方法

遺言執行者の報酬と行政書士への依頼で費用を抑える方法

行政書士に頼んでも、遺言書に報酬額を書かないと相続人との協議が決裂し家庭裁判所が金額を決めることになります。


この記事の3つのポイント
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行政書士の報酬相場は20〜40万円

信託銀行の最低報酬110万円超に比べ、行政書士は圧倒的にコストを抑えられる。ただし事務所によって最大330万円の差がある点に注意。

⚠️
行政書士単独では不動産登記ができない

行政書士は遺言執行者になれるが、不動産の相続登記は独占業務上できない。司法書士との連携が必要で、その費用も事前確認が必須。

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報酬額は遺言書に明記が鉄則

報酬を遺言書に記載しておかないと、相続人全員との協議が必要になり、折り合いがつかなければ家庭裁判所での決定となる。その裁定に不服申立ては原則できない。


遺言執行者とは何か・行政書士が就任できる根拠


遺言執行者とは、遺言書の内容を忠実に実現するために選任される人物のことです。相続が発生した後、故人に代わって財産目録の作成・預貯金の解約・不動産の名義変更手続きなどを一手に担う重要な役割を持ちます。遺言執行者がいることで、相続人が全員そろわなくても手続きを進めることができ、スムーズな遺産承継が期待できます。


では、行政書士は遺言執行者になれるのでしょうか。これが原則です。民法第1009条には「未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない」とあるだけで、それ以外の条件は定められていません。つまり、未成年や破産者でなければ、行政書士はもちろん、一般人でも遺言執行者になることができます。


実際、弁護士・司法書士・税理士・行政書士の各士業が遺言執行者として活躍しています。士業に依頼するメリットは、専門的な手続き対応力と中立的な立場にあります。相続人の誰かが遺言執行者になった場合、他の相続人から「自分に都合よく動いているのでは」と疑われるリスクがありますが、第三者である行政書士であればその心配が少なくなります。


注意点が1つあります。行政書士が遺言執行者として戸籍収集や報酬を受け取る場合、「行政書士の職務上請求書」や「行政書士の領収書」は使用できません。あくまで遺言執行者個人としての業務であって、行政書士業務とは区別されるためです。これは行政書士としての仕事ではなく、個人として就任した遺言執行者としての仕事という扱いになります。


遺言執行者として就任できる人 就任できない人
行政書士・司法書士・弁護士・税理士 未成年者
相続人・受遺者・一般人(成人) 破産者
信託銀行遺言信託プランを通じて)


遺言執行者の報酬相場を依頼先別に比較

遺言執行者への報酬には法律上の統一基準がありません。これが大きなポイントです。依頼先の業種や事務所によって相場が大きく異なるため、事前に比較検討することが節約の第一歩になります。


まず目を引くのが、信託銀行の高額な最低報酬です。三菱UFJ信託銀行の場合、遺言執行報酬の最低額は1,650,000円(消費税込み)に設定されています。信託銀行全般では、最低報酬額110万円〜165万円(税込)程度が相場で、遺産総額が3,000万円程度までの場合は特に割高な負担になります。


銀行の報酬が高い理由は明確です。銀行員には遺言執行を行う専門的権限がないため、司法書士や税理士などに業務を外注し、その費用が上乗せされるためです。つまり、中間マージンが発生している構造になっています。


一方、弁護士の場合は旧日本弁護士連合会の報酬基準が目安として使われており、相続財産300万円以下で一律30万円、300万円超〜3,000万円以下の部分は2%+24万円、3,000万円超〜3億円以下の部分は1%+54万円程度が相場です。紛争性がある案件や法的対応が必要な場面では弁護士が最適ですが、標準的なケースでは他士業よりコスト高になりやすいといえます。


依頼先 報酬相場(目安) 特徴
信託銀行 最低110万円〜165万円(税込)以上 外注費が上乗せされる
弁護士 30万円〜100万円前後 争いに強いが高額
司法書士 20万円〜75万円前後 不動産登記が得意
行政書士 20万円〜40万円前後 比較的リーズナブル
相続人(一般人) 無償〜20万円程度 費用最小だがリスクあり


行政書士の報酬は、日本行政書士連合会の統計によると、平均報酬額は約37万円で、20万〜40万円の範囲に全体の約42%が集中しています。最小値は15,000円、最大値は3,300,000円という幅のある分布です。事務所によっては「遺産総額1,500万円未満なら15万円に割引」といった設定もあり、財産規模が小さいほど有利な料金体系を持つ事務所もあります。


比較のイメージとして、もし遺産総額1,000万円のケースを想定した場合、信託銀行に頼めば最低でも110万円超かかるところが、行政書士ならば27〜44万円程度に収まる可能性があります。この差額は、名古屋や東京都心の場合でも70〜80万円以上になりえます。これは決して小さくない金額差です。


行政書士を遺言執行者に選ぶメリット・デメリット

行政書士への依頼は費用面で有利ですが、全てのケースで行政書士が最適とは限りません。特性を正しく理解した上で選ぶことが、結果的に損をしない選択につながります。


メリット:コストが抑えられる傾向がある


弁護士・司法書士・税理士・信託銀行の中で比較すると、行政書士の報酬は最もリーズナブルな水準に位置しています。遺産規模が比較的小さい(数千万円以下)ケースや、相続人間のトラブルが予想されない場合は、費用対効果の高い選択肢です。


メリット:書類作成と行政手続きに強い


行政書士は官公署への申請書類の作成・代行が本業です。戸籍謄本の収集、相続人の調査、財産目録の作成、預貯金の解約手続きなど、遺言執行業務の多くは行政書士の得意領域にあたります。迅速で丁寧な対応が期待しやすい点も評価されています。


デメリット:不動産登記は自分ではできない


これは見落としがちな重要な点です。行政書士は、法律上、不動産の相続登記(所有権移転登記)を代理申請することができません。不動産が遺産に含まれている場合、行政書士は司法書士に登記業務を依頼する形をとります。この連携自体は通常の流れですが、司法書士報酬が別途発生する点を事前に確認しておかないと、想定外の追加出費になります。不動産売却が必要な換価手続きが伴う場合は、売却代金の1〜3%が加算されることもあります。


デメリット:相続トラブルの法的解決はできない


相続人同士で争いが起きた場合、行政書士は代理人として交渉や訴訟を行う権限がありません。そのような場面では弁護士への依頼に切り替えるか、当初から弁護士を選任することが必要です。相続人間に不仲や利害対立が予想される場合は、行政書士よりも弁護士を遺言執行者に選ぶほうが安全です。


相続財産に不動産があり、かつ相続人間に大きなトラブルがない場合は、行政書士と司法書士が連携するスタイルがコストと品質のバランスが良い選択肢になりえます。行政書士に遺言執行者を依頼した場合でも、司法書士への依頼を含めたトータル費用を見積もった上で比較することが原則です。


遺言執行者の報酬額の決め方と遺言書への記載方法

遺言執行者の報酬はどうやって決まるのでしょうか? これは3つのパターンに整理できます。


① 遺言書に報酬額を明記する場合


遺言者が生前に遺言書の中に報酬額を記載しておくパターンです。例えば「遺言執行者の報酬は、遺産総額の2%とする」「〇〇万円を支払う」などと書いておきます。この場合、遺言書の内容に法的拘束力があるため、執行者は記載どおりの報酬を受け取ります。事務所が独自に設定する相場よりも記載額が優先されます。


記載例としては「第〇条 本遺言の遺言執行者に対する報酬は、相続財産の評価額の2%とする」という形が一般的です。


② 遺言書に報酬額の記載がない場合


遺言書に執行者の名前を記載したが報酬額が書かれていない場合、相続人全員と遺言執行者が話し合って決めることになります。全員が合意すれば決定しますが、1人でも反対すれば話し合いは決裂します。その場合、遺言執行者は家庭裁判所へ「報酬付与の申立て」を行い、裁判所が金額を決定します。裁判所が一度決めた金額への不服申立ては原則として認められません。これが大きなリスクです。


③ 家庭裁判所が報酬を決める場合


家庭裁判所が報酬を決定するケースでは、相続財産の規模・遺言執行業務の難易度・手続にかかった時間や労力・執行者の地位などが総合的に考慮されます。民法第1018条第1項にその根拠が定められていますが、具体的な金額算定基準は裁判所の裁量に委ねられているため、結果が読みにくいという特徴があります。


金融に関心のある方は「遺言書=財産の分配指示書」としてとらえがちです。しかし実際には、遺言書は報酬決定の根拠書類でもあります。報酬額の記載を忘れると、相続人の間でもめる火種になりかねないことは覚えておくといいでしょう。


遺言執行者の報酬を遺言書に明記する際は、公正証書遺言で作成しておくと信頼性が格段に上がります。公正証書遺言であれば、公証人が内容を確認した正式な文書となるため、後からの異議申し立てが困難になります。


以下のページでは、民法1018条に基づく報酬決定の仕組みについて公的な観点から詳しく説明されています。


業種別!遺言執行者の7つの報酬相場と報酬額が決まる3つのパターン(税理士法人チェスター)


報酬以外にかかる遺言執行の費用と節約の視点

遺言執行者への報酬だけを確認して「これで全てOK」と思うのは危険です。報酬は費用の一部にすぎず、実費やその他の専門家報酬が別途かかります。具体的に何がかかるかを把握しておくことが、最終的な手取り額を守ることにつながります。


主な実費一覧:


- 戸籍謄本の取得費用:1通あたり450円(除籍・原戸籍は750円)
- 住民票:1通あたり約300円
- 不動産名義変更の登録免許税:不動産評価額の0.4%
- 登記簿謄本の書換手数料:不動産1件あたり約1,200円×2回
- 財産目録の作成費用:専門家に依頼する場合7〜10万円程度
- 郵送料・交通費などの雑費


これらの実費は遺言執行者への報酬とは別に発生します。遺産総額1,000万円の不動産1棟が含まれる場合、登録免許税だけで4万円かかります。これにあわせて司法書士報酬も発生するため、実費だけで合計10〜15万円程度になることは珍しくありません。


遺言執行の費用は、民法第1021条の規定により「相続財産から負担する」とされています。つまり、特定の相続人が自分のお金から支払う必要はなく、遺産全体から支出されます。ただし、遺留分を侵害する形での支出はできない点は注意が必要です。


費用を少しでも抑えたい場合は、「遺言執行業務の一部だけを依頼する」という方法も有効です。例えば、戸籍謄本の収集だけを行政書士に任せたり、逆に預貯金の解約手続きや名義変更だけをスポットで依頼したりすることも可能です。全部を丸ごと依頼する必要はないということです。


財産目録の作成は、弁護士事務所や税理士事務所に依頼すると7〜10万円かかりますが、決まったフォーマットがないため、内容が単純な場合は相続人が自分でエクセルで作成しても法的問題はありません。時間と労力をかける代わりに費用ゼロにできる部分もあるわけです。


以下のリンクでは、遺言執行費用の内訳と法的根拠について詳しく解説されています。


遺言執行者の報酬相場と費用を抑えるための2つのポイント(ベンナビ相続)


行政書士を遺言執行者に選ぶ際のチェックポイント【独自視点】

行政書士を遺言執行者に選ぶ際、多くの方は「報酬が安いかどうか」だけで判断しがちです。しかし実際に重要なのは「その後に生じるリスクをどれだけカバーしてくれるか」という付加価値の部分です。報酬の安さだけで選んだ結果、追加費用が膨らんで最終的に損をするケースは少なくありません。


以下のチェックリストを参考に選定してみてください。


- ✅ ホームページに料金体系が明示されているか:遺産総額ごとの報酬例が公開されている事務所は透明性が高く、後からの追加請求リスクが低くなります
- ✅ 不動産がある場合の司法書士連携先が確保されているか:不動産の相続登記が必要な場合、行政書士単独では完結しないため、連携先の司法書士との総額見積もりを出してもらうことが重要です
- ✅ 相続税申告が必要かどうかの判断を一緒にしてくれるか:遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合は相続税申告が必要です。行政書士自身は申告できませんが、提携税理士の紹介ができるかどうか確認しましょう
- ✅ 成功報酬制か着手金制かを確認する:着手金なしの成功報酬制の事務所は、依頼者にとってリスクが低くなります。業務が完了してから支払う形が理想的です
- ✅ 初回相談が無料かどうか:複数の事務所を比較する場合、初回相談無料の事務所を活用することで比較コストをゼロに抑えられます
- ✅ 報酬額以外に加算報酬の条件を確認する:不動産の売却が発生した場合や、海外在住の相続人がいる場合などに加算報酬が発生するケースがあります。この条件を事前に把握しておかないと想定外の支出になります


加算報酬の典型例として、不動産の売却換価が必要なケースがあります。ある横浜の事務所では基本報酬は低く設定されている一方、「不動産売却時には売却代金の3%を加算」という条件があります。仮に自宅が5,000万円で売れた場合、その加算報酬だけで150万円です。他事務所が1%設定ならその差は100万円になります。これが見えにくい「費用の落とし穴」です。


事務所を選ぶ際は、「遺産総額が3,000万円・不動産1棟あり・相続人2名」という条件を仮設定し、トータルの見積もりを複数事務所から取って比較することを強くおすすめします。1件の面談・電話相談で取れるこの見積もりが、数十万円単位の差を生むことがあります。


以下のページでは、行政書士に遺言執行を依頼した場合の詳細な報酬統計データと実例が確認できます。


行政書士の遺言執行報酬相場と料金体系の詳細解説(長岡行政書士事務所・横浜)




相続コンサルタントのための はじめての遺言執行