遺言信託の費用を比較して選ぶための完全ガイド

遺言信託の費用を比較して選ぶための完全ガイド

遺言信託の費用を比較して知る、最適な選び方

信託銀行に頼めば「安心だから少し高いだけ」と思っていませんか?実は、銀行に遺言信託を頼むと司法書士に直接依頼する場合より150万円以上多く払うケースがあります。


⚡ この記事の3つのポイント
💰
費用の全体像を把握せよ

信託銀行の遺言信託は「基本手数料+保管料+遺言執行報酬+隠れコスト」の4層構造。表示価格だけ見ると損をします。

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銀行5社の手数料を比較

三菱UFJ・みずほ・三井住友信託・りそな・三井住友銀行の最低執行報酬・報酬率を一覧で比較。どこが得かが一目でわかります。

費用を安くする選択肢

司法書士や法務局保管制度を活用すれば、同じ結果を得ながら費用を大幅に削減できます。自分のケースに合った選び方を解説します。


遺言信託の費用の仕組みと「4つのコスト」を理解する


遺言信託を銀行に依頼したとき、費用は一度だけ払えば終わりではありません。これが基本です。支払いのタイミングは「契約時」「保管期間中」「遺言執行時」「その他・追加費用」の4段階に分かれており、それぞれに別々の名目で費用が発生します。


まず「基本手数料(取扱手数料)」は、遺言信託契約を締結するときに支払う費用です。プランによって大きく異なり、安いプランで20〜30万円、手厚いプランでは70〜110万円程度が目安となっています。


次に「遺言書保管料」は、相続が発生するまで毎年かかり続ける費用です。大手信託銀行では年間6,600円が標準的です。遺言書を作成してから20年後に相続が発生した場合、それだけで13.2万円が積み上がります。


「遺言執行報酬」は、相続が発生したときにかかる最も大きな費用です。遺産評価額に対して一定の料率(0.3〜2.2%)を乗じた金額が請求され、多くの銀行で最低執行報酬が設定されています。最低報酬額は銀行によって33万円〜165万円と大きな差があります。


そして見落とされがちなのが「その他の費用」です。公正証書遺言の作成には公証役場への手数料が別途かかり、相続財産が3,000万円の場合は約10万円程度。不動産の相続登記は司法書士報酬として15万円前後が別途発生します。相続税申告が必要な場合は税理士費用も加わります。つまり「遺言信託の手数料を払えば全部やってもらえる」わけではありません。


費用の種類 発生タイミング 目安金額
基本手数料 契約締結時 20〜110万円
遺言書保管料 毎年(年払い) 年間約6,600円
遺言執行報酬 相続発生時 最低33〜165万円(遺産の0.3〜2.2%)
公正証書作成費用 遺言書作成時 数万〜十数万円(別途)
相続登記費用 相続発生時 司法書士報酬15万円前後(別途)
変更手数料 内容変更時 1回55,000円前後
解約手数料 解約時 約20万円(銀行による)


4層構造のコストが原則です。全体像を把握してから契約することが、後悔しないための条件です。


参考:三井住友信託銀行の遺言信託手数料(公式)
三井住友信託銀行 遺言信託 手数料|三井住友信託銀行公式サイト


遺言信託の費用を主要銀行5社で比較する

信託銀行ごとに手数料体系は異なります。最低執行報酬・報酬率の両方を確認しないと、正確な比較はできません。


最低手数料(完全代行型)について、三菱UFJ信託銀行・みずほ信託銀行・三井住友信託銀行・りそな銀行・三井住友銀行の5行はいずれも110万円(税込)で横並びです。差がないように見えますが、報酬率は銀行によって大きく異なります。


銀行名 最低執行報酬(完全型) 5,000万以下の報酬率 特徴
三菱UFJ信託銀行 110万円 1.80% MUFGグループ預かり分は0.3%に優遇
みずほ信託銀行 110万円 1.54% 5行の中で報酬率が最安水準
三井住友信託銀行 110万円(執行コース33万円〜) 2.20% 公益団体への寄付案件に強み
りそな銀行 110万円 2.20% グループ資産以外ではメリット薄め
三井住友銀行 110万円 2.20% SMBCグループ預かり分は0.22%に優遇


報酬率の視点で見ると、みずほ信託銀行が5行の中でコストパフォーマンスが良い傾向にあります。一方で、りそな銀行はグループ預かり資産がない場合に費用のメリットが出づらい構造です。


つぐなびの比較データによると、りそな銀行の最低執行報酬は簡易型で55万円、三井住友信託銀行は33万円と、プラン・タイプによっても差が生じます。簡易型(一部代行)を選ぶ場合、基本手数料の最安値は三井住友銀行の38.5万円です。


また、同じグループ内の銀行に財産を多く預けているほど、優遇報酬率が適用され費用を抑えやすくなります。三菱UFJ信託銀行に依頼するなら三菱UFJ銀行の預金を多く持つほどお得になる、という具合です。これが条件です。


参考:信託銀行5社の相続手続き報酬を徹底比較(創業20年・相続専門司法書士が解説)
信託銀行5社の相続手続き(遺産整理)の報酬を徹底比較|今&齋藤司法書士事務所


遺言信託を銀行に頼むと「隠れコスト」で総額が跳ね上がる理由

信託銀行に遺言信託を依頼すると、パンフレットに書かれた金額だけで終わらないことがあります。見落とされやすい追加費用が複数あるからです。


まず、相続登記(不動産の名義変更)は法律上、司法書士または弁護士しか業務として行えません。つまり、信託銀行の遺言執行報酬を支払っても、不動産がある場合は別途15万円前後の司法書士報酬がかかります。信託銀行が不動産を「含まない」前提で手数料を設定しているためです。


次に、公正証書遺言の作成費用も別途かかります。遺産評価額が3,000万円の場合、公証人手数料は約10万円です(財産額の合計により変動)。これは遺言信託の基本手数料には含まれないため、見積もりに出てこないことがあります。


相続税の申告も遺言執行者である銀行の業務範囲外です。税理士への報酬は別途10〜60万円ほどかかります。


さらに、遺言内容を後から変更する場合は1回55,000円前後の変更手数料が発生します。「やはり子への配分を変えたい」と思って2〜3回変更すると、それだけで10〜15万円の追加コストになります。


解約するときのコストも要注意です。遺言信託の契約を途中でやめる場合、一般的に約20万円の解約手数料がかかります。金融機関によっては解約手数料ゼロのケースもありますが、少数派です。契約前に必ず確認が必要です。


相続財産3,000万円・遺言執行まで依頼する前提で試算すると、司法書士に直接依頼した場合の総額は約46万円なのに対し、銀行(A行)では130万円以上(登記費用・保管料除く)、別の銀行(B行)では195万円以上になるケースがあります。同じ手続きの結果を得ながら、150万円前後の差が生じることを覚えておきましょう。


参考:銀行の遺言信託と司法書士の費用を比較した専門家解説
銀行の遺言信託は高い?本来の遺言信託との違い・手数料・解約方法|神塩井相続事務所


費用を安くする選択肢:司法書士・法務局保管制度との比較

遺言信託の費用を節約したい場合、主に2つの代替手段があります。「司法書士への直接依頼」と「法務局の自筆証書遺言書保管制度」です。


司法書士への直接依頼は、費用対効果の面で最もバランスが取れている選択肢です。遺言書の作成支援は約8〜25万円が相場で、遺言執行報酬も33万円程度から対応してもらえる事務所があります。不動産の相続登記も業務に含まれるため、信託銀行のように「相続登記だけ別の専門家に頼む」手間がありません。法的な相談や二次相続対策なども含めて対応できるので、相談窓口を一本化できます。


法務局の「自筆証書遺言書保管制度」は2020年7月から始まった制度で、法務局に遺言書を保管してもらえます。手数料は1通につき3,900円のみで、遺言者が亡くなった後も50年間(画像データは150年間)保管されます。


ただし、この制度には大きな注意点があります。遺言の内容が法的に有効かどうかは確認してもらえません。あくまで「保管」だけです。自筆証書遺言の書き方に誤りがあっても、法務局は指摘しないまま受理します。また、遺言執行は自分で行うか、別途専門家に依頼する必要があります。


依頼先 作成費用目安 保管費用 執行費用目安 不動産登記 法的相談
信託銀行 20〜110万円 年6,600円 最低33〜165万円 別途15万円〜 △(限定的)
司法書士 8〜25万円 無料 33万円〜 含む
弁護士 10〜50万円 無料〜 相続財産の1〜3% △(要確認) ◎(訴訟対応可)
法務局保管制度 0円(自書) 3,900円(1回のみ) 別途専門家費用 別途必要 ×


相続トラブルの可能性がある場合や訴訟に発展しそうな事情がある場合は、弁護士が唯一の選択肢です。信託銀行はトラブルの懸念がある案件を原則として引き受けないため、その点でも差があります。


費用を安くするのが優先なら「司法書士」が基本です。ただし相続登記を含めて一括依頼できる事務所を選ぶと、最もコストを抑えやすくなります。


参考:信託銀行の遺産整理手数料と司法書士の比較(最新情報)
遺産整理業務の費用相場を比較|信託銀行と司法書士、どっちが得?


遺言信託の費用が高くても「信託銀行を選ぶべき人」の条件

費用だけを見ると信託銀行は割高です。それでも信託銀行の遺言信託を選ぶ合理的な理由がある人が実際にいます。ここが意外な視点です。


まず「財産規模が大きく複雑な場合」は、信託銀行の強みが活きます。複数の金融機関に口座を持ち、有価証券収益用不動産を多数保有している場合、相続発生後の手続きは膨大です。信託銀行は金融機関内部の処理に精通しており、株式投資信託の名義変更もスムーズに対応できます。司法書士は不動産登記が本職であり、有価証券の手続きを得意とするわけではありません。


次に「長期的なサポートを必要とする人」です。遺言者が50代や60代で遺言信託契約を結んだとすると、実際に執行されるまでに20〜30年かかることもあります。個人の司法書士や弁護士事務所の場合、その間に廃業や担当者の死亡というリスクがゼロではありません。信託銀行は組織として業務を継続するため、担当者が変わっても業務が途切れません。


「子どものいない夫婦」や「高齢の配偶者が一人で相続手続きをするのが難しいケース」も、信託銀行が向いているシーンです。信託銀行が遺言執行者として動いてくれることで、手続きに不慣れな相続人の負担を大幅に軽減できます。


一方で、「相続人同士でトラブルになりそうな場合」は信託銀行では引き受けてもらえません。信託銀行は訴訟対応ができないため(弁護士法第72条の規定により)、紛争に発展する可能性がある案件はそもそも申し込みを断られます。厳しいところですね。


また、「子の認知」や「相続人の廃除」など身分に関する内容は銀行の遺言執行の範囲外です。これらを盛り込みたい場合は、弁護士への依頼が必要です。



  • ✅ 有価証券・複数不動産など複雑な資産構成がある

  • ✅ 子どもがいない、または相続人が手続きを担えない状況

  • ✅ 長期間の確実なサポートを組織として受けたい

  • ✅ 相続トラブルの可能性がほぼなく、まとまった財産がある

  • ❌ 相続人同士でもめそうな事情がある(→弁護士へ)

  • ❌ 費用をできる限り抑えたい(→司法書士や法務局保管制度へ)


信託銀行への依頼は「安心感を買う」という側面が大きいです。その安心感に100万円以上の価値を見出せるかどうかが、判断の分かれ目になります。


参考:遺言信託が向いている人の条件を野村證券が解説


遺言信託の費用でよくある「失敗パターン」と回避のポイント

遺言信託をめぐるトラブルや後悔は、情報不足から生まれることがほとんどです。よくある失敗パターンを把握しておくことで、回避しやすくなります。


「表示価格だけ見て契約した」パターンは最も多い失敗です。銀行の窓口で案内される際、基本手数料の30万円や55万円が前面に出ることがあります。しかし遺言執行報酬は別途数十万〜百数十万円かかるため、最終的な総額は予想を大幅に上回ります。契約前に「遺言執行まで含めた総額の目安」を必ず書面で確認しましょう。


「相続人に事前説明をしなかった」パターンも後悔につながりやすいです。遺言信託の費用は、遺言者が亡くなった後に相続人が遺産から支払うことになります。相続人から見れば「知らないうちに遺産から数百万円が引かれた」という状況になり、信託銀行とのトラブルに発展するケースがあります。遺言書の付言事項に費用の説明を盛り込むなど、事前の情報共有が有効です。


「内容を変更したら追加費用がかかることを知らなかった」というケースも起きています。財産構成や相続人の状況は時間とともに変わります。遺言内容を一度変更するたびに55,000円前後の変更手数料が発生します。3回変更すれば16.5万円です。内容が固まってから契約する、あるいは変更手数料が安いプランを選ぶことが対策になります。


「解約したくなっても費用がかかる」という落とし穴もあります。一般的な解約手数料は約20万円です。加えて、遺言者が亡くなった後は相続人が裁判所の許可なく銀行を遺言執行者から解任することは非常に困難です。「合わないと思ったら変えればいい」という感覚で契約すると痛い思いをします。


「相続税申告の費用を忘れていた」ことで家計が圧迫されるケースもあります。遺言信託の報酬とは別に、相続税申告が必要な場合は税理士費用が10〜60万円程度かかります。相続財産が多いほど税理士費用も高くなる傾向があります。銀行が税理士を紹介してくれることはありますが、報酬は相続人と税理士の間での別契約です。


失敗を回避するには「総額の確認・相続人への説明・変更・解約の条件確認」の4点を契約前に必ずクリアにしておくことが条件です。


参考:遺言信託のトラブルと注意点(相続のプロが解説)
遺言信託の手数料は高い?費用を安く抑える方法やメリット・デメリット|グリーン司法書士法人




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