

「お品代として」と書いた領収書が原因で、税務調査で経費を全額否認されるケースがあります。
手書きの領収書は、法律上まったく問題ありません。民法486条でも領収書の「形式」は特に指定されていないため、必要な項目さえ満たしていれば手書きでも正式な証憑書類として認められます。これが大前提です。
では、何を書けばよいのでしょうか。領収書には以下の7つの項目が必要です。
| 項目 | 記載内容の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 取引年月日 | 2025年3月14日 / 令和7年3月14日 | 年の省略はNG。金銭を受け取った日を書く |
| ② 宛名 | 株式会社〇〇 / 山田太郎 | 「上様」は税務上の印象が悪い |
| ③ 金額 | ¥66,000− / 金66,000円也 | 先頭に¥、末尾に−や也で改ざん防止 |
| ④ 但し書き | セミナー参加費として / 書籍代として | 「お品代」はNG。具体的に書く |
| ⑤ 税率別内訳と消費税額 | 10%対象:60,000円、消費税6,000円 | インボイス対応には税率・税額の記載が必須 |
| ⑥ 発行者情報 | 会社名・住所・電話番号・登録番号 | 印鑑は必須ではないが押すのが慣例 |
| ⑦ 収入印紙 | 税抜5万円以上で貼付・消印が必要 | 貼り忘れると本来の3倍の過怠税が発生 |
手書きだからこそ、記入漏れやミスが起きやすくなります。書き始める前に、この7項目のチェックリストを手元に置いておくと安心です。これが基本です。
用紙は100円ショップや文房具店で購入できる複写式の領収書用紙が便利で、控えも同時に残せるため保管面でも効率的です。ペンは消えるボールペンや鉛筆は絶対に使わないこと。改ざん防止の観点から、耐水性のある黒色のボールペンを使う必要があります。
国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表」:収入印紙の金額別税額を確認できます
金額欄の書き方には、独自のルールがあります。意外ですね。日常では「10,000円」とシンプルに書くことが多いですが、領収書ではそれだけでは不十分とされています。
なぜかというと、手書きの数字は追記・改ざんが容易だからです。たとえば「10,000円」の先頭に「1」を足すと「110,000円」になってしまいます。そのため、以下の3つのルールをセットで守る必要があります。
さらに、数字と数字の間をあまり空けすぎずに詰めて書くことも大切です。余白が大きいと数字を書き加えられるリスクがあるためです。
消費税についての内訳も忘れずに書きましょう。税込金額だけでは消費税率が不明瞭になります。たとえば「税抜60,000円、消費税6,000円、合計66,000円」のように分けて記載することが、インボイス制度への対応としても必要です。
つまり、金額欄は「改ざん防止」と「税率明示」の2つが条件です。
また、記載金額が税抜で50,000円(5万円)以上になる場合は収入印紙の貼付が義務となります。よくある5万円〜100万円以下の取引では200円の印紙が必要で、100万円超200万円以下では400円と段階的に増額します。クレジットカード決済の場合は「クレジットカードにて支払い」と明記することで収入印紙が不要になる点も、知っておくと節税になります。これは使えそうです。
国税庁「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」:貼り忘れ時のペナルティを国税庁が解説しています
手書き領収書で最も見落とされがちなのが「但し書き」です。但し書きとは、「何の代金を受け取ったのか」を示す欄のことです。
よく使われる「お品代として」という表現は、実は税務上のリスクがあります。「お品代」では何を購入したのかがわからないため、その支出が事業に必要なものかどうかを証明できません。税務調査の際に「お品代」と書かれた領収書が多数あると、不正を疑われる原因となり、経費として否認されるリスクがあります。痛いですね。
但し書きは、以下のように具体的に書くことが正解です。
複数商品があって書ききれない場合は「〇〇他3点として」のように代表品目と点数を組み合わせる方法が有効です。また、軽減税率(8%)の対象商品が含まれる場合は「※軽減税率対象」と明記する必要があります。これは必須です。
但し書きをきちんと書くことは、領収書を受け取る側の経費計上の証拠にもなるため、発行者と受取人の双方にとってメリットがあります。金融に関わる仕事をしている人であれば、経費の証憑管理の重要性はご存知の通りです。但し書きの一手間が、後々の大きなトラブル回避につながります。
マネーフォワード「領収書の但し書きに『品代』は使うべきでない?」:但し書きの正しい書き方を詳しく解説
宛名の欄についても、注意が必要です。よくある間違いが「上様」と書くことと、「(株)」のように会社名を省略することです。
まず「上様」について。法律的には一部の業種(小売業・飲食業・旅客運送業・旅行業・駐車場業)であれば宛名なし、または「上様」でも領収書として有効とされています。しかし、税務調査においては「どの会社が受領した領収書なのか」が不透明になるため、印象がよくありません。実際に経費精算で「上様の領収書は受理しない」と社内規程で定めている企業も多くあります。
「(株)」のような省略も避けるべきです。「株式会社〇〇」と「〇〇株式会社」のどちらかで正式名称を書くことが基本です。前株か後株かによって法人名が変わるため、確認を怠ると誤記が生じ、経費申請で差し戻しになる可能性があります。
宛名の書き方の整理をすると以下の通りです。
相手から宛名を指定してもらう場合は、メモ用紙に書いてもらってから転記する方法がおすすめです。書き間違えると最初から書き直しになるため、手間を大幅に省けます。
なお、宛名を書き間違えてしまった際は修正テープや修正液を使うのは絶対にNGです。修正テープを使った領収書は改ざんが疑われるため、書き直しか二重線+訂正印での対応が必要です。これが原則です。
手書きで領収書を書いていて、ミスをしてしまった場合の対応方法は多くの人が迷うポイントです。どういうことでしょうか?
まず大前提として、修正テープや修正液の使用は領収書には禁止されています。元の内容が完全に消えてしまうと「何が書かれていたのか」がわからなくなり、改ざんを疑われる原因になるためです。
正しい対処法は2つあります。
渡した後に不備が発覚した場合も、修正は基本的に推奨されません。いったん発行済みの領収書は返却してもらい、「(再)」または「(再発行)」と記載した新しい領収書を発行するのが正しい手順です。再発行した場合は返却された元の領収書と新しい領収書を一緒に保管しておきましょう。
また、紛失などを理由として受取人から再発行を依頼された場合、発行者には対応義務はありません。民法の規定上、領収書の再発行義務は認められていないためです。対応するかどうかは発行者側の判断になります。再発行に応じる場合は「二重発行」を避けるために、元の領収書の返却を求めることを忘れずに行いましょう。
領収書の控えは、確定申告の申告期限の翌日から法人・青色申告の個人事業主は7年間、白色申告の個人事業主は5年間の保存義務があります。手書きの場合は特に紙の劣化や紛失リスクがあるため、スマートフォンのスキャンアプリなどで電子化して保管する方法も実用的です。
弥生「領収書の正しい訂正方法と注意点を解説!」:訂正印の使い方から再発行の手順まで丁寧に解説されています
2023年10月1日にスタートしたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、手書きの領収書にも影響しています。金融や経理の仕事に関わる方にとっては特に重要な変更点です。
適格請求書発行事業者に登録している事業者が領収書を発行する場合、手書きであっても以下の項目が記載された「適格請求書(インボイス)」として交付できます。
登録番号を記載できるのは、適格請求書発行事業者として国税庁に登録している事業者のみです。登録していない事業者が番号を記載した場合は「適格請求書と誤認されるおそれがある書類の交付」として禁止行為にあたります。これは違反になりません、ではなくむしろ違反になる行為なので注意しましょう。
インボイスに対応した領収書を受け取った買い手側は、仕入税額控除を受けられます。逆に、対応していない領収書だと買い手が税額控除を使えなくなるため、取引相手に不利益を与えることになります。これは見逃せないポイントですね。
なお、小売業・飲食店業・タクシー業など「不特定多数の者」を相手にする業種では、宛名の記載が不要な「適格簡易請求書」として発行することも認められています。手書きのレシートや領収書でも、この条件を満たせばインボイスとして有効です。
国税庁「適格請求書等保存方式の概要」:インボイス制度の基本的な仕組みと記載要件を確認できます(PDF)

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