

前株(まえかぶ)と後株(あとかぶ)は、日本の会社名(商号)の中で「株式会社」がどこに付くかの呼び分けです。前株は「株式会社〇〇」、後株は「〇〇株式会社」という表記になります。
重要なのは「優劣」ではなく、「正式名称としての一致」です。実務上は“だいたい合っている”が通用しない場面(契約書、請求書、登記情報の照合)があるため、表記の位置を含めて正確に扱う必要があります。
参考)「前株(maekabu まえかぶ)」「後株(atokabu …
また、「株式会社」を社名の途中に入れる“中株”という形も理屈上はあり得ますが、一般には少数派で、書類作成・運用で不都合が出やすいと説明されることがあります。
参考)前株・後株の違いは何だろう?伝わり方が変わる会社名
法律面の結論から言うと、前株と後株は「表記の違い」であって、どちらを選んでも税務や経営のルールが変わるわけではありません。
一方で、会社法では商号の中に「株式会社」という文字を用いること自体が求められています(会社法第6条2項)。つまり“株式会社を入れる”のは必須ですが、“前に置くか後ろに置くか”は指定されていません。
ここで金融寄りの観点として押さえたいのは、投資家・金融機関・与信の世界では「正式商号=登記の文字列」が基準になりやすいことです。前株後株は自由でも、決めた瞬間からは“その文字列”が正なので、後工程ほど修正コストが増えます。
法律の根拠(会社法第6条2項の条文確認に便利)
会社法上の「株式会社」表示義務と、前株・後株の位置に指定がない点(根拠条文付き)
意外に知られていない実務ポイントとして、「株式会社ABC」と「ABC株式会社」は、同じ会社の別表記ではなく“別の商号”として扱われる、という考え方が出てきます。
さらに、同一商号・同一本店の登記が禁止される(商業登記法第27条)という説明の文脈で、前株と後株は別商号として扱われ得るため、同じ住所でも登記手続き上は可能になるケースがある、とされています。
金融の現場でこの点が効いてくるのは、反社チェック・与信調査・取引先登録などで「会社名で検索して一致しない」事故が起きる場面です。法人番号や登記簿の商号まで踏み込めば解決しますが、現場はまず“文字列一致”から入るため、前株後株の取り違えは地味に痛いミスになります。
商業登記法第27条の説明(同一本店同一商号の考え方が必要なとき)
「株式会社●●」と「●●株式会社」は別会社として認識され得る点と、同一商号・同一本店の禁止の条文引用
前株から後株へ、あるいはその逆へ変えたい場合、気分で表記を変えるのではなく「商号変更」として扱うのが基本です。
商号は定款の記載事項であり登記事項でもあるため、定款変更(株主総会の特別決議)をしたうえで、効力発生日から2週間以内に商号変更の登記申請が必要、とされています。
さらに現場では、登記だけ終わらせても事故は減りません。名刺、Web、請求書テンプレ、契約書雛形、取引先マスタ、銀行の振込名義など、表記が一度ズレると“別会社扱い”の誤解を生みやすいので、変更するなら一括で統一するのが合理的です。
検索上位の解説は「印象」「ブランディング」に寄りがちですが、金融に興味がある人ほど刺さるのは“振込・入金消込の現場”です。理由は単純で、入金消込は「名義文字列」と「請求先マスタ」の突合がベースになりやすく、前株後株の違いがノイズになります。
たとえば経理では、請求書は「〇〇株式会社」なのに、振込名義や取引先登録が「株式会社〇〇」になっていると、機械照合が落ちて人手確認になります。ミス自体は小さく見えても、月末の繁忙・複数拠点・大量入金が重なると、回収遅延や督促誤爆(入金済なのに未入金扱い)が起きる引き金になります。
対策は難しくありません。まず登記上の商号を“正”として社内のマスタを統一し、次に「(株)」の略記ルールを会社として決め、最後に取引先へ“正式商号での発行と振込名義の一致”を依頼する、この順番が安全です。
ブランディング観点の補足(前株・後株が与える印象の整理)
前株・後株それぞれの印象(先進性・安定感など)と、表記統一の重要性の解説