後期高齢者医療制度の保険料と確定申告で社会保険料控除を賢く活用する方法

後期高齢者医療制度の保険料と確定申告で社会保険料控除を賢く活用する方法

後期高齢者医療制度の保険料と確定申告の社会保険料控除を正しく理解する

配当収入500万円でも、確定申告しないだけで保険料が年1.5万円で済む人がいます。


この記事の3ポイント要約
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保険料は全額・社会保険料控除の対象

後期高齢者医療制度で支払った保険料は、確定申告で全額が社会保険料控除として所得から差し引けます。申告を忘れると所得税を多く払い続けることになります。

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配当所得の申告が保険料を34倍にする可能性

配当収入500万円でも確定申告しなければ保険料は年約1.5万円。申告すると約52万円に跳ね上がることがあります。「税金が戻るから申告する」という判断が逆効果になるケースがあります。

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2026年度から上限85万円・制度改正が進行中

2026年度(令和8年度)より保険料の賦課限度額が85万円に引き上げ。さらに2030年度以降、金融所得を確定申告しなくても保険料に反映される制度改正が議論されています。


後期高齢者医療制度の保険料とは何か:基本の仕組みを整理する


後期高齢者医療制度は、75歳以上(一定の障害がある場合は65歳以上)のすべての方が加入する公的医療保険です。制度の財源は、加入者が払う保険料のほか、公費(税金)および現役世代からの支援金で成り立っています。現役世代からの支援金が全体の約4割を占めており、少子高齢化が続くなかでその維持が議論の焦点となっています。


保険料は「均等割額」と「所得割額」の2本立てで計算されます。均等割額は加入者全員が等しく負担する固定額です。一方の所得割額は、前年の「基礎控除後の総所得金額等」に所得割率を掛けた金額となります。








保険料の種類 内容 目安(全国平均・令和7年度)
均等割額 加入者全員が同額を負担 年額 約5万7,000円
所得割額 所得に応じて計算 所得割率 約11.75%
賦課限度額 保険料の年間上限 2026年度より年85万円


2026年度(令和8年度)からは、賦課限度額が現行の80万円から85万円へ引き上げられます。これは「子ども・子育て支援金」の加算が背景にあり、対象は年収1,021万円以上の高所得者(加入者全体の約1.2%)となる見通しです。


低所得者には均等割の軽減措置があります。世帯全員の所得合計額によって2割・5割・7割の軽減が適用されます。この軽減措置を受けるためには、収入のない方でも市区町村へ申告することが必要です。申告しないと軽減が適用されず、余分な保険料を払い続けるリスクがあります。


保険料を申告して軽減を受けることが原則です。


参考リンク(保険料の計算方法と軽減措置の詳細)。
厚生労働省|後期高齢者医療の保険料の賦課限度額について(PDF)


後期高齢者医療制度の保険料を確定申告で社会保険料控除として申告する方法

確定申告に初めて取り組む場合、保険料の控除がどこに入るのか迷う方も多いです。


後期高齢者医療制度の保険料は、確定申告において「社会保険料控除」として申告できます。支払った全額が所得から差し引かれるため、控除額が大きいほど課税される所得が減り、所得税住民税を両方抑えられます。手続きは難しくありません。


申告書への記載手順は次のとおりです。



  • 確定申告書「第二表」の社会保険料控除欄に、その年(1月1日〜12月31日)に実際に支払った後期高齢者医療保険料の金額を記入する。

  • 介護保険料など他の社会保険料控除対象の支払いがあれば、合わせて記入する。

  • 第二表で記入した合計額を「第一表」の左下にある「社会保険料控除」欄に転記する。


重要な点として、未納分は控除に含めてはいけません。あくまでその年に実際に支払った金額が対象です。また、証明書の添付は不要です。国民健康保険や健康保険の控除証明書とは異なり、後期高齢者医療保険料は添付書類なしで申告できます。


納付済み金額の確認方法は、徴収方法によって異なります。



  • 特別徴収(年金天引き):毎年送付される「公的年金等の源泉徴収票」の「社会保険料の額」欄と適用欄の内訳を確認する。

  • 普通徴収(口座振替):通帳の引き落とし履歴で1月1日〜12月31日の合計額を集計する。

  • 普通徴収(納付書払い):1月1日〜12月31日に窓口や ATM で支払った金額を合計する。


つまり「いつ支払ったか」が基準です。


市区町村によっては確定申告の時期に「後期高齢者医療保険料の納付済金額通知書」を送付してくれる場合があります。金額に自信がなければ窓口で納付証明書の発行を依頼することもできます。


参考リンク(確定申告での社会保険料控除の入力方法)。
国税庁|国民健康保険料や後期高齢者医療保険料を支払った場合


後期高齢者医療制度の保険料で見落としがちな「年金天引き分は家族が使えない」落とし穴

社会保険料控除には、自分以外が支払った保険料も控除できる仕組みがあります。たとえば、子どもが親の保険料を納付書や口座振替で支払った場合、子ども自身の確定申告で社会保険料控除として申告できます。これは節税として非常に有効です。


しかし、年金天引き(特別徴収)で徴収された後期高齢者医療保険料は、本人以外の確定申告には使えません。


具体的なケースとして、妻の年金から後期高齢者医療保険料が天引きされている場合、夫がその金額を自分の社会保険料控除に含めることはできません。これは税務上「妻が支払った」と見なされるためです。控除を家族と共有しようとしてもできない仕組みになっています。


この制約を知らずに申告してしまうと、税務署から修正を求められる可能性があります。厳しいところですね。


では、家族が社会保険料控除を有効活用するにはどうすればよいでしょうか。方法は一つあります。特別徴収から普通徴収(口座振替)に変更することです。市区町村の窓口に申請すれば、年金天引きから本人または家族の口座振替に切り替えられます。口座振替に変更して、所得が多い家族の口座から引き落としにすれば、その家族の確定申告で社会保険料控除として申告できます。



  • 年金天引き(特別徴収)→ 本人のみが控除できる

  • 口座振替(普通徴収)→ 実際に支払った人が控除できる


口座振替への変更申請は市区町村の窓口で受け付けています。


参考リンク(特別徴収と社会保険料控除の取り扱いについて)。
鹿児島市|後期高齢者医療保険料は確定申告や市県民税の社会保険料控除の対象になりますか


後期高齢者医療制度の保険料と確定申告における配当所得の危険な落とし穴

金融に興味を持ち、株式投資信託で資産運用している方ほど注意が必要な話題です。


源泉徴収ありの特定口座を使って配当収入を得ている場合、確定申告は原則として不要です。申告しなければ、その配当所得は後期高齢者医療制度の保険料算定に一切含まれません。ところが、「住民税で損失の繰越控除を活用したい」「所得税の還付を受けたい」という理由で確定申告を行った途端、配当所得が所得として認定され、保険料が急増します。


財務省の試算では、配当収入500万円の後期高齢者が確定申告なしの場合、医療保険料は年約1万5,000円で窓口負担1割。これが確定申告をすると保険料は約52万円に跳ね上がり、窓口負担も3割になります。差額は約50万円、倍率にして実に34倍以上です。


同じ収入でこれだけ差が出るとは、意外ですね。


特に2026年(令和6年度)以降は、所得税と住民税の課税方式が一致するルールになったため、「所得税だけ申告して住民税は申告不要にする」という技が使えなくなりました。以前はこの方法で税金を取り戻しつつ保険料への影響を最小化できたのですが、その手段はすでに封じられています。







申告の選択 年間保険料(目安) 窓口負担割合
確定申告なし(特定口座・源泉徴収あり) 約1.5万円 1割
確定申告あり(配当収入500万円) 約52万円 3割


申告する前に、還付される税額と増加する保険料の両方を計算することが条件です。市区町村の窓口や税理士に試算を依頼すると、判断がしやすくなります。


参考リンク(株式・配当の確定申告と保険料への影響の詳細)。
国分寺市|株式や配当などの確定申告による後期高齢者医療保険料への影響


後期高齢者医療制度の保険料に金融所得を反映する制度改正:2030年以降の見通し

現状では、確定申告をしない限り金融所得は保険料計算に入らない仕組みです。しかし政府は、この「申告するかしないかで保険料が変わる不公平」を解消しようと制度改正を進めています。


内閣府が2025年11月に公表した総合経済対策には「高齢者の窓口負担割合等に金融所得を反映するため、具体的な法制上の措置を令和7年度中に講じる」と明記されました。改正の具体策として検討されているのは、証券会社などが国税庁に提出する「法定調書」のオンライン提出義務化です。これを活用して「法定調書データベース(仮称)」を構築し、市区町村が個人の金融所得を直接確認できる仕組みを整えます。


実際の導入は、システム整備に2〜3年程度かかるため、早くとも2030年度頃になる見通しです。



  • 2025〜2026年:金融所得反映に向けた法案の提出・成立

  • 2026〜2029年:法定調書データベースの構築、自治体システム改修

  • 2030年度以降:後期高齢者医療制度での金融所得反映が実施

  • その後:国民健康保険・介護保険への拡大も検討


これは使えそうな情報ですね。


なお、NISA口座(つみたてNISA・成長投資枠)から得られた金融所得は非課税であり、制度改正後も保険料算定対象に含まれない方針です。また、会社員・公務員が加入する健康保険については、今回の改正の対象外となります。


今後の対策として注目されているのが、NISA口座の積極活用です。NISA口座内での運用益・配当は非課税のため、保険料増加リスクを避けながら資産形成を続けられます。源泉徴収ありの特定口座のままにするか、NISA枠の活用を優先するかを見直すことが、2030年以降に向けた現実的な手立てとなっています。


参考リンク(金融所得反映の議論の詳細と2030年以降の見通し)。
G.S.ブレインズ税理士法人|75歳以上の保険料に「金融所得」を反映へ


参考リンク(確定申告と後期高齢者医療保険料の詳細な影響シミュレーション)。
マネーフォワード|後期高齢者医療制度の保険料は確定申告で社会保険料控除の対象になる?






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