

65歳になると介護保険料が会社員でも3〜4倍に跳ね上がる場合があります。
介護保険料の支払いは、40歳になった瞬間から始まります。これは法律(年齢計算ニ関スル法律)に基づき、「40歳の誕生日の前日」が属する月から徴収が開始されるルールです。たとえば8月15日が誕生日なら、前日8月14日も同じ8月に含まれるため、8月分から保険料が発生します。
ここで注意が必要なのが毎月1日生まれの人です。たとえば8月1日生まれの人の前日は7月31日となり、「7月」に属します。つまり、実際の誕生月より1か月早い7月から介護保険料の徴収が始まります。同じ「8月生まれ」でも、1日生まれとそれ以外では開始月がずれるのです。意外ですね。
そして給与から実際に天引きされるタイミングは、さらに1か月後ろにずれます。これは法律上、事業主が給与から差し引けるのは「前月分の保険料」に限られているためです。徴収開始は誕生日前日の属する月であっても、給与明細に反映されるのは翌月以降と覚えておくと大丈夫です。
被保険者の区分は年齢によって2種類に分かれます。
| 区分 | 対象年齢 | 保険料の支払い方法 |
|------|----------|-------------------|
| 第2号被保険者 | 40〜64歳 | 健康保険料と一緒に徴収(会社員は労使折半) |
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 年金天引き(年金年額18万円未満は納付書払い) |
介護保険料に「払い終わり」はありません。これが基本です。
協会けんぽ茨城支部:介護保険制度と介護保険料について(徴収開始タイミングを詳しく解説)
第2号被保険者(40〜64歳)の介護保険料は、加入している医療保険の種類によって計算方法が異なります。これは押さえておきたいポイントです。
会社員や公務員(健康保険・組合健保加入者)の場合、毎月の給与と賞与に保険料率をかけた金額を、勤務先と労使折半で負担します。2025年度の協会けんぽの介護保険料率は1.59%(事業主負担含む)です。標準報酬月額が28万円の会社員であれば、月額保険料の計算は次のようになります。
$$28万円 \times 1.59\% = 4,452円(全額)\div 2 = 2,226円(本人負担分)$$
つまり月々2,000円台の負担ですが、会社が同額を上乗せして納付しています。この「見えないコスト」を含めると、実際には倍の金額が介護保険に充てられているわけです。
一方、自営業者や国民健康保険加入者の場合は、前年の所得や世帯の人数をもとに計算した金額を、国民健康保険料と一緒に世帯主がまとめて納めます。この場合、折半の仕組みはなく、自分で全額負担する必要があります。厳しいところですね。
なお、健康保険の扶養に入っている40〜64歳の配偶者(被扶養者)は、原則として介護保険料を別途支払う必要はありません。すでに被保険者本人の保険料にカバーされているためです。
ただし例外があります。一部の健康保険組合では「特定被保険者制度」を採用しており、40歳未満や65歳以上の被保険者であっても、40〜64歳の被扶養者がいる場合は介護保険料を徴収することがあります。つまり、39歳なのに介護保険料が引かれるというケースが実際に起こり得るのです。協会けんぽにはこの制度はありませんが、健康保険組合に加入している場合は自分の組合の規約を確認しておく価値があります。
生命保険文化センター:公的介護保険への加入はいつから?保険料の負担方法と特定被保険者制度についての解説
65歳を迎えると、介護保険の制度区分が「第2号被保険者」から「第1号被保険者」に切り替わります。この切り替えで何が変わるのか、金融に関心のある人ほどしっかり把握しておきたい内容です。
最大の変化は会社負担がゼロになることです。64歳まで会社員だった人は、介護保険料の半分を会社が肩代わりしてくれていました。しかし65歳になった瞬間、その会社負担がなくなり、全額が自己負担になります。さらに保険料の計算方式も変わり、住む自治体が3年ごとに定める「基準額」と、所得に応じた「段階乗率」によって金額が決まる仕組みになります。
2024〜2026年度における第1号被保険者の介護保険料基準額の全国平均は月額6,225円です。ただしこれはあくまで中間段階(基準額そのまま)の金額であり、高所得の場合はその1.7倍以上になることもあります。自治体によっても大きな差があり、最も低い自治体では月額3,374円、最も高い自治体では9,249円と、約2.7倍もの格差があります。
さらに具体的なインパクトで見ると、たとえば64歳まで標準報酬月額28万円の会社員で本人負担が月2,226円だったとします。65歳になり基準額6,225円を全額自己負担した場合、単純比較で負担が約2.8倍に膨らみます。所得が高ければさらに上乗せされるため、日本経済新聞の試算では3〜4倍増になるケースも珍しくないとされています。
つまり65歳ということですね。
| 状況 | 月額介護保険料(概算) |
|------|----------------------|
| 64歳会社員(標準報酬月額28万円)本人負担 | 約2,226円 |
| 65歳・第1号・全国平均基準額(中間段階) | 約6,225円 |
| 65歳・高所得者(合計所得320万円以上想定) | 約1万円〜 |
65歳以降の家計シミュレーションをするときは、この「介護保険料の段差」を必ず織り込むことが条件です。年金の手取り額が「思ったより少ない」と感じる大きな理由の一つが、ここにあります。
ライフプランコンシェルジュ:65歳からの介護保険料の負担増と、自治体別金額の実例(労使折半から全額自己負担への変化を解説)
「払い忘れたまま放置」が最も危険なパターンです。介護保険料の滞納には、段階的に重くなるペナルティが設定されています。
まず1年以上滞納すると、本来なら保険証を窓口に出すだけで1〜3割負担で利用できる介護サービスが、いったん全額(10割)を自己負担して支払う「償還払い」に切り替わります。後から申請すれば払い戻しが受けられますが、まとまった現金が手元にない場面では大変な負担になります。
1年6か月以上になると、今度はその払い戻し(保険給付)そのものが差し止められます。滞納分が差し引かれる形になるため、実質的に給付をほとんど受け取れない状態になります。痛いですね。
最も深刻なのが2年以上の滞納です。この場合、介護サービスの自己負担が通常の1割から3割に引き上げられます。また「高額介護サービス費」(月ごとの上限を超えた分が戻ってくる制度)も利用できなくなります。この給付制限は一定期間続くため、将来の介護費用に数十万円単位の差が出ることもあります。
滞納のペナルティをまとめると次のとおりです。
| 滞納期間 | ペナルティ |
|----------|-----------|
| 1年以上 | 介護サービス費がいったん全額自己負担(償還払い化) |
| 1年6か月以上 | 保険給付の一時差し止め |
| 2年以上 | 自己負担が最大3割に引き上げ+高額介護サービス費が受給不可 |
もし保険料の支払いが難しくなった場合は、滞納が積み上がる前に市区町村の介護保険課へ相談するのが基本です。災害や失業など特定の事情があれば、減額・免除制度を使える場合があります。早めの相談が原則です。
みんなの介護:介護保険料の滞納で起こること(差し押さえ・給付制限の詳細な段階解説)
介護保険料は「払うだけ」の義務負担と捉えられがちですが、金融的な視点で見ると「老後コスト設計の出発点」として機能します。これは使える知識です。
40〜64歳の期間に毎月支払う介護保険料(会社員の場合、本人負担は概ね月2,000〜3,000円台)は、制度上は給付への備えですが、実際に自分が介護サービスを使い始めるのは早くても65歳以降です。この「25年間払い続けて、受け取りは将来」という非対称な構造を頭に置いておくと、老後の家計設計が変わってきます。
具体的には、65歳以降に介護保険料が全額自己負担になる点を「老後の固定費増加」として家計に組み込む必要があります。たとえば65歳時点で年金月額が15万円だとすると、そこから介護保険料(月6,225円前後)・健康保険料・住民税・所得税が引かれ、実質の手取りは12万円前後になるケースも珍しくありません。
この差額を補う手段として有効なのが、現役時代からのiDeCoやNISAの活用です。iDeCoは掛金が全額所得控除の対象になるため、40〜64歳の期間中に税負担を下げながら老後資金を積み上げることができます。たとえば会社員が毎月2.3万円(上限)をiDeCoに拠出した場合、課税所得によっては年間約4〜5万円の所得税・住民税が軽減されます。この節税効果は、65歳以降に跳ね上がる介護保険料の一部を先に「回収」するイメージと考えると腑に落ちやすいでしょう。
また、65歳以降も会社員として働き続ける場合は「在職定時改定」という制度も活用できます。これは65〜70歳未満の現役年金受給者を対象に、毎年10月に前年9月〜当年8月の厚生年金保険料納付実績に応じて年金額を増額する仕組みです。働き続けることで年金が増え、増えた介護保険料負担をある程度カバーできる可能性があります。
老後の介護コストに不安を感じる場合は、公的介護保険の給付範囲を補完する民間の介護保険も選択肢の一つです。公的介護保険はあくまで「認定を受けた要介護者向けのサービス費用の一部を補助」する制度であり、認定を受けるまでの費用や住宅改修、介護離職による収入減などはカバーされません。民間保険はこれらの隙間を埋める役割を担います。加入を検討する際は、保険料が固定の「定額給付型」か、要介護度に応じて給付額が変わる「段階給付型」かを比べて、自分のリスク許容度に合わせて選ぶと良いでしょう。
結論は「40歳から老後コストを逆算する」です。
厚生労働省:介護保険制度について(第2号被保険者向けの公式リーフレット。制度の全体像と給付条件を確認できる)
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