

月44,400円超えの介護費用は申請すると手元に戻ってきます。
介護保険制度は、2000年に創設された公的な社会保険制度で、主に40歳以上の方が保険料を負担し、介護が必要になったときに給付を受けられる仕組みです。
この給付は、大きく分けると「介護給付」「予防給付」「市町村特別給付」の3種類から構成されています。金融面から見ると、保険料を払い続けていても、給付の種類や利用条件を理解していないと受け取れる給付額が大きく変わってくる点が重要です。
まず「介護給付」は、要介護1〜5に認定された方を対象とした給付です。日常生活のほぼすべてにわたる支援を必要とする方が利用するもので、訪問介護・通所介護(デイサービス)・短期入所(ショートステイ)・施設サービス・地域密着型サービスなど、多様なサービスが含まれます。サービスを現物として受け取る「現物給付」が基本であり、かかった費用の原則7〜9割を介護保険が負担します。
次に「予防給付」は、要支援1〜2に認定された方を対象としています。要介護状態に進まないよう予防することが目的で、介護予防訪問介護や介護予防通所リハビリテーションなどが含まれます。名前に「介護予防」とつく点が大きな特徴です。
そして「市町村特別給付」は、上記2つとは異なり、各市区町村が独自の条件・内容で実施する給付です。配食サービスや紙おむつ支給、緊急通報装置の設置など、地域ごとの取り組みが該当します。財源は原則として第1号被保険者(65歳以上)の保険料です。
つまり、介護保険の給付は「国が定めた標準給付」と「自治体独自の上乗せ給付」の2層構造になっています。お住まいの自治体が何を提供しているかを確認するだけで、受けられるサービスの幅が広がることがあります。
| 給付の種類 | 対象者 | 主なサービス例 | 財源 |
|---|---|---|---|
| 介護給付 | 要介護1〜5の方 | 訪問介護、施設サービス、デイサービスなど | 保険料+税金(公費) |
| 予防給付 | 要支援1〜2の方 | 介護予防訪問介護、介護予防通所介護など | 保険料+税金(公費) |
| 市町村特別給付 | 要介護・要支援者 | 配食サービス、紙おむつ支給など(自治体による) | 第1号被保険者の保険料 |
介護給付が基本です。ただし、市町村特別給付は自治体によってまったく内容が異なるため、必ず居住地の担当窓口に確認することをおすすめします。
介護保険サービスの種類一覧(厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」)
介護保険の給付を受けるには、まず市区町村へ「要介護認定」の申請をすることが出発点です。申請後に認定調査(聞き取り調査)が行われ、一般的に1か月程度で要介護度が決定します。
要介護度は要支援1・2、要介護1〜5の計7段階に区分されており、段階が上がるほど日常生活で必要な介護量が多いと判定されます。この要介護度が、使えるサービスの範囲と「支給限度額」を左右します。
支給限度額とは、1か月に介護保険の給付を受けられるサービス費用の上限のことです。「単位」という独自の計算単位で表され、1単位はおおむね10円(地域や事業者によって異なる)です。要介護度別の支給限度額は以下の通りです。
| 要介護度 | 支給限度額(単位) | 目安の金額(1単位=10円換算) |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 約50,320円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 約105,310円 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 約167,650円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 約197,050円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 約270,480円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 約309,380円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 約362,170円 |
注意が必要なのは、この支給限度額はあくまで「介護保険が給付してくれる上限」である点です。限度額を超えてサービスを利用した場合、超過分は全額自己負担になります。要介護度が低い段階では、在宅で複数のサービスを組み合わせると比較的早く上限に達することもあるため、ケアマネジャーとよく相談しながらプランを立てることが大切です。
ちなみに、支給限度額の対象外となるサービスも存在します。居宅療養管理指導や特定施設入居者生活介護(一部除く)などは限度額の管理枠に含まれないため、それらを組み合わせることで実質的に受けられる給付の総量を増やすことができます。これは知っておくと得する知識です。
介護保険の支給限度額とは(公益財団法人 長寿科学振興財団「健康長寿ネット」)
介護給付(要介護1〜5の方向け)に含まれるサービスは、大きく「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つに分類されます。この分類を理解しておくことで、自分や家族の状況に合わせて最適な給付を選びやすくなります。
居宅サービスは、自宅で生活しながら利用するサービスです。「訪問系」「通所系」「短期入所系」に細かく分かれており、状況に応じて組み合わせて使うことができます。具体的なサービスを以下にまとめます。
施設サービスは、施設に入居してサービスを受ける形態です。主に以下の3種類があります。
地域密着型サービスは、市区町村が主体となって提供するサービスで、原則としてそのサービスを提供する市区町村の住民のみが利用できます。
居宅・施設・地域密着型の3分類が基本です。介護給付と予防給付では利用できるサービスの名称が一部異なりますが、基本的な概念は同様のものと理解して問題ありません。
介護保険の給付の中で、特に「知っているかどうか」で家計への影響が大きいのが、高額介護サービス費と住宅改修費の支給です。
高額介護サービス費とは、1か月に支払った介護サービスの自己負担合計が、所得区分に応じた「上限額」を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。医療保険の高額療養費制度に相当するものと考えると理解しやすいです。
上限額(月額)の目安は以下の通りです。
| 所得区分 | 月額上限(目安) |
|---|---|
| 課税所得690万円以上(年収約1,160万円以上) | 140,100円 |
| 課税所得380万円〜690万円未満 | 93,000円 |
| 課税所得145万円〜380万円未満(一般的な課税世帯) | 44,400円 |
| 市区町村民税非課税世帯 | 24,600円 |
| 年金収入80万円以下など(低所得) | 15,000円 |
ここで重要な点があります。この制度は「申請」しないと払い戻しを受けられません。初回は自治体から申請書が送付されますが、受け取ったまま放置している方も少なくありません。一度申請すると翌月以降は自動的に計算・支給される自治体が多いですが、最初の一歩を踏み出さなければ、月数万円規模の払い戻しを2年間受け続けられなかったという事態にもなりえます。申請期限は、サービス利用月の翌月1日から2年間です。これは必須です。
次に、住宅改修費の支給について。自宅の手すり設置・段差解消・滑り止め工事などに対して、1人あたり最大20万円を限度に、その7〜9割(最大18万円)が介護保険から給付されます。ただし給付対象となる工事の種類は限定されており、事前に申請・承認を受ける必要があります。事後申請は不可となっているため、リフォーム前に必ず担当ケアマネジャーや市区町村窓口に確認してください。
さらに見落とされがちなのが「特定福祉用具購入費」の支給です。入浴用いす・腰掛便座(ポータブルトイレ)・シャワーチェアなど、衛生上レンタルになじまない「特定福祉用具」は購入費として、年度(4月〜翌3月)ごとに10万円を限度に、7〜9割が支給されます。要介護度に関係なく要支援1からも使える点が特徴です。
これは使えそうです。これらの給付は自動的には適用されないため、ケアプランに組み込んでもらうかどうか、ケアマネジャーと積極的に話し合うことが大切です。
介護保険の給付の中で、特に金融的なインパクトが大きいながらも認知度が低い2つの制度について解説します。
一つ目は「高額介護合算療養費制度」です。これは、同一世帯で医療保険と介護保険の両方に自己負担がある場合、1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)の自己負担合計が一定額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。2008年4月から利用できるようになったにもかかわらず、まだまだ知られていない制度です。
年間の自己負担限度額(一般的な所得区分・70歳以上)は約56万円です。これは東京ドームの面積(約4.7万㎡)に例えるなら、医療と介護それぞれの費用を合わせて「一定の広さ」を超えたら返ってくるイメージです。年間で数十万円規模の還付が発生するケースもあります。
この制度を利用するには、介護保険者(市区町村)と医療保険者(健保組合など)の両方に申請が必要です。窓口が2か所に分かれているため、申請漏れが起きやすい点に注意が必要です。
二つ目は「補足給付(特定入所者介護サービス費)」です。特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに入所・入居した場合、食費・居住費は本来であれば全額自己負担です。しかし、低所得者を対象に、これらの費用を「負担限度額」に抑えてくれる制度が補足給付です。
補足給付を受けるには「介護保険負担限度額認定証」の取得が必要です。対象者の目安は市区町村民税が非課税である方ですが、配偶者が課税対象の場合や預貯金が一定額(単身1,000万円、夫婦2,000万円など)を超える場合は対象外になります。
補足給付が条件です。施設入所を検討する場合は、事前に認定証の取得申請を行えるかどうかを確認しておくと、月数万円単位の費用削減につながることがあります。
高額介護合算療養費制度の詳細(公益財団法人 長寿科学振興財団「健康長寿ネット」)
介護保険の給付種類を理解した上で、金融に興味のある方が次に考えるべきなのは「公的給付だけでカバーできない費用をどう手当するか」という視点です。
公的介護保険の給付は「現物給付」が基本で、利用できるサービスとその範囲は国や市区町村によって定められています。つまり、介護が必要になっても「現金」として直接受け取れるわけではありません。一方で、現実の介護費用には公的給付が対象外となるコストも多く存在します。
こうした自己負担リスクをカバーするために、民間の介護保険(介護一時金型・介護年金型)が有効な場合があります。民間介護保険は「現金給付」が一般的であるため、使途を自由に選べる点が公的介護保険との大きな違いです。
たとえば、要介護2と認定された段階で一時金500万円が支払われる商品を選べば、施設入居の初期費用に充てることができます。金融商品として選ぶ場合は「給付条件(要介護度の基準)」「支払い期間」「保険料水準」を比較検討し、不必要に複雑な特約を追加しないようにシンプルな設計を選ぶのが原則です。
また、親の介護に備えるだけでなく、自分自身の老後設計として「介護リスクをいくら自己負担できるか」を資産計画に組み込むことも重要です。たとえば老後資金として「介護費用枠」を別立てで準備する考え方は、ライフプランニングの観点からも合理的です。
厚生労働省の調査(2021年)では、介護が必要になってからの平均期間は約5年1か月であり、その間にかかる費用の月平均は約8万円程度と報告されています。単純計算で約490万円。この額を公的給付だけでカバーできるかどうか、今のうちに試算しておくことが、将来の経済的ゆとりに直結します。
公的介護保険で受けられるサービスの内容と民間保険との違い(公益財団法人 生命保険文化センター)
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