高額介護合算療養費の計算例と申請で得する完全ガイド

高額介護合算療養費の計算例と申請で得する完全ガイド

高額介護合算療養費の計算例と仕組みを徹底解説

同じ住民票の世帯でも、75歳の親と合算できずに数十万円を損している家庭が全国にあります。


この記事でわかること
💡
制度の仕組み

医療費+介護費の年間合計が「自己負担限度額」を超えた分が戻ってくる制度。8月1日〜翌7月31日が1年の計算期間。

🧮
所得別の計算例

年収156万〜370万円の70歳以上世帯なら限度額は年56万円。医療費+介護費の合計が100万円なら、44万円が払い戻される。

⚠️
申請の落とし穴

申請しないと自動で戻らない。期限は基準日(7月31日)翌日から2年。住民票が同じでも後期高齢者医療加入者とは合算不可など、要注意ポイントが多い。


高額介護合算療養費の計算例:基本の仕組みと対象者


高額介護合算療養費制度は、2008年(平成20年)4月にスタートした比較的新しい社会保険の仕組みです。医療保険(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度)と介護保険の両方に自己負担が生じた世帯を対象に、1年間の合計自己負担額が一定の限度額を超えた場合、その超過分を払い戻してくれる制度です。


この制度が存在する背景には、医療費だけを抑える「高額療養費制度」と、介護費だけを抑える「高額介護サービス費制度」の"すき間"があります。それぞれの制度で自己負担が圧縮されても、両方を同時に使う世帯では合計負担がかなり重くなるケースが珍しくありません。つまり二重の制度で守られているはずが、二重の負担になりうるのです。


対象となるのは以下の条件を満たす世帯です。



  • 国民健康保険・被用者保険・後期高齢者医療制度のいずれかに加入しており、かつ介護保険サービスも利用している世帯

  • 1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)の医療費と介護費の自己負担の合算額が、所得区分に応じた年間限度額を超えていること

  • 超過額が501円以上あること(500円以下では制度の対象外)


注意が必要なのは「世帯」の考え方です。住民票上の同一世帯であっても、医療保険制度が異なる人同士は合算できません。たとえば夫が75歳で後期高齢者医療制度に、妻が70歳で国民健康保険に加入している場合は、同居していても別々の計算になります。これは意外と知られていない落とし穴です。


また、制度は自動ではありません。高額療養費の一部は自動還付される場合がありますが、高額介護合算療養費は必ず申請が必要です。通知が届かないケースもあるため、「自分で気づいて動く」意識が大切です。


参考:厚生労働省による制度の公式資料(制度の概要・限度額一覧を確認できます)
高額医療・高額介護合算療養費制度について|厚生労働省


高額介護合算療養費の計算例:所得区分別の自己負担限度額一覧

支給額の計算には、まず「自分がどの所得区分に該当するか」を把握することが先決です。下の表が基本の限度額(年額)になります。




































所得区分(目安年収) 70歳以上の限度額(年額) 70歳未満の限度額(年額)
年収約1,160万円以上 212万円
年収770万〜1,160万円 141万円
年収370万〜770万円 67万円
年収156万〜370万円(一般) 56万円 60万円
住民税世帯非課税 31万円 34万円
住民税非課税かつ所得0円 19万円(※)


(※)介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円


この限度額から読み取れる重要なポイントが1つあります。同じ「一般」所得区分でも、70歳以上は56万円、70歳未満は60万円と、高齢者のほうが限度額が低く設定されています。高齢者の方が経済的能力の低い場合が多いことへの配慮です。つまり高齢者世帯のほうが多く戻ってくる可能性があるということです。


70歳未満の人が合算対象となるのは、1か月・1医療機関・1件あたり21,000円以上の自己負担があった場合に限られます。これも要注意です。たとえば月に2万円の医療費がかかっていても21,000円を下回れば計算に含まれないため、想定より支給額が少なくなるケースがあります。


一方で、70歳以上の人はすべての自己負担額が合算対象になります。70〜74歳の人を含む世帯では、まず70〜74歳分だけで限度額を計算し、残った超過分に70歳未満の自己負担を合算するという順序で計算します。世代が混在する世帯ではこの順序が重要です。


参考:協会けんぽによる高額介護合算療養費の限度額・計算手順(協会けんぽ加入者向けの具体的な手順が確認できます)
高額療養費・高額介護合算療養費|全国健康保険協会


高額介護合算療養費の計算例:年齢・世帯構成別の3パターン

ここからが本題です。実際の数字を使って計算例を3つ見てみましょう。計算の基本構造は「医療費+介護費の合計額 − 自己負担限度額 = 支給額」です。


【計算例①】70歳以上・一般所得世帯(夫婦2人)



  • 夫(74歳):医療費自己負担 20万円、介護費自己負担 35万円

  • 妻(73歳):医療費自己負担 32万円、介護費自己負担 13万円

  • 世帯合計:医療費 52万円+介護費 48万円=100万円

  • 自己負担限度額(70歳以上・一般):56万円

  • 支給額:100万円 − 56万円 = 44万円


44万円という数字は、新車の軽自動車の頭金にほぼ相当します。申請しなければ丸ごと損します。


【計算例②】70歳未満・一般所得世帯(夫婦2人)



  • 夫(67歳):医療費 32万円、介護費 7万円

  • 妻(66歳):医療費 25万円、介護費 25万円

  • 世帯合計:医療費 57万円+介護費 32万円=89万円

  • 自己負担限度額(70歳未満・一般):67万円

  • 支給額:89万円 − 67万円 = 22万円


この例では医療費32万円は1か月換算で約2.7万円。21,000円を超えているため合算対象に含まれます。結論は22万円の払い戻しです。


【計算例③】3世代混在世帯(72歳・70歳・50歳)


那珂市の公式資料をもとにした計算例です。



  • 世帯主(72歳):医療費 40万円、介護費 5万円

  • 妻(70歳):医療費 10万円、介護費 30万円

  • 子(50歳):医療費 10万円、介護費 0円


計算の手順は2段階になります。まず70歳以上の合計を計算し、次に70歳未満の自己負担を加算します。



  • 70歳以上の合計:医療費50万円+介護費35万円=85万円

  • 70歳以上の限度額(一般):62万円 → 超過額:23万円(Ⅰ)

  • 世帯全体の合計:85万円+子の医療費10万円=95万円

  • 世帯全体の限度額(70歳未満含む):67万円 → 超過額:28万円(Ⅱ)


支給額はⅡの28万円が世帯全体に対する最終支給額です。このうち医療保険から支払われる分と介護保険から支払われる分は、各自己負担額の割合に応じて按分されます。複数人で按分されるため、個人ごとの支給額は想定より少なく感じることがありますが、世帯全体で見ると大きな金額になります。


参考:那珂市公式資料(3世代世帯の具体的な按分計算の参考になります)
高額医療・高額介護合算制度の計算例(PDF)|那珂市


高額介護合算療養費の計算例:対象外費用と計算ミスを防ぐポイント

計算をする上で特に重要なのが、「何が対象に含まれて、何が含まれないか」を正確に把握することです。ここを誤ると支給額の見積もりが大きくずれます。


合算の対象外となる費用(医療保険側)



  • 入院中の食事代・居住費

  • 差額ベッド代(個室・特別室の追加料金)

  • 保険適用外の自由診療(美容整形、レーシックなど)

  • 高度先進医療費・予防接種・健康診断


合算の対象外となる費用(介護保険側)



  • 福祉用具(車椅子・介護ベッドなど)のレンタル料・購入費

  • 住宅改修費(スロープ設置・手すり取り付けなど)

  • 施設入所中の食費・居住費

  • 支給限度額を超えた利用者負担分


対象外費用の中でも「差額ベッド代」は金額が大きくなりやすい出費です。1日あたり数千円〜数万円かかることもあり、長期入院になると10万円を超えるケースもあります。これが計算に含まれないと知らずに「医療費は50万円かかった」と計算していると、実際の対象額はもっと少なくなります。


また、高額療養費や高額介護サービス費で既に還付を受けた金額は、合算前の自己負担額から差し引いた残額で計算します。二重取りはできません。この点を見落として「既に還付を受けた分」をそのまま合算額に足してしまうと、過大な支給申請になってしまうため注意が必要です。


70歳未満に特有の「21,000円ルール」も確認が必要です。70歳未満の場合、1か月・1医療機関・医科/歯科別・入院/外来別に、21,000円以上の自己負担がある場合のみ合算の対象になります。院外薬局での薬代は処方箋を出した医療機関の自己負担額に合算して判定します。この細かいルールを知っているかどうかで、計算の精度が大きく変わります。


参考:LIFULL介護による制度の詳細解説(注意点と計算方法の整理に役立ちます)
高額医療・高額介護合算療養費とは|LIFULL介護


高額介護合算療養費の計算例:申請の手順と2年の期限を逃さない方法

計算して「支給対象になりそうだ」とわかったら、次は申請です。制度は自動では機能しません。申請を忘れると、時効(2年)を過ぎた段階で請求権が消滅します。これは消えない損失です。


申請の期限は、算定期間の最終日である7月31日の翌日(8月1日)から2年間です。過去の費用にさかのぼれるのは最大2年分ですが、だからといってぎりぎりまで待つ必要はありません。早めに動くほど手続きもスムーズです。


申請の基本的な流れ(国民健康保険・後期高齢者医療加入者の場合)



  1. 市区町村の窓口に「支給申請書兼自己負担額証明書交付申請書」を提出する

  2. 市区町村から「介護自己負担額証明書」が交付される

  3. 証明書を持って医療保険者(健保組合・協会けんぽなど)に提出する

  4. 医療保険者が市区町村に支給額を通知し、それぞれの保険者から振り込まれる


申請に必要なものは健康保険証・介護保険証・振込先口座番号が基本で、医療費の領収書は原則不要です。これは意外と知られていないポイントで、「領収書を全部とっておかなかった」という理由で申請をためらう必要はありません。


ただし、計算期間中に引越し・転居・医療保険の変更があった人は要注意です。変更前後のそれぞれの保険者に自己負担額証明書を発行してもらう必要があり、手続きが複雑になります。転居した場合は自治体側でデータを追えなくなることがあり、通知が届かないまま申請漏れになるケースが報告されています。


また、自治体によっては支給対象者に「申請のご案内」を12月頃から順次送付していますが、送付しない自治体も存在します。通知が来なくても、医療費と介護費の両方で高額の自己負担があった心当たりがあれば、自分から市区町村の担当窓口に問い合わせることをお勧めします。


家族の介護が始まったタイミングで、FP(ファイナンシャルプランナー)や社会保険労務士などの専門家に制度利用の有無を確認してもらうのも有効な手段のひとつです。家計全体の保障見直しのついでに、申請漏れを一緒にチェックしてもらえます。


参考:東京都保険医療局による申請窓口・手続きの詳細(申請に必要な書類と流れが整理されています)
高額介護合算療養費|東京都保健医療局


高額介護合算療養費の計算例:「世帯分離」との関係で損しないための独自視点

介護費用を節約するための戦略として「世帯分離」を検討する家庭は少なくありません。親だけを別世帯にすることで所得区分が下がり、介護費の自己負担上限が下がる…というメリットが広く紹介されています。ところが、この世帯分離が高額介護合算療養費に対して思わぬ逆効果を生む場合があります。


世帯分離をすると、子世帯と親世帯の医療費・介護費を合算して計算することができなくなります。たとえば、子が医療保険で多額の自己負担を抱えていた場合、その分を親の介護費に合算して全体の上限を活用することが不可能になります。世帯分離の前後で試算をしなければ、制度の恩恵を逆に減らしてしまうリスクがあります。


金融に関心が高い読者なら「節税・節約」の観点から世帯分離を検討することがありますが、この場合の判断は一面的な計算では不十分です。


世帯分離を検討する際に比較すべき5つの視点



  • 🔵 高額介護サービス費の限度額が下がるか上がるか

  • 🔵 高額介護合算療養費の合算対象が減って損するケースはないか

  • 🔵 国民健康保険料が世帯単位で増減する影響

  • 🔵 介護保険施設の食費・居住費の負担限度額認定(補足給付)への影響

  • 🔵 扶養控除・家族手当への影響


つまり世帯分離は条件次第でメリットにもデメリットにもなります。判断が複雑です。


要介護者が世帯に2人以上いる場合は特に注意が必要です。2人それぞれに高額な介護費が発生しているのに世帯を分けてしまうと、合算のメリットがどちらの世帯でも得られなくなることがあります。老老介護の世帯などで「節約のつもりが逆効果」というケースが実際に起きています。


こうした制度間の相互作用を把握するには、市区町村の窓口相談(無料)や地域包括支援センターへの相談が近道です。窓口に「世帯分離した場合としない場合を比較してほしい」と伝えれば、担当者がシミュレーションを手伝ってくれる場合があります。1度の相談で数万円〜数十万円の差が生じる可能性を考えれば、行動する価値は十分あります。


参考:世帯分離のメリット・デメリットを詳しく解説(制度との組み合わせを考える上で参考になります)
世帯分離とは?メリット・デメリットや注意点|みんなの介護



医療・介護 高額ガイド 令和5年4月版