

医療保険制度を海外と比較する際、まず押さえるべきは「誰が負担し、誰がどこまでカバーするか」という基本構造です。
代表的な制度タイプとしては、税を財源とし原則無料でサービスを提供する「国民保健サービス型(NHS)」、保険料を基盤とした「社会保険方式」、そしてアメリカのように民間保険と自己負担が大きな「市場型」があります。
具体的には、イギリスやスウェーデンなどは税方式のNHS型、日本・ドイツ・フランスは社会保険方式、アメリカは公的保険が限定的で民間医療保険と自己負担の比重が大きいのが特徴です。
参考)日本と諸外国の医療水準と医療費|世界に誇れる日本の医療保険制…
一方、日本は社会保険方式でありながら、税財源の比率が約4割と高く、税と保険料が拮抗する独自のミックス型と言われています。
参考)https://www.seijo.ac.jp/pdf/faeco/kenkyu/196/196-kawaguchi.pdf
日本の「国民皆保険」は、公的医療保険への加入を原則義務づけ、保険証があれば原則として誰でも必要な医療サービスを受けられる仕組みです。
参考)【日本と海外】医療制度の違いを解説!日本の医療水準は海外と比…
これに対し、アメリカではメディケア・メディケイドなど公的保険の対象は限定的で、多くの現役世代は勤務先の団体保険や個人で加入する民間医療保険に依存しています。
医療保険制度の海外比較では、一人当たり医療費とGDP比、そして自己負担割合を見ると特徴がはっきりします。
日本はイギリスに次いで一人当たり医療費が比較的低く、総医療費の対GDP比も主要国の中では抑えられている一方、一定の医療水準を維持しているとされています。
一方、アメリカは一人当たり医療費・医療費の対GDP比ともに世界でも突出して高い水準で、自己負担や民間保険料の負担も重くなりがちです。
医療費の財源構成を見ると、日本では公的財源(税+社会保険)が約7割で、その内訳が税約4割・社会保険約6割と、税の比率が高い社会保険方式という独特の構造を持っています。
ドイツやフランスは同じ社会保険方式でも、税の比率は1割未満にとどまり、保険料が主な財源となっている点で日本と異なります。
参考)https://www.kouiki-kansai.jp/material/files/group/3/1378455555.pdf
この違いは、景気変動や高齢化の進展が財源に与える影響、さらには現役世代と高齢世代の負担配分にも影響を与えるため、長期の資産計画を立てるうえで無視できない要素です。
医療費と財源構成の詳細な統計と国際比較の解説(医療費のGDP比、公的・私的支出の割合の参考)
公的医療保障制度と民間医療保険に関する国際比較
医療保険制度の海外比較では、「どの医療機関にどうアクセスできるか」というフリーアクセスの有無も重要なポイントです。
日本は、患者が自分で医療機関を自由に選べるフリーアクセス制度を採用しており、紹介状がなくても多くの病院・診療所を直接受診できます。
ドイツやアメリカも基本的にはフリーアクセスを認めていますが、アメリカでは加入している保険プランによって、受診できる医療機関がネットワーク内に限定されるケースが多く、実務上の制約が少なくありません。
一方、イギリスやフランスでは「GP(かかりつけ医)」を最初に受診し、必要に応じて専門医に紹介してもらうゲートキーパー制度が基本で、患者の自由度は低い代わりに医療費の抑制につながっています。
参考)日本と海外の医療制度の違い | フリーアクセス、保険、GPを…
フリーアクセスは短期的には受診のしやすさというメリットがありますが、医療資源の集中や重複受診、過剰検査の温床にもなり得るため、長期的な財政負担をどうコントロールするかが課題です。
金融的な観点では、アクセスのしやすさが「実際に医療サービスをどれだけ利用するか」を左右し、その結果として自己負担額や民間医療保険の必要保障額にも影響する点を押さえておく価値があります。
日本と諸外国の医療水準と医療費、フリーアクセスの意義についての解説(アクセスと費用の関係を確認したい場合)
日本と諸外国の医療水準と医療費
公的医療保障制度は多くの国で「基礎的な医療サービスの提供」を役割とし、その上に民間医療保険が上乗せ保障として位置づけられるケースが一般的です。
日本では、公的医療保険で一定割合(多くの現役世代は3割)の自己負担が求められる一方、「高額療養費制度」により自己負担額の上限が設けられているため、致命的な医療費破産リスクは諸外国と比べて抑えられています。
スイスでは全国民に医療保険加入を義務づけつつ、所得に応じた保険料補助を行うなど、公的な枠組みと民間保険の組み合わせによりユニバーサルなカバーを実現しています。
シンガポールではCPFという強制貯蓄口座と「メディセーブ」「メディシールドライフ」「メディファンド」を組み合わせ、貯蓄・保険・公的補助を三位一体で運用している点が特徴的です。
このように、公的医療保障と民間医療保険の組み合わせは国ごとに異なり、日本では公的保障の厚さゆえに「医療保障は過剰加入になりやすい」という指摘もあります。
参考)諸外国の医療保険制度の比較
金融・投資の観点では、公的医療保障でカバーされる範囲と上限を理解したうえで、差額ベッド代や収入減少リスクなど「公的制度では補えない部分」にフォーカスして民間保険を設計することが合理的と言えるでしょう。
諸外国の医療保険制度の比較と、日本の健康保険の海外療養費制度の詳細(公的保障と海外医療費の関係を確認したい場合)
諸外国の医療保険制度の比較
医療保険制度の海外比較ではあまり語られませんが、医療費水準や保険制度の違いが「医療ツーリズム」や「駆け込み渡航」のインセンティブを生み出している点は見逃せません。
アメリカなど医療費が高い国では、歯科治療や美容医療だけでなく、特定の外科手術を医療費の安い国で受けるケースが増えており、国際的な医療サービス市場が形成されています。
日本は一人当たり医療費が比較的抑えられているうえ医療水準も高いため、アジアなどから日本に治療目的で来日する「インバウンド医療ツーリズム」も一定のニーズがあります。
同時に、日本人が長期旅行や海外赴任時に現地の医療費水準や保険制度を十分理解しないまま渡航し、高額な医療費請求を受ける事例も少なくありません。
例えば、主要都市で盲腸の手術・数日入院をした場合、日本の一般例では30万円前後とされるのに対し、ロンドンやローマなど欧州主要都市では70万円前後に達するケースも報告されています。
こうした差は、旅行保険・海外療養費制度・クレジットカード付帯保険の補償内容を見直す際に無視できず、「どの国の医療保険制度の論理が、実際の請求額にどう反映されるか」を理解しておくことが、金融リテラシーの一部になりつつあります。
海外主要都市で入院・手術を受けた場合の費用例と、日本の海外療養費制度の説明(海外医療費リスクのイメージを掴む部分)
諸外国の医療保険制度の比較と海外療養費
医療保険制度の海外比較を金融の視点で見ると、「どこまでを公的制度に任せ、どこからを自助で賄うか」という設計思想の違いが、個人の資産配分や保険ニーズに直結していることが分かります。
日本のように公的医療保障が厚い国では、民間医療保険に過度に依存するよりも、老後資金や就業不能リスクへの備えに資金を振り向ける方が、期待リターンとリスクのバランスが取りやすい場合もあります。
逆に、公的医療保障が薄く自己負担や民間保険依存度が高い国では、保険料そのものが大きな固定費となり、可処分所得や投資可能額を圧迫しがちです。
このような環境では、保険契約の設計を通じて「どの程度のリスクを保険会社に移転し、どの程度を自己負担として許容するか」を、ポートフォリオ全体の観点から精密にコントロールする必要があります。
日本居住者であっても、海外赴任・留学・デジタルノマドといったライフスタイルの変化に伴い、適用される医療保険制度が変わる局面が増えています。
その意味で、「医療保険制度 海外 比較」は単なる制度紹介ではなく、自分のキャリア設計や資産形成の前提条件を検証するツールとして活用できるテーマと言えるのではないでしょうか。