第3号被保険者の年金額、夫死亡後に受け取れる金額と注意点

第3号被保険者の年金額、夫死亡後に受け取れる金額と注意点

第3号被保険者の年金額、夫死亡後に受け取れる仕組みと注意点

遺族年金をもらえば、夫の年金額の4分の3がずっともらえると思っていませんか?実は65歳以降は自分の老齢厚生年金との「差額だけ」しか上乗せされず、場合によっては追加ゼロになることもあります。


この記事のポイント3選
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受け取れる遺族年金の種類は2つ

第3号被保険者(専業主婦など)が夫死亡後に受け取れるのは「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」。子の有無・年齢・夫の働き方で金額が大きく変わります。

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65歳以降は「全額」ではなく「差額」支給

65歳を過ぎて自分の老齢厚生年金を受け取れる場合、遺族厚生年金は差額分のみ支給。フルに受け取れると思っていると大きな計算違いになります。

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2028年改正で子なしは原則5年に短縮

2028年4月以降、子どものいない60歳未満の配偶者への遺族厚生年金は原則5年の有期給付に変わります。今のうちに備えを確認しておくことが重要です。


第3号被保険者が夫死亡後にもらえる遺族年金の種類と基本の受給要件


第3号被保険者とは、会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている配偶者のことで、主に専業主婦がこれに当たります。自分で国民年金保険料を支払う必要がなく、国民年金に加入しているとみなされる立場です。


夫が亡くなった場合、第3号被保険者である妻が受け取れる遺族年金には、大きく分けて2つの種類があります。






















種類 財源 主な支給条件 2025年度の金額目安
遺族基礎年金 国民年金 18歳未満の子がいる妻 年額83万1,700円+子の加算
遺族厚生年金 厚生年金 厚生年金加入の夫に扶養されていた妻 夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4


遺族基礎年金は「子どものいる妻」が対象です。子どもが18歳になる年度末(3月31日)を過ぎると支給が終了します。遺族厚生年金は子どもの有無を問わず受給できますが、子どものいない30歳未満の妻は5年間の有期給付という点に注意が必要です。


遺族厚生年金の受給要件として重要なのが、夫の保険料納付状況です。夫が厚生年金の被保険者中に死亡した場合や、老齢厚生年金の受給権者だった場合などが対象となります。ただし、死亡日の前日において保険料納付済期間(免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが原則として求められます。


また、妻が遺族厚生年金を受け取るには、死亡した夫に「生計を維持されていた」ことが条件です。具体的には、妻の年収が850万円未満(所得655万5千円未満)であることが必要となります。これは条件が意外と緩いとも言えます。


参考リンク(遺族厚生年金の受給要件・年金額の公式情報)。
遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)- 日本年金機構


第3号被保険者が受け取る遺族年金の金額シミュレーション(具体例あり)

遺族年金の額は夫の収入・加入期間・子どもの有無・妻の年齢によって異なります。ここでは「夫の平均報酬月額40万円・厚生年金加入期間25年」を例に、よくあるケース別に整理します。


🔹 ケース①:子ども1人(18歳未満)がいる妻(年齢不問)
























年金の種類 年額 月額目安
遺族基礎年金(子1人) 107万1,000円 約8万9,250円
遺族厚生年金 49万3,290円 約4万1,108円
合計 156万4,290円 約13万358円


子どもが18歳になる年度末まではこの合計額を受け取れます。ただし、子どもが18歳を超えると遺族基礎年金はなくなり、遺族厚生年金のみに減ります。この落差は月5万円近くになるため、事前に把握しておくことが大切です。


🔹 ケース②:子なし・40〜64歳の妻


子どもがいない40歳以上65歳未満の妻には「中高齢寡婦加算」が上乗せされます。
























年金の種類 年額 月額目安
遺族厚生年金 49万3,290円 約4万1,108円
中高齢寡婦加算(40〜65歳) 62万3,800円 約5万1,983円
合計(65歳まで) 111万7,090円 約9万3,091円


中高齢寡婦加算は65歳になると終了します。65歳以降は自分の老齢基礎年金や老齢厚生年金との組み合わせに切り替わります。これが基本の流れです。


🔹 ケース③:子なし・65歳以上の妻(厚生年金加入歴なし)


妻自身が老齢基礎年金を満額(年額83万1,700円・2025年度)受け取れる場合、これに遺族厚生年金が上乗せされます。夫の老齢厚生年金が月16万円程度だったケースでは、遺族厚生年金は年額で89万円台になる計算です。


ただし、妻自身に老齢厚生年金の受給権がある場合は「差額調整」が行われます。これが後述する重要な注意点です。


遺族厚生年金の計算に使う報酬比例部分は、夫の加入期間が25年(300月)に満たない場合でも、300月とみなして計算されます。短期間の厚生年金加入でも一定額が保証されるのは、意外と知られていない救済ルールです。


参考リンク(専業主婦がもらえる遺族年金の金額シミュレーション)。
【シミュレーション】夫が亡くなったら年金はいくら?専業主婦が受け取れる遺族年金 - マネーコミ


第3号被保険者が65歳以降に受け取る遺族厚生年金の「差額調整」の落とし穴

夫の遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金は、両方まるまる受け取れると思っている人は少なくありません。しかし実際はそうではありません。


65歳以降に自分の老齢厚生年金を受け取れる妻は、遺族厚生年金について「差額分のみ」しか受け取れないルールがあります。具体的には、次の2つの額を比較して高い方が遺族厚生年金の額となります。



  • ① 夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3

  • ② 夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の2分の1 + 自分の老齢厚生年金の2分の1


そして支給されるのは、この遺族厚生年金の額から「自分の老齢厚生年金の全額」を差し引いた残り(差額)です。つまり、妻自身の老齢厚生年金が高いほど、遺族厚生年金として追加でもらえる金額は少なくなります。


例えば妻の老齢厚生年金が月8万円あり、遺族厚生年金(夫の3/4相当)が月7万円だったとします。この場合、遺族厚生年金は妻の老齢厚生年金を下回るため、追加の支給はゼロになります。厳しいですね。


ただし、自分の老齢基礎年金は遺族厚生年金と一緒に受け取ることが可能です。老齢基礎年金+老齢厚生年金(自分の分)を基本として、差額があれば遺族厚生年金が上乗せされるという仕組みと覚えておきましょう。


さらに重要な落とし穴がもう一つあります。遺族厚生年金の受給権がある場合、老齢年金の「繰下げ受給」が原則として使えないという点です。繰下げ受給とは、65歳からの受給開始を66〜75歳に遅らせることで最大84%も年金を増やせる制度です。しかし、66歳になる前に遺族厚生年金の受給権があると繰下げができないため、増額の恩恵を受けられません。令和10年(2028年)4月の法改正でこの点は一部緩和される予定ですが、現時点では要注意です。


参考リンク(65歳以降の遺族年金と老齢年金の併給ルールについて)。
年金の併給または選択 - 日本年金機構


第3号被保険者が知っておくべき2028年遺族年金改正の内容と備え方

2025年に法律が改正され、2028年4月1日から遺族厚生年金の制度が大きく変わります。これは第3号被保険者として夫の扶養に入っていた妻にも直接関わる重要な変更です。


最大のポイントは「子どものいない60歳未満の配偶者への遺族厚生年金が、原則5年間の有期給付になる」ことです。


現行制度では、子どものいない30歳以上の妻は遺族厚生年金を終身(ずっと)受け取ることができました。しかし改正後は次のように変わります。
























配偶者の年齢 2028年3月まで(現行) 2028年4月以降(改正後)
30歳未満(子なし妻) 5年間の有期給付 原則5年間の有期給付(変わらず)
30歳以上60歳未満(子なし妻) 無期給付(終身) 原則5年間の有期給付(大幅変更)
60歳以上(子なし) 無期給付(終身) 無期給付(変わらず)


つまり今30代・40代・50代前半で専業主婦(第3号被保険者)の方は、夫が先に亡くなった場合の生活設計を今のうちから見直す必要があります。これは使えそうな知識です。


ただし、すでに遺族厚生年金を受け取っている方への影響はありません。また、18歳未満の子どもがいる家庭については、子どもが18歳になるまでは現行制度と変わらず支給が続きます。子どもが18歳を超えた後に、さらに5年間は有期給付+加算が受けられる仕組みも導入される予定です。


5年で終わる分の収入減少を補う手段として、現段階で検討できることがいくつかあります。まず「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分の老齢基礎年金の見込み額を確認することが第一歩です。加えて、パート収入・iDeCo・民間の生命保険(収入保障保険など)を組み合わせて、遺族年金が終わった後の収入源を設計しておくことが重要です。


参考リンク(2028年改正の公式詳細と対象者の確認)。
遺族厚生年金の見直しについて - 厚生労働省


第3号被保険者が見落としがちな中高齢寡婦加算・寡婦年金・死亡一時金の活用ポイント

遺族基礎年金と遺族厚生年金以外にも、状況によって受け取れる給付金があります。知っているかどうかで年間数十万円の差が生まれることもあります。見落とさないようにしましょう。


💡 中高齢寡婦加算(年額62万3,800円・2025年度)


厚生年金加入者の夫が亡くなり、妻が40歳以上65歳未満で子どもがいない場合や、子どもが18歳になって遺族基礎年金が終了した場合に自動的に上乗せされる加算です。2025年度の金額は年額62万3,800円(月額5万1,983円)。老齢基礎年金満額の約3/4に相当する額で、65歳になるまで支給されます。


注意点として、夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある場合に限り支給されます。加入が20年未満だと対象外となるため、夫の年金加入記録を確認しておくことが重要です。


💡 寡婦年金(国民年金加入者の夫が亡くなった場合)


夫が自営業者などで国民年金(第1号被保険者)に10年以上加入しており、かつ婚姻期間が10年以上ある妻が対象です。支給期間は60歳から65歳までの5年間限定で、金額は夫の老齢基礎年金相当額の3/4。夫の国民年金加入期間が40年であれば年額62万3,775円(2025年度)が受け取れます。


これは条件が多い制度です。特に夫が老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取ったことがある場合は受給できないため要注意です。


💡 死亡一時金(12万〜32万円)


国民年金(第1号被保険者)の保険料を36か月以上納付した夫が、老齢・障害いずれの年金も受け取らずに亡くなった場合に支給される一時金です。納付月数によって12万〜32万円の範囲で変わります。申請期限は「夫が亡くなった日から2年以内」です。この2年以内という期限は忘れてはいけません。


なお、寡婦年金と死亡一時金は両方もらえないため、いずれか有利な方を選ぶことになります。一般的には長く受け取れる寡婦年金の方が総額は大きくなりやすいですが、健康状態や家計の状況を考えて判断しましょう。


🔎 まとめると:見逃しやすい給付は3種類



  • 中高齢寡婦加算:子なし妻・40〜65歳・年額62万3,800円(厚生年金加入の夫が対象)

  • 寡婦年金:自営業系の夫・婚姻10年以上・60〜65歳の5年間限定

  • 死亡一時金:国民年金36か月以上納付・2年以内に申請必須・12万〜32万円


自分がどの給付に該当するかをスムーズに確認したい場合、日本年金機構の「ねんきんネット」に登録して加入記録を確認したり、最寄りの年金事務所に相談するのが最短ルートです。手続きには夫の年金手帳戸籍謄本死亡診断書などが必要になるため、早めに準備しておくと安心です。


参考リンク(遺族年金制度全体の仕組みと各種給付の詳細)。
年金制度の仕組みと考え方 第13回 遺族年金 - 厚生労働省




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