特別寄与料の相場と計算方法・請求期限の完全ガイド

特別寄与料の相場と計算方法・請求期限の完全ガイド

特別寄与料の相場・計算・請求を徹底解説

特別寄与料をもらうと、相続税が通常より20%も多く課税されます。


この記事のポイント
💰
相場は1日5,000〜8,000円×日数×裁量割合

特別寄与料に法定額はなく、介護報酬基準を参考にした計算式で算出されます。1,500日介護すれば450万円前後になるケースも。

請求期限は「相続人を知った日から6ヶ月」

この期限を過ぎると家庭裁判所への申し立てができなくなります。相続発生後はすぐに行動することが必要です。

📋
相続税の2割加算に要注意

特別寄与料は遺贈とみなされ課税対象となり、ほとんどの場合で相続税が2割加算されます。受け取り額から税負担を想定した計画が欠かせません。


特別寄与料とは何か・寄与分との違い


特別寄与料は、2019年7月1日の民法改正施行により新設された制度です。それ以前は「寄与分」という制度が存在していましたが、寄与分が認められるのは法定相続人に限られていました。つまり、長男の妻がどれほど献身的に義父母を介護していても、相続人ではないという理由だけで、法律上は一切の遺産を受け取る権利が認められなかったのです。


この不公平さを解消するために設けられたのが特別寄与料の制度です。


| 項目 | 寄与分 | 特別寄与料 |
|------|--------|-----------|
| 対象者 | 法定相続人のみ | 法定相続人以外の親族 |
| 根拠条文 | 民法904条の2 | 民法1050条 |
| 請求先 | 遺産から直接取得 | 相続人に対して金銭請求 |
| 行為類型 | 労務提供+財産給付 | 労務提供のみ |
| 請求期限 | 遺産分割協議まで | 6ヶ月または1年 |


つまり制度の目的と対象者が明確に異なります。財産の贈与や出資など「財産上の給付」を行った親族は寄与分の対象にはなれますが、相続人でなければ特別寄与料の対象にもなれないので注意が必要です。


特別寄与料を請求できる人の範囲は「親族」に限定されます。法律上の親族とは、6親等以内の血族・配偶者・3親等以内の姻族です。たとえば子の配偶者(1親等姻族)、甥・姪(3親等血族)、配偶者の兄弟姉妹(2親等姻族)などが該当します。


一方で、内縁関係にある人・事実婚パートナー・家政婦・ヘルパーといった人物は法律上の親族ではないため、特別寄与料を請求することはできません。


参考:民法第1050条の全文(e-Gov 法令検索)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089#Mp-At_1050


特別寄与料の相場と計算方法(療養看護型・家業従事型)

特別寄与料の金額に法律上の明確な基準はなく、まず当事者間の話し合いで決めることが原則です。これが基本です。


話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所が「寄与の時期・方法・程度・相続財産の額その他一切の事情」を考慮して金額を定めます(民法1050条3項)。実務では以下の計算式が目安として広く参照されています。


🏥 療養看護型(介護・看護をしたケース)


$$\text{特別寄与料} = \text{日当額} \times \text{介護日数} \times \text{裁量割合}$$


- 日当額:介護保険制度の介護報酬基準額を参考に、要介護度に応じて1日あたり5,000〜8,000円が目安
- 裁量割合:職業介護士ではなく親族が行ったことを考慮して、一般的に0.5〜0.7をかける


具体的な計算例を見てみましょう。たとえば日当額6,000円、介護日数1,500日(約4年間)、裁量割合0.5の場合、次のようになります。


$$6{,}000 \times 1{,}500 \times 0.5 = 4{,}500{,}000\text{(円)}$$


つまり450万円が一つの目安になります。1,500日という数字は、新聞4〜5年分の朝刊を積み上げたくらいのイメージです。毎日介護記録をつけ続けてきた年数と考えると、その重さが伝わるでしょう。


🏢 家業従事型(事業を手伝ったケース)


$$\text{特別寄与料} = \text{年間給与相当額} \times (1 - \text{生活費控除率}) \times \text{寄与年数}$$


- 年間給与相当額:国の「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」をもとに、同種・同年齢層の平均賃金を参照して算出
- 生活費控除率:住居・食費など生活費の提供を受けていた場合、その分を控除する割合。0.5前後が多い


たとえば月額給与20万円相当の家業に5年間従事し、生活費控除率0.5のケースでは次のようになります。


$$20\text{万円} \times (1 - 0.5) \times 60\text{ヶ月} = 600\text{万円}$$


これだけの額になるケースも十分あり得ます。


なお、特別寄与料の上限は「遺産総額から遺贈の価額を差し引いた金額」です(民法1050条4項)。算出上の特別寄与料が700万円であっても、遺産の残額が500万円であれば、受け取れる上限は500万円となります。


参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html


特別寄与料が認められる4つの要件と証拠の集め方

特別寄与料を受け取るには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。これが条件です。


| 要件 | 内容 |
|------|------|
| ①親族であること | 相続人・相続放棄者・欠格廃除者を除く6親等内の血族等 |
| ②無償の労務提供 | 給与や報酬を受け取らずに介護・家業従事をしていた |
| ③財産の維持・増加 | 介護をすることで介護費用の支出が抑えられたなど |
| ④因果関係 | ①②③の行為が財産維持につながったことが証明できる |


さらに実務上は次の追加基準も重視されます。


- 🗓️ 一定期間の継続:一般的に1年以上の継続が求められ、数週間〜数ヶ月の短期的な援助は認められにくい
- 💪 大きな負担の存在:仕事のかたわらたまに訪問する程度では不十分
- ❌ 対価を受け取っていないこと:「お小遣い程度」は許容範囲のこともあるが、給与・報酬・贈与があれば原則として認められない
- 📌 親族通常義務の範囲を超えること:月に数回のお見舞いや通院の送迎だけでは、通常の親族間の義務の範囲内とされることが多い


特別寄与料の主張を裏付けるために有効な証拠として、具体的には介護状況を記した日記や日誌・要介護認定通知書・医師の診断書・介護サービスの利用記録・写真・銀行口座の入出金履歴(立替費用)などが挙げられます。


意外なポイントとして、葬儀の手配や遺品整理・相続手続きは「相続開始後の行為」であるため、特別寄与料の寄与行為には含まれません。しっかり記録を残すべきは、あくまで被相続人が生存していた期間中の活動に限られます。


調停審判での成立率に関して、最高裁判所事務総局の「令和5年司法統計年報」によると、特別寄与料に関する調停事件の調停成立数は既済件数239件中55件(約23.0%)にとどまります。約半数の114件(約47.7%)は申立が取り下げられており、成立・認容にいたるケースは思いのほか少数派です。


参考:裁判所「令和5年 司法統計年報 家事編」
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/719/012719.pdf


特別寄与料の請求期限・手続きの流れ

特別寄与料には期限があります。これは必須の知識です。


民法1050条2項ただし書きにより、家庭裁判所への申立期限は次の2つのうち、いずれか早い方となっています。


- 消滅時効:特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6ヶ月
- 除斥期間:相続開始(被相続人の死亡日)から1年


特に「相続人を知ってから6ヶ月」という時効は短く、油断していると権利が消滅します。相続が発生したら早急に動き始めることが重要です。


手続きの流れ


まず行うのは、相続人への直接請求です。特別寄与者が相続人に対して、収集した証拠資料(日記・要介護認定書・診断書など)を示しながら、寄与の内容と金額を説明します。合意が得られたら「合意書」を作成し、当事者全員が署名・捺印します。口頭での約束だけでは「言った・言わない」のトラブルになるリスクがあるため、書面化は必須です。


話し合いがまとまらない場合は、相手方の住所地の家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分調停」を申し立てます。調停でも決着がつかなければ「審判」に移行し、裁判所が最終的な金額と支払義務を決定します。


| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
|---------|------|-----------|
| 証拠収集 | 日記・診断書・要介護認定書などを整理 | 随時 |
| 直接交渉 | 相続人と任意に交渉・合意書を作成 | 数週間〜数ヶ月 |
| 調停申立 | 家庭裁判所に処分調停を申立 | 数ヶ月〜1年程度 |
| 審判 | 調停不調時に裁判所が判断 | さらに数ヶ月 |


調停は平日昼間に開催されるため、会社員の方は有給休暇を取得して出頭する必要があります。また弁護士費用も加わることから、請求金額とのバランスを考えることも現実的な視点です。


参考:裁判所公式サイト「特別の寄与に関する処分調停」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_25/index.html


特別寄与料と相続税の2割加算・申告期限の落とし穴

金融に関心がある方にとって、この節は特に重要です。


特別寄与料は「被相続人から遺贈を受けたもの」とみなされるため(相続税法4条2項)、相続税の課税対象となります。遺産そのものを相続しているわけではないのに、税法上は遺贈と同等の扱いを受ける点が見落とされやすいポイントです。


⚠️ 2割加算の問題


相続税法18条は、被相続人の「一親等の血族および配偶者以外」が財産を取得した場合、相続税額に20%を加算すると規定しています。特別寄与者のほとんど(長男の妻・甥・姪・配偶者の兄弟など)は一親等の血族でも配偶者でもないため、原則として2割加算の対象となります。


$$\text{加算額} = \text{税額控除前の相続税額} \times 0.2$$


たとえば通常の相続税計算で50万円の税額になった場合、2割加算後は60万円になります。これは10万円の追加負担です。受け取った特別寄与料の金額から、この税負担を差し引いた「手取り額」を事前に試算しておくことが必要です。


📅 申告期限にも注意


特別寄与料の相続税申告期限は、「特別寄与料の金額が定まったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」(相続税法29条)です。相続発生日ではなく、特別寄与料が確定した日が起算点になる点が通常の相続税申告と異なります。


一方、特別寄与料を支払った相続人の側は、課税遺産額から特別寄与料を控除できます(相続税法13条4項)。相続税申告をすでに提出済みの場合は、特別寄与料確定を知った日の翌日から4ヶ月以内に「更正の請求」をすれば還付が受けられます(相続税法32条1項)。


支払う側・受け取る側、双方に手続きが生じるという点を覚えておけばOKです。


| 立場 | 相続税の扱い | 申告期限 |
|------|------------|---------|
| 受け取る側(特別寄与者) | 課税対象+原則2割加算 | 金額確定を知った日から10ヶ月 |
| 支払う側(相続人) | 課税遺産から控除可 | 申告済みなら確定を知った日から4ヶ月で更正請求 |


参考:国税庁「民法(相続法)改正に伴う相続税・贈与税の課税関係の考察」
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/105/04/index.htm


特別寄与料の請求を有利に進める独自視点:「介護日誌」の金銭的価値

ここからは、検索上位の記事ではほとんど語られていない独自の視点をお伝えします。


特別寄与料の算定で最も争点になりやすいのが「介護日数の証明」です。日当額や裁量割合は実務的な相場がある程度固まっていますが、実際の介護日数を第三者が証明する客観的な資料が乏しいケースが多く、この点で交渉が決裂することが珍しくありません。


先ほどの計算式をもう一度見ると、介護日数が変わるだけで最終的な特別寄与料は大きく変わります。


$$6{,}000\text{(円)} \times 500\text{(日)} \times 0.5 = 150\text{万円}$$


$$6{,}000\text{(円)} \times 1{,}500\text{(日)} \times 0.5 = 450\text{万円}$$


日数が3倍になれば特別寄与料も3倍になります。300万円の差は非常に大きいですね。


ところが、多くの人は介護の記録を残していません。「毎日のことだから覚えている」と思っていても、相続人側から「週に2〜3日程度では?」と反論されれば、記憶だけでは対抗しにくくなります。


そこで実践的な対策として、介護日誌アプリやノートを使って以下を記録することを強くおすすめします。


- 📅 日付・時間・滞在時間
- 🩺 行った介護の内容(食事介助・入浴・通院同行・服薬管理など)
- 🏥 訪問した医療機関・担当医師名
- 💊 購入した薬・消耗品の領収書(立替費用の記録)


この記録が蓄積されると、単なる証拠資料を超えて「客観的な介護日数の台帳」として機能します。家庭裁判所の調停委員や審判官が介護実態を判断する際に、これほど説得力のある資料はありません。


記録ツールとしては、介護保険サービスを利用している場合は「ケアプラン」「サービス利用票」が行政・事業者側に保管されているため、開示請求によって入手できる場合があります。これらは第三者機関が作成した資料であるため、個人の日誌よりもさらに高い証明力をもちます。


要介護認定を受けていた期間・介護度の認定区分・利用サービスの種類は、自治体の介護保険担当課に問い合わせれば記録が残っていることもあります。記録があれば問題ありません。


介護した年数×日数×金額の積み重ねを、将来の権利主張に備えて「資産」として保存していく。これが特別寄与料を最大限に活用するための、最もコストのかからない実践です。


参考:厚生労働省「介護保険サービスにおける記録の保存」関連情報
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html




遺産分割における「介護」の取扱い-寄与分・特別寄与料・使途不明金・介護負担の不履行等-