

承認後に30日以内に負担金を払わないと、審査手数料14,000円がそのまま消えて申請が白紙に戻ります。
相続土地国庫帰属制度を利用する際、最初に支払うお金が「審査手数料」です。金額は土地1筆につき14,000円で、申請書に収入印紙を貼る形で納付します。
ここで重要なのが「筆(ふで)」という単位の意味です。登記上の一区画が1筆であり、たとえ隣り合った土地でも登記が別々なら、それぞれ14,000円ずつかかります。3筆あれば42,000円、5筆あれば70,000円になります。
審査手数料が返還されないことが原則です。申請を取り下げた場合でも、審査の結果が不承認・却下でも、一切返ってきません。「とりあえず申請してみよう」という姿勢では、無駄な出費になるリスクがあります。
また、審査期間の標準は8ヶ月とされていますが、実際には半年〜1年程度かかることが多く、場合によってはさらに延びることもあります。費用を出してから長い期間待つことを念頭に置きましょう。申請前に土地の要件を丁寧に確認するのが基本です。
申請後に不承認となる主な理由としては、以下のものが挙げられます。
事前に法務局の相談窓口や専門家に確認してから申請することで、14,000円をムダにしないよう準備できます。
法務省の公式情報として、制度の概要・手続きの詳細はこちらが参考になります。
審査を通過すると次に「負担金」の納付が求められます。これが制度の費用の中心であり、金額は土地の種類・場所・面積によって大きく変わります。負担金が原則です。
基本の金額は1筆あたり20万円です。ただし、これはあくまで「原則」であり、以下の3種類の土地については面積に応じた計算式が適用されます。
| 土地の種類 | 条件 | 目安金額(例) |
|---|---|---|
| 宅地(市街化区域・用途地域内) | 街の中心部など | 100㎡:約55万円 / 200㎡:約80万円 |
| 農地(農振農用地・土地改良区域等) | 優良農地として指定された農地 | 500㎡:約72万円 / 1,000㎡:約110万円 |
| 山林(主に森林として利用) | 木が生えている山林 | 1,500㎡:約27万円 / 3,000㎡:約30万円 |
| その他(原野・雑種地など) | 木が少ない原野など | 一律20万円 |
市街化区域内の宅地で200㎡の土地というのは、ちょうど建売住宅1棟分の敷地くらいの広さです。そのような土地を国に手放すのに、約80万円かかる計算になります。意外ですね。
この負担金は「10年分の管理費用」の相当額として設定されています。国が引き取った後にかかるであろう草刈り・境界管理などのコストを、申請者があらかじめ一括で支払うという考え方です。一度払えば、それ以上請求されることはありません。
負担金の通知を受け取った日の翌日から30日以内に納付しなければ、承認が自動的に失効します。期限を過ぎると再申請が必要となり、審査手数料も再度かかります。納付の期限だけは覚えておけばOKです。
審査手数料と負担金だけを見て「20万円ちょっとで済む」と考えていると、実際の総費用に驚かされます。制度を使うためには、いくつかの追加費用が生じます。これは痛いところですね。
まず「境界確定費用」があります。制度の要件として土地の境界が明確であることが必要なため、境界が不明確な土地は確定測量が必要です。費用は一般的に30万〜80万円程度とされており、地形や隣地の状況によってはさらに高額になることがあります。古い土地や測量図がない土地では、特に注意が必要です。
次に「専門家への依頼費用」が挙げられます。申請書の作成は複雑で、司法書士・行政書士・弁護士などに依頼するケースが多いです。報酬の相場は10万〜50万円程度とされています。また、土地家屋調査士に境界確定や仮杭の設置を依頼する場合は15万〜30万円程度が別途かかります。
さらに「建物・工作物の撤去費用」も見落とせません。制度の対象は更地に限られるため、古い小屋や物置、コンクリートブロック塀、井戸などが残っていれば撤去が必須です。撤去規模により10万〜100万円超になるケースもあります。
最後に、登記事項証明書・公図・地積測量図などの書類取得費(1通数百〜1,000円程度)や、郵送費・印紙代などの細かな実費も積み重なります。
つまり、総費用は以下のような試算になります。
条件が重なれば総額200万円以上になることも珍しくありません。これが条件です。費用面を事前に把握したうえで、制度を使うべきかどうかを冷静に判断することが重要です。
あまり知られていない節約ポイントとして、「隣接地の負担金算定特例」があります。これは使えそうです。
この特例とは、申請者が隣接する2筆以上の土地を「1つの土地とみなして」負担金を算定するよう法務大臣に申し出ることができる仕組みです(相続土地国庫帰属法施行令第6条)。
通常、2筆の原野を国庫帰属させる場合は「20万円×2筆=40万円」の負担金が必要ですが、この特例を使えば「2筆まとめて20万円」で済みます。つまり20万円の節約になります。
ただし、この特例にはいくつかの条件があります。
また、面積に応じて負担金が変動する土地(山林など)に特例を適用する場合は、2筆の面積を合算した上で計算します。そのため、面積が増えるほど単価が下がる仕組みになっており、小さな筆を個別に申請するよりも合算した方が安くなることがあります。
山林で1,500㎡の土地が2筆隣接している場合を考えると、個別申請では2回分の計算で約54万円になるところ、合算すると合計3,000㎡として計算され約30万円程度になります。差額は約24万円です。
特例の申出には専用の様式が必要で、承認申請書を提出した法務局の本局に提出します。この節約策を活かすためには、申請の段階から「隣接地があるかどうか」を確認しておくことが大切です。
制度の費用を試算した結果、「こんなにかかるなら別の方法を考えよう」と感じる人も多いです。どういうことでしょうか?実は、状況によっては他の手段の方が合理的なケースがあります。
まず「生前贈与で取得した土地は制度の対象外」であることを確認してください。この制度が使えるのは、相続・遺贈で取得した土地のみです。自分で購入した土地や、生前贈与を受けた土地は申請資格がありません。これを知らずに費用や時間をかけて準備してしまうと、取り返しのつかない損失になります。
代替手段として「相続放棄」があります。相続人となったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てることで、土地を含む相続財産すべての権利・義務を放棄できます。ただし、プラスの財産(預貯金や有価証券など)も同時に手放すことになる点を理解しておく必要があります。
「土地の売却」も有力な選択肢です。売れる土地であれば、費用を支払わずに手放せるだけでなく、現金を得ることもできます。都市部の宅地であれば流通性が高く、早期売却の可能性もあります。一方、山林や農地・原野は買い手がつきにくいため、制度の活用が現実的な場合もあります。
「自治体やNPO法人への寄付」という方法も存在します。地域活動に活用できる土地であれば、受け入れてもらえることがあります。ただし、譲渡所得税や登記費用が発生する場合がある点は注意が必要です。
国庫帰属制度が最も有効な場面は、「売れない・貸せない・活用もできない」土地で、かつ「相続で取得した土地である」ケースです。費用面を他の選択肢と比較した上で、制度の利用を最終的に判断するのが賢明といえます。
承認率は直近のデータで94%超と高水準ですが、審査期間は平均8ヶ月〜1年かかります。費用だけでなく時間コストも踏まえ、早めに動くことが有効です。
知らないと損する相続土地国庫帰属制度の注意点10(専門家解説)