家屋調査・リハビリ加算を正しく理解して損をしない方法

家屋調査・リハビリ加算を正しく理解して損をしない方法

家屋調査・リハビリ・加算の仕組みと正しい活用法

家屋調査の交通費は病院側が負担してくれると思っている方が多いですが、実は全額あなたの自費負担になります。


この記事の3つのポイント
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家屋調査とは?

退院前にPT・OTが自宅を訪問し、段差・手すり・動線を確認するリハビリ連携サービス。退院後の転倒リスクや介護負担を事前に減らせる。

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加算・費用の仕組み

退院前訪問指導料は580点(医療保険)。ただし交通費は法律上「患家(患者側)負担」と明記されており、病院は請求できる。

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住宅改修の落とし穴

介護保険の住宅改修は生涯上限20万円。事前申請なしで工事を始めると給付が受けられなくなるため、順序が最重要。


家屋調査(リハビリ)の基本と退院前訪問指導加算の概要

退院前の家屋調査とは、主に回復期リハビリテーション病棟に入院している患者が自宅へ退院するにあたって、担当の理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が実際の自宅を訪問し、玄関・廊下・トイレ・浴室・寝室などの生活環境を確認するプロセスのことです。病院内でのリハビリだけでは再現できない「実際の暮らしの場面」を目で見て評価できる点が最大の特長です。


この家屋調査を行った場合に医療機関が算定できるのが、退院前訪問指導料(B007)580点です。つまり、医療保険の仕組みの中に、「退院前に患家へ訪問して指導する行為」を評価する点数が設けられているということです。


1点=10円で換算すると、580点は5,800円相当。患者の自己負担割合が1割なら580円、3割なら1,740円の負担となります。金額面だけ見ると安価ですね。


ただし、この点数はあくまで「在宅療養に向けた指導料」です。訪問にかかる交通費は診療報酬の算定範囲外で、法令上「指導に要した交通費は患家の負担とする」と明記されています。病院スタッフがマイカーやタクシーで訪問した場合、その実費交通費はすべて患者・家族が支払うことになります。病院が好意で負担してくれると思い込んでいると、当日に想定外の請求が来て戸惑う方が少なくありません。これは費用面で要注意です。


また、2026年度の診療報酬改定で重要な変更点があります。従来、回復期リハビリテーション病棟では退院前訪問指導料が「包括」範囲に含まれており、個別算定ができませんでした。今回の改定では、この包括から退院前訪問指導料が除外され、出来高算定(個別に点数を立てられる)として明確に位置づけられました。医療機関にとっては新たな収益項目となり得る変更点です。


算定要件の条件が基本です。


- 継続して1か月を超えて入院する見込みの患者であること
- 退院して「家庭に復帰」する患者が対象(施設入所予定は対象外)
- 入院中1回を限度(早期訪問の必要がある場合は2回)
- 指導内容の要点を診療録に記載すること


つまり特別養護老人ホームへの入所予定者は対象外ということです。自宅に帰る患者のみが加算の対象となります。退院先が施設になりそうなケースでは算定できないため、ケアマネジャーへの相談を早めに進めることが大切です。


参考:退院前訪問指導料の算定要件の詳細は厚生労働省の点数表通知を確認ください。


B007 退院前訪問指導料 – 今日の臨床サポート(通知全文)


家屋調査でチェックする場所と加算申請前に知るべき費用の仕組み

家屋調査では、担当のPT・OTが限られた時間内で家全体を確認します。主に見るべき場所とポイントを把握しておくと、家族側もスムーズに立ち会えます。


玄関・上がり框(あがりかまち)では、段差の高さと手すりの必要性を確認します。古い住宅では上がり框の高さが40cm以上あることも珍しくなく、その場合は高さ約20cmの踏み台設置を検討します。ポイントは「ビス止め」をするかどうかです。踏み台を置くだけでは介護保険の住宅改修として認められません。ビス止めで施工することが給付対象の条件です。


トイレは家屋調査のなかで最も重要な場所の一つです。便器の高さは通常40cm程度で、そこからの立ち上がりが可能かどうかを入院中に評価しておく必要があります。


浴室では、浴槽のまたぎ動作・洗体動作・浴槽内での着座立ち上がりを確認します。入浴関連の福祉用具(バスボード・シャワーチェアなど)は直接肌に触れるため衛生上の理由からレンタルができません。そのため「特定福祉用具」として購入扱いになり、介護保険で1〜3割の自己負担額で購入できます。これは使えそうです。


費用面の全体像を整理すると以下のとおりです。


項目 費用の種類 自己負担の目安
退院前訪問指導料(580点) 医療保険 1割:580円〜3割:1,740円
訪問時の交通費 全額自費 実費(距離により異なる)
住宅改修費(手すり・段差解消等) 介護保険(上限20万円) 1〜3割(2〜6万円程度)
特定福祉用具(入浴補助用具等) 介護保険(年間10万円上限) 1〜3割


退院前訪問指導料の点数自体は安価ですが、交通費はまったく別のラインで発生します。病院が遠方にある場合、スタッフ複数名の交通費が患者負担となることも念頭に置いておく必要があります。


病院によっては、交通費を事前に説明するところとそうでないところがあります。訪問の日程を決める前に「交通費はどのくらいかかりますか?」と確認することをおすすめします。これが条件です。


参考:家屋調査で見るべき場所別ポイントをわかりやすく解説しています。


【療法士向け】退院前の家屋調査で見ておくべき必須ポイント – メディケア・リハビリ


住宅改修への介護保険加算:20万円枠を正しく使い切るための知識

家屋調査でPT・OTが「手すりを付けましょう」「踏み台が必要です」と提案した後、実際の工事に使えるのが介護保険の住宅改修費支給制度です。上限は生涯20万円(要介護度に関わらず一定)で、自己負担割合は1〜3割。1割負担なら最大2万円の自己負担で18万円分の工事ができる計算です。


つまり18万円が実質給付される可能性がある、ということですね。


ただし、この制度には多くの方が知らない重要なルールがあります。
工事着工前に市区町村への事前申請が必須です。事前申請を行わずに先に工事をしてしまった場合、介護保険からの支給は一切受けられません。工事代金をすべて自己負担することになる、痛いケースです。


退院が決まると「早くリフォームしなければ」と焦ることがありますが、順序は厳守する必要があります。


住宅改修の手続きの流れは次のとおりです。


  1. 要介護(支援)認定を受けていることを確認
  2. ケアマネジャーまたは作業療法士が「住宅改修が必要な理由書」を作成
  3. 市区町村へ事前申請し、承認を受ける
  4. 工事業者に着工してもらう
  5. 工事完了後、完了届と領収書・工事写真を提出(事後申請)
  6. 審査が通れば工事費の7〜9割が支給される


20万円の生涯枠は一見大きく見えますが、玄関手すり・トイレ手すり・浴室手すり・敷居撤去工事などを一度にやると意外と早く消化されます。特定の事情がない限り、一度にすべての工事を行う必要はありません。今後の生活変化を見据えながら、数回に分けて使うことも可能です。


ただし、20万円の枠には「3段階リセット」という仕組みがあります。要介護度が3段階以上上昇した場合(例:要介護1→要介護4)、または転居した場合に限り、限度額が20万円にリセットされます。一方、要介護度が下がっても、その後また上がっても2回目のリセットは対象外です。これは知っておく価値があります。


また、「住宅改修が必要な理由書」を作成できる人は限られています。居宅介護支援事業者等に所属するケアマネジャー、作業療法士(OT)、福祉住環境コーディネーター2級以上などの有資格者のみが対象です。誰でも作れるわけではない点も注意が必要です。


参考:住宅改修の20万円の使い方・リセット条件を詳しく解説しています。


介護保険の住宅改修は限度額20万円!自己負担額やリセットされる条件 – リフリ


退院時リハビリテーション指導料との違い:加算を正しく区別して把握する

「退院前訪問指導料(580点)」と混同されやすい加算として、退院時リハビリテーション指導料(300点)があります。この2つは目的が異なるため、両方が算定されるケースもあります。区別できないと、受けているサービスや請求の内容を理解できないまま支払いをすることになります。


退院時リハビリテーション指導料は、患者の退院日に1回のみ算定できる項目です。医師が患者の身体状態や家屋環境、今後の介護の必要性を考慮したうえで退院後の生活に関する指導を行った場合に算定されます。病院スタッフが自宅を訪問する必要はなく、退院当日に院内で指導を行っても算定できます。


加算名 点数 場所 タイミング 主な目的
退院前訪問指導料 580点 患者の自宅(訪問) 退院前(入院中) 在宅療養に向けた環境評価・指導
退院時リハビリ指導料 300点 病院内でも可 退院日当日1回 退院後の動作訓練・生活指導


つまり「自宅へ訪問する費用」と「退院日に指導を受ける費用」は別物ということです。


2つの加算は同日に算定されることもあります。退院前訪問指導料は退院日に算定するルールであるため(実施日は入院中でよいが算定は退院日)、退院時リハビリ指導料と合計すると患者負担は相応の金額になります。明細書を受け取ったときに「なぜこの点数が立っているのか」を理解できるかどうかは、医療費の無駄な支払いを防ぐうえでも大切です。


死亡退院の場合は退院時リハビリテーション指導料は算定できません。これは例外として覚えておきたいポイントです。


なお、2026年度の診療報酬改定では退院時リハビリテーション指導料にも見直しが入っています。算定対象の拡充や要件整理が進んでいるため、最新の厚生労働省通知を確認するか、医療機関の窓口でたずねることを推奨します。


参考:退院時リハビリテーション指導料の算定要件・指導内容の詳細解説です。


退院時リハビリテーション指導料とは?算定ポイントと実際の指導内容 – マイナビコメディカル


家屋調査後に損しないための「住宅改修×介護保険加算」独自活用術

家屋調査で療法士が提案した住宅改修を「とりあえず全部やっておこう」と一度に実施するのは、実はおすすめできない選択肢です。これが意外と知られていない落とし穴です。


理由は単純で、退院直後と1〜2年後では身体機能が大きく変化することがあるからです。リハビリによって回復が進むと、当初は「必要」と判断された手すりが不要になるケースがあります。逆に、退院後に症状が進行して、当初の手すりでは対応できなくなることもあります。無駄な手すりを付けないことは住宅改修の鉄則です。


こうした変化を想定した活用法として有効なのが、段階的な改修です。退院直後に最低限必要な箇所(玄関・トイレ・浴室の1か所)から始め、残りの枠を保留しておく方法が現実的です。20万円の枠は複数回に分けて申請できます。


また、福祉用具レンタルと住宅改修の組み合わせも重要な戦略です。手すりが必要かどうかわからない箇所には、まず仮設置できる「置き型手すり(レンタル可能な製品)」を試してみて、恒久的に必要と判断できてから住宅改修に切り替える流れが、費用の無駄を抑えます。


退院・退所加算という介護保険の加算も活用できます。これは、ケアマネジャー(居宅介護支援事業者)が入院・入所先の医療機関・施設スタッフと連携したことを評価する加算です。家屋調査の際にケアマネジャーが立ち会ったり、病院スタッフと情報交換を行ったりすることで、この加算の要件を満たすことができます。ケアマネジャーに「退院・退所加算の算定は大丈夫ですか?」と事前に確認しておくと良いでしょう。


住宅改修後に「思ったより不便だった」「やり直したい」という後悔を防ぐには、家屋調査で療法士にできる限り細かく相談しておくことが重要です。具体的には次の点を質問しておくと役立ちます。


- 今後1〜2年で機能変化が予想される部位はどこか
- 今は不要でも今後必要になりそうな箇所はあるか
- 工事の優先順位(まずどこから着手すべきか)はどこか
- 20万円枠を分割した場合の最適な計画はどうなるか


これらを整理してから工事業者・ケアマネジャーと打ち合わせをすることが大切なのです。


在宅復帰後も訪問リハビリを継続する場合、費用感としては介護保険が適用される訪問リハビリが1回(20分)あたり308単位、1単位約10〜11.12円で換算すると約300〜340円(1割負担の場合)です。週2回利用すると月に2,400〜2,700円程度の自己負担目安になります。思ったより少額で継続できる制度だということです。


参考:介護保険の訪問リハビリテーションの費用・仕組みを詳しく解説しています。


介護保険を利用した訪問リハビリとは?対象者やメリット・費用について – 朝日生命あんしん介護