

特定口座で源泉徴収ありを選んでも、確定申告しないと3年間の損失繰越が使えません。
申告分離課税とは、特定の所得を他の所得と合算せず、独立して税額を計算し確定申告で納税する課税方式です。給与所得や事業所得などの総合課税とは異なり、分離して計算します。
参考)https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/si/J0076.html
対象となる主な所得は株式等の譲渡所得、土地建物等の譲渡所得、退職所得、山林所得などです。これらの所得は高額になりやすく、総合課税で合算すると税負担が過大になるため、独自の税率が設定されています。
株式譲渡による所得は20.315%の税率が適用されます。内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です。
この税率は所得金額にかかわらず一定です。
参考)総合課税と申告分離課税はどちらが得?仕組みの違いと判断ポイン…
不動産の譲渡所得は所有期間によって税率が異なります。所有期間5年以下の短期譲渡所得は39.63%、5年超の長期譲渡所得は20.315%となります。所有期間の判定は売却した年の1月1日時点で行います。
参考)不動産売却で得た所得は分離課税?所得の種類と計算方法|一括査…
総合課税は所得が増えるほど税率が上がる累進課税制度で、5%から最高45%まで段階的に上昇します。課税所得が195万円以下なら5%、4,000万円超なら45%が適用されます。
参考)総合課税と申告分離課税の違いやメリット・デメリットを徹底解説…
申告分離課税は基本的に一律税率です。年収3,000万円の経営者が株式売却で2,000万円の利益を得た場合、総合課税なら最高税率45%が適用される可能性がありますが、申告分離課税なら一律20.315%で済みます。
税負担の差は約500万円にもなります。
参考)申告分離課税とは?メリットと税金削減につながる節税効果5つ
高所得者ほど申告分離課税のメリットは大きくなります。課税所得が695万円を超えると、総合課税の税率は20%を超え始めるため、株式譲渡益などは申告分離課税の方が有利です。
ただし配当所得については選択制です。総合課税を選ぶと配当控除が適用され、課税所得695万円以下なら申告分離課税より税負担が軽くなる可能性があります。配当控除率は課税所得1,000万円以下で所得税10%、住民税2.8%です。
参考)No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度|国…
特定口座の源泉徴収ありを選択した場合、証券会社が税金を源泉徴収して納税するため、原則として確定申告は不要です。
納税手続きが口座内で完結します。
参考)【No893】確定申告における特定口座・源泉徴収あり口座の申…
しかし損失の繰越控除を受けたい場合は確定申告が必須です。上場株式等の譲渡損失は翌年から3年間繰り越すことができますが、適用には損失が生じた年の確定申告と、繰越期間中は連続して確定申告を行うことが必要です。取引がない年も申告が必要な点に注意が必要ですね。
参考)譲渡損失の3年間の繰越控除について教えてください。|よくある…
不動産売却で特別控除を受ける場合も確定申告が必要です。マイホーム売却時の3,000万円特別控除や、相続した空き家の3,000万円特別控除を適用するには、税額がゼロになる場合でも確定申告が求められます。申告しなければ特例が適用されず、多額の譲渡所得税が課される可能性があります。
参考)申告分離課税でも確定申告が必要なケースとは?仕組みと注意点を…
複数の証券口座で損益通算したい場合も確定申告が必要です。A証券で100万円の利益、B証券で50万円の損失がある場合、確定申告すれば差し引き50万円に対して課税され、払いすぎた税金が還付されます。
参考)特定口座とは?源泉徴収あり・源泉徴収なしの違いや確定申告との…
医療費控除や住宅ローン控除などの所得控除・税額控除を受けたい場合は、申告分離課税の所得があっても確定申告が必要です。ただし申告すると株式譲渡益が合計所得に含まれ、配偶者控除や扶養控除の判定に影響する可能性があるため注意が必要です。
上場株式等の譲渡損失は3年間繰り越せます。2025年に700万円の損失が出た場合、2026年に200万円の譲渡益が出ても、前年の損失と通算して税金はかかりません。残りの500万円の損失は2027年、2028年にも繰り越せます。
参考)https://www.smbcnikko.co.jp/service/tax_sys/stock/tsuusan.html
損益通算は配当所得とも可能です。申告分離課税を選択した配当所得がある場合、株式譲渡損失と通算できます。配当で源泉徴収された税金が還付される仕組みですね。
ただし損益通算には制限があります。申告分離課税の対象所得で発生した損失を、給与所得や事業所得など他の総合課税の所得と通算することは原則できません。株式で100万円の損失、給与所得で500万円の所得がある場合、合算して400万円の所得とすることはできないということです。
参考)申告分離課税のメリットとは?制度の特徴と注意点を解説
損失を他の所得と通算したい場合、申告分離課税は適していません。リスク管理の観点から、株式投資で大きな損失が出る可能性がある場合は、損失繰越の適用を前提とした税務戦略を立てる必要があります。
申告分離課税の申告には、通常の確定申告書(第一表・第二表)に加えて「申告書第三表(分離課税用)」の提出が必要です。第三表では総合課税の所得金額と所得控除額を第一表から転記し、次に申告分離課税の各所得区分ごとに所得金額と税額を計算・記入します。
参考)分離課税とは?総合課税との違いや対象所得などを解説|M&Aコ…
第三表の記入は総合課税の申告書と比較して複雑です。株式譲渡所得、不動産譲渡所得など所得区分ごとに正確な記入が求められます。計算ミスや記入漏れがあると、本来受けられる節税効果を得られない可能性があるため、複雑なケースでは税理士への相談が賢明です。
特別控除には条件と提出書類があります。不動産売却時の3,000万円特別控除は対象物件や所有期間などの要件を満たす必要があり、適用には確定申告と添付書類の提出が必須です。
事前準備をしっかり行いましょう。
参考)不動産の譲渡所得に50万円の特別控除は適用できる? 節税に役…
給与収入2,000万円以下で年末調整の対象となる会社員や、公的年金の収入400万円以下の年金受給者は、他の所得が20万円以下の場合に確定申告が不要となる制度があります。しかし源泉徴収ありの特定口座では、年間の譲渡益が20万円以下でも取引の都度税金が徴収されるため、源泉徴収なしの口座を選ぶ方が有利な場合もあります。
<参考リンク>
国税庁の申告分離課税制度の公式解説ページです。退職所得、山林所得、株式等の譲渡所得など対象となる所得の詳細が確認できます。
国税庁|申告分離課税制度
上場株式等の配当に係る申告分離課税制度の詳細です。
配当所得の課税方式選択の参考になります。