

持分割合と負担割合をそろえないと、年間最大2.8万円以上の控除を丸ごと捨てることになります。
住宅ローンの「連帯債務」とは、1本のローン契約に対して2人(夫婦や親子など)がともに返済義務を負う借り方です。連帯保証とは根本的に異なり、2人ともが「債務者」として契約上に名前が入ります。
この点が住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)において非常に重要です。控除を受けるための要件の1つは「申請者がローンの債務者であること」であるため、連帯債務では主債務者・連帯債務者の両者が住宅ローン控除を申請できます。つまり、条件が整えば夫婦2人がそれぞれ控除を受けられます。これは大きなメリットです。
一方、よく混同される「連帯保証型」のローンでは話が変わります。連帯保証人は法的には「債務者」ではないため、住宅ローン控除の対象外です。収入合算して借入額を増やしても、控除を受けられるのは主債務者1人だけになります。自分のローンが「連帯債務」なのか「連帯保証」なのかは、契約書で必ず確認しておく必要があります。
ただし、2人で控除を受けるにはそれぞれに所得があることが前提です。住宅ローン控除は所得税(および一部住民税)から差し引く税額控除ですから、納めている税金がゼロであれば控除もゼロになります。入居後に妻が専業主婦になった場合、妻側の住宅ローン控除は実質機能しなくなります。所得がなくなっても返済義務だけは残るため、事前のシミュレーションが不可欠です。
控除額の計算式は次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除額 | 年末のローン残高 × 連帯債務割合 × 0.7% |
| 控除期間 | 13年間(新築・省エネ基準適合住宅の場合) |
| 最大控除額(1人あたり) | 年35万円(長期優良住宅・2022〜2023年入居の場合) |
| 夫婦合計の最大控除額 | 年70万円(連帯債務で2人分適用の場合) |
つまり夫婦2人がそれぞれ上限まで控除を受けると、単独での住宅ローン控除と比べて年間最大35万円多く節税できる計算になります。これは13年間続くため、総額で最大455万円もの差が生まれる可能性があります。連帯債務型で組む価値は大きいといえますね。
参考:連帯債務・ペアローンの住宅ローン控除の詳細(保田会計グループ)
【住宅ローン控除④】控除を最大限受ける方法や連帯債務型の持分割合で損をする場合を解説 – 保田会計事務所
連帯債務で住宅ローンを組んだ場合、初年度は給与所得者であっても必ず確定申告が必要です。年末調整だけでは対応できないため、この点は多くの方が見落とします。初年度だけは手間がかかると認識しておきましょう。
初年度の確定申告で連帯債務がある場合に使用する書類は、通常の「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」に加え、「(付表2)連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の計算明細書」(以下、付表2)も必要です。この付表2が、連帯債務者それぞれの負担割合を計算するための専用書類です。
付表2では、以下の情報を記入します。
ここで計算された「連帯債務割合」が、その後毎年使い続ける重要な数値になります。原則として初年度に確定した割合は変更できません。この初年度申告を正確に行うことが、13年間の控除の土台をつくる作業だと理解してください。
【連帯債務割合の計算例】
たとえば、夫婦2人で4,000万円の住宅ローンを組み、連帯債務割合を50:50と設定した場合を考えます。年末残高が3,600万円であれば、夫・妻それぞれの年末残高は次のようになります。
| 項目 | 夫 | 妻 |
|---|---|---|
| 年末残高(全体) | 3,600万円 | |
| 連帯債務割合 | 50% | 50% |
| 各自の控除対象残高 | 1,800万円 | 1,800万円 |
| 住宅ローン控除額(×0.7%) | 12.6万円/年 | 12.6万円/年 |
| 夫婦合計 | 25.2万円/年 | |
残高証明書は金融機関から10〜11月頃に郵送されてくるため、確定申告の前に手元に用意しておく必要があります。付表2の書き方に不安がある場合は、国税庁が公開している記載例を参照するか、税務署の窓口に持参して確認するのが確実です。
国税庁による付表2(連帯債務)の書式・記載例
(付表)連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の計算明細書 – 国税庁
初年度の確定申告が完了すると、翌年の10月〜11月頃に税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」(以下、控除申告書)が複数年分まとめて届きます。2年目以降はこの申告書を毎年1枚ずつ会社に提出するだけで、年末調整で住宅ローン控除が受けられます。確定申告は不要です。
ただし、連帯債務がある場合の書き方は、単独ローンと一部異なります。
居住開始年が令和元年(2019年)以降か、平成30年以前かで記入方法が2パターンあります。これは意外と知られていない点で、混乱の原因になりやすいです。
📝 令和元年以降に居住開始した場合(簡便方式)
令和元年以降に居住を開始した方については、税務署から送られてくる「住宅借入金等特別控除証明書」に連帯債務割合がすでに印字されています。
📝 平成30年以前に居住開始した場合(従来方式)
> 「私は連帯債務者として、右上の住宅借入金等の残高〇〇円のうち、〇〇円を負担することとしています。」+氏名・住所・勤務先
平成30年以前に入居した方は、毎年この押印作業が発生します。連帯債務者が遠方に住んでいる場合などは特に注意が必要です。居住年を必ず確認した上で、どちらの様式を使っているかを確認しましょう。
参考:居住年別の連帯債務の書き方比較(保田会計グループ)
【年末調整】住宅ローン控除申告書の連帯債務の書き方を解説 – 保田会計事務所
連帯債務の住宅ローン控除で最も見落とされやすいリスクが、「持分割合」と「負担割合(連帯債務割合)」のズレです。このズレが、住宅ローン控除の減額と贈与税の発生という2つの問題を同時に引き起こします。
まず持分割合とは、登記簿上の不動産の所有権の割合のことです。連帯債務割合(負担割合)とは、夫婦間でローンをどの割合で返済するかという取り決めです。この2つは別物ですが、必ず一致させることが原則です。
なぜかというと、税務上「持分割合は実際の支払額に応じて決めるべき」とされているためです。ローンの負担割合と持分割合が異なる場合、差額部分が「一方から他方への贈与」とみなされる可能性があります。
【具体例:2重の損が発生するケース】
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 住宅ローン残高 | 4,000万円 |
| 持分割合 | 夫1/2・妻1/2 |
| 実際の負担割合 | 夫3/5・妻2/5 |
この場合、夫の住宅ローン控除の対象は「2,000万円(持分割合基準)」に制限されます。実際の負担額は2,400万円あっても、持分割合を超えた400万円分は控除対象から外れてしまいます。夫の控除額は本来の16.8万円ではなく14万円となり、年間2.8万円の控除を失います。13年間では合計36.4万円もの損失です。
さらに、妻の持分割合に基づく負担すべき額2,000万円に対して、実際に負担している額は1,600万円。差額の400万円は夫が代わりに負担したとみなされ、夫から妻への「贈与」として贈与税の課税対象になる可能性があります。贈与税の基礎控除は年110万円のため、少額であればすぐには問題になりませんが、累積すると申告義務が生じます。
解決策はシンプルです。
持分割合と負担割合を同じ比率に設定することです。たとえば実際のローン負担が夫3/5・妻2/5であれば、登記の持分割合も同じにします。間違えてしまった場合でも「所有権更正登記」で修正が可能ですが、ローンに抵当権がある場合は金融機関の事前承諾が必要です。
参考:国税庁の質疑応答事例(連帯債務と持分割合の関係)
共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算 – 国税庁
申告書の書き方そのものは理解できても、個別の事情によって落とし穴が潜んでいます。ここでは金融に関心の高い方でも意外と見落とすポイントを5つ整理します。
🔴 ①所得が消えると控除も消える
連帯債務者であっても、課税所得がゼロであれば住宅ローン控除は機能しません。産休・育休・退職で所得が減少した年は控除額が大幅に下がります。また妻が専業主婦になった場合、妻名義の持分割合に紐づいたローン負担分は、事実上控除を活かせない状態になります。この場合、初年度の確定申告で連帯債務割合をどう設定するかが重要になります。
🔴 ②団体信用生命保険は1人しか加入できないことが多い
連帯債務では多くの場合、主債務者しか団体信用生命保険(団信)に加入できません。これはペアローンとの大きな違いです。つまり連帯債務者(妻など)が先に亡くなっても、ローン残高は保険で消えず、残された主債務者が全額返済し続けることになります。フラット35を利用すれば夫婦ともに団信へ加入できるため、この点が気になる場合はフラット35が選択肢になります。
🔴 ③控除率は入居年によって0.7%か1.0%かが変わる
2022年(令和4年)以降に入居した場合、控除率は1.0%から0.7%へ引き下げられています。これは連帯債務でも同様です。2021年以前に入居した方は1.0%の控除率が適用されています。申告書の証明書欄に印字された控除率を必ず確認してください。
🔴 ④2024年以降、省エネ基準を満たさない新築は控除対象外になる
2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で省エネ基準を満たさない場合、借入限度額がゼロとなり住宅ローン控除を受けられません。2024〜2025年入居の方は、住宅が省エネ基準に適合しているかどうかを建築業者に確認するのが必須です。
🔴 ⑤所得が2,000万円を超えた年は控除がゼロになる
2022年以降入居の方は、合計所得金額が2,000万円を超えた年は住宅ローン控除を受けられません。この場合は申告書を提出しても控除額はゼロのため、その年は提出不要です(翌年以降は要件を満たせば再び控除可能)。副業収入や不動産売却益が重なった年は特に注意が必要です。
参考:住宅ローン控除の対象外となるケース(freee)
住宅ローン控除の対象外となるケースとは?税制改正の内容も解説 – freee
住宅ローンを夫婦2人で借りる方法は、連帯債務型とペアローンの2択が代表的です。どちらも両者が住宅ローン控除を受けられる点は同じですが、細かい点で違いがあります。世間一般では「どちらでも同じ」と思われがちですが、実際には申告書の書き方から税務リスクまで異なります。意外ですね。
| 比較項目 | 連帯債務型 | ペアローン |
|---|---|---|
| ローン契約の本数 | 1本 | 2本(夫・妻それぞれ) |
| 住宅ローン控除 | 2人とも適用可 | 2人とも適用可 |
| 申告書の書き方 | 連帯債務欄・付表2が必要 | 各自の残高のみ記入・シンプル |
| 諸費用 | 1本分 | 2本分(約2倍かかることも) |
| 団信加入 | 原則1人(フラット35は2人可) | 2人ともそれぞれ加入可 |
| 持分割合との整合 | 負担割合と一致が必須 | 借入比率で自然に決まる |
| 離婚時の手続き | 比較的シンプル | 2本あるため複雑になることも |
申告書の書き方の複雑さという点では、ペアローンのほうがシンプルです。ペアローンの場合は、それぞれが自分名義のローン残高だけを記入すれば足り、連帯債務割合の計算も付表2も不要です。
一方で手数料などの諸費用は、ペアローンだと契約が2本になるため登記費用なども2倍になるケースがあります。住宅購入時に数十万円単位の差が出ることもあります。手数料節約という面では連帯債務型が有利です。
また、団信(団体信用生命保険)の観点では、ペアローンのほうが安心感があります。夫婦それぞれが自分のローンに対する団信に加入できるため、どちらかが亡くなっても自分側のローン残高はゼロになります。これが条件です。連帯債務型でフラット35以外の民間ローンを選んだ場合は、主債務者しか団信に入れないため、連帯債務者が先に亡くなるリスクを別の生命保険でカバーする必要があります。
どちらが有利かは収入バランス・家族構成・借入額によって変わります。住宅ローンの窓口相談や、FP(ファイナンシャルプランナー)への事前相談を活用することで、自分たちに合った選択ができます。
参考:住宅ローンの選び方・連帯債務型の解説(マネーフォワード)
住宅借入金等特別控除申告書の書き方は?ケース別の注意点も解説 – マネーフォワード クラウド給与