

連帯保証人になると、自分の住宅ローン審査が通らなくなる場合があります。
金融や不動産の話題で「連帯保証」と「連帯債務」という言葉はよく耳にしますが、この2つを混同している人は少なくありません。宅建試験でも権利関係の頻出分野であり、実務においても両者の違いを理解しているかどうかで損得が大きく変わります。
まず最も根本的な違いは「当事者の立場」です。連帯保証は、主たる債務者(お金を借りた本人)とは別に、連帯保証人が「主債務者が返せない場合に代わりに返す」という構造をとります。一方の連帯債務は、複数の人間が同じ債務に対して全員が債務者として「対等な立場」で返済義務を負います。主従関係がある連帯保証に対し、連帯債務には主従関係がない点が本質的な差異です。
つまり「主たる債務者が存在するか否か」が分かれ目です。
宅建試験ではこの立場の違いを起点として、催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益という3つのキーワードが問われます。以下の表で整理しましょう。
| 性質 | (単純)保証 | 連帯保証 | 連帯債務 |
|---|---|---|---|
| 催告の抗弁権 | ✅ あり | ❌ なし | |
| 検索の抗弁権 | ✅ あり | ❌ なし | |
| 分別の利益 | ✅ あり | ❌ なし | ✅ あり(内部負担) |
| 主たる債務者の存在 | ✅ あり | ❌ 全員が債務者 |
催告の抗弁権とは、「まず主たる債務者に請求してください」と言える権利のことです。検索の抗弁権とは、「主たる債務者に返済能力があるので、そちらに先に強制執行してください」と言える権利を指します。連帯保証にはどちらもなく、債権者はいきなり連帯保証人に全額請求できます。厳しいですね。
分別の利益は、保証人が複数いる場合に債務額を人数で割って負担できる権利です。800万円の債務に保証人2人なら、各自400万円ずつ負担すればよいということになります。しかし連帯保証にはこの分別の利益が認められていないため、連帯保証人が2人いても各自800万円全額について責任を負います。
連帯保証人は単純保証人よりはるかに重い責任を負うということですね。
参考:保証・連帯保証・連帯債務の性質の違いについて宅建試験向けに詳しく解説しています。
連帯債務と連帯保証の違いをわかりやすく解説!【民法改正版】 | スタケン宅建講座
連帯保証を理解するうえで外せないのが「主たる債務者に生じた事由」と「連帯保証人に生じた事由」が互いにどう影響するかというテーマです。宅建試験では毎年のように問われる頻出ポイントなので、確実に押さえましょう。
原則として、連帯保証人に生じた事由は主たる債務者に影響しません。これを「相対効」といいます。反対に、影響してしまう例外を「絶対効」と呼びます。
絶対効となる事由は次の4つだけです。
これら4つに入る事由は主たる債務者にも効力が及びますが、それ以外はすべて相対効です。
例えば「消滅時効の完成」は絶対効に含まれません。連帯保証人の時効が完成しても、主たる債務者の時効完成には直結しない点に注意が必要です。逆に、主たる債務者に生じた事由は連帯保証人に全て影響します。これは連帯保証が保証の一種であり、「付従性(ふじゅうせい)」という性質を持つためです。
4つだけ覚えておけばOKです。
ここは宅建試験でよく「ひっかけ」として出題される部分でもあります。たとえば「連帯保証人について消滅時効が完成したので、主たる債務者にも効力が及んだ」という設問は誤りです。時効は絶対効4つに含まれないため、相対効となります。
また、2020年の民法改正により、連帯保証人に対して「履行の請求」をしても、主たる債務者には時効の中断効果が及ばなくなりました。これは改正前と逆の取り扱いです。改正前の感覚で解くと失点するため、2020年以降のルールを必ず確認しておきましょう。
参考:絶対効・相対効の一覧表と保証・連帯保証・連帯債務の比較が整理されています。
【宅建民法解説】連帯保証と連帯債務の難問対策 | 受験サプリ
連帯債務において「絶対効と相対効」は、宅建試験の中でも特に民法改正の影響を大きく受けた分野です。改正内容を正確に把握していないと、試験本番で古いルールに基づいて誤答するリスクがあります。
連帯債務の原則は「相対効」です。連帯債務者の1人に生じた事由は、他の連帯債務者に影響を与えません。
絶対効となるのは以下の4つに限られます。
ここで重要な民法改正のポイントがあります。
改正前(2020年3月以前)は「履行の請求・更改・相殺・混同・時効の完成・免除」の6つが絶対効でした。しかし改正後は「履行・更改・相殺・混同」の4つのみが絶対効となり、「時効の完成」と「免除」は相対効に変わったのです。
これは大きな改正です。
具体的に言うと、改正前は連帯債務者のAの時効が完成した場合、他のB・Cも負担部分について債務を免れていました。しかし改正後はAの時効完成は相対効となり、B・Cへの影響はありません。ただし注意点があります。B・Cはその後、Aに対して求償権(立替払いした分を請求する権利)を行使できるという点は維持されています。
また「履行の請求」も改正で相対効に変わっています。改正前は、連帯債務者の1人に請求すれば、全員に対して時効が中断されていました。改正後は請求を受けた者だけに効力が生じます。
宅建試験で「改正前の知識」を持ったまま解答すると失点します。「2020年4月1日施行の改正民法」に基づいて判断することを徹底してください。
参考:改正民法による連帯債務の絶対効・相対効の変化が詳しく解説されています。
連帯債務(絶対効と相対効)の重要ポイントと解説 | 宅建試験ドットコム
連帯保証と連帯債務は、「求償権(きゅうしょうけん)」の取り扱いにも明確な違いがあります。ここを押さえると試験の計算問題に強くなれます。これは使えそうです。
まず求償権とは、他の者の分まで立て替えて支払った人が、その分を他の者に請求できる権利のことです。
🔹 連帯保証人の求償権
連帯保証人は、主たる債務者との内部的な負担割合はゼロです。あくまで「主債務者が返せない場合の補欠」という立場だからです。債権者から見ると、各連帯保証人の負担額は「保証債務額÷連帯保証人の数」となります。
具体的に見てみましょう。
- 主たる債務 1,000万円、連帯保証人はCとDの2人
- CがBに800万円を弁済した場合
- Cの負担部分は500万円(1,000万円÷2人)
- Cは自己の負担部分(500万円)を超えた300万円をDに求償できます
ポイントは「自己の負担部分を超えた金額についてのみ、他の連帯保証人に求償できる」という点です。負担部分以内は自分の債務なので求償はできません。
🔸 連帯債務者の求償権
連帯債務では少し異なります。内部的な負担割合に応じた求償が、負担部分を超えなくても認められます。
具体的に見てみましょう。
- 債権者Bが連帯債務者A・C・Dに1,200万円を貸した(負担割合は均等で各400万円)
- Cが300万円を弁済した場合
- 内部負担額は超えていないが、3人で同じ債務を負っているため不公平
- Cは300万円を3で割った100万円をA・Dそれぞれに求償できます
「自己の負担部分を超えなくても求償できる」のが連帯債務の特徴です。
連帯保証人は超えた分だけ、連帯債務者は弁済額を按分して求償できるということですね。
なお、求償は主たる債務が消滅した後(弁済後)に行うのが原則です。しかし一定の条件を満たす場合は「事前求償」も認められます。例えば、法律上当然に支払いが生じる状況(差し押さえを受けた場合など)が該当します。試験でも稀に問われるため、概念だけ頭に入れておきましょう。
参考:連帯保証人と連帯債務者の求償権の違いを具体的な数字で解説しています。
宅建の試験知識だけでなく、実生活に直結するテーマがこの「住宅ローンにおける連帯保証と連帯債務の違い」です。特に夫婦や親子で住宅ローンを組む際に知っておかないと、数十万円単位の損失につながることもあります。
まず多くの人が見落としている事実があります。誰かの連帯保証人になると、自分の住宅ローン審査が通らなくなる可能性がある、という点です。
なぜかというと、連帯保証人になった事実は信用情報機関に記録されるためです。金融機関によっては、連帯保証人を「主たる債務者と同等の借入をしている者」として審査します。結果として、自分に本来の借入能力があっても、すでに多額の負債を抱えているとみなされて審査に落ちるケースが生じます。
これは痛いですね。
次に住宅ローンを夫婦で組む場合の選択肢を整理します。
| タイプ | 連帯保証型 | 連帯債務型 | ペアローン |
|---|---|---|---|
| 債務者の数 | 1人(保証人は従) | 2人(主+連帯債務者) | 2人(各自で契約) |
| 住宅ローン控除 | ❌ 保証人は対象外 | ✅ 2人とも対象 | |
| 団体信用生命保険 | ❌ 保証人は加入不可 | ⚠️ 主債務者のみ(フラット35等を除く) | ✅ 各自加入可 |
| 諸費用 | 比較的安い | 2本分かかる |
住宅ローン控除は年末のローン残高の0.7%が税額控除される制度です。例えば残高が3,000万円であれば毎年21万円の控除を受けられる計算になります。連帯保証型では保証人側にこの控除が一切適用されません。連帯債務型であれば持分割合に応じて2人分の控除が受けられます。
税控除の観点だけでも、どちらを選ぶかは重要な判断です。
連帯保証型のメリットは手続きの簡便さと諸費用の安さです。一方で連帯債務型は住宅ローン控除が2人分使えるメリットがありますが、取り扱っている金融機関が限られます(フラット35などが代表例)。
住宅ローンの組み方に迷っている場合は、まずファイナンシャルプランナー(FP)への相談を一度検討してみることをおすすめします。金融機関に直接相談すると自社商品に誘導されがちなため、中立的な立場のFPに「連帯保証型と連帯債務型のどちらが税制上有利か」を確認する一手が有効です。
宅建試験の対策記事では触れられることが少ないですが、2020年の民法改正によって個人の連帯保証に「極度額(きょくどがく)」の設定が義務化されました。これは試験範囲であるだけでなく、賃貸契約や金融取引の実務に直接影響する重要な改正点です。
極度額とは、保証人が支払う保証債務の上限額のことです。
改正前は個人根保証契約(賃貸借契約の連帯保証など)において上限額が定められていないことが多く、保証人が想定外の高額な債務を負わされるケースが問題視されていました。改正民法では、個人が保証人になる根保証契約については、書面(または電磁的記録)に極度額を明記しなければ契約が無効となります。
これが条件です。
具体的に言うと、賃貸借契約で親が子の連帯保証人になる際、極度額の記載がない契約書を使うと保証契約そのものが無効になります。家主側にとっては「保証人がいるつもりが実は無効だった」という事態になりかねません。
一方で、極度額の設定義務が課されるのは「個人の保証人」に限られます。法人が保証人になる場合には極度額の設定は不要です。宅建試験では「個人か法人か」を区別する設問が登場するため、この違いをしっかり押さえておきましょう。
実務上、賃貸の連帯保証における極度額は「賃料の2年分相当」を目安に設定されるケースが多くなっています。例えば月額家賃8万円の物件であれば、極度額は96万円前後に設定されることが一般的です。
また同じ2020年改正で、債権者には「主たる債務者が期限の利益を喪失した事実を2か月以内に保証人へ通知する義務」が新設されました。この通知を怠ると、遅延損害金等について保証人に請求できなくなります。債権者側の義務と保証人の権利保護が強化された点も、試験対策・実務対策の両面で押さえておきたい知識です。
宅建試験対策として整理すると、「極度額の未記載=個人保証は無効」「法人保証は極度額不要」「通知義務2か月以内」という3点が核心になります。このセットで覚えておけば、関連問題で迷わずに解答できます。
参考:2020年民法改正による個人根保証・極度額義務化の詳細と宅建試験への影響が解説されています。