

年金生活者支援給付金のハガキが届いても、申請しなければ過去分は1円も遡及して受け取れません。
年金生活者支援給付金は、2019年(令和元年)10月の消費税引き上げと同時に施行された制度です。公的年金の収入やその他の所得が一定基準を下回る年金受給者の生活を下支えするため、年金に上乗せして支給されます。財源は消費税収入で賄われており、一時的な給付ではなく恒久的な制度として位置づけられています。
対象は65歳以上の老齢基礎年金受給者だけでなく、障害基礎年金・遺族基礎年金を受給している方も含まれます。
これが一点目の重要ポイントです。
給付金は「老齢」「障害」「遺族」の3種類に分かれており、それぞれ支給要件と給付額が異なります。老齢年金生活者支援給付金が最も広く知られていますが、障害年金・遺族年金の受給者向け給付金は、老齢の給付金より所得要件がかなりゆるやかに設定されているため、見落としやすい点に注意が必要です。
給付金の支払いは、年金と同じく偶数月(2月・4月・6月・8月・10月・12月)の中旬に2カ月分がまとめて振り込まれます。年金とは別口座ではなく、同一口座への別振込という形をとります。つまり、年金を受け取っている口座を確認すれば、給付金の入金も同時に把握できます。
老齢年金生活者支援給付金の支給を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 要件①:65歳以上で老齢基礎年金(国民年金)を受給していること
- 要件②:同一世帯の全員が市町村民税(住民税)非課税であること
- 要件③:前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計が一定額以下であること
要件③の具体的な金額(令和7年度)は、昭和31年4月2日以後に生まれた方は90万9,000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は90万6,700円以下です。
所得基準の金額が大きく見えるかもしれませんが、ここには注意があります。障害年金・遺族年金などの非課税収入はカウントされません。一方、公的年金(老齢年金)の受給額や給与所得・利子所得などの課税所得はカウントされます。
要件が複雑に思えますが、実務的には「まず要件②と③を確認する」という順番で考えると整理しやすいです。
また、老齢の要件をすべて満たさない場合でも、前年の収入と所得の合計が昭和31年4月2日以後生まれなら80万9,000円超〜90万9,000円以下、昭和31年4月1日以前生まれなら80万6,700円超〜90万6,700円以下の方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。つまり、「老齢年金生活者支援給付金」の対象外でも、「補足的」な給付を受けられるケースがあるということですね。
参考:老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の支給要件と給付額の詳細は厚生労働省の公式ページで確認できます。
厚生労働省|年金生活者支援給付金制度について(支給要件・給付額の計算方法)
障害年金生活者支援給付金と遺族年金生活者支援給付金の支給要件は、老齢とは大きく異なります。
障害年金の場合の支給要件は、①障害基礎年金を受給していること、②前年の所得が479万4,000円以下(扶養親族等の数に応じて増額)であること、の2点のみです。老齢の給付金に存在する「世帯全員非課税」という条件がありません。
これは意外に思われる方も多いでしょう。
給付額は月額5,450円(令和7年度)が基本です。ただし障害等級が1級の方は月額6,813円と、2級より高く設定されています。
遺族年金生活者支援給付金も同様で、①遺族基礎年金を受給していること、②前年の所得が479万4,000円以下(扶養親族等の数に応じて増額)であること、の2要件のみです。遺族年金受給者の給付額は月額5,450円が基本ですが、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5,450円を子の人数で割った金額がそれぞれに支給される点が特徴的です。
障害・遺族の給付金は所得上限がかなり高いため、対象となる範囲が広いといえます。
令和7年度(2025年10月〜2026年9月)の給付基準月額は5,450円です。ただし老齢の給付金については、この金額が保険料の納付済期間によって按分されます。
計算式は次のとおりです。
| 項目 | 計算式 |
|---|---|
| 保険料納付済期間に基づく額(月額) | 5,450円 × 納付済期間 ÷ 480月 |
| 保険料免除期間に基づく額(月額) | 11,551円 × 免除期間 ÷ 480月 |
たとえば納付済月数が240カ月、全額免除月数が60カ月の方の給付額は次のようになります。
- 5,450円 × 240 ÷ 480 = 2,725円
- 11,551円 × 60 ÷ 480 = 1,444円
- 合計:月額 4,169円
この方は年間で約5万円、10年間受給すれば約50万円を受け取れる計算になります。はがき1枚を出すかどうかで、数十万円の差がつくわけです。
これは使えそうです。
満額の月5,450円を受け取っている方であれば、年間6万5,400円が上乗せされます。給付額は毎年度、物価変動による「物価スライド改定」が行われます。改定があった場合は「年金生活者支援給付金 支給金額改定通知書」が郵送されますので、届いたら必ず金額を確認するのが基本です。
新規に給付金の対象となる方には、毎年9月の第1営業日から順次、日本年金機構より通知が郵送されます。この通知は「緑色の封筒」に入っているため、見覚えがある方もいるかもしれません。
封筒の中に同封されているのが「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」です。受け取ったら、氏名等の必要事項を記入し、目隠しシールを貼って切手を貼り、郵便ポストへ投函するだけで申請が完了します。
添付書類は原則不要です。
また、近年は電子申請にも対応しています。リーフレットの案内に沿って日本年金機構のサイトからオンライン申請することも可能です。郵送と電子申請を重複して行う必要はありません。
申請から支給決定まで1〜2カ月ほどかかります。支給決定後に「年金生活者支援給付金 支給決定通知書」が届きます。支払月の上旬に振込通知書も届くので、入金を確認しましょう。
通知が届かない場合は、住所変更手続きが済んでいない可能性があります。転居後に住所変更の手続きを怠ると、郵便物が旧住所に届いてしまいます。転居後は速やかに年金事務所へ住所変更を届け出ることが大切です。
年金(老齢・障害・遺族年金本体)は、未請求であっても最大5年分を遡って受け取ることができます。ところが年金生活者支援給付金には、この遡及制度がありません。
支給は「請求した月の翌月分から」が原則です。ハガキを放置していた期間分は、一切支給されません。放置したままでいると、その間の受給分は永遠に失われます。
これは痛いですね。
たとえば月額5,450円をもらえるはずの方が1年間申請を忘れていた場合、年間6万5,400円を受け取れなかったことになります。
2年放置すれば13万円超の損失です。
「また来年申請すれば大丈夫」という認識は誤りです。
なお令和7年度の新規対象者向けハガキについては、令和8年1月5日(月曜)を過ぎても手続き自体は可能ですが、その場合は「請求した月の翌月分から」の支給となり、遡及はできません。
早ければ早いほど有利な制度です。
参考:手続きの期限と遡及不可の扱いについては、日本年金機構の公式FAQページで確認できます。
日本年金機構|手続きが遅れると年金生活者支援給付金は受け取れなくなりますか
老齢年金生活者支援給付金の要件として「同一世帯の全員が市町村民税非課税」という条件があります。この要件が意外な形で適用外を生み出すことがあります。
典型的なケースが「会社員の子供と同居している高齢者」です。親本人の年金収入が少なく、所得の面では非課税でも、同じ世帯に課税されている子が一人でもいれば、給付金の対象外になります。親の収入が年間80万円以下であっても、子供が会社員で収入があれば受け取れません。
この問題の解決策として「世帯分離」があります。同一住所に住みながらも住民票上の世帯を分けることで、親の世帯を単独の非課税世帯にできる場合があります。
ただし世帯分離には注意点があります。世帯分離後に「住民税が課税されている親族の扶養に入っている場合」は、住民税非課税世帯であっても給付金の対象外となることがあります。世帯分離を検討する際は、扶養関係の確認も欠かせません。
世帯分離の手続きは、市区町村の窓口で「世帯分離届」を提出することで行えます。
手数料は無料です。
受給できるかどうか確認したい場合は、最寄りの年金事務所に相談するとよいでしょう。
| 居住・世帯状況 | 非課税要件の可否 |
|---|---|
| 一人暮らしで本人が非課税 | ✅ 要件を満たす可能性あり |
| 課税される子供と同一世帯で同居 | ❌ 世帯全員非課税にならないため対象外 |
| 子供と同居・世帯分離済・扶養外 | ✅ 要件を満たす可能性あり |
| 子供と同居・世帯分離済・扶養内 | ⚠️ 対象外になる場合あり(要確認) |
給付金に関して届く通知書にはいくつかの種類があります。それぞれの意味を正しく理解しておくことが重要です。
🟢 支給決定通知書:申請を受け付けて支給が決定したときに届く書類です。
支給開始月と給付額が記載されています。
🟡 支給金額変更通知書:毎年の物価スライド改定や所得変化で給付額が変わった場合に届きます。
前年より増えることも減ることもあります。
🔴 不該当通知書:前年の所得が基準を超えた、または世帯に課税者が生じたなどで支給対象外になった場合に届く書類です。
不該当通知書が届いても、永久に受け取れなくなるわけではありません。所得が基準内に戻った場合や世帯構成が変わった場合は、改めて年金生活者支援給付金請求書を提出することで復活できます。再支給は「請求した月の翌月分から」となります。
継続して受給している方については、毎年10月分(12月支給分)からの判定が前年の所得に基づき行われます。
これが基本です。
12月に届く通知書で翌1年間の支給内容が変わるしくみです。通知書の内容を毎年確認する習慣をつけておくと安心です。
参考:不該当通知書・支給金額変更通知書に関する日本年金機構の公式解説です。
日本年金機構|「支給金額変更通知書」(または「不該当通知書」)が届きました
一度申請して支給が認定された後は、2年目以降の継続手続きは原則として不要です。これは手続きの負担を軽減するための設計です。
毎年、市区町村から提供される所得情報に基づき、日本年金機構が支給要件を自動的に確認する「継続認定」の仕組みが採用されています。課税証明書などの書類を毎年提出する必要もありません。
ただし例外があります。支給要件を満たさなくなった場合は、給付金が停止されます。加えて①日本国内に住所がなくなったとき、③刑事施設等に拘禁されたとき、のいずれかに該当した場合は、必ず届出が必要です。これらを無届けのまま放置すると、不正受給となる可能性があります。
継続認定の結果は、毎年12月に届く通知書で確認できます。毎年12月の郵便物に注意が必要ということです。前年と同額であれば変更通知は届きませんが、金額が変わった場合や対象外になった場合は必ず通知書が届きます。もし12月を過ぎても通知書が届かない場合は、給付金専用ダイヤル(0570-05-4092)に問い合わせると安心です。
残念ながら、年金生活者支援給付金を名乗った詐欺事件が発生しています。日本年金機構や厚生労働省は、以下の点を明確にしています。
- 電話で家族構成や金融機関の口座番号・暗証番号を聞くことはない
- 手数料などの金銭を求めることはない
- 給付を受けるために現金の事前払いを求めることはない
正規の通知書は「緑色の封筒」に入った郵便物で届きます。電話やSMS、メールで「給付金の手続きを」と促されても応じてはいけません。
不審に感じた場合は、日本年金機構の給付金専用ダイヤル(0570-05-4092)か、警察相談専用電話(#9110)に連絡してください。一人暮らしの高齢者を抱える家族にも、このポイントを共有しておくと安心です。
詐欺被害に遭ったと気づいた時点で、速やかに最寄りの警察署に届け出ることが重要です。金融機関の口座情報を伝えてしまった場合は、即座に口座の停止手続きを行ってください。
給付金の対象かどうかを事前に確認する方法として、日本年金機構が提供している「ねんきんネット」の活用が有効です。ねんきんネットでは、自身の年金加入記録・納付済期間・免除期間を確認できます。
給付額の計算には「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」が必要です。ねんきんネットでこれらを確認しておけば、ハガキが届く前に「おおよそいくらもらえるか」を試算できます。
年金生活者支援給付金の給付額シミュレーションとして、簡単な計算式を使ってみましょう。
- 保険料納付済月数が360カ月の場合:5,450円 × 360 ÷ 480 = 月額4,088円(年間49,056円)
- 保険料納付済月数が480カ月の場合:5,450円 × 480 ÷ 480 = 月額5,450円(年間65,400円)
ねんきんネットへはマイナポータルからもアクセスできます。手続きの流れを把握しておくことで、9月に届く緑の封筒に慌てず対応できます。
また、金融機関や証券口座の利子所得・配当所得が「その他の所得」に含まれる点も押さえておくとよいでしょう。年間の所得基準(昭和31年4月2日以後生まれで90万9,000円)を超えないよう、資産運用のスケジュールを管理することも一つの視点です。金融に関心がある方ほど、「意図せず基準を超えた」という状況に注意が必要です。
参考:ねんきんネットの利用方法・加入記録の確認については日本年金機構の公式ページで解説されています。
日本年金機構|年金生活者支援給付金の制度・手続き・よくある質問まとめ
65歳になるタイミングで老齢基礎年金を新規に請求する方は、年金請求書と同時に年金生活者支援給付金の手続きができます。65歳到達の3カ月前に、「年金請求書(事前送付用)」と「年金生活者支援給付金請求書」が同封された書類が届きます。
一方、特別支給の老齢厚生年金をすでに受けている方や老齢基礎年金を繰上げ受給している方の場合は、65歳になった誕生月の初旬に「年金請求書 兼 年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届きます。
この2つは届くタイミングが違います。
障害基礎年金・遺族基礎年金を新たに請求する際は、年金の請求手続きと同時に給付金の請求も行えます。窓口で「年金生活者支援給付金も請求したい」と申し出てください。
請求が遅くなると、その分だけ支給開始が後ろ倒しになります。誕生日前後に届く書類は、なるべく早期に処理する習慣をつけることが大切です。まとめると、65歳到達前後の書類対応が全受給期間の損得を左右するということです。
年金生活者支援給付金に関する問い合わせ先は以下の通りです。
| 相談方法 | 連絡先・対応時間 |
|---|---|
| 給付金専用ダイヤル(ナビダイヤル) | 0570-05-4092 月曜 8:30〜19:00 火〜金 8:30〜17:15 第2土曜 9:30〜16:00 |
| 050番号から電話する場合 | 03-5539-2216 |
| 最寄りの年金事務所(窓口) | 各地域の年金事務所 |
| ファクシミリ相談 | 耳や発声が不自由な方向け(最寄り年金事務所宛) |
給付金専用ダイヤルは月曜のみ19:00まで対応しています。日中に電話できない方は月曜の夜間活用を検討するとよいでしょう。
これは使えそうです。
問い合わせの際には、手元に「基礎年金番号がわかるもの(年金証書や基礎年金番号通知書など)」を準備しておくとスムーズです。代理人(二親等以内)からの問い合わせの場合は、問い合わせをする方の基礎年金番号も必要になります。
通知書の再発行が必要な場合は、年金事務所に「再発行申請書」を郵送で提出することで対応可能です。専用ダイヤルでも再発行の受け付けができます。通知書を紛失したままにしておくと、支給状況の確認や問題が起きたときの対応が遅れます。受け取った通知書は大切に保管することをおすすめします。