

基本手当の日額が3,612円を超えると、配偶者の社会保険の扶養から外れて月1〜3万円の保険料が別途かかります。
基本手当の金額を理解するには、まず「賃金日額」の計算から始める必要があります。賃金日額とは、離職日の直前6ヶ月に毎月決まって支払われた賃金の合計を、180日で割って算出した1日あたりの賃金のことです。
ここで多くの人がつまずくポイントが2つあります。
1つ目は「賞与(ボーナス)は含まない」という点です。年収ベースで考えている人ほど、実際の基本手当日額が想像より低くなりがちです。月給30万円でボーナス年2回100万円支給されているとしても、計算に使うのは月30万円×6ヶ月=180万円だけであり、ボーナス分は一切カウントされません。
2つ目は「手取りではなく総支給額を使う」という点です。つまりです。税金や社会保険料が引かれる前の額面給与(通勤手当・残業代・住宅手当も含む)が計算のベースになります。
| 賃金に含まれるもの | 賃金に含まれないもの |
|---|---|
| 基本給 | 賞与(ボーナス) |
| 残業代・深夜手当 | 退職金 |
| 通勤手当 | 見舞金・祝い金 |
| 住宅手当・家族手当 | 解雇予告手当 |
月給25万円(総支給)で通勤手当1万円込みの場合、6ヶ月分は156万円です。これを180で割ると賃金日額は約8,667円となります。
厚生労働省が毎年8月に改定する賃金日額には上限額・下限額が設けられています。2025年8月1日以降の下限額は全年齢共通で3,014円、上限額は年齢によって14,510円(29歳以下)〜17,740円(45〜59歳)となります。賃金日額がどれだけ高くても、この上限額を超えた分は切り捨てられます。
賃金日額が原則です。正確な金額は退職後にハローワークで通知される「雇用保険受給資格者証」の第14欄で確認できます。
参考:基本手当の計算根拠となる公式資料(厚生労働省)
厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります(令和7年8月1日から)」
賃金日額が決まったら、次に「給付率」をかけて基本手当日額を算出します。給付率は一律ではありません。
年齢と賃金日額によって異なり、おおむね50〜80%の範囲で変動します。低賃金の人ほど高い給付率が適用されるという逆進性のある設計になっています。これは意外ですね。
| 年齢区分 | 基本手当日額の上限額(2025年8月〜) |
|---|---|
| 29歳以下 | 7,255円 |
| 30〜44歳 | 8,055円 |
| 45〜59歳 | 8,870円 |
| 60〜64歳 | 7,623円 |
たとえば月給35万円(総支給)・30歳の場合、賃金日額はおよそ11,667円となります。給付率は約56%前後が適用され、基本手当日額はおおよそ6,500円前後になる計算です。月額に換算(28日分)すると約18.2万円程度になります。
一方で、月給が同じ35万円でも45歳の人は上限が8,870円まで適用されるため、計算上の給付額が上がります。年齢が上がるほど上限額が高く設定されているのはそのためです。
60〜64歳については給付率の計算式が異なり、「45〜80%」という幅が適用されます。この年齢帯だけ別の計算式が使われている点は要注意です。
基本手当日額の下限額は全年齢共通で2,411円が条件です(2025年8月改定値)。正式な基本手当日額は「雇用保険受給資格者証」の第19欄に印字されます。
参考:給付日数・年齢別の所定給付日数の詳細(厚生労働省ハローワーク)
ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
基本手当の「総受取額」は、日額だけでなく「所定給付日数(何日分もらえるか)」でも大きく変わります。所定給付日数は退職理由・年齢・雇用保険の被保険者期間の3つで決まります。
退職理由はおおまかに「自己都合退職」と「会社都合退職」に分かれます。
自己都合退職と会社都合退職で最大の差は「330日 vs 150日」です。同じ基本手当日額でも給付日数が2倍以上変わるケースがあります。
たとえば基本手当日額が7,000円の場合、給付日数150日なら総額105万円、330日なら231万円です。差額は126万円になります。この差は大きいですね。
2025年4月の法改正も重要です。自己都合退職の場合、これまでは7日間の待期期間+原則2ヶ月の給付制限期間がありましたが、改正後は給付制限が原則1ヶ月に短縮されました。これにより、自己都合退職でも以前より早く受給を開始できるようになっています。
さらに、自己都合でも離職後にリスキリング(職業訓練など)を受けている場合は給付制限期間がゼロになるケースもあります。正当な理由のある自己都合退職(病気・DV・介護など)は「特定理由離職者」と認定され、給付制限なしで受給できます。退職理由の認定区分が原則です。認定に疑問がある場合はハローワークに相談しましょう。
参考:自己都合・会社都合の違いと給付制限の改正内容(厚生労働省)
厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除されます」
受給中にアルバイトをしてもよいのか、迷う人は少なくありません。結論から言うと、ルールを守ればアルバイトは可能です。ただし、知らないと損するルールがいくつかあります。
まず待期期間(7日間)中はアルバイト禁止が原則です。自己都合の場合はさらに給付制限期間中も注意が必要ですが、この期間中のアルバイト自体は減額されません。ただし必ず申告する義務があります。
受給期間中のアルバイトで注意すべき具体的なポイントは以下の通りです。
意外なのは「1日4時間以上働くほうが得になる場合がある」という点です。1日4時間未満で収入を得ると基本手当が減額されますが、4時間以上にすれば当日分の基本手当が先送りになるだけで減額されないため、結果的に後でまとめて受け取れます。
申告しないでアルバイトをすると、不正受給として「3倍返し」のペナルティが課せられます。不正受給額だけでなくその2倍を加えた3倍の返還が求められる制度です。これは痛いですね。
必ずハローワークへの申告が必須です。申告の手間を惜しんで後で大きなリスクを抱えることは避けましょう。
参考:受給中のアルバイトについての詳細ルール(ハローワーク)
厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」
基本手当は所得税・住民税の課税対象外です。これは多くの人が知っている点です。しかし「社会保険の扶養」については見落としがちなリスクがあります。
税法上の扶養(103万円の壁)については、基本手当は収入にカウントされないため影響はありません。一方、社会保険上の扶養(健康保険の被扶養者)については別の判定基準が用いられます。
健康保険の扶養認定には「年間収入130万円未満」という要件があり、これを月単位・日単位に換算すると1日あたり3,611円(130万円÷360日)が基準になります。
扶養から外れると、国民健康保険と国民年金へ自分で加入する必要があります。国民健康保険料は前年所得によって異なりますが、月1〜3万円前後の負担が生じるケースも多いです。
知らずに扶養のままで受給していると、後から健康保険の不正受給として医療費を返還しなければならないケースもあります。これは条件が原則です。
60歳以上の場合は基準が少し異なり、日額5,000円以下であれば扶養継続が可能です。扶養に関する手続きはパートナーの勤務先の健康保険組合に確認する必要があります。基準は加入する健康保険組合によって細部が異なるためです。
また、受給期間終了後や受給日額が基準を下回る待期期間中・給付制限期間中は、扶養に戻ることができます。扶養の出入りのタイミングを正確に管理することが大切です。
参考:扶養認定と基本手当日額の関係(社会保険全般)
厚生労働省「雇用保険の各種手続き・給付に関するQ&A」
基本手当を受給中に早期に再就職した場合、残りの給付日数に応じて「再就職手当」が支給されます。これは受け取れる金額を大きく左右するため、ぜひ知っておきたい制度です。
再就職手当の計算式は以下の通りです。
具体例で見てみます。基本手当日額が7,000円、所定給付日数120日で、90日(全体の4分の3)を残して再就職した場合は「7,000円×90日×70%=441,000円」が一括で支給されます。早期再就職によって約44万円のボーナスが得られる計算です。これは使えそうです。
再就職手当を受け取るには「受給資格決定後7日間の待期期間終了後の就職であること」「ハローワークの紹介または公共職業安定所の許可を受けた職業紹介機関の紹介等による就職であること」「1年を超えて勤務することが確実な雇用であること」などの条件を満たす必要があります。
もう1つ重要なのが「受給期間延長申請」です。基本手当の受給期間は原則、離職日の翌日から1年以内です。この1年を過ぎると、所定給付日数が残っていても受給資格が消滅します。
ただし、病気・妊娠・育児・介護など正当な理由で30日以上働けない状態になった場合は、申請によって受給期間を最長3年延長(合計4年)することが可能です。延長申請は「働けない状態が30日続いた日の翌日から1ヶ月以内」が原則です。気づかないまま期限を過ぎると数十万円〜百万円超の給付が丸ごと失効するリスクがあります。
また、65歳以上で退職した場合は「基本手当」ではなく「高年齢求職者給付金」が適用されます。被保険者期間1年以上なら30日分、1年未満でも6ヶ月以上なら50日分を一時金で受け取れます。基本手当と違い分割受給ではなく一括支給で、かつ老齢年金との同時受給が可能です。受給の仕組みが根本的に異なる点は見落とさないようにしましょう。
参考:再就職手当の制度内容(ハローワーク)
ハローワーク「再就職手当のご案内」